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DMM.com 亀山会長インタビュー(全2記事)

DMM亀山会長「PLの救済より前に、BSのロックダウンを」 国民と経済を守るための提言

各業界のリーディングカンパニー代表への取材を通じ「コロナウィルスによってもたらされた業界への影響、為すべき構造改革、そしてコロナの“その先”にある希望への道」を探る、本特集。こちらの記事では、DMM.comの亀山会長に「家賃や返済で苦労している個人へのアドバイス」を中心に話を伺う。

個人に対しても、支払いに猶予を与えてほしい

――自粛で苦しんでいる経営者の方に「自分の身は自分で守れ」「今は家賃や借金を払わない方がいい」というアドバイスを頂きましたが、個人の方についても同じようなことが言えますか?

亀山敬司氏(以下、亀山):うん。仕事が減った多くの人が、家賃や返済で苦労しているだろうからね。サラ金に走ってる人も少なからずいるだろう。

普通は生活費の3割くらいを、住居の家賃や住宅ローンの返済に充ててるんじゃないかな。今はそれが払えなくなっている人が多いと思う。こんなときに住居から追い出されたら、コロナにかかる前に死んじゃうからね。

――国や自治体がやるべき政策は何かありますか? 今のところ『Go Toキャンペーン』などがありますが……。

亀山:みんな緊急にお金がいるんだよ。いつになるかもわからない収束後の予算を組まれても、潰れたあとじゃ意味がない。店がなくなったら何処に「Go To」するんだよって思う。

――では、どうすれば?

亀山:「大家さんも銀行も、支払いを猶予してあげて」と『Do not payキャンペーン』をしてくれたらいい。

政治家や権威のある人が「自粛要請の影響で収入を下げられた方が、家賃の支払いや銀行への返済が滞ったとしても、今まで皆様が築かれた信用が傷つくことはありません」と言って、励ましてあげるだけでいい。

俺が一人で「払えないのはしかたがないから」と言っても、一般市民は大家さんや金融機関が怖いのよ。延滞してブラックリストに載ったら「人生が終わっちゃう」と思ってる。今まで守ってきたルールを破ることには、恐怖心も罪悪感もあるはずだ。

――不動産業や金融業から反発はありそうですね。

亀山:べつに命令を出せと言っているわけじゃないんだ。営業自粛と同じように、期間限定の「要請」でいい。大手の不動産会社は協力するかもしれないし、少なくとも銀行は従うと思うよ。ウシジマくんは従わないだろうけど(笑)。

――支払猶予じゃなくて支払免除にするのはだめですか?

亀山:免除にまですると副作用が大きすぎる。免除分を受給しないと大家さんが潰れちゃうし、悪徳不動産屋がウシジマくんと組んで、不正受給を企てるかもしれない。空室を借りてたことにしちゃうとかね。

PLの救済より前に、BSのロックダウンを

――「月の売り上げが前年同期比で50%以上、もしくは3ヶ月で30%以上下がった事業者に対して、中小規模には月50万円、個人事業主には月25万円を上限に家賃の3分の2の給付金を出す」といった「特別家賃支援給付金」の報道がありましたが。

亀山:もちろんそれもやればいいけど、複雑なルールは手続きも審査も大変。本人に届くまで2〜3ヶ月はかかるんじゃないかな。それより、それぞれの未払いを容認した方が早い。

俺が言ってるのは、PL(損益計算書)上での救済じゃなくて、BS(貸借対照表)のロックダウン。CF(キャッシュフロー)の応急措置。安倍さんや小池さんが、まずは「支払い猶予」の協力を要請してから、PL上の救済はそのあとでやればいい。

――支援策が決まる前に、政治家が社会のルールを軽視するような発言をすれば、世間から叩かれませんか?

