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BUSINESS INSIDER JAPAN 浜田敬子氏とリンクトイン村上が徹底議論「問いを立てる力の磨き方」(全3記事)

企画作りは「なぜ?」を起点に仮説を立てることから始まる BUSINESS INSIDER JAPAN 浜田統括編集長が語る「問いを立てる力の磨き方」

世界で7億人超のユーザーを擁するビジネスSNSリンクトインのネットワークには、世界的に知られたオピニオンリーダーが多数登録しています。その中から、リンクトイン編集部が依頼し、積極的に情報発信している人々が「リンクトイン・インフルエンサー」。海外ではマイクロソフト創業者のビル・ゲイツといった企業家から、仏エマニュエル・マクロン大統領など各国の指導者まで、幅広いリーダーが名を連ねています。本企画は、日本のリンクトイン・インフルエンサーをゲストに招いたオンライン・ライブイベントで、リンクトイン日本代表の村上臣氏がゲストにまつわる旬のテーマを、たっぷりと掘り下げて聞いていきます。今回、BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長の浜田敬子氏をゲストに迎え「問いを立てる力の磨き方」について語りました

28年間勤めた朝日新聞者を辞め、デジタルメディアへ

村上臣氏(以下、村上):みなさん、こんにちは。今回も始まりました「LinkedIn News編集部LIVE!」。こちら、今日も暑い東京から行きたいと思いますけれども、全国的に暑いですね。残暑と言いつつもまだ暑いということですけれども、みなさん、今日もお元気でお過ごしのことと思います。

今日は、非常に私も楽しみなんですけれども、こちらのお題で行きたいと思います。『「問を立てる力」の磨き方』ということで、ゲストにBUSINESS INSIDER JAPAN統括編集長、浜田敬子さんをお招きして話をしたいと思います。

まず、簡単にリンクトインの説明をさせて下さい。リンクトインは今、世界で7億人以上のユーザーがいる、ビジネスSNSでございます。

日本でも転職サイトとしてご存知の方が多いと思いますが、現在は、毎日役立つビジネス情報が得られるコミュニティとしても使われています。コミュニティ上で様々な企画を展開していまして、今回のライブもその一環です。

リンクトインのビジョンは、世界中のすべての人に対して経済的なチャンスを創り出すというものですが、ここ日本でもそれに向けて努力しているところです。

さて、今日のゲストの浜田さんは、雑誌の世界からデジタルメディアに移られた方として知られています。雑誌時代は女性として初めて『AERA』の編集長に就任されました。現在は『BUSINESS INSIDER JAPAN』で働き方、多様性、ジェンダーなど、世の中の関心を集めるテーマを的確にとらえ、ヒット企画を連発されています。また、ラジオやテレビのコメンテーターとして、最近ご活躍されています。

それでは早速、浜田さんをお呼びして、色々なお話を聞いていきたいと思います。それでは浜田さん、よろしくお願いします。

浜田敬子氏(以下、浜田):よろしくお願いします。

村上:よろしくお願いします。お忙しいところありがとうございます。

浜田:ありがとうございます。いつも村上さんには、取材をさせていただく立場なんですけど。

村上:そうなんですよ、今日は逆の立場ですね(笑)。私も楽しみです。

浜田:ありがとうございます。

村上:今、簡単なご紹介をさせていただきましたが、補足でぜひ紹介をお願いできますか。

浜田:はい。私が転職したのはちょうど50歳でしたが、それまでずっと28年間、朝日新聞社という大企業にいました。当時、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』という、リンダ・グラットンさんの本が出たんですね。

ちょうど、人生100年時代という言葉が盛んに使われていた時期で、私自身これから何をしていこうかと考えた時に、やはり一度デジタルメディアをやってみたいと思い、転職を決めました。以来3年と少し、デジタルメディアで働いています。

さらに、去年の終わりには社員という立場も辞めまして、今は、業務委託で統括編集長をしています。働き方の実験みたいなことを、自分自身が色々と体験しているところです。

あえて社員を辞めて業務委託になったワケ

村上:ありがとうございます。私も業務委託になったというニュースは驚きました。壮大な働き方変革ですよね。これはどういう経緯で決断したのですか。

浜田:私たちの読者に影響を受けたことが大きいかも知れません。『BUSINESS INSIDER JAPAN』の読者層は、ミレニアル世代といって20代、30代が中心なんですね。取材先としてもこの世代に話を聞くことが多いんですけれども、実際に取材していると、自分で主体的に人生を選び取りたいという欲望が、すごく強いと感じるんです。

