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Femtech Session テクノロジーが解決するわたしたちの課題(全4記事)

女性起業家の9割が「実体験」から事業を起こしている? “自分ごと”から始まる起業プロセスの、強みと葛藤

「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2020」にて、挑戦する女性のコミュニティmeeTalkが渋谷区とタッグを組んで行ったトークセッション「SheEO – BE THE BOSS OF YOUR LIFE」。2日間、さまざまなテーマで6つのセッションが開催されました。本記事ではその中から、fermata株式会社 共同創業者/CCO 中村寛子氏、MEDERI株式会社 代表取締役 坂梨亜里咲氏がスピーカーを、株式会社ニューズピックス NewsPicks for Business 編集長 / 株式会社アルファドライブ AlphaDrive 統括編集長 林亜季氏がモデレーターを務めた「【Femtech Session】テクノロジーが解決するわたしたちの課題」を公開します。こちらのパートでは「男性と女性で異なる、事業のつくり方」などについて話しています。

これから「可能性しかない」分野

林亜季氏(以下、林):ありがとうございます。非常にわかりやすい説明だったと思います。みなさんもメモを取りながら聞いてくださって、ありがとうございます。次のトークテーマに移りたいと思います。

『Forbes』や『NewsPicks』で取材させていただいていても、Femtechの分野って、もう経済的にも投資環境的にも1つのビッグマターなんですよね。だから今、ものすごくお金も注目も集まっています。Google トレンドを見てきたんですけど、世界的にはだいたい2019年3月ぐらいから、Femtechという言葉が検索され始めて伸びています。

中村寛子氏(以下、中村):おー、おもしろい。

:国内ではまだまだです。だから、これからなんですよね。そこをもういち早く、みなさんがキャッチアップしていらっしゃるということで、これからも可能性しかない分野なのかなと思っています。

あとは『日経テレコン』を見ていたら、今年に入ってFemtechの国内の記事が増えていますね。

中村:やっぱりそうですか。

:本当に増えています。

中村:肌感でも感じますよね。

坂梨亜里咲氏(以下、坂梨):感じますよね。先ほどおっしゃていたように、事業会社さんも増えた印象があるので、どんどん……前はFinTechと勘違いされてたんですけど(笑)。

(一同笑)

中村:なるほど。

:ああ、なるほど(笑)。

坂梨:最近は「Femtech」というだけでわかっていただけるので、ありがたいなと思います。

封印していた“負のできごと”を思い出し、起業へ

:あらためて、お二人に詳しく聞いてまいりたいと思います。まずはお二方の今の事業の立ち上げ話を伺ってみたいなと思います。亜里咲さん、いかがですか?

坂梨:私は去年(2019年)のちょうど8月に起業というか……登記を済ませたんですけれども。その時は、自分が今までお金も時間もかけた分野で起業したいと思っていて「何にしようかな?」と考えて。不妊治療はけっこう自分の中で“負のできごと”だったので封印していたんですけど、ふと思い出して。3年間、週1回通院をして、つらい経験をしたなと思って。

:ブログに書かれていらっしゃいましたよね。

坂梨:そうなんですよ。それを思い出して「これってどういうことで事業を展開できるんだろう?」と調べたら、海外でFemtechが流行っていると聞いて。「これをFemtechというんだ?」というところから、起業いたしました。

その時には、ググったらもうすでにfermataさんがいらっしゃったはずで。「fermataというところがあるんだ」と思いました。先駆者がいると思って(笑)。

:先駆者が(笑)。確かに、国内におけるFemtechの先駆者ですよね。

「ウェルネスのことをちゃんと考えられる事業」への思い

中村:なんだかそう言っていただけることが多いですけれども、私たちは先駆者とはあまり思っていない部分もあって。ただ、実はもともと共同代表の(杉本)亜美奈が2〜3年前からずっと、このfermata構想を作っていまして、私は途中でジョインしたかたちになります。

私自身も低用量ピルをずっと服用していました。月経痛が本当につらくて、毎回来るたびに、実は戻してしまって、意識を失うという。

でも、それは病気ではないんだと勝手に思っていて、倒れながら「EVE(イブ)」(鎮痛薬)を飲めば30分後には意識が戻ってくるとわかっているからこそ、我慢してたんですよね。でも、それではよくないというところで、低用量ピルを飲み始めたんですけれども。

