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[第1回]LivingAnywhere WORKトップ対談 〜これからの働き方と日本の未来〜(全4記事)

日本はお金を稼ぐ国から、お金に働いてもらう国になっていく 「場所・時間・お金」の制約から自由になる道筋

2020年7月、LIFULLは場所に縛られない働き方の実現を目的としたプラットフォーム構想「LivingAnywhere WORK」を発表しました。賛同した100の企業・自治体ととともに、人々の多様な働き方・ライフスタイルを支え、個人・企業・地域による多方向の交流を活性化する新たな場の構築を目指すものです。本記事では、株式会社LIFULL代表の井上高志氏と賛同企業のヤフー株式会社代表取締役社長兼CEOの川邊健太郎氏、LivingAnywhere Commons事業責任者の小池克典氏が「これからの働き方と日本の未来」をテーマに行ったパネルディスカッションの模様をお届けします。本パートでは、フルタイムで働かなくてもいい社会が到来したとき、個人と会社のあり方はどう変わるのかを語りました。

働く時間も給与所得も減っていく中で、生活コストをいかに下げるか

井上高志氏(以下、井上):あともう1つ、せっかく川邊さんと対談できる貴重な機会なので。人間はけっこう制約があると思っているんですけれども。その最大の制約は3つで、場所に縛られていること、時間に縛られていること、お金に縛られていること。これらを解放するともっと自由に自分らしく生きられる社会が作れるだろうと思っています。

場所については、LivingAnywhereと言っているので、どこででも生活できるよということを僕らは進めているし、働くこともどこでもできる。通勤時間がなくなるから、時間もどんどん自由になっていく。AIが普及してくると週に3時間働けば十分だよ、ということになります。

場所と時間は自由になるんですけど、問題は最後のお金で。AIが普及して3時間働けばいいことになると、相対的には全体のGDPも一人ひとりの給与所得も減る方向にいくじゃないですか。

川邊健太郎氏(以下、川邊):うん。

井上:3時間しか働かないけれども、年間3,000時間くらい働いているのと同じ給料がもらえるようなことはたぶんないので(笑)。そうすると限界費用ゼロ社会というか、生活コストをものすごく徹底的にスマートにやって、コストをガーンと下げていくテクノロジーが必要になるんだろうなと思っているんですよね。

そうなるとみんながとっても丸く収まって、お金の心配もなくて時間も場所も解放的で、その時のファミリーや友達とのライフステージ、ライフイベントに応じていつでもどこでも好きなところで生活できる。これはすごく解放されていいなと思うんですよね。

そういう未来図を見ている中で、川邊さんがここのポイントを押さえておいたほうがいいよとか、こんなテクノロジーがもっと進むといいよねという、キーになるものはありそうですか?

ITで「場所・時間・お金」の制約にソリューションを

川邊:人の制約については、場所・時間・お金というのはおっしゃる通りで、ヤフーがというよりは、ITやインターネット産業はその3つの制約すべてに対して、ソリューションを提供できるんじゃないかなと思っています。特にネットである段階で、時空は超えていて、特にコロナ禍における完全リモート社会によって場所の制約が相当程度なくなってきているということだと理解しています。

ヤフーというか、Zホールディングスはお金に関しても挑戦しようとしています。フィンテックを活用して、より効率的なお金の使い方をAIが提示してくるようになると思います。

Aという品物を買う時に、AIがクロールして「もっと安く買えるBというお店がありますよ」とレコメンドしてくれるようなものも含めて、お金に対する自由度を上げてくれると思っています。

あとイギリスが産業革命でめちゃくちゃ儲けて、だんだん成熟し衰退していく過程の中で今、金融が最も大きな産業になっているのと同じように、日本もお金を稼ぐ国から、お金に働いてもらう国に変容していくと思います。

