2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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中石和良氏:サーキュラーエコノミー・ジャパン代表の中石と申します。今日はトップバッターで、サーキュラーエコノミーの考え方というか、正しい理解を共有したいと思います。その上でのちほど3名の方から、先進的な取り組みについてお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
今日はサーキュラーエコノミーの基礎知識と世界の最前線について、15分ぐらいでお話ししたいと思います。最初に、私の自己紹介です。
もともとパナソニック、富士通・富士電機というメーカーで20年強ぐらい、経理財務と経営企画をやっておりまして。そのあと、直近は10分ヘアカットの「QBハウス」を運営する、キュービーネットの経営企画をやっておりました。
2013年に独立をして、最初は「BIO HOTEL」という、ヨーロッパのサステナビリティに特化したホテルブランド。こちらとの提携から、日本にサステナブルなライフスタイル提案というところをスタート。その後、2018年からサーキュラーエコノミー・ジャパンという団体を立ち上げて、日本の企業や政策決定者に向けて、持続可能な経済システムを浸透させようという取り組みを行ってきました。
現在、サーキュラーエコノミーに関して、特に企業の興味が非常に高まってきております。今、我々の会社では、(スライドを指して)こういった企業や団体のお手伝いを差し上げています。あらゆる分野の企業に対して、サーキュラーエコノミーに関する事業戦略であったり、製品開発のお手伝いをやらせていただいています。
また一方で、サーキュラーエコノミーについて正しく理解をいただくということで、セミナーとか講演会も積極的に行っています。特に最近増えてきたのは、(スライドを指して)この右側のほうですね。企業内の個別セミナー、クローズドのセミナーです。これは非常に増えてきております。特に、コロナの問題が発生してから、加速しているという印象を受けています。
そして私、8月に『サーキュラー・エコノミー:企業がやるべきSDGsの実践の書』という本を出版いたしました。
これは非常に読みやすく、理解しやすいことを意識して構成しました。驚くべきことにこの本を、中学生とか高校生が最近読んでいただいているようで。ある高校1年生からは、先生を介して直接質問がきたり。あとはお取引先の企業のお子さん。中学1年生と3年生の方が読んでいただいて「学校の自由研究のテーマにしたい」と言っていただいていると聞きました。Z世代の方々は興味が非常に高く、注目していただいていると実感しています。
サーキュラーエコノミー・ジャパンという団体の活動をご説明します。今、我々のミッションとしては、日本の社会経済にサーキュラーエコノミーの浸透を、いかに加速するか? ということを取り組んでいます。
“浸透”じゃなくて“加速”なんです。いずれ日本もサーキュラーエコノミーに移行するんですけども、このタイミングが遅れてしまうと世界の中でも後進国になりかねないということで、加速をしようということに取り組んでいます。
今、我々のメンバーが(スライドを指して)こういう構成です。
パッと見ていただいてわかるように、あまり知らない会社が多いかと思います。実は我々の団体は、中小企業が中心になって日本の経済システムを変えようと、そういうリーダーシップを取ろうという団体で、非常に特色があります。
我々、活動的にはサーキュラーエコノミーのエコシステムということで、まずは正しい、また最新の情報をアップデートしながら、そこからサーキュラーエコノミーに関するビジネスモデル、製品・サービスを開発して。それを実証実験のかたちで広げていくということを、我々のエコシステムの中で機能させています。
さて、ここからサーキュラーエコノミーとは何か? そして世界での動きについてのお話に移りたいと思います。「サーキュラーエコノミーとは何か?」。概要をざっとご説明したいと思います。
サーキュラーエコノミーは「環境と経済と社会の課題を統合的に解決できる、産業革命以降250年で資本主義史上最大の革命」と言われています。
サーキュラーエコノミーについては、よく(スライドを指して)この図が出てくると思います。これは、オランダ政府が2016年に「2050年までにオランダの経済をサーキュラーエコノミーに完全移行する」という政策を出した時に公開された図表です。
まず従来型の直線型経済、リニアエコノミー。これは資源を取ってきて、それで製品を作る。そして使って、使い終わったら捨てるという、直線型の経済です。これを繰り返すことによって、経済を成長させてきた。大量に生産して大量に廃棄するということの繰り返しですね。これで経済を成長させてきました。
