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Withコロナ時代をチャンスに変える戦略(全4記事)

中国で始まりつつある“アフターコロナの日常” 終わるサービスと新たな社会課題

2020年、オンラインにて開催されたIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)において「Withコロナ時代をチャンスに変える戦略」について、オイシックス・ラ・大地株式会社 髙島宏平氏、ドリコム 代表取締役社長 内藤裕紀氏、株式会社ビービット 東アジア営業責任者 藤井保文氏、READYFOR株式会社 代表取締役CEO 米良はるか氏がスピーカーを、株式会社プロノバ 代表取締役社長 岡島悦子氏がモデレータを務めて語り合いました。本パートでは「コロナが強制した“良い体験”」などについて話します。

コロナが強制した“良い体験”

岡島悦子氏(以下、岡島):各社、DXを支援されていると思いますし、特にBtoBという論点かなとは思うんですけれど。藤井さんは最近、経営共創基盤などからも資金調達25億円ですかね。大きい資金調達もなさったこともあって、すごい追い風なんじゃないかなと思うんですけど、どんな変化やチャンスがあったのか教えていただけますでしょうか?

藤井保文氏(以下、藤井):ありがとうございます。ビービットという会社自体は、UXのコンサルティングをやっているのと、私は中国側でも支援をやっています。語れる観点としては、私はある意味、雇われとしてやっていて、みなさんとは違ってスタートアップ立ち上げたわけではありません。

その観点からすると、岡島さんからお話いただいたところは、どちらかというとそのアフターコロナみたいなお話と、アフターデジタルなコンセプトが符合したところで追い風になっている部分と。

あとは内藤さんがおっしゃっていたように、3年、5年早まった感じがしていて。みなさんも一気にデジタル化が進む意識が生まれてきている。かつ、危機感も出てきているので、そこでビジネス上の追い風というか、次の時代に対応する意味合いでは、良いチャンスになっていたところはあるかなと思うんです。

ここでお話するとバリューがありそうだなと思うのは、むしろ私が中国を支援しているので、中国から得られる情報のところが多いかなと思っていて。

その中で3つくらい思っていることがありまして。1個はまさに高島さんがおっしゃった、不可逆性。Withコロナで終わるのか、アフターコロナまで残るのかというお話で。

中国はもう一定“アフターコロナ禍”している部分がかなり多くて、うちの上海のオフィスもお客さん先にほとんど毎回行っているし、みんなオフィスに出勤している状態になんですね。

見ていておもしろいなと思うのは、僕はそれをオンボードというんですけど、サービスにオンボードするという意味合いで、前から存在していたライブコマースだとか、アリババがやっているフーマ(フーマフレッシュ:盒馬鮮生)って知っている方もいると思うんですが。

OMO型スーパーといわれるスーパーだとか、リモートの医療といったところは、アフターコロナになってもすごく使われていて。フーマという、ECで注文したら30分で配送してくれるスーパーみたいなやつですね。

岡島:はい。最高ですよね。

藤井:本当に便利で、僕も使っているんですが。実は今まで35歳くらいまでのユーザーしか使っていなくて。40歳を超えてくると「あれは若い子が使っているやつでしょ」といって、普通に市場に行ってたんですけど。

今回は急に自分が出向けなくなったので、改めて無理やり使ってみたら「めちゃくちゃ便利じゃないか」と一気に広まって、市場も拡大している。なので、元に戻れないような良い体験を強制的にやらされてしまった。

リモートの教育はWithコロナで終わる

藤井:一方で、Withコロナで終わるという意味でいうと、教育関連。リモートの教育ってすごく注目されてはいたんですが、中国って特に共働きが多い中で、子どもが家にいて。字を書いて見せる時とか、サランラップかなんかを貼ってそれに書いたものを見せるみたいな。よくわかんないことをやっていて。

岡島:なるほど。

藤井:要は、iPad上にサランラップを敷いて書くとか。そういうことをやっていて。

岡島:ホワイトボードの代わりみたいな感じですね。

藤井:そうです。画面に字が出てくるけどiPadの上にペンで書けないから、サランラップ貼ってなぞるみたいな。けっこう無理をしているところはあって。実際は、やはり公教育が普通に戻ったり、塾とかも始まるようになったら、みなさんリアルの場に戻っていくことはかなり起こっていて。

そこは本当に今、申し上げたとおりで。僕は一応、UXの専門家ではあるので、やはりエクスペリエンス上のベネフィットがどれだけあるかによって、本当に変わってきてしまうなと。

なので、そちら側に移行した結果、本当にいいものは残っているし、ある意味で今まで準備してきた人たちが、この機会にうまく乗れた。オンボードできただけという感じがしています。

人と場所の流動性の社会基盤化

藤井:2つ目ですごく思っているのが、社会貢献系の話です。今まで準備していた人が勝っていたということはできると思うんですけど、やはり社会課題がものすごくたくさん出てきて。

