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第1部 長谷川氏×市来氏(全2記事)

地域ビジネスに向いているのは「廃墟をおもしろがれる人」 “50年後の日本”と言われる熱海の再生に挑む理由

2019年9月5日、株式会社machimori主催で「熱海を通して地方を考える vol.3 『地域で仕事をつくる〜ローカルビジネスが個人のキャリアにどう繋がるか〜』」が開催されました。地域で仕事をつくりたい方のために、仕事を通してサードプレイス的に地方(熱海)を使うことについて語られた本イベント。第一部のトークセッションでは、主催であるmachimori代表取締役の市来広一郎氏と、熱海市役所産業振興室 室長の長谷川智志氏が登壇。本記事では、熱海の過去や課題、まちづくり施策についてのトーク内容をお届けします。

熱海のまちづくりを牽引する2名が登壇

市来広一郎氏(以下、市来):熱海で株式会社machimoriというまちづくりの会社をやっています、市来と申します。今日はよろしくお願いします。このシリーズもこの場所で、7月からやり始めて、3回目でして。毎回人数が増えてきて、うれしいなと思っています。最初は10人ぐらいしか来なくて、ほぼ知り合いという感じだったんですが、前回ぐらいから、約40名の方にご出席いただいてます。

今日の流れとしては、そもそもなんでこういう場をやってるんだっていう話を、私と熱海市役所産業振興室の長谷川さんで(させていただきま)すね。一旦顔を見せていただいて。

長谷川智志氏(以下、長谷川):どうもみなさん、こんばんは、熱海市からきました。熱海市役所の長谷川と申します、よろしくお願いします。

市来:はい、公務員には見えない公務員ですね。

(会場笑)

市来:熱海のスナックのことなら、長谷川さんに聞けばだいたいわかるというぐらい、古い飲み屋には詳しいということです。また後でちょっと自己紹介をしてもらいます。

今からこの2人で、15分ぐらいお話ししつつ、始めていきたいと思います。その後カヤックの柳澤さんから、鎌倉資本主義の話など、お話しいただいて。その後、もう1人加えまして、後半は4人で、地域で仕事を作ることに関してのパネルディスカッションというかたちで、やっていきたいなと思います。

後半に移る合間に、10分から15分ぐらい休憩の時間をとって、そのときには飲み物も出てくるので、みなさんと交流できる時間も作りたいなと思ってます。

まあ内部事情からいうと、今この19時の時点でドリンクが冷えてなかったっていうだけな話ですけど。途中で飲みながら……いつも飲みながら(トークセッションを)やってて、僕は飲み過ぎてしまうので、ちょうどいいかなと思いますが。そんな感じでやっていきたいと思います。

「熱海をなんとかしたい」という強い想い

市来:改めて自己紹介ですけれども、machimoriという会社をやってまして、「熱海をなんとかしたい」と思って地元にUターンして、もう12年経ちました。このmachimoriという会社は、もともとNPOをやってて、途中でmachimoriという会社を作ってから8年ぐらいになりますけれども。

主に、熱海の町中の(スライドを指して)もう人が手をつけなくなったような空き物件をリノベーションして、こういうゲストハウスをやったりとか。

まあこういう場所をやったりということで、町中の再生をやってきて、ということで。詳しくは後ほどお話しします。なので、私自身も実際熱海で起業してますけれど、遠からず起業したかったとか、起業家になりたかったというよりも、ただ単に「熱海をなんとかしたかった」というのがあって。そのアプローチの結果として、起業という方法とか、事業という方法だったんですね。

今日は(事業については)あんまり詳しいことは話せないと思いますので、宣伝ですね。よかったら、ここで5冊だけ売ってますんで、あの、本を買っていってください。ちょうど先週、台湾でも翻訳版が出版されたということで、うれしく思っています。

後ほどもう少し詳しくお話ししますが、長谷川さんの自己紹介と今日の導入的な話を少ししてもらえたらな、ということでお願いします。

遊びと仕事、旅行と定住の境目がない町

長谷川:はい。私は熱海市役所に平成5年に入りまして……もう20何年ですかね、わかりませんが。(スライドを指して)これは熱海の熱海城というところを撮った写真ですけど、海も山も素晴らしいですね。みなさん、熱海に来たことある方はいらっしゃいます?