1990年代後半ぐらいから、もうそれでは地球や資源が行き詰まるということで、真ん中のリサイクリングエコノミーという取り組みが始まりました。これは何かというと、リニアエコノミーの延長線上で、従来型のシステムの上で廃棄物をどうやって少なくしようか? という取り組みです。「3R」というキーワードで取り組みが進んできたのが、この真ん中のリサイクリングエコノミーです。
そして、右側のサーキュラーエコノミー。これはリニアエコノミー、その延長線上のリサイクリングエコノミー、それらの延長線上ではありません。完全にシステム変更をしないといけない。デザインの転換が必要になります。
この図にあるように、資源を取ってきてモノを作って使いますが、それを作り続ける・使い続ける経済の仕組みを作るということです。したがって「従来型のリニア・リサイクリングの延長線上のサーキュラーエコノミー」という概念は、一切捨てないといけない。
ですから「廃棄物からなにかを生み出す」という発想じゃなくて、廃棄物そのものを出さない仕組み。廃棄物をも資源として、最初から設計するということです。これがサーキュラーエコノミーの本質です。リサイクリングエコノミーとサーキュラーエコノミーを、混同されている方が非常に多いので、そこを今日は強調したいと思っています。
サーキュラーエコノミーについてもう少し詳しくお話しすると「サーキュラーエコノミーの3原則」があります。
まず1つ目の原則は「DESIGN OUT WASTE AND POLLUTION」。廃棄や無駄や汚染を生み出さない設計・プランを行うということですね。
2つ目が「KEEP PRODUCTS AND MATERIALS IN USE」ということで、製品や原材料をずっと使い続けるという原則です。
そして、3つ目が非常に重要な原則です。「REGENERATE NATURAL SYSTEMS」自然システムを再生する。もう環境に負荷を与えないというのでは間に合わない、経済活動の中で自然システムをどう再生していくか? これを実現しないといけないというのが3つ目の原則です。
(スライドを指して)この図は「サーキュラーエコノミー」で検索するとよく出てくる図だと思います。
サーキュラーエコノミーの概念をダイヤグラムで表した概念図です。蝶々の羽を広げたように見えるので、別名「バタフライダイアグラム」といいます。この図のポイントは、左側の循環の円と、右側の循環の円の2つに分かれています。
なぜ2つに分かれているかというと、左側が「生物的サイクル」と呼んでいますが、資源のベースが再生可能資源です。生物であったり木材・植物といった再生可能資源を使って製品を作る時の、循環の仕方。そして、右側の技術的サイクルは枯渇性資源です。化石燃料、金属、金属以外の鉱物といったものを素材・原料として、モノを作って循環させる場合の循環の方法論です。
この中身の詳細は、説明するともうそれだけで時間が終わってしまうので。この内容についてはぜひ、先ほど紹介した私の本を読んでいただきたいです。「循環のさせ方が違う」ということを、明確に表しています。
左側の生物的循環は、最終的に生物圏、土壌に戻して栄養素にして、そこから新しい生物を再生して循環させる。右側の技術的サイクルは、ずっと経済システムの中で循環させるということです。したがって、この2つの素材・原料を混ぜてしまうと、うまく循環しなくなります。ここが非常に重要なポイントになります。
さあ、ここまで簡単にサーキュラーエコノミーの概念を説明しました。サーキュラーエコノミーを一言で言うと、これです。「廃棄物・無駄・汚染ゼロの経済システム」。いろいろ定義されていますが、もうこれでいいと思います。
そして今日の冒頭に井澤(友郭)さんからもお話あったように、今、国際的な枠組みで持続可能性のゴールが設定されています。
まず1つ目がSDGsですね。2つ目が脱炭素のパリ協定。3つ目によく出てくるのが、プラネタリー・バウンダリーの概念です。4つ目がデカップリング。経済成長と資源の使用を切り離し、また経済成長と環境破壊を切り離すという概念。この4つが主に、持続可能性のゴールとして設定されています。
これらとサーキュラーエコノミーはどう関係するのか? サーキュラーエコノミーに今の経済システムが移行できると、自動的にこの4つのゴールの大半が実現できるという位置づけになります。特にパリ協定、プラネタリー・バウンダリー、デカップリングは直接的に貢献します。SDGsに対しては、17のうちの複数のゴールが達成できるはずです。
このサーキュラーエコノミー。誰がこのリーダーシップを取って国際協調的に進めているのか?