亀山:人を守るためのルールで、ルールを守るために人が犠牲になるもんじゃない。そもそも、自粛要請自体が自由な営業のルールを脅かす発言だからね。

だけど、社会を守るための発言ならと国民は従った。事業者や失業者を守るための「支払い猶予」なら、多くが支持すると思うよ。

今のところ多くの企業が自粛要請を受け入れてる。でも、保護が遅くなると「背に腹はかえられぬ」と、言うことを聞かなくなってくる。

だから「国が全力で国民を保護する!」と言い続けないといけない。保護のために効果のありそうなことは、早く発信したほうがいいと思う。

――返済が滞る銀行はどうなりますか?

亀山:銀行にとっても、無理に返済させない方が不良債権になりにくいと思う。貸付残高が減らないだけで利息は増えるから、むしろPLは良くなるかも。

放っておくと、リスク回避のために銀行の貸し剥がしが始まるかもしれない。そして、せっかく借りた金融公庫の無利子融資も、過去の貸付を回収するために使われるかもしれない。

――不動産業はどうですか?

亀山:大家さんは大手企業でない限り、損害は建物の1年分の劣化くらい。PLでいえば減価償却費と利息くらい。あとで、固定資産税を何年分か免除して帳尻を合わせてあげれば、大した損害にはならないと思うよ。

――そういうものなんですね。

亀山:まぁ俺もマクロ経済は専門じゃないから、いろいろとツッコミどころもあるかもしれない。だけど少なくとも個人や中小企業より、大家や銀行の方が数は少ないし、体力があるのは間違いないと思うよ。

だから一旦、資金の負担を大家と銀行に回して、そこを国がフォローするほうが楽で早いんじゃないかな。

「弱者は、ない袖は振れない」

――やっぱり、そこまでやらない飲食店とか中小企業は潰れちゃいますか?

亀山:俺も昔はカフェやバーをやっていたからわかるけど、飲食業はそんな儲かるもんじゃない。

優良店でも売上が100だったとしたら、材料費が30、人件費が30、家賃とかで30、そして利益が10%ぐらいかな。そこから開業のときに借りた借金を、ちょっとずつ返していくって感じが多いんだよ。だから、売上が2割ほど落ち込めば、すぐに赤字になってしまう。

――過去にも景気が悪かった時期はあると思いますが、優秀な店は生き残ってますよね。

亀山:景気が良ければ売上も経費も上がるし、悪ければ両方下がる。だけど今回は、急激に売上だけが下がって、経費が下がらない。時間が経てば家賃は下がるかもしれないけど、そこまで保つほどの資金力がない。だから、急がないと数ヶ月で潰れちゃうと思う。

会社が一旦倒産すると、復活は簡単じゃない。人財は失うし、お客や仕入先との関係も壊れてしまう。こうしている間にも、多くの事業や多くの文化がどんどん失われている。

――国の助けなしでは、多くの人を守れないということですね。

亀山:今みたいなときくらいは、自己責任や自由経済なんて言葉はすみっこに置いといて、国が国民を、強者が弱者を、保護しないといけないよね。

――まさに。資本主義より社会主義ですか。

亀山:話はもっと単純で「弱者は、ない袖は振れないし、それが本人のせいでないのなら、追い出されないようにしてあげて欲しい」ということだけ。

――これは亀山さんからの政治家の方々への提言、ということですか?

亀山:そんなに偉そうなもんじゃない、俺はただの商売人よ(笑)。ただ3月以降、俺なりに何ができるかを考えてみてね。でも結局は、3Dプリンタで作ったフェイスシールドやマスクを、医療現場に届けることくらいしかできなかった。

だけど、このままだと経済的に追い詰められて、自殺する人が増えてくるような気がする。だから飲食とか販売店とか、いろいろな事業をやってきた俺の経験から「この方が多くの人が助かるんじゃないかな」っていう考えを、ここで話してる。

――なるべく多くの人に知ってもらいたいですね。

亀山:経営者には相応しくない発言なので、非難されるかもしれない。でも、それも覚悟の上で喋ってるんで「いやいや違います。この方が日本にとってベターな案ですよ」という意見があれば、是非とも多くの人から聞きたいかな。

休業での自殺者をなくせるように、みんなで知恵を出し合えたらいいよね。

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