髙島さんのお話と同じことが、中国でも日本でもやはり起きていて。さっき言ったフーマも、ぜんぜん需給バランスが取れなくなってしまって。需要が異常に増えた一方で、ちょうどコロナの直前が春節の旧正月のお休みだったものですから、コロナで都市部に帰ってこれない人たちが多くて。デリバリーの配達員もピッキングの人たちも少ない状態になった時に、レストランチェーンとかってお店はオープンできないし。とはいえ撤退することもできないので、人件費だけかかってしまう。場所代だけかかってしまうというのが、当然起きるわけですよね。

この時にフーマがやったのが「上海の特定のレストランチェーンだけ、うちで1ヶ月から2ヶ月、完全に雇用して補償から何から全部やります!」と、1ヶ月間丸々、社員を借りたんです。

岡島:なるほど。

藤井:日本でもこれに近い、人や場所の流動性を高めるみたいなものは、ちょっとずつ起きているよなと思っていて。

岡島:アソビューさんとかが、ランサーズにエンジニアを出すとか。業界や業種が違うところに人を出すみたいなことは、少し起こっていますよね。

藤井:おっしゃるとおりですね。非対称性をうまく解消していくのを、始めフーマがやったのはいいんですけど、そこを上海市が推奨して、他のところもやりなさいと。条例ではないですけど、推奨するみたいなことが起きていたりして。だんだん人と場所の流動性を社会基盤化するみたいなことが、けっこうできているんだよなという感じがしていました。

岡島:おもしろいですね。そういう意味では、中国はかなりWithコロナというよりアフターコロナという状況になっていると思うので、学びがすごくあるなと思いました。

髙島宏平氏(以下、髙島):あと、政治が速いですね。

岡島:速いですよね。

髙島:他国でいい知恵使っているねと思った時に、乗っかる速度が速いなと思いますね。

流れにくい分野にどうやってお金を流すか?

岡島:素晴らしい。ありがとうございます。米良さん、ごめんなさい。お待たせしました。

先ほども少しお話いただいたんですけれども、米良さんにつながってくることもたくさん出てきたなと思っていまして。そういう意味では、READYFORさんにどんな環境の変化があったのか。そして、どんな戦略変更がされたのか。

私が外から拝見していると、早めに資金調達ができていたのもすごくよかったと思うし、そういう備えがある中で、法人のビジネスもやっておられて、ポートフォリオもできていて。

そんな中で個人の関心がかなり変わってきたチャンスに対して、備えがあったかなと思って拝見しているんですけれども。そんなことも踏まえてお願いします。

米良はるか氏(以下、米良):はい、ありがとうございます。READYFORの場合、コロナの有無に関わらずやりたかったことは、資本主義だとなかなかお金が流れにくい分野にどうやってお金を流すか? ということを挑戦していこうと思っている会社で。

今回、行政が今までお金を付けていた、あるいは付けなければならないところに対して、すごいスピードでいろんなダメージが起こっている状況でした。

その中で私たちは、行政が対応にけっこう時間がかかるところ。大きな予算を付けなきゃいけなかったりタイムラグが発生するような領域に対して、民間でいち早くテクノロジーを使ってできるだけ情報を集めて、必要なところにどんどんお金を届けるということに挑戦しているかなと思っています。

さっき不可逆みたいな話があったと思うんですけど、そういう意味で私たちが考えていることとしては、行政とかのデジタル化が今後大きく進んでいくんだろうなと思っている時に、自分たちがどういうふうに状況を捉えて、ある種の補完関係のように動いていくかということが、今後取り組んでいきたいなと思っていることです。

コロナで実現した、セクターを越えた協力

米良:やっていたこととしては、コロナがスタートしたことで最初にイベントの中止とか、大規模イベントの自粛を政府が要請したタイミングで、1つの産業が「止めろ」となったので、多くのイベント会社さんが困ったわけですけれども。そこに「クラウドファンディングを使っていいよ」とプラットフォームを開放するところから始まって。

そこから海外のいろんな情報を調べていたので、どの産業にどのくらいのダメージが起こっていて、そこに寄付だったり民間の支援がどのくらい必要なのかを調査していって。

それぞれの産業をどういうかたちでサポートしていけば良さそうかを、優先順位付けて、どんどん事業やプログラムを作って展開していったんですけど。

今まで9年間くらいクラウドファンディング事業をやっていて、ソーシャルセクターや、パブリックセクター領域でやってきたことがあったので、今までのいろんなネットワークがすごく機能して。

例えば、医療従事者とかソーシャルワーカーの人たちにお金を届けるみたいな基金を始めたんですけど、その時も自分たちだけじゃなくて、コロナの状況がわかるような先生方とかと一緒に立ち上げたほうが、今の状況がわかるだろうというところで。今まで医療機関とネットワークを作ってきていたので、その先生方に協力してもらって、一緒に立ち上げようと。

ふだんはなかなかハードルがあって、つながれなかったり突破しにくいような人たちでも、このタイミングだからこそ「社会に必要なことをみんなでやっていこう!」という空気と、それを支えるためのリモートワーク的な手段があって、セクターを越えて協力しあって物事が起こっていく。そのスピード感が本当にすさまじかったかなと感じていて。