主体的とはどういうことかというと、例えば決められた時間に決められた場所に出社するというのは、一番主体的じゃないわけです。自分で仕事を選べるとか、働き方を選べるというのが、幸福度を上げる一番のポイントなのかと、この世代を取材しながら感じました。

さらに言えば、正社員という働き方にこだわっていない人も実に多かった。そうした人たちの話をたくさん聞いていくうちに「であれば、ちょっと自分もやってみようかな」と考えるようになりました。

今はフリーランスとかパラレルワーカーとか、きれいな言葉で語られるようになっていますけれど、現実はどうなのだろうかという興味もありました。実際やってみたら、むしろ色々な不具合があったり、法整備が整っていなくて困ったりとか、デメリットにも気づけるだろうと思い、一度やってみようと考えるに至りました。

村上:もうどれくらい経つのですか。

浜田:今年の1月からなので8カ月です。

村上:実際はいかがですか? コメントでも「想像と違ったと感じることはありますか?」みたいな投稿が来ています。

浜田:そうですね。私自身、苦手なことが多いタイプなんです。例えば、数字の管理とか一番苦手。編集長だと、当然予算管理をしないといけません。

他にも勤務承認、事務作業もとても苦手で。反対に企画を考えたり、取材をしたり編集をしたりということがすごく得意だし、好きなことなんです。そこにもっと自分の時間を使いたいと思ったんですよね。

その方が、メディアにとってもプラスになるのではないかと。自分が苦手なもの、例えば予算管理で1桁数字を間違えるとか、時々しでかしてしまって(笑)。

そういうことをやるより、得意なところで組織に貢献する方がいいじゃないですか。でも、社員編集長である以上、管理業務からは逃げられない。であれば、社員という立場を離れないとフェアではないのかなと思ったことが1つです。

今は『BUSINESS INSIDER JAPAN』以外にも、テレビのコメンテーターの仕事や、オンラインイベントの登壇などの仕事をいくつもやらせていただいています。社外で私がいろいろ活動することで、新たな知見や人脈を得ることができれば、それを『BUSINESS INSIDER JAPAN』にも還元できるのではと考えました。今の時間の使い方としては、6、7割を『BUSINESS INSIDER JAPAN』の仕事に充て、3割くらいは外の仕事をしている感じです。

企画作りとは「仮説を立てること」

村上:なるほど。でも、今のお話は、まさに今回のテーマである「課題の発見力」につながると思います。フリーランスという言葉は割ときれいに語られているフシがありますけれど、その裏に潜む課題を、自ら体験して調べてみるということだと思うんですよね。

浜田:そうですね。

村上:その観点で言うと『BUSINESS INSIDER JAPAN』上で展開されている、ダイバーシティや、女性活躍といった話題になる企画というのは、どのような形で課題として認識していくのですか。

浜田:いわゆる新聞と違って、私たちのメディアは起きていることをそのまま報じるとか、現象をそのまま報じるのではないんですね。私は雑誌が長いので、必ず企画会議で企画を出すということを続けていて。今の『BUSINESS INSIDER JAPAN』も週に1回会議をやるんですけれども、その時にそれぞれ大体、数本くらい企画を出すことにしているんです。

この企画作りとはどういうことかというと、つまりは自分の視点や仮説を立てることだと私たちは思っています。

じゃあ、どうやったら仮説を立てられるかというと、そこは常に何か現象やニュースを見たり、人に出会ったりしたときに、それを起点に考え続けることが大切です。あるニュースを見た時に「これってなぜこうなっているんだろうか?」とか、ある人の話を聞いた時に「この人はなぜこう思ったんだろうか?」とか。「なぜこの人はこういうことで苦しんでいるんだろうか?」と、常に「なぜ? なぜ?」を繰り返すわけです。

例えば職場でのハラスメントの問題。なぜこの人がこういう目にあわなければいけないんだろう。なぜこの職場ではこういうことが起きるんだろう。それは個人の問題なのか、環境の問題なのか。そこから、じゃあこの人がハラスメントに遭う背景には何があるんだろうか? なぜ防げなかったんだろうか、と考えを膨らませていきます。

