2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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山中礼二氏(以下、山中):丹羽さんありがとうございました。1つだけお伺いしていいですか?
丹羽優喜氏(以下、丹羽):はい。
山中:種苗ですよね。新しい作物が、改良版がどんどんできるわけですよね。御社の力によって、世界中で改良というのはされているんでしょうが、その改良のスピードが急激に早くなっていくと。そういう理解でよろしいですか?
丹羽:そうですね。接木っていうのはもともと存在している植物同士を組み合わせることで新たな性質を発揮できるというところで、世代を回す必要がないっていうところが1つ大きな特徴で。それがスピードアップにつながるということになると思います。
山中:なるほど。その特殊な接木の技術プラス遺伝子編集の技術まで組み合わせてやっている、という理解でよろしいですか?
丹羽:我々の技術ポートフォリオの中に、いろんな技術が入っていると。必ずしもそれをすべて組み合わせるわけではなくてですね。適材適所と言いますか。適するところに適した技術を使っていくと。
なかなか遺伝子の編集であったり遺伝子組換えもそうですけれども、社会受容性の問題もありますので。不安視される方もいらっしゃいます。そういう中で使える場所では使っていくし、そういうものが求められるところではほかの技術で代替していくというようなことが必要かなと思います。
山中:ありがとうございます。すばらしい技術だと思うんですが、これによってどういうふうに世界が平和になるのか。途中のプロセスを教えていただきたくて。安定性と持続性というキーワードをさらっとおっしゃいましたけども、ちょっと説明していただけますか?
丹羽:そうですね。我々も直接的に平和にすごく貢献してますというのはなかなか難しいんですけれども。結局、資源の奪い合いであったり、そういったところが争いの元になると考えたときに、やはり食糧を安定的に生産させるということは例えば水であったり土地であったり、そういった資源が十分みなさんに行き渡っている状態というのが必要だと思います。
その中で、我々が土地に対する生産性を上げていくことができるということは、そこの争いを未然に防ぐようなかたちで貢献できるのではないかなと思っているところです。
山中:なるほど。わかりました。自分たちの土地でなかなか農作物が取れないって思うと、だったら他所の土地を取りにいこうということになりかねない。だけども御社の技術でもって、その土地がどんなに苦しい、例えば農作物が取れにくいような土地であってもその土地に合った農作物を御社の力で生み出して提案することができる。そういう存在なわけですね。
丹羽:はい。ありがとうございます。
山中:ありがとうございます。ひと通りみなさんの自己紹介をお伺いしました。ありがとうございました。
山中:ではまずこのテーマから議論したいと思います。「日本は平和に貢献するテクノロジービジネスを育んでいるのか?」というテーマから参りたいと思います。
先ほどみなさんに投票と言いますか、コメントをmentimeterで投げていただきましたね。平和実現に貢献するビジネスや金融と聞いてどんな言葉が頭に浮かびますか? というのを投げていただきましたが。これを見ていただいたあとで、パネリストのみなさんと議論しましょうか。
(質問を見ながら)あ、やっぱりESG投資が真ん中にきますね。ESG。ESG。マネーロンダリング。社会的インパクト投資。そうですね、ESG投資の一部がインパクト投資だという、そういうカテゴライズの仕方もあるかと思います。
社会を良くするためのマネーの流れというのが出てきていると。ソーシャルボンドという言葉もありましたね。先ほど、バンカメでソーシャルボンドで積極的に社会を良くするためにお金を流し込んでいる、という話が林さんからあったかと思います。
そしてグラミン銀行ですね。先ほど(前のセッション)のパネルで百野さんが話をしてくださいました。ああいう動きも新しい金融によって社会を変えて、平和、国家同士の争いではなくても1人ひとりが平和を得られるという個人の安全保障につながるような。そういうソーシャルビジネスに対してもお金が流れ込んでいるというところですね。
伝播投資貨幣という言葉がありますね。逆に私、この言葉の意味を教えていただきたいです。なるほど。うん。ありがとうございます。
今回、マネーがあってテクノロジーがあって平和があるということで、まずテクノロジーについてちょっとお話したいと思います。平和を促進するようなテクノロジーが今どうなっているのか、ということについて議論をしたいと思うんですが。まず林さんから、問題提起をお願いしたいと思います。
林礼子氏(以下、林):さっきテクノロジーはどうなっているのか? という話がありましたけれども。私自身はテクノロジーの専門家ではまったくないんですが、新しいいろんなテクノロジー、金融のテクノロジーもあるでしょうし、先ほど丹羽さんがおっしゃられたようなすばらしいアグリカルチャーのテクノロジーもあると思うんです。
いろんな新しいものに対してお金を入れていく。テクノロジービジネスということだと思います。今ここに投影されているESG投資ということにも、つながるのかもしれないです。
私の問題提起で、先ほどもちょっと触れさせていただいたんですが我が社は決して小さい銀行ではないですけれども、あっという間に1000億ドーン、ドーンと決めてやっていくというようなことが、我が社だけじゃなくてグローバルに起きているように感じていて、社会的インパクト投資のファンドとか。グローバルの金融のプレーヤーたちがそういったものを動かして、お金が流れるようにしているようにも感じます。
どうも日本ではもうちょっと……盛り上がりつつあるけれども規模が小さいなっていうのが直感としてあって。それがなぜなのか。あるいはみなさん実際に業務に携わられていて、何が障壁になっているのかとか。そのような問題意識みたいなものをぜひ、むしろお聞かせ願いたいなっていうのが、私の今申し上げたいことかと思います。
山中:ありがとうございます。安川さん、丹羽さんのご意見をぜひお伺いしたいですね。いかがでしょうか?