実は海外で低用量ピルを飲み始めて、日本に帰ってきて日本の会社に勤め始めていたタイミングで「あれ? 日本って低用量ピルをどこで買うんだろう?」というところから「クリニックか。クリニックは何時から開いてるんだろう? 9〜17時? えっ、働いてるし……」と思って。

でも、ピルを飲んでいることがいけないことだとなぜか勝手に思っていて。毎回有給を使ったり、お昼休みにランチを食べずにタクシーを飛ばして買いに行くのが当たり前と思っていたんですよね。でも、それは当たり前ではなくて「クリニックに行っていいんだ」とか。

あとは私自身も、自分の身体をもっと愛したいとか知らなきゃいけないとわかりながらも、やっぱり症状が出るまで無視してしまっていたんです。そういう時に「ウェルネスのことをもうちょっとちゃんと考えられるような事業をやりたいな」と思ったのが、最初のきっかけなんですね。

そのタイミングで、今のパートナーの亜美奈と出会い。最初はずっと飲み友だちで一緒に話をしているところから、途中で「じゃあ一緒にやっていこう」ということで2人で立ち上げたのが始まりですね。

男性と女性で異なる、事業のつくり方

:ありがとうございます。いろいろな起業家の方やビジネスリーダーの方とお話しさせていただく中で、なんとなく傾向として、男性と女性で事業のつくり方がぜんぜん違うなと感じていまして。

例えば男性に多いのは、今儲かるといったら「SaaSプロダクトをやりたい。どこにブルーオーシャンがあるだろう? じゃあこの分野でやろう。これだけ投資しよう」というように「よし、見つけた、やろう!」という感じなんですよね。

でも女性の起業家さんは、自分ごとから始まる起業のプロセスがけっこう多いので、すごく思いが熱いんですよね。

事業計画も、男性は「ここに市場があるから」というところで作りやすいんですけれども、女性だと自分ごとに関わってくるので、なかなかそれもバラバラだったりして。「どれぐらいまで大きくなるんだ?」と投資家さんに聞かれても「何年後にここまでいくでしょう?」と言われても「いや、ちょっと待ってください」みたいな(笑)。

たぶん、女性起業家ならではの強みと葛藤が両方あると思うんですけど、お二方はいかがでしょうか?

坂梨:本当に女性と男性の起業はぜんぜん違うなとは思っています。今、採択されている東京都のプログラムがあって、たくさんの女性起業家と出会ったんですけど、9割ぐらいが思い(実体験)から始まっている方で。私自身もそうですけど「なんでやりたいの?」「自分がそう思ったから」ということが多いと思います。

今、投資を受けているんですけれども、受ける時も「市場規模はどれぐらいですか?」「解像度高めの資料を提出してください」という感じでご指摘いただいたりもしたので、そこは「想いファースト」な私と「市場ファースト」な方とで、ぜんぜん違うんだろうなと思っていました。

女性起業家の強みとなる、推進力と共感性

中村:亜里咲さんもそうだと思うんですけれども、Femtechは自分の個の課題とか生まれるものがすごく多いなと思っています。例えばこのプロダクトは、みなさんは何に見えますかね? けっこうふにょふにょです。

:もちもち感がすごいです。

中村:そうそう。

:すごい、なんだろう、これ(笑)。何でしょう?

中村:これは、女性の75パーセントは体験したことがあるという性交痛をやわらげてくれるアイテムですね。男性といいますか、パートナー側に少し協力を求めるものではあるんですけれども。ペニスの根本につけてもらうと、挿入の時のストッパーになるということですね。

:なるほど、そういうことだったんですね。おもしろい。

中村:それを1個ずつ外していくと、身体も慣れて、痛みを感じずに性交渉を楽しめるという。これまではそれこそジェルしかなかったんですけれども、こういうものが生まれました。

これを作ったファウンダーの方もずっと性交痛に悩まされていて、そのなかで「ジェル以外のアイテムがあってもいいじゃん?」という思いから作られたり。プロダクトとして作ってみると、実際に女性も「性交痛って私だけじゃないんだ」とか、そこで改めてまた「使ってみよう」という思いが生まれるんだなと思っていて。

亜里咲さんのおっしゃるとおり、私も「ビジネスでお金になるからやってみよう」ではなくて、それこそ「自分が生きやすい社会をつくるにはどうすればいいんだろう?」という思いから作るというところは、やっぱり(男性とは)違う感覚なのかなと最近思うようになりました。