(会場挙手)

長谷川:あ、いらっしゃる。みなさん来たことありますね? そうです、93年ですね。いろいろ部署は渡ってますが、今は産業振興室という部署におりまして、主に町の中の事業者さん、民間の方と一緒に連携してまちづくりをやってます。

ちょっと熱海のエピソードなんですが、昭和12年に熱海市の市制が施行されました。そのときに、昭和12年1月3日午前0時に人口調査をしたんですね。

3万人という規定がある中で、当時の内訳として、熱海町と多賀村というところが合併したんですけど、多賀村が4,000人、熱海町の定住者1万8,000人。ただ旅館に泊まっていた方が7,000人いるんです。別荘を訪れてた方が1,200名で、これ全部で3万人というかたちで市制を施行してしまったというかたちですね。

市来:住民じゃない人も含めてしまった、ということらしいですね。

長谷川:はい、まあ……住民です。そんな中で今の状況ですけれども、住民登録上は3万6,800人ですが、観光で訪れる方がいらっしゃるのは、1日あたりだいたい1万9,000人ぐらいという計算になってます。

それから、一時居住者とか別荘関係。人口3万7,000人のうち、2万1,000世帯ぐらいあるんですけど、それ以外に1万世帯ぐらい別荘があるということですね。で、熱海の状況といいますか、(スライドを指して)居場所ってここに書いてありますが、これ熱海の「リノベーションまちづくり構想」に出てきます。

遊びと仕事はですね、通常は相対するものかなと思いますが、なんとなく熱海の中ではですね、(スライドを指して)この循環というか、この輪というか。遊びと仕事の境目がないような町、という意味で載せているんです。

それから、旅行と定住。これは対照的なものと思われがちですが、熱海の中では旅行で訪れて、それが常連になったりとか。2拠点に居住してもらったりとか。定住してまた元に戻る方もいらっしゃいますし。こんな動きがけっこうある町かなぁと思っています。

完全に移住しなくても仕事は作れる

市来:はい。ちなみに、長谷川さんは産業振興室という仕事をしていますけど、そもそも産業振興室って何をやってるんですか? 

長谷川:はい。今は町の応援ですね。昔はお金の補助とか。それから金融の補助みたいなことをやってましたけれども。今はどういうかたちで町の人たち、事業主さんを応援できるかという話を聞きながら、いろいろ考えていく方向に変わっています。けっこう細かいところのお話も聞かせてもらってます。

市来:はい、わかりました。また後ほど長谷川さんから、公務員としての姿勢を含めて、熱海でチャレンジする人を応援するというお話もしてもらいつつ。熱海市役所って、今、行政も含めてけっこうスピード感よく動いてくれていて。だからこそ、熱海でなんかやりたいって人が集まってきているっていう状況なのかなぁと思っています。

では、今日のこの場はなんでやっているのかっていう話と、そもそも私たちが熱海で何をやってきたのかっていう話をですね、導入でお話しさせてもらいます。

Sli.do(注:イベント参加者からの質問を匿名で集められるサービス)とか、みなさん使い方がわかりました? ブラウザやアプリで使えますが、もしなんか質問とかあれば、入れていってください。僕も常にだいたい見てます。

今日こういうタイトルですけど、私たちは熱海で起業する人たちを生み出していこうということで、この3年間、長谷川さんも入れて産業振興室と一緒に取り組みをしてきました。マルシェとかの取り組みも、やっぱり熱海で何かチャレンジしたいという人に投資していこうと、やってきたりもしました。

先ほどの長谷川さんからもありましたけど、熱海で仕事を作るといっても、別に完全に移住しなくたっていいんじゃないかな。都会、東京にいながら何かやり始めればいいし、ずっとそのままだっていいんじゃないかなって思ったりするんです。飛行機とかいろんなもので6時間ぐらいかけて行かなきゃいけないところと違って、ここ(東京)から1時間ちょっとあれば行けるいけるところなんで。

