2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山岸園子氏(以下、山岸):今日のセミナーは「“今”だからこそ考えたい『これからの生き方。』」と題しまして、作家であり株式会社ワンキャリア取締役の北野さんにお越しいただいております。
北野さん、本日はお忙しい中のご登壇、本当にありがとうございます。1時間という短い時間ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。
北野唯我氏(以下、北野):はい。よろしくお願いいたします。北野唯我と申します。
山岸:よろしくお願いします。本日の進め方につきまして、まず前半は私から北野さんにいろいろ質問をさせていただきまして、後半はみなさんからのご質問にお答えしていく時間としていきたいなと思います。
今日のセミナーのタイトルは、今年の8月に出版された北野さんのご著書のタイトルから頂戴しています。
なぜ今、これからの生き方を考えることが大事なのか? というお話に入る前に、そもそも北野さんご自身がどういうキャリア変遷をたどってこられたのか。その中でどんなことを感じていらっしゃったのか。そんなことからお伺いしていきたいと思います。
山岸:まずは、北野さんの最初のキャリア。博報堂ですが、リーマンショックの直後ということもあって、就職がかなり厳しい時期にご入社されて。その後、会社を辞めるという決断をして海外に留学をされて、BCG(ボストンコンサルティンググループ)、そしてHR領域のベンチャーに転職されていると伺っております。
これ、文字にするとサラッと美しく聞こえますが、会社を辞めて留学する、かつ世界的なコンサルファームからベンチャーに転職するというのは、相当な覚悟がないとできない意思決定じゃないかなと思っています。その際、北野さんはどんなところを大事にしていたのでしょうか。
北野:そうですね。改めて、北野唯我と申します。今日はみなさんの貴重な時間をいただいているので、何か1個でもいいので持って帰っていただけたらと思っております。よろしくお願いします。
私がキャリアの中で何を大事にしてきたか、ということですよね。いきなり本質ですけど、まぁ単純に「後悔したくない」というところですね。死んだ時に後悔したくないという気持ちが、けっこう若い時から強かったので。
自分がもしも「来月死んでしまう」とか「明日死んでしまう」となった時に、後悔しないような選択肢を、常に選んできたつもりですね。それが一番大きな判断軸かなと思います。
そうやって言うとサラッと聞こえるんですけど、まぁ「言うは易し」かもしれないですけど。
山岸:いや、本当そうですよね。
北野:(笑)。
山岸:でもそれこそ「死んだ時に後悔をしたくない」というフレーズ自体は、世の中にけっこう転がっているかなと思うんですが。北野さんご自身が、本気でそう思われたきっかけはどの辺におありなんでしょうか。
北野:本の中でも書かれていると思うんですけど、私は若い時から、どちらかと言えば感受性というか感性みたいなのが強いタイプだったんです。
なので「いつか死ぬな」というのを、直感的に捉える瞬間があったというのは大きいですね。あとはやっぱり、兵庫県の西宮市に生まれたんですけれども。小さい頃に阪神淡路大震災を受けたのもあって「昨日まで当たり前だったものが、急に消える」みたいな経験をしていたというのが、大きいかもしれないですね。
でも根本的には、もともとそういう死生観だったというのはありますね。
山岸:ありがとうございます。そういう死生観が、幼少期の震災での経験もあって、ご自分の中で培われてきたということですね。
そういった大事にしてきているもの、この本の中では「価値観」という言葉でも表されています。実際問題それを、自分の中で磨いていくというか言語化していくプロセスは、意外と難しいんじゃないかな? と思っていて。ぼんやり大事だなと思っているものをクリアに言語化するまでって、どんなことを意識しているんでしょうか。
北野:よく私が使う言葉で表現すると、やっぱり「記憶と記録を繰り返す」というんですね、例えば、自分の中の「記憶としてこうだ」みたいなのってあると思うんですけれども、それを記録に落とす。例えば日記でもなんでもそうだと思うんですけれども、なにかかたちに残す。
それはブログでもなんでもいいと思いますし、何かテキストに残すとかでもいいと思うんですけど。その記憶と記録を交互に繰り返していくことで、自分の中の価値観がシャープになっていく傾向が強いな、と思いますけれどもね。
なので例えばわかりやすくいうと、私は高校生ぐらいから定期的に日記を付けていたりするんですけれども、それを繰り返すとやっぱり、自分なりの「シーズナリティ」が存在している。法則性とかを発見できたりすると思うんですよ。
山岸:シーズナリティというのは?