:なんだか強みの1つでもあると思うんですよね。自分ごとから始まっているので、誰になんと言われても「私が一番のお客さんだから一番わかっている」というところと、推進力ですね。

あとは共感性。女性ばかりがお客さんではないと思うんですけれども、個のナラティブな語りが効いて、いろんな女性が味方になってくれたり、男性も含めて共感してもらえるようなストーリーテリングが、女性の起業家さんはすごくうまいのかなと思ったりしますね。

求められる「タブー視されているものをちゃんと話せる場」

:実際に事業をやってみて感じていることや、意外とこういうところに需要があったんだなと気づいたことって、何かありますか?

坂梨:私は「CAMPFIRE」というクラウドファンディングから、プロダクトが始まりました。最初は普通に販売しようかなと思ったんですけど、マーケターに相談したら「思いから始まっているビジネスだから、やるしかないよ」と言われて。トライしてみたら、女性だけではなく男性からも支援いただいて、今も「Ubu」のお客さんの中に男性のリストがあったりするんですよ。

パートナーのために購入されていらっしゃる方や、男性でも自分ごと化して考えてくださる方がいらっしゃって、それが意外でした。

中村:私たちも正直、生物学的女性をメインにはターゲットにしている部分があるので、そういった方々だけかなと思ってたんですけど、蓋を開けてみるとぜんぜんそうではないということがわかってですね。男性が「実はパートナーが月経ですごく悩んでいて、どうすればいいですか?」と来てくださったり。

:そうなんですね。優しい人(笑)。

中村:(笑)。優しい方ですよね。

あとはそれこそ本当に、変な話ですけれども。お店には普通にセクシャルウェルネスのグッズもたくさん置いてあるんですね。これはバイブレーターで、最初はすごく怪訝な顔をされるんですけれども、作り手の思いや「こう使うんですよ」とご説明すると、そこからどんどんご自身の個人の悩みなどを打ち明けられるとか。

やはりこういった、タブー視されているものをちゃんと話せる場をみなさんが求めていらっしゃるんだなというのは、事業をやり始めてすごく感じているところですね。

:そういう意味でも、お金儲けや「ここに市場がある」ということだけじゃなくて、事業をやりながら啓蒙していくような意味でも、お二方が前に出られてお話をされて。ブログを書かれたり実店舗をやられたり、もしかしたら本当に女性だけでなくていろんな方を救っているところもあるのかなと、傍から見ていて思うんですけど、いかがですか? けっこうマインドが変わってきているんじゃないでしょうか。

坂梨:そうですね。市場規模がどうかというより、確実に課題はあるので。それを誰が解決していくんだという時に、やはり課題を実感している人がプロダクトを作ったり、事業に携わっていく。そのほうが、ユーザーに届きやすいかなと思いますし、時代がついてきたらいいなという気持ちでやっています。

それこそ不妊治療の保険適用なども最近になって話題になっていますし。事業者として、課題解決に向かって何か1つでもアクションをしていたら、社会がついてくるんじゃないかなという期待を込めてやっています。

ビジネスと啓蒙の両輪

:Femtechの議員連合もできましたよね。

坂梨:そうですよね。

中村:はい。Femtech議連も、弊社も立ち上げにちょっと参画をさせていただいているんですけれども。それこそ今まではFemtech産業自体がものすごく新しいということもありまして、例えば広告などで使えないワードがすごく多いんですね。

:なるほど。

中村:そうなんです。例えば生理ショーツというものに関しましても、実ははっきりとどういう用途で使っていいかということを伝えてはダメ、とか。

:それは自主規制なんですか?

中村:自主規制(笑)。薬機法というものでダメなんですけど。でも、それもおかしな話で。まさに私たちが今、肌身で感じているのは、個々の価値観はどんどん変容するように動いているのにもかかわらず、制度などが追いついていないということなんですね。

なので、なるべくこのギャップを埋めるためにどうすればいいのかというタイミングで、議連というかたちを選ばせていただきました。みなさまにご協力いただきながら、もっとプレイヤーが埋まりやすい環境を作るというところで、まさに薬機法の改正や、広告の薬事のところの改定といったものに取り組めたらいいなと思っています。

:なるほど。お二方とも。本当にビジネスも啓蒙も両輪でやっていかれているという感じですよね。

中村:まさに。

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