僕自身も、最初は週末だけやろうと思ってたんです。12年前、前職にいたときですけど、東京からこれだけ近い位置にあるので、東京で仕事しながら週末まず熱海で何かやるってことから(始めて)。それを約半年やり続けていたぐらいで。

結果的に、週末だけで通うのではちょっと埒あかないから、「もう思いっきり熱海帰っちゃおう」と思って帰っちゃったんですけど。ただ、そこまでいかなくても変われるよっていう、立地にあるんじゃないかな。熱海に限らず、東京周辺のエリアって、そういう場所がたくさんあるんじゃないかなと思ったりもしています。

廃墟みたいなビルを見て「おもしろい」と思えるか

ちょっと僕らがやってきたことをお話ししますけれども、90年代の半ばぐらいから、町が一気に衰退して、廃墟になっていった時期がありました。僕が高校生ぐらいのときにですね。身近で誰々さんとか潰れたとか夜逃げしたとか自殺したとか、そういう話がけっこう出てくる状況で。

観光も衰退して。でもまあ観光……僕は熱海を離れてから思ったことは、観光だけじゃない、熱海ってもうちょっと暮らしていけるといい場所なんじゃないかな、毎日温泉に入れるし。ということを思ってですね。

ここで豊かに暮らせる、豊かな町を作っていけることを意識してやってきました。今いろんな事業をやっているんですけど。主に飲食とか宿泊を町中で展開しながら、一方で、熱海でお店を出したい人たちに場所を貸していったりとか。

そういう不動産を持ってるオーナーさんたちを繋ぎつつ、その真ん中で行政とも連携しながら、とにかく熱海で起業していく人との繋がりを作りまくって、何か始めやすい環境を作っていくようなことをひたすらやってきました。そもそもこの3年ぐらい、創業支援の取り組みをやってきたりとか。

しかも、熱海って非常に課題が進んでしまっている町です。50年後の日本の姿と言われますけども。最近は多少V字回復していると言われる観光客も、50年間減り続けてきてちょっと回復しただけですよね。人口も50年減少し続けてきているし、高齢化率はですね、日本全体では27~8パーセントぐらいですけども、熱海はすでに47パーセント。半分が高齢者っていう状況で。

空き家率に至っては、全国の市で最も高い50.7パーセントという、誇らしい数字ですね。そんなことがあったりして、町中ももう空き店舗だらけで、廃墟みたいなビルがあって……この辺にサボテンが生えてっていう。(スライドを指して)これは壁がないんですね。素晴らしいビルですね。

こういうのを見ると、僕なんか使いたくなってしまう感じがあるんですけど。逆に言うとそういうことです。これを見て「あ、やばいな」と思うか、「あ、なんかおもしろそうだから使ってやろう」となるのか。こういうものを解決できたら他の町でも使えるんじゃないかと思って。そういうちょっと変わった人たちを、まず呼び込みたいなと(思って)、やってたりもしました。

あえて「熱海に移住してほしい」とは言わない

「僕ら今、課題がすごくいっぱいあるんですよ」ということを発信すると、おもしろい人たちが入ってくるな、みたいなことを感じていて。「熱海ってなんかいいところだから、お金も払うから、移住しに来てよ」ということはやらないです。「まあ、勝手に来てください」と、「来てくれて何かやるんだったら応援します」というスタンスなんですけども。

熱海をうまく使ってもらえたらな、と思っていて。別に上から目線でそう言っているわけではないです。やっぱり「熱海いいな」と思ってくれたら、その人にとっていいやり方で熱海を使ってもらえたらいいし、それが地域の課題解決だったら最高だなあ、と思いますし。

そういうことができたら他の地域にも広げていけるんじゃないかな、と思ったりしています。それで、僕らやってきた僕ら自身もmachimoriという会社を作って、地域の課題を実際に解決していこうやってきました。今日はさわりだけお話しします。

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