2024.10.10
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荒川和久氏(以下、荒川):今日は脳科学者の中野信子先生をお迎えして、「この社会でどうしますか」という話を20時45分までやっていきたいと思います。みなさんよろしくお願いします。
(会場拍手)
今日、中野さんとはいっさい何の打ち合わせもせずに今日ここにいます。
中野信子氏(以下、中野):アドリブでやります。
荒川:ということもあり、一応、ガイドスライドとしてスライドを説明しながら、逐一、中野さんに気になった点をツッコミ入れてもらいつつ、それ以外にも膨らんだお話をいろいろさせていただければと思います。では、先に(来場者の方々の)属性を聞きます?
中野:ああ、そうですね。今日いらっしゃる方で、男性の方。
(会場笑)
(会場挙手)
女性の方。
(会場挙手)
3対1ですかね。はい、ありがとうございます。
荒川:やはり男性のほうが多いですね。ちなみに、独身の方はどれくらいいるんですか?
(会場挙手)
半分くらいですかね。
中野:既婚者の方でも、ほぼ既婚じゃないという方。
(会場笑)
荒川:(手を)挙げています。
中野:今のは聞き方がよくなかったですかね。既婚者の方で、今後1人になる予定が今のところない方。
(会場挙手)
ありがとうございます。
荒川:それはなにかあるんですか?
中野:(今手を挙げてくださった方は)ソロ社会と直接関係ないかもしれないということですね。
荒川:そうとも限らないかもしれないですよね。
中野:なにが起こるかわかりませんからね。
荒川:テーマを3つくらい考えてきました。最初のテーマにいく前に、基本的なお勉強というか、事実の確認をしようと思っています。このスライドの一番左側が独身の人口です。真ん中が64歳までの有配偶人口と、1番こっちが65歳以上、高齢者の有配偶のパーセンテージです。2040年には独身が約47パーセントになり、びっくりすることに、64歳までの有配偶が31パーセントになるんですよ。
中野:本当に?
荒川:もはや。こっちに合わせると、かろうじて50パーセントを超えるんですけれども、基本的には独身が47パーセントだから、ほぼ半分ということです。これは別に未婚じゃないですよ。死別とか離別とか、1回結婚してもまた独身に戻る人も含めて、20年後にはこういう配偶関係人口になることが予想されます。
これは20年後の内訳です。ごめんなさいね、わかりやすいように、ソロ男・ソロ女・ソロ爺・ソロ婆と書いています。
(会場笑)
荒川:こっち側が独身者ですね。2040年には15歳以上の人口が約1億人で、独身が4,600万人。有配偶が5,200万人ということです。日本は超高齢国家とか言われてるじゃないですか。高齢者人口を足すと、3,900万人ですね。3,900万人の高齢者よりも独身の4,600万人のほうが多いわけですよ。
だから、実は「高齢国家ではなくて独身国家ですよね」と言えるんじゃないかなと。そういう話を、この間、経産省の官僚の方とお話ししたら、「なるほど」と言っていましたよ。
中野:(笑)。
(会場笑)
荒川:年齢で見ちゃうから、そういう計算をしないんですね。配偶関係であまり区分けをしないでほしいんです。これはちょっと悲しい事実です。ソロ爺とソロ婆を見てみましょう。ソロ婆は1,200万人、ソロ爺は480万人ですね。
中野:有名な話ですよね。ここに来られるようなみなさんは、もうすでにご存知だと思います。独身の高齢男性の寿命が短いのは「おそらく配偶者が死別したからですよ。死別したのちの寿命が違うよ」と。
荒川:女性は強いということですよね。当然ながら未婚も増えます。「生涯未婚率」という言葉をなくしたらしいですよ。「50歳時未婚率」に変えたんですって。
たぶん、「生涯未婚と言うんじゃない」というクレームが入ったんだと思うんですよね。「50歳を超えても結婚くらいできるだろう。可能性はあるだろう。生涯未婚なんて言うんじゃない」みたいなクレームが入った。
中野:どこから入ったんですか。
荒川:わからないです。一般の人から官庁に入ったから、厚労省が使うのをやめたような気がするんです。
中野:わりと年嵩の男性がそういうことを言うの、ちょっと痛々しいような……。
荒川:私から言わせると、50歳を超えて結婚できる割合って1パーセントもないですからね。むしろ生涯未婚といってもいい。
(会場笑)
今、男は23パーセントです。女が14パーセント。これが、さっきもずっと出てた2040年には、男3割、女2割です。男の3人に1人は生涯未婚だし、女の5人に1人は生涯未婚だとなります。
中野:これは男性の格差社会が訪れているということですね。
荒川:そうですね。
中野:男性が何回も結婚する人と、結婚しない人に分かれる。女性はそうでもないという事実。
荒川:はい。男性は再婚相手に初婚の相手を選び、女性は再婚の相手を選ぶという。だから私、これはもはや「時間差一夫多妻制」だと言ってるんですよ。
中野:そういうことですね。
荒川:そういうことです。何度も離婚・再婚を繰り返す人は何回も結婚するのに、1回もできない人はずっとできない。
中野:この傾向は確か、北欧でもっと顕著だと聞きました。
荒川:あ、そうなんですか?