北野:シーズナリティ。例えば「このシーズンはだいたいいつも、めっちゃネガティブなこと考えてるな」とか「このシーズンはいつも元気やな」って。そういうのって、やっぱり自分の記憶の中に留めていると客観視できないじゃないですか。
でもそれを記録に落とし込むことで、より客観的に見分けていくというのはあると思いますけれどもね。このお話、参考になるのかな?
山岸:ありがとうございます。主観と客観の話はすごくおもしろいなと思って、伺っていました。ただ、これを自分に置き換えて考えてみた時に「記憶と記録で主観と客観を行き来する」というのは、すごくわかりやすいと思う反面。自分一人だけだと難しいな、と思う人もけっこう多いんじゃないかなと思います。
たぶん北野さんご自身は、得意だからそれが自分の中で完結できているところもあるのかなと思うんですけれども。私がそれを自分でできるかなと思ったら、ちょっと不安だなって思っちゃったりしたんですけど。
北野:(笑)。
山岸:それが自分一人では難しいなと思った場合は、どういう力を借りたら主観と客観の行き来ができるようになると思いますか?
北野:いつも思うんですけど、結局、それは他者とのぶつかりあいの中でしか磨いていけない部分ってあると思うんですよ。「自分が何者であるか?」とか「自分がどういう志を持っているのかどうか?」って、もちろん自分で言語化して磨いていける人はいると思うんですけど。
でもほとんどの人はやっぱり、ダイヤモンドのイメージを持つとわかりやすいと思うんですけれども。ぶつかりあうことの中で見い出していくということは、あると思うんですよ。
だから私が2作目の『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』という本を書けたのは、間違いなく、当時ビジネスで人生で一番苦労していたからで。
本当に僕はビジネスがむちゃくちゃ大好きで、趣味みたいな感じなんですけど。そのとき、人生で初めて「こんなに大変なら働きたくないな」と思うくらい苦しんだ時期があって。情けないんですけど、オフィスで涙を流したくらいけっこう悔しいことがあって。
それはやっぱり、人と人とがぶつかりあう中で磨かれていくもの。自分が本当に何を許せなくて、何があればギリギリ許せるのか? というものは、ぶつかりあいの中で見つけていきますよね。でも意外と人って、ぶつからないじゃないですか。
山岸:はい。
北野:例えば僕は、月曜日から金曜日はワンキャリアという会社で経営をやっているんですけれども。事業部長のメンバーとか自分の下のメンバーからたまに「北野さん優しいですね」みたいに言われることがあるんです。でも僕、厳しいところはやっぱりめちゃめちゃ厳しいんですよね。
それで世の中には、すごく温和でコミュニケーションが上手な人っているじゃないですか。リーダーシップがある感じの、みんなに静かに慕われている人っていますよね。
でもそういう人って、言うべきタイミングで厳しいことを言えなかったりするじゃないですか。その時に「なんでそういう厳しいことを言わないの?」って聞くと、だいたいみんな「いや、性善説じゃないと人は育たないんです」みたいなことを言うんですけど。
でも僕はけっこう面と向かって言うんですけど「おまえ、ホンマにそう思ってる?」と。「それって、お前が傷つきたくないだけでしょ?」と。だって、自分が厳しいことを言ったら嫌われる可能性ってあるじゃないですか。
なんか優しいことを言ってくれる人のほうが、好きな人は多いんで。やっぱりそうやって逃げている限りは「自分が本当に何が譲れなくて、何が大切なのか?」というものは、見い出していけないですよね。
だから、僕が最近言っていることがあって。壊れることはよくないけど、傷つくことは必ずしも悪いことではない、と。人って傷つくからこそ自分が何なら許せなくて、何なら回復できるのかというのを学んでいくわけじゃないですか。