今後、私たちがこういう社会であってほしいな思うのは、理想の社会とか、実現するべき未来に対して、いろんな業界の人たちが協力しあって、スピードを速く進んでいくみたいなことは今回経験できたので、今後も残していきたいと思っています。

ふだんよりも“さらに速く”意思決定して行動できるか

岡島:そうですよね。今回、やはり社会と会社と、あるいは業種を越えて、個人越境していくみたいなことがたくさん起こって。しかもスピーディーに実行にも至っている事例が、たくさん出てきていて。

これってさっきの議論でいうと「不可逆にしたいな」というムーブメントだとは思うんですけど。高島さんも、医療従事者向けのプロジェクトとかやってましたよね。

髙島:僕は何をやったかというと、さっき米良さんが言ったように、医療従事者の方が非常に疲弊している中で「まともな食事ができない」という声があったので。東京と神奈川県の病院やコロナ患者を受け入れている病院に対して、食べ物を送るプラットフォームみたいなものを立ち上げて。

「やりませんか?」とオンラインで声をかけて、2週間で50社くらい集まって。今80社くらい集まって、野菜ジュースとかスープとかお菓子とかそういうものなんですが、2億5千万円分くらいかな。それを寄付しています。

岡島:そうですよね。

髙島:お菓子や食べ物をもらって。それを今、病院に送っています。たぶん米良さんのところからも、物流費のお金をいただいていたような。ありがとうございます。

米良:いいえ、こちらこそ。

岡島:素晴らしい。

髙島:東日本大震災の時にも思ったんですけど、拙速が命だなということですよね。世の中の環境、流れが速いんですけど、どの領域でも言い出しっぺがいて。

みんな何かの役に立ちたいという、持て余している善意を持っている個人だったり法人だったりが、けっこういる環境の中でスピードが命で。

ベンチャーが自分のサイズを超えた大きなムーブメントを起こす時に、ベンチャーはもはやスピード命ではなくなっているところがあるかなと思っていて。クオリティがダメだと無視されると思うんですけど、こういう期間においては拙速が命だなと思います。

ふだんの生活よりスピードがすごく速くなっている中で、さらに速く、意思決定して行動できるか。ここがすごく重要だなと。今回もパッと声をかけて何十社もワッと集まっていただいたんで、そういうのが重要だなと改めて思いましたね。

ようやく始まった“寄付のDX”

内藤:いいですか? 東日本大震災との違いとして、あの時ってどこにお金を寄付していいかわからなかった。ある程度の寄付がどこに使われるかわからなかった。寄付したお金が不透明に使われたような記憶が、みんなの頭の中に残っていた気がしていて。

今回、それこそクラウドファンディングとか髙島さんのところを通して、自分が直接応援したいところに寄付を含めてやっている感覚だと思っていて。

ただ、それ自体が不可逆で、よくわかんない支援がなくなって。何かあったら寄付も含めて、何かで応援していく流れにやっとなったのかなと感じましたね。

東日本大震災の時は、お金として寄付していて、どこに使うかわからない。けど、寄付している人は寄付みたいな。

岡島:「わからないから日本赤十字に入れちゃえ!」みたいな。

内藤:そうです。でも「結局どう使われたんだっけな」とみんなモヤモヤと残っていたのが、ダイレクトになったなと。それこそ“寄付のDX”みたいになっていて。

岡島:流通チャネル撤廃のD2C化というか。

内藤:はい。デリバリーのところがギュッと縮まって、直接的になったなと外から見てて思います。

岡島:おもしろいですね。

髙島:コロナで今がんばっている人たちって、東日本大震災の時に失敗も含めてがんばっていた人たちが、熊本の時にもうちょっとうまくなって、そのあと大雨の時に、だいぶスキルがついてきて。

内藤:うん。

髙島:災害を何度も経験している結果、日本はなんていうんでしょうね。社会的強みとか、そういうプレーヤーが活躍しやすい土壌ができているように思いますね。

藤井:私は各社の動きを見ていてすごく思ったのは、ソーシャルグッドとか、これって社会的にいいことだよねとか、誰かのために何かしようとか。社会課題に対応することでしかないんですけど、これをうまく使えている企業は強いなと思っていて。

例えば、医療の初診のオンライン化とかって動きましたよね。あれって今まで本当に医局が固かった中で、このタイミングで変えられたというのがすごく大きいし。

そこをけっこうしたたかに動ける人たちは、やはり全社をまとめ上げる企業を連れてくるとか。もしくは社会や政治や政府をちゃんと動かすみたいなことは、すごくできているよなと思っていて。

中国でも、アリババがかなりインフラ上で努力をした結果、ものすごく評価を上げていたりするし。いろんな人に「アリババは自社のためにやったの? 社会のためにやったの?」とか聞かれるんですけど、「いやいや、全部ひっくるめてやっているに過ぎないよな」と思っていて。

ある意味、今後何がアフターコロナまで残るのかでいうと、共感的な話もそうだし、社会課題などの痛みを見つけて、みんなが動ける理由をちゃんと見つけ出す。そうやって動かしていく部分は、ビジネスパーソン側でけっこうちゃんと学んでいけるポイントなのかもなと、ちょっと思っていました。

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