中野:男性は裕福な人が何回も結婚する。一方で、一夫ゼロ妻男性がすごくいる。男性社会に戦いが訪れているという。
荒川:(笑)。まあ、実際は今もそうなっていますよね。
中野:なってますね。
荒川:300万人の男の人は、どうあがいても、結婚したくても相手がいないという状況がある。これです。未婚男性と未婚女性の各年齢別の人口差。この差分と書いてある部分をダーっと見ていただくと、各年齢でずっと男が多いんです。ずっと男余り。女余りが逆転するのは75歳ということですけど、これは男が死ぬからなんです。
(会場笑)
死ぬからこうなっているだけで、生きているうちはほとんど男余りということですよ。累計すると、340万人の男は余っていく。20代から50代ギリギリ、結婚までいけるということでも300万人が余っている。20代、30代でももう145万人余っているというのが男余り現象。これ、中国は3,000万人ですよ。
中野:(笑)。
(会場笑)
荒川:日本は300万人です。
中野:男だけの国ができちゃいますね。
荒川:できます。未婚の男が3,000万人、余っている。
中野:すごいですよね。3,000万人って、東京都の人口を上回っている。いろんな事情で結婚を選択しない人がそれだけいるんですね。
荒川:やはり中国が一番多いのかなと思って、この間調べたんですよ。インドはさらに上でした。男が5,000万人です。
(会場笑)
中野:そんなに!?
荒川:インドと中国とインドネシアと日本と、あとアメリカかな。その5ヶ国を合わせた余り人口が1億人を超えるんですよ。余った男で国を作れますよ。
中野:35億、というネタがしばらく前に流行りましたけど、本当はもっといるんですね……。
荒川:そうみたいなんですよ。一見、男の人が辛そうに見えるじゃないですか。余っているから、結婚する相手がいないから、男の人のほうが辛そうと思えるんですけれども、逆に女の人のほうが辛い気がしています。「これだけ男性が余っているのに、結婚できないあたしって何?」とならないかな。
中野:(笑)。ああ。
荒川:すっげー、ウケてます。
(会場笑)
中野:いやあ、でもそうですね。男性の格差社会ということを考えると、やはりある程度以上の層を選びたいと女性側に欲が出るわけですよね?
男性の格差社会を考えたときに、どこで結婚できる層なのか、をジャッジする場合、ちょっと嫌なことを言いますが、たぶん社会経済的地位で線引きすることができる。
荒川:ですね。
中野:その線よりも上の層の人口と女性の数との引き算をすると、それだけ余りますよと。もしかしたら、これがざっくり計算した場合の女性の未婚数という形になっているのかもしれませんよね。
荒川:ああ、そうですかね。未婚年齢だけですからね。これも離婚した女性なども入れるとそんなには変わらないですよね。なかなかそういう人とは結婚しないですね。
これ、おもしろいですよ。男余りを色マップの日本地図にしたんですよ。なぜか、関ヶ原を境に上が男余り、下が女余り。九州とか真っ青ですよ。1番男が余っているのが茨城県です。次に栃木県で、3位が福島県。福島は東北ですけど、なぜか北関東に男が余っている。
中野:どれくらい違うんですか?
荒川:そんなにたいしたことないです。日本全国が男余り現象であることは間違いないんです。これは、20代、30代で抽出したんですよ。20代、30代で抽出すると、なぜか東日本と西日本にきれいに分かれる。でも、東日本の中で東京は青いですよね。むしろ、東京にいる方が男余りじゃないんです。
中野:これは若い世代が移動するからですか?