そうして練っていくうちに、ハラスメントに遭う構造を企画にできないかといったアイデアが生まれてきます。常に「なぜ? なぜ?」を問い続けている感じですね。

編集の仕事=情報同志をどう組み合わせるか

村上:ありがとうございます。私はエンジニア出身なので、あまり企画というものを意識したことはないのですが、僕の場合はいわゆる経営戦略、M&Aなどの文脈で「この会社とこの会社をくっつけると面白いよね」とか「ここに投資して」みたいな視点で事業上の仮説を作っていたと思います。今、お話を伺っていて、そういう視点に近いのかなと感じました。

浜田:まさに今、臣さんの話を聞いて思いました。私たちの編集の仕事って、情報と情報をどう組み合わせるかだと思うんです。

スティーブ・ジョブズの「Connecting the dots」ではないですが、一見関係のない事象やニュースが、実は時代の背景とつながっていたり、通底するものがあるという。

組み合わせが斬新であればあるほど、面白い企画になります。「あ、そういうことだったのか。そういうものの見方があったのか」と、人は思うわけですね。

村上:新たな視点ができるということですよね。

浜田:そういうことですね。例えば、Aという事象があったら、それを正面から見るだけでなくて、実はAというものと、Bというものは全然違うニュースだけれども、これは共通点あるよね、と。

ただし、こうした発想はすぐにはできなくて、私自身も長い間ずっと考えながら「どうしたら面白い企画を生めるんだろう」とやってきた結果、今があります。これは私流のやり方で、みなさん、それぞれの方法があると思います。ただ、まずは材料を集める必要はあると思います。

例えば、先程の臣さんのM&Aの話でも、M&Aをするにはまずたくさんの企業を見ますよね。

村上:そうですね。

浜田:たくさんの企業を見た中で「これとこれ!」という感じで組み合わせを考えるのだと思います。それと同じで、私の場合は日々ニュースを見たり、読んだり、ニュースだけではなくて人と会ったり、ネットのSNSのつぶやきを見たりして材料を集めています。

すべて私たちにとっての情報と呼べるものだと思うんですけども。その中で自分が気になったものを、ノートにかなり細かく書き込みます。

村上:なるほど、なるほど。

浜田氏が「情報のフォルダ分けをしない」理由

浜田:コツと言ったら変なんですけど、そこで私の場合はフォルダに分けないです。

村上:ああ、全部バーっと書いていく。

浜田:そうなんです。「これってテクノロジー関係。これは雇用関係」と分類してしまうと、違うものが混ざらなくなってしまうからなんですよね。

村上:ああ、すごく分かる。

浜田:一見違うものを混ぜるところに面白さがあるので、敢えてザーッと気がついた順番に書くんです。そうすると、ノートを見ていて「あ!」と気づくことがあります。「もしかしたら、この人が言っていた言葉とこの事象は関係あるかも知れない」とか「これとこれを組み合わせたら、面白い企画になるかも」みたいな感じで。こういうやり方を始めて、早20年くらいですかね。

村上:まさに編集の仕事の真髄をお聞きしたような感じです。やはり色々ことを聞く中で、これとこれは相関があるのではないか、と仮説を立てて、さらに深堀りして調べていくと、つながる瞬間があるということですよね。

浜田:そうですね。あと、臣さんが以前おっしゃっていましたけれども、もう1つのコツは、情報にあまり優劣をつけないことだと思っています。

声(影響力)の大きい、例えば安倍首相の言葉とSNSのつぶやきを比べると、普通は首相が言っているからということで優先しますよね。だけども今だとSNSで、無名の人が言ったことのほうが面白かったりするわけです。

今までの前提で情報の軽重を分類してしまうと、なんらこれまでの「新聞のトップニュースはこれ」みたいなところから逃れられないので、あまり面白い企画は生まれないと思うんですよね。でも、実は軽重つけずに情報を混ぜることによって、今までとは違う世の中の見方ができるのではないかと感じています。

村上:ありがとうございます。実は私も分類しない派なんですよね。

浜田:おお!

村上:私、昔はEvernote使っていたんですけれども、今はNotionというアプリを使っていて。Chromeやアプリで見た面白い情報はブックマークしてすべてそっちに放り投げています。Notionにはネタ帳みたいなカテゴリがあって、そこにダーッと並ぶんですよね。

浜田:なるほど。

村上:私も月5~6本くらいブログを書いていますが、ネタを集めたりとか、自分の思考で世の中を理解するために、気になった情報をそこに放り込むということを日常的にやっています。週に1回くらい、週末にそれをなんとなく眺めて、そこからネタを拾ってブログを書いたりすることが多いですね。

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