まずはイギリスに本部を置くエレン・マッカーサー財団が中心です。そのほかWBCSD、世界経済フォーラム。このあたりが中心になって、サーキュラーエコノミーへの移行を進めているんですが。
これ何かというと、要は企業です。企業が中心になって、サーキュラーエコノミーを推進しようとしています。なぜ、企業がこの大義、地球・世界を持続可能にしようというところに一生懸命に取り組むかというと、ここには明確な経済合理性があるんですよ。
この経済合理性を4つの象限で示したのが、(スライドを指して)この図です。
縦軸に「ポジティブを増大」「ネガティブを減少」、横軸に「有形」「無形」と置いてみたんですけども。
まずは、事業を継続的に成長させることを阻害するリスク。これを軽減しようというのが1つ目です。2つ目が企業価値を高める、企業のブランド価値を強化するということです。これはまさにESG投資家の関心もそうですし、消費者や従業員の信頼を得るために必要な項目になってきます。
3つ目が有形な効果です。コスト削減です。従来型のビジネスモデルからサーキュラーエコノミーに移行することで、コストダウンが実現できます。さらにもう1つが、新しい収益源を生み出すことができる。または新しいビジネスモデル、新しいマーケットを作ることができます。
この4つの動機によって、企業が「地球を持続可能にする」という大義を前提にしながらビジネスモデルを変えていくことで、事業のさらなる成長を生み出すことができるので一気に動き始めているんです。
サーキュラーエコノミーが世界中の国々で、どういうふうにとらえられているか? まずは2015年、EUは「サーキュラーエコノミー・パッケージ」を打ち出して、EU圏の経済成長を生み出す、新しい雇用を生み出す、さらに国際競争力をつけるという目的で、サーキュラーエコノミーへの移行政策を打ち出していました。
ここから、EUに加盟する国々が続々と国家戦略や国の政策を打ち出してきています。今、EU圏の27カ国のうち23カ国が明確なサーキュラーエコノミーへの移行、それによる経済成長の国家戦略・ロードマップを打ち出してきています。
EU以外の国で先行的に進んでいるのは、中国です。中国が2009年に循環経済促進法を採択し、さらに2013年にはサーキュラーエコノミー短期行動計画を政策化しています。そして2018年にはEUとの連携、欧州大陸と中国大陸の二大大陸で、サーキュラーエコノミーへの移行のリーダーシップを取っていこうという覚書に署名をしています。
インドも2018年6月に、EUとの連携でサーキュラーエコノミーへの移行を政策化させていますし、あとはインドネシアや、台湾。実は台湾はアジアで一番早く、サーキュラーエコノミーへの移行が政策化されている国です。タイもそうですし、シンガポール、マレーシアも去年ぐらいから、一気に政策化が進んできています。
そして、アメリカ。これまでは、企業と州政府、あと都市が主導して、サーキュラーエコノミーへの取り組みがスタートしてきていましたけども。今回の選挙でもし、最終的にバイデン氏が大統領に確定すると、一気に連邦政府の国家戦略になってくるということが明確になってきています。
あとは企業の取り組みについて、ざっと説明します。わかりやすい象徴的な取り組みとして、まずNIKEです。NIKEは先ほどの「サーキュラーエコノミーの3原則」をベースに、事業を推進する10原則を設定しています。すべての製品の作り方について、この10原則で製品を作るということを、世界中のデザイナー・設計者が共有しています。こういう取り組みが、もうNIKEの中では始まっています。
(スライドを指して)これはH&Mです。H&M=ファストファッションです。ファストファッションとサーキュラーエコノミーがどう融合するか? ということは、非常に課題だったんですが、H&Mではリサイクルシステム「Looop」という仕組みを開発しました。古着を投入したら、この機械の中を通って、最終的にまた新しい服になって還ってくる。そういう産業的な構造を作りました。