荒川:そうです。仕事のあるところに若い男の子と若い女の子が行くからですよ。
中野:江戸時代にも、江戸には男性が女性の倍くらいいたんですよね。
荒川:そうです。江戸はそうでした。
中野:現代も東京だけ青いんですね。
荒川:東京は逆に働きに来る女子が多いということ。
中野:ああ、女性が働きに。そうですね。
荒川:あと、大阪や福岡は女の人が多いんです。仕事があるところに女性が集中する。飲食、販売業、サービス業。工場のあるところに男が集中する。
中野:工場地帯。
荒川:はい。そうですね。住むエリアで変わるんですよね。だからって、女子が茨城県に行ったからってモテモテになるわけでもないし、福岡に男が行ったからってモテモテになるわけではない。
(会場笑)
これも離婚が増えたんじゃなくて、日本人が元に戻ったような気がしてしょうがないんです。江戸時代などは離婚していました。
中野:そうですね。明治は実は特異的ですね。
荒川:明治から昭和の高度経済成長期までが、離婚しなさすぎという。今日はちょっと違うので、この話は掘り下げません。「増える一人暮らし」ということで、独身の人口の話では、2040年には一人暮らしの世帯が4割になります。さっきも言っていたように、昔は夫婦と子どもの標準世帯と言われていたのが今は23パーセントに下がっている。
中野:『サザエさん』が標準なわけではない。
荒川:『サザエさん』どころか、パパとママと子どもという家族構成が、もう23パーセントしかいなくなっている。
中野:4分の1を切っているんですね。
荒川:家族も終わる。これ、4象限にしてみました。ソロだけじゃないですよ。結婚している人も入れて、縦軸が独身か既婚か有配偶かという基軸で、横軸がソロ度が高いか低いか、1人でいたいか、みんなでいたいかというようなことです。ざっくりいうと、こういう分け方になるんですよ。
ソロ度が高い人って、ざっくりと日本で合わせて4割います。みんなと一緒にいたいという人が6割いるんですよ。縦軸でいうと、上の部分は独身と既婚も今は4-6です。それを細かく分けると、ガチソロというやつがいて、ガチソロは結婚意欲も低いし、むしろ1人の時間のほうがくつろげるみたいな人たち。生涯未婚だという人たちが20パーセント。
エセソロと書いてあるのは、今は独身なんですけれども、ゆくゆくは結婚する人たち。こっち(ノンソロ)にいく人たちが、今はソロだけどエセソロ。家族が大事で、よき父、よき母みたいな人たちがノンソロ。これが、一番パーセントが出ている4割。
ここにカゲソロと書いてあるのは結婚はしたんだけれども、本当は1人が好きだったりして、この人たちが実はガチソロとカゲソロを行ったり来たりして、離婚と再婚を繰り返す。ちょうど2割じゃないですか。全体の60パーセント、結婚したうちの2割。さっきの3分の1は離婚するというのはまさにこういうことで、ここを行ったり来たりする。
こうやって分けると、あとから理屈付けしたわけじゃなくて、けっこう数字合わせ的には合っているなと。
中野:これ、おもしろい図ですよね。要するに、人とうまくやっていくのが得意な人か、そうでもない人かという分け方、本質に迫るものだと思います。
もちろん、その得意不得意には生まれつきの要素もあるし、生まれたあとの要素もどちらもあるんですけれども、どっちもだいたいそんなもんだろうなと思います。こっち側(エセソロ、ノンソロ)は、2人でいても自分の領域をちゃんと守れて、バランスよく付き合える人たち。ガチとカゲの人たちというのは、人が側にいると不快に感じる。
(会場笑)
人に親切にするのもどちらかといえば苦手で、関係の初期にはがんばって親切にするけれども、ずっとそれを続けるのは負担になってしまうタイプですね。
荒川:生まれつきって変わらないものなんですか?
中野:生まれつきの要素と、後天的に育まれる要素、どっちもあります。後天的な要素は、ほぼ1歳半くらいまでで決まると考えられています。
(会場):おおー!
そうです。半年から1歳半。重要な時期があるんですよ。ある脳内物質レセプタの密度が決まる時期です。カギになるのは、養育者との関係です。この時期に適切な関係が築いていけないと、誰かがそばにいることがそう好きでないとか、あるいは逆に1人が好きなわけじゃないんだけど、過剰に誰かに近づこうとしてぎこちなくなり失敗するというケースが多くなりがち、という感じです。
荒川:昨今、未婚者が増えているのは、1歳半までにちゃんとやってない人が多かった(笑)。
中野:ちゃんとやってないって、親御さんを責めているみたいに聞こえちゃいますよ(笑)。いろいろな事情によって、養育者と子どもとの愛着関係にはバリエーションが生まれる。ソロが悪いと言っているわけじゃなく、1人のほうが向いた人格になりやすい人もいるということです。
荒川:そうですよね。個人が適応戦略を取ればいいんですよね。
中野:そう思います。
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