安川新一郎氏(以下、安川):自分自身が経験して思うのが、まずシリコンバレーでもソーシャルインパクトに特化したファンドというのはまずないんですね。またソーシャルインパクトに限らずスタートアップに対する投資のリターンというのは平均的な上場企業の投資よりも、これはアメリカでも低い。かなりリスキーなビジネス。金融の論理だけで考えると、必ずしも参入する領域ではないんです。
それでもやっぱり平和に貢献する、社会の問題を解決するということに対して誰かが積極的にリスクを取って投資していかないといけない。今日は先ほどお話もあったように、大企業もESG投資をしたいけれどもどこに投資をしていいかわからない。それはファイナンシャルなリターンに限らず、社会のインパクトがその投資によって起きるのか、起きないのか。そこが見えにくいのがESG投資の難しいところなんですね。
私の場合はたまたまソフトバンクというところで、まさに大きな何兆円という規模の会社の立場として将来のユニコーンへの投資をして、結果としてAlibabaのような大きな会社になる企業へ投資する側も見てきました。
一方で自分自身もスタートアップに所属してみたり、山中さんはよくご存知だと思うんですけれども、小さなヘルスケアスタートアップを山中さんと一緒に育てるプログラムを回していたので。スタートアップ側が何に困っていて、どういうことで支援を受けたいかということもわかる。この両方がわかる人がなかなかいないんですね。
大企業はお金はあるから、良い会社のがあったらどこか入れたい。ただ(企業が)何万社とあったりして、とても全てには会えない。スタートアップの側は資金調達とかそういったものは当然欲しいけれども、社長自身があまりそればかりに時間を使っていると肝心の研究だとかプロダクト開発が進まない。
このジレンマなんですよね。間を取り持つ人が必要なんだけれども、それは資本主義の経済原則だけで考えると決してリターンのいいビジネスにはならない。ここなんだと思います。日本でもだいぶエンジェル投資家という人たちが出てきましたけれども、私も少額でも、エンジェル投資家というのは自分自身が納得さえすれば、何年でも待てるんですね。10年でも待てるし。もしくは20年でも待てる。そういった投資というのがまだまだ少ない。
先ほど話があったかもしれませんけれども、1000億円くらいしかまだソーシャルインパクトのファンドっていうのはお金としてはなかなか日本では集まっていない。世界でもまだ少ない。ここが非常に大きな課題だと思います。テクノロジーは日本にはあるけれども、それを社会化する、実装化していく課題がなかなかまだ少ない。
ESG債自体は、大きく発行されてていろんなところに投資されているんですけれども。本当の意味でソーシャルインパクトの投資は、日本でいうとそのくらいの規模です。
山中:なるほど。ありがとうございます。間を取り持つ人の存在がすごく大事なんですね。丹羽さんはどうでしょう? 丹羽さんの目にはどういうふうに映ってますか?
丹羽:テクノロジーへの投資というところでいくと、大学発ベンチャーを盛り上げようとか、そういった機運は非常に盛り上がってきていまして。その中で我々も起業させていただきました。
ただそのあと、例えば私たちの場合は運良く安川さんという方に出会うことができて、そのあとがつながっていきましたけれども。結局そこが、大学は非常にこのままでいいのかという危機感を持たれていて、政府ももちろんそうだと思うんですけれども、イノベーションを大学から生み出そうみたいな動きが非常に活発になってくる中で、その先へつないでいくというのがなかなかうまくいってない部分がまだまだあるのかなっていうのは、実感としてはありますね。
そういう方たちに出会える人たちはうまくやっていけるんだけれども、それを拾い上げる人たちというのが安川さんが言われたとおり、どういう立場でどういうインセンティブでやるのかというのはたしかに難しいところなんだなぁというのは、言われてみて今改めて気づいたところ、実感としてもあるところかなと思いますね。
山中:ありがとうございます。安川さんと丹羽さんのお話を伺っていて思い出したんですけれども、ユーグレナが立ち上がったときに、当時私、初期の段階で投資ができなかったベンチャーキャピタリストだったんですよ。ほかもあんまり投資してなかったと思うんですよね。かろうじて伊藤忠でしたかね、商社がなんとか投資をしたんですけれども。
本当にどこからもお金を調達できなくてユーグレナがすごく苦しんでいたときに、出雲さんを助けたのは堀江さんだったんですよね。ホリエモンの堀江さんですね。そういう人たち、起業家の志に懸ける、最終的にはその企業が大きく世界を変えるということを信じて投資をするという個人の存在が、本当にキーなんだなというのを話を伺っていて思いました。
山中:じゃあここまでテクノロジーの話をしましたが、いよいよ平和の話をしたいと思います。こんな無茶な質問するなって言われちゃうかもしれませんけど(笑)。金融は世界を平和にするのか? または逆に平和を悪化させるのか? ということをお伺いしたいと思います。
ぜひ参加しているみなさんも巻き込んで一緒に議論したいと思いますので、今度はSli.doでコメントをお願いします。ではコメントをいただいている間に、パネリストのどなたからでもけっこうです。みなさんどう思われますか?