厳しい家に育った子どもではなくて、むしろ激甘の家に育った子どもが犯罪を犯すって、よく言うと思うんですけど。それとまったく一緒だと思うんですよね。もしも自分で自分の大切な価値観というのを見い出せないのであれば、衝突によって見い出していくという面はあると思いますね。
だから『これからの生き方。自分はこのままでいいのか? と問い直す時に読む本』という本の中でも、出てくる8人のキャラクターが全員ぶつかるんですよね。
山岸:そうですね。
北野:その中で気づいていくというのは、リアルにありますよね。
山岸:いや、ありますけど……でもやっぱり「傷つくのは怖いな」って思うのは、素直な人の気持ちかなとも思っていて。そこを乗り越えるためのポイントって、何かあるんでしょうか? 子どもみたいな質問で、恐縮なんですけれども。
北野:そうですよね。それ、僕もすごくわかるんですよ。僕も嫌われたくないし。嫌じゃないですか(笑)。
山岸:(笑)。人からは、できれば好かれたいですよね。
北野:ですよね。人からは好かれたいなと思うんですけれども。結論をいうのであれば、2つあるなと思っていて。誰かから嫌われたとしても、自分のことを本当によく見てくれてちゃんと知ってくれている人から尊敬される、というか慕われるかどうかというのが、本質的にその人の「人間の価値」を決めることだと思うんですよ。
山岸:そうですよね。
北野:すなわち、例えばTwitterとかSNSをやっていたら、クソリプって驚くほど来るじゃないですか。それって傷つくしムカつくじゃないですか。「はぁ!?」って思うんですけど。でもやっぱり、人間の真価って基本的には一番自分の身近な人からの評価。その人からの評価によって決まるということは、やっぱり忘れがちなんだけれど、ベースラインとしてあるわけじゃないですか。
だから「誰に嫌われるか」というのがやっぱり重要だと思っていて。一番自分に近くて信頼している人からの評価で、もし嫌われていたら、それはたぶん反省すべきなんですけど。それを見落とさないようにするというのは、たぶん1つで。
北野:もう1つは、人生って研究だと思うんですよね。
山岸:研究。
北野:1作目『このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む転職の思考法』という本にも書いているんですけれども。
失敗とか間違えることって、むちゃくちゃ難しい概念じゃないですか。「失敗ってなんなんですか?」って言われたら、答えるのが難しいじゃないですか。
山岸:おっしゃるとおりです。
北野:失敗って本質的には何かって言うと「データが貯まらないこと」だなと思っているんですよ。どういうことかというと、恋愛で例えたら一番わかりやすいかもしれないんですけど。毎回同じ失敗をするとかって、データが貯まっていないということじゃないですか。
でも例えば、恋愛して、結果としてダメだった。でもそれでデータが貯まって「あぁ、自分って本当はこういうのは許せなくって、こういうのはいいんだな」と思えたら、次に生かせるわけじゃないですか。それって今、一番わかりやすいので恋愛のアナロジーを言ったんですけど、ビジネスとか人間関係って全部そうだと思っていて。
だからさっき「記録と記憶」と言ったのは、やっぱり記憶だけにとどまってしまうとデータが貯まらない可能性があるので。何がだめだったのか、何がよかったのかというのを反省するという。
そのデータを貯める感覚とか「人生とは研究である」という感覚を持てば、例えば嫌われたとか傷つけられたとなった時、人生は研究だと仮定して、そこから僕たちは何を学んで、次はどうすればいいのか? となれば、ちょっとだけ気が楽になりますよ。ちょっとだけね(笑)。
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