お金に働いてもらうようなフィンテックのサービスとして手軽なものを、我々は提供できるんじゃないかなと思っています。

現に今もPayPayの中にボーナス運用という投資信託がありまして、商品を購入した時にPayPayボーナスが付きますよね。その全額を自動的に投資信託に回す設定ができて、今たまたま株がコロナの影響を受けて右肩上がりなので、この数ヶ月でPayPayボーナスをボーナス運用に当てていたユーザーは、軒並み自分のおこづかいが増えているわけなんですね。

井上:お~。

川邊:こういったものをどんどん提供することによって、少なくとも自分がひたすら働いてお金を貯めるやり方以外に、より効率的な手段を提供できるんじゃないかなと思っています。

井上:いいですね、いいですね。すごいですね。

テクノロジーを駆使することで、人類はもっと自由自在になれる

川邊:テクノロジーを使って、いろいろなことから人間を解放することができると思っています。Zホールディングスは、「人類は、『自由自在』になれる。」というビジョンを掲げているんですけれども。

さまざまなテクノロジー、いろいろなAIを駆使することによって、我々はもっと自由自在になれる。今日のテーマで言うとどこに住んでもいい、どう働いてもいいという自由を手に入れるんじゃないかなと。

人生100年時代ですから。たぶんここに集っているみなさんの多くは、あと50年以上生きるわけですよ。その時に、いろいろなテクノロジーの力でもっと自由自在に生きていける。そういった社会を一緒に目指していきたいなと思っています。

井上:そういう未来を自分自身が体験できるという稀有な時代に生きているわけですよね。

川邊:そうですよ。これはもう最高ですよ!

井上:最高ですね(笑)。我々LIFULLのサービス「LivingAnywhere Commons」は、要は月額2万5,000円だけ払えば、住む場所もあって寝泊りができて、働く環境もあって、水道光熱費も高速通信代も全部込み込みなので。言ってみれば年間30万円プラス食費があれば十分生きていけるという。だいぶ限界費用ゼロに近いほうに持っていこうとがんばっていますけど。

さらに水もタダになるようにするとか、エネルギーがタダになるようにするとか、住宅の価格も今の10分の1、20分の1にしていくとか。こういったこともいろいろなテクノロジーで可能になってくると思っています。将来、世帯年収で100万円あったら今よりも豊かな生活ができるようなところを目標に、テクノロジーをもいろいろと取り込んでいきたいなと思ってます。

川邊:僕はその考え方には本当に大賛成です。経済学者ではないので、本当のところは僕もわかっていないとは思いますけれども。日本はこの30年デフレだったわけで、国全体は成長していなかったかもしれないですけれども、個々人の所得ではなく、生活の豊かさやWell-beingといったものは、必ずしも悲観すべきものではなかったんじゃないかなと思っています。

井上:そう思いますね。

収入ではなくWell-beingの増進を追求していく

川邊:加えて70億人いる全人類が「ますますGDPを上げていくぞ、成長するぞ」とガツガツやったら、もはや環境的に限界が来つつあることはみんながわかっているわけですよね。ですから、そういう中でWell-beingをどう増進させるかというところにおいて、収入の大小ではなくてその中身を考えていく。

あるいは、収入が少なくてもQuality Of Lifeが上がる、Well-beingが増進することを追っていくほうがはるかに尊いし、現実的なんじゃないかなと僕は思います。現に消費者余剰という観点で、インターネットがGDPを増やさなかったんじゃないかという説もあるわけですけれども。

井上:ありますね。便利で快適になってね。

川邊:Well-beingを追求するのは、僕は本当に大賛成ですね。

井上:そういうテクノロジーも取り入れた、ショーケースとしてのスーパービレッジは、そのうちLivingAnywhere Commonsでの実証実験でやりたいなぁと思っています。

このLivingAnywhere WORKに賛同している企業さんの中にも、ヤマハさんや前田建設工業さんといった、実力を持って本当にできそうな会社さんたちも入ってきています。セールスフォースさんなども入っているので。ヤフーさんも含めて、できるところは一緒にオープンイノベーションができたら、それもまた楽しいなと思っています。

川邊:そうですね。それはもうぜひぜひ。

井上:途中から2人の対話になりましたが、ファシリテーターに返します(笑)。

日本の直近の課題は、公共部門のDXの遅れ

小池克典氏(以下、小池):ありがとうございます。「今どんな未来を描いているか」というのが大きいテーマだと思うので、まさにお2人に語っていただいたんですけれども。その中で、こういった社会を作るためのさまざまな課題もあるんじゃないかなと思います。特に、ヤフーさんも取り組まれているDXというテーマもあると思います。

どういうものが直近の課題やネックになるのか、それらをどう解決していきたいかを、お2人にぜひ伺えればと思っております。川邊さん、お願いしてよろしいですか?