そして、IKEA。IKEAは2030年までに、彼らの事業戦略・ビジネスモデル・製品すべてをサーキュラーエコノミーに変える取り組みが進んでいます。IKEAも「サーキュラーエコノミーの3原則」をベースにして「サーキュラー・プロダクト・デザインの9原則」というものを作っています。これに基づいて全製品が今、デザインされています。
Apple。彼らのミッションはこれです。「地球からなにも取らずに製品を作る」。こういう取り組みが進んできています。その他、製造業では、ドイツのSiemensが、今たぶんもっとも先進的な取り組みができています。重要なポイントは(スライドを指して)この一番下です。デジタルとサーキュラーエコノミーを融合したプラットフォーム戦略に移行しています。あと、よく知られているのは、Philipsの取り組みなどがあります。
サーキュラーエコノミーの中で一番重要なビジネスモデル。これは何かというと、製品のサービス化です。サーキュラーエコノミーにおいては、今後どんどん広がらないといけないし、広がるはずです。製品のサービス化というとサブスクリプションということになりますが、、重要なのは単純な定額制のサブスクじゃなくて、従量課金モデルになっていくことです。
「プロダクト・アズ・ア・サービスモデル」こういったかたちで、いろんな企業がスタートしてきています。なぜ重要かというと、当然ながら製品のサービス化だと、製品・プロダクト自体はメーカーが所有します。ということは、循環の仕組みを作りやすくなる。
さらにIoTのプラットフォームをうまく活用することによって、ユーザーの体験価値を高めたり、あとはメーカー側の価値を一気に高められる仕組みが作れます。そういう意味で、これからのサーキュラーエコノミーへの移行に関しては、最も重要なビジネスモデルがこの「アズ・ア・サービス」モデル、製品のサービス化です。
HPなんかも、パソコン、デバイスをサービスモデルにしたりですね。本の中で紹介した、このElectroluxの掃除機、バキューム・アズ・ア・サービスですね。これは掃除した面積に応じて課金するモデルです。こういうかたちで家電製品にも今、広がってきているという状況です。
時間になりましたので最後です。このように世界中でサーキュラーエコノミーが広がり始めていますが、実は先ほどの3原則の3つ目の「REGENERATE~」自然システムの再生。ここにもう、企業が踏み込み始めています。
有名なのがPatagoniaの取り組みですが、その他の企業、例えばウォルマートが先月打ち出したミッションで「地球を再生する企業になる」と言い始めています。
スターバックスは「地球から取るよりも多くを与える」ということで、排出するものよりもCO2を多く回収したり、使う水よりも多くを供給するということを掲げています。Microsoftが1月に打ち出したのも「CARBON NEGATIVE」。創業以来で排出したCO2を、自分たちで2050年までに回収していくということを言っていますね。
あとはユニリーバ。一般消費財では世界最大企業です。「地球を健全な状態に戻すための行動」を打ち出しています。あとロレアル、世界最大の化粧品メーカー。これも(スライドを指して)こういう、地球再生を打ち出し方をしています。
世界の有力企業がサーキュラーエコノミーからさらに一歩踏み出して、サーキュラーエコノミーの捉え方が変わっています。
「人類が永続的に繁栄するために、地球を再生する経済システム」というところまでの、踏み込みが始まってきているのが現状です。
日本もようやく「2050年カーボンニュートラル」として、新たな成長戦略にしたいと打ち出してきました。もはや企業にとってサーキュラーエコノミーへの移行は、待ったなしの状況になってきています、今日これからみなさん、このあとの(登壇者の)3つの事例を聞きながら、一歩ぜひ踏み出していただきたいと思います。今日はありがとうございました。
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