林:「金融は」と書いてあったので。これはほとんど個人的な感想というか、イメージなんですけれど。
金融は世界を平和にするのか戦争にするのかというのは、金融という主語がどうかなと思っていて。金融の後ろに控えている考え方だと私は思っていて。よく言われているのは、資本主義で利益を追求していると結局最後は戦争になっちゃうんだよね、みたいな話になるんですけど。
最近、さっき申し上げた会社のいろんな取り組みを見ていると、結局、最後はそこで働く我々個人の、最終的にはエゴとか欲とか、greedというものがある思うんですけれども。それを超えた自分たちの力を使って社会を変えていこうという意思があれば平和にもなるし、戦争にもなると思っていて。
それは最終的には組織と個人の哲学と言ったらあれなんですけれども、考え方であって。金融だからということではもちろんないんですが。お金を使って何をしたいのかという想いが世の中を変えていくと思うので、どっちにでもなるけれども、最後は私は人間は平和を求める気持ちがきっとあると思うので、金融というパワーを使って平和にすべきであるというふうに私は思っています。
山中:なるほど。ありがとうございます。金融というのはメカニズムですもんね。その金融というメカニズムを使って企業がどうしたいのか。あと個人個人がどうしたいのか。その想い次第ということですね。ほかの方はいかが思われますか?
安川:まさに今おっしゃったように金融は手段なので世界を平和にもできるし、戦争にお金を入れることもできるっていうことだとは思うんですね。先ほどからいろんなセッションで有意義なお話がされていますけれども。過度な競争資本主義みたいなものに対する膿とか、ひずみみたいなものが社会の弱い層に出てきている。アメリカの暴動もそうですし分断対立を煽るような動きなどですね。
そういった貧困や分断を本来、金融とか資本主義というのは癒すほうに、それが循環するほうに回していかなきゃいけないんだと思います。そういう意思をこのアフターコロナ、ウィズコロナのときにどういうふうに持てるか、金融やビジネスに係る人々の意志次第じゃないかなとは思います。
あと、たまたま最近新聞で読んだんですけれども。ダボス会議の議長が、キャピタリズムからタレンティズムみたいなことを言ってます。。石油産業だったり自動車産業だとか、ある種の「巨大資本」が必要だったのがが「資本」主義です。資本主義においてキャピタル、資本を融通したのは金融だったということだと思うんです。
これから、そういった重厚長大な産業は転換期を迎え知財だとかインテレクチュアルな技術を持つ才能(タレント)をもった会社の時代が来ると思います。、まさに丹羽さんの会社というのは今の時点ではまだ数名の研究者の会社ですが、そこが世界を変えるかもしれないという、僕はそういう可能性に賭けているわけなんです。
そういう意味で巨大な資本の提供というよりも、我々エンジェル投資家なりインパクト投資家がやっているのはより具体的なビジネスの仕方のアドバイスであったり、知財の守り方であったり、その知財をビジネスにするうえで有効な大企業のパートナーの紹介であったり。
お金を融通しているのではなくてある種の別の付加価値、才能というのか、人的資本というのかわかりませんけれどもそういうものを融通している。そういう風にキャピタリズムがタレンティズムに移行している。そういう意味において広い意味での世界を平和にする金融業というのは、お金を融通するだけではなくてそれに付随した能力を提供する形で企業の成功のために寄り添っていく。そういう意味では昔のバンカーなんかは、むしろそういうイメージに近かったかもしれません。
瞬間瞬間の取引で、いろんなところでリターンだけ追い求めていくような金融資本主義ではなくて、世界を平和にするようなキャッシュだけではないさまざまな支援も含めた金融機関。そういったものがたぶんこれからの金融機関には求められるのかなと、実際にバンク・オブ・アメリカさんの話とかを伺って、思っております。
山中:ありがとうございます。お金の流れだけではなくてタレントの流れ、知恵の流れ、そういう流れが新しいイノベーションを起こした人たちを促進して育てていくと。それが社会の変革につながっていくということですね。ありがとうございます。
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