川邊:直近の課題として、公共部門のDXの遅れというものが挙げられるんじゃないかなと思っています。コンシューマーが公共部門を使う時の経済的規模や時間は莫大なわけですよね。

これがデジタル化されていないことによる非効率性によって、人々のWell-beingが損なわれているのは問題だなと思っています。これはデジタル庁ができることを契機に、ユーザー体験を至上命題にしてやってきた我々のようなネット事業者が、国のためにもっと人を送り込んででも良くしていかなきゃいけない課題かなと思っています。

井上:うんうん。

川邊:もう1つはその前提となる規制ですよね。古いものを守るために新しいものを入れさせない規制が多すぎるんじゃないかなと思っていますので、これを菅政権にも期待するところですけれども、なるべく取っ払う。

取っ払ったがゆえに起きる問題に関しては、セーフティネットを用意する。そうした変化ができていないことが課題だと思います。

お金をかけずに産業を勃興できるのが規制改革の利点

小池:ありがとうございます。井上さんも大きくうなずいていましたけれども、この話はやっぱり共感するところが?

井上:新しく首相になった菅さんに大きく期待しているのは、菅さんも以前からずっと言っている、地方創生と規制改革とDX、デジタル化です。まさにその通りですと。それを実行レベルを上げるためにデジタル庁を作るよと言っているのは、本当にまさにこれから期待するところです。

国の取り組みを民間がお手並み拝見というふうにやっていてはダメで、できる限り支援していくスタンスを取る。国の未来を作るためには、官も民も自治体もアカデミアの人たちも一緒になってやっていくことがものすごく重要だなと思うんですよね。それが1つ。

規制改革は、お金をかけずに産業を勃興できるので、規制改革はバンバンやったほうがいいんですよね。国と自治体が規制を緩めたら、そこにビジネスチャンスが生まれるので、民間はそこにドドッと入っていくんですよね。それを早くやっていってほしいなと思います。

あと2つだけ。さっき水や食料や住宅といったエッセンシャルサービスを安くできたらいいよねと話していた中で、目下の課題では教育と医療のところですね。ここはまず遠隔教育、オンライン教育をメインとして考えるように教育の在り方を設計し直す。そのグランドデザインに向かって、5年10年かけてガーッと変えていくことが必要だと思いますね。

医療の課題としては、地方創生やLivingAnywhere Commonsをやっていると、結局いい病院は大都市にしかなかったりするので、重い病気になった時には地方だと心配だなというところのがまだ残っているわけですよね。この辺りもDXをしていくことによって解決できたらいいなと思います。

これも規制やしがらみがたくさんある領域なので(笑)。教育と医療の規制を取っ払って、DXを一気に進めていく。そうすると場所・時間・お金の制約がさらに取り払われる。そんなふうに思います。

実際LivingAnywhere Commonsをやっていても、お子さんがまだ幼くて、小学生や中学生になると、自分はいろいろなところで多拠点生活をしたいんだけれども、子どもの教育を考えるとなぁと躊躇するケースはまだまだ多いので。その辺りも早く取り払えるようにしたいと思います。

小池:ありがとうございます。まさに我々がLivingAnywhere Commonsをやっている中で、今回コロナ禍で移住が増えているという話がありましたけど、軽井沢などがすごく増えているようです。風越学園とか森のようちえんとか、かなり教育に特化したコンテンツがあるところに人が寄り付くことがエビデンスベースで出ているなということはすごく感じております。

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