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【第3回】「盛り」サミット《MORI3.0》(全7記事)

北京育ちの静電場朔氏 × プーケット育ちのギャル電・まお氏が語った、女の子のファッションに見るビジュアルとコミュニケーションのかたち

2019年6月7日、スパイラルにて「『盛り』の誕生 ー女の子のビジュアルとテクノロジーの平成史ー 【第3回】『盛り』サミット《MORI 3.0》」が開催されました。平成の時代に現れた女の子たちが表現してきた、大人には理解できない不可解なビジュアル。90年代以降に発達したデジタルテクノロジーの力を得て、今なお変化し続けるビジュアルコミュニケーション「盛り」の変遷から、消費行動のカギを握る女の子たちの意識を探ります。第3回となる今回は、2010年代後半から始まった、SNSを通じて国境を越え、表現したい世界観でつながる《MORI 3.0》の時代に焦点を当て、最前線で活躍するゲストたちがディスカッションを行いました。本記事では、中国・北京出身の静電場朔氏とタイ・プーケット出身のまお氏が、それぞれの出身地と日本のファッションとの関わりについて語ったパートをお送りします。

日本の女子高生の制服に憧れていた

久保友香氏(以下、久保):みなさん、ありがとうございました。では今度は、今日のテーマの「ビジュアルのコミュニケーション」についてさらに深めていきたいと思います。

先ほど控え室で「それ、かわいいね」というような話でかなり盛り上がっていました。そのような感じでいきたいと思いますので、よろしくお願いします。

私は日常で「どんなメイクやファッションをしていたんですか?」といつも女性の方に会うたびに聞くのですが、そのような勢いで尋ねていきたいと思います。電さん(静電場朔氏)は中国の北京にいらっしゃるときから日本のメイクの話をしていたということですが、どういった感じだったのか、今日はお写真を持っていただいたのですが。

静電場朔氏(以下、静電場):中学時代は、日本のJKの制服がすごくかわいいと思っていて。JKの制服のファッションは友だちの間でもすごく人気なんです。普通にそうした格好をして、一緒にショッピングに行ったりしていました。

久保:制服は中国と違うんですか?

静電場:制服は自分で服を作る人に頼みます。このような服がほしいとお願いする。

久保:そうなんですね。(スライドを指して)これは制服なんですか?

静電場:これは運動服です。中国にいるときは、この中国の昭和時代っぽい運動服もよく流行っていました。

久保:そうなんですか。

静電場:(スライドを指して)これはユニクロのUTで、日本のお酒のロゴのTシャツだと。たぶん、10年くらい前の、昔の感じです。模様が実はどんな意味かわかっていなくて、ただデザインがかっこいいと思っていました。(スライドを指して)中国でロリータのモデルをやっていたときはこういった感じですね。

久保:ロリータファッションのブランドが中国でもあるんですか?

静電場:はい、これは中国のブランドです。

久保:そうなんですか。日本のものじゃなくてもあるんですね。

静電場:そうですね。10年前のデザインが、今とはぜんぜん違います。

情報源は日本のファッション雑誌

久保:どうやって、日本の情報を知っていたんですか?。

静電場:そうですね、10年前ぐらいから日本のファッションは中国の女の子たちの間でだんだん人気になって、やはりみんなかわいい服が着たいと。だんだんブランドが増えています。

今、ロリータブランドはたぶん中国のほうが多いです。だんだん店が立ち上がっていて、店がどんどん増えている状態でした。デザインはすごくクラシックですね。

久保:モデルさんをされていたんですね。

静電場:学生時代のアルバイトです(笑)。

久保:中国にいる頃からなさっていたんですね。そうした情報はどうやって手に入れていたんですか? ということで持ってきていただいた資料ですが、これは日本の雑誌なんですね。

静電場:日本の雑誌です。出身は北京です。北京で外国からのいろんな雑誌を手に入れるためのお店が学校の近くにありました。『Gothic & Lolita Bible』や『KERA』は、学生にとっては高いのですが、買っていました。

久保:へえ。じゃあ、当時買っていたのがこのへんだったんですね。他の雑誌もいろいろあるんですよね。

静電場:そうですね。やはりこうした原宿系が中国で翻訳されてありました。『Ray』という雑誌もあって。

久保:はいはいはい。そうですよね。『Ray』は中国で早くから?

静電場:そうですね。瑞麗(Rayli)という名前にしていますね。全部、中身は中国語。モデルさんはハシモトさんという方で、あのときは女子高生の中ですごく憧れだったんです。顔がすごくきれいな方で。

久保:へえ。そうなんですか。これは値段もそんなに高くないんですね。

静電場:『ViVi』もあります。

久保:これか。

静電場:こっちのは『Soup』。森ガールとかの。『ViVi』は昕薇(シンウェイ)という名前で、この表紙の方はリナさん。ややギャルな感じがすごい人気です。

久保:それとはまた違う路線で、こういったものも。

静電場:ナチュラル系な森ガール。

久保:そうかそうか。森ガールのとき。2010年、そうか。森ガールも「盛り」ですよね。

(会場笑)

森と言っても自然じゃないですよね。作り込んでいる自然だから「盛り」ですね。そうですか。こうしたものを見ていらっしゃって、他の国のいろんな雑誌もあったんですね。

雑誌からWeiboへ移り変わるトレンドの発信源

静電場:そうですね。ファッション雑誌はやはり日本のほうがあります。他の雑誌は、『VOGUE』や、コスメ、欧米系の雑誌は全部中国版がありますが、モデルさんが全部欧米人で。やはりなかなか距離が遠い感じですね。

久保:うん、ですね。あ、雑誌じゃないものもあります。

静電場:Weiboですね。今はみんな、雑誌ではなくてWeiboにいきます。Weiboは「東京ファッション」というアカウントが人気で、毎日原宿か渋谷のストリートスナップをアップデートしていて、すごい人気です。

久保:では、かなりみなさん参考にしているんですね。しかもこれ着物なんですね。

静電場:かなり派手な服のような。あ、『Zipper』も人気ですね。

久保:また雑誌に戻しちゃってすいません。ああ、そうなんですね。またかなりいろんなジャンルのものがあるんですね。

静電場:これは若い人の間で、女子高生人気なのは、『Zipper』か『KERA』か『ゴスロリ』か。OLや大学生の中では、やはり『Ray』とか『ViVi』が人気です。

久保:そうなんですね。

静電場:私が最初に買っているのは、『ゴスロリ』のこの第4刷。

久保:そうですか。

静電場:この中には、自分でも服を学んで作れるように……。

久保:ああ、型紙が入っている。

静電場:はい、ついていますから、その紙を持って服を作る方に頼めば同じ服が作れる。

久保:そうですか。『装苑』のように、作る人のための雑誌でもあるんですね。日本にはないものかもしれませんね。かわいいですよね。

静電場:かなり昔のものなどは、ほとんど原宿系の雑誌がなくなって、『Zipper』もなくなった。

久保:今では日本でもなくなっていますね。

中国と日本の伝統美術を活かして服をアレンジ

久保:それで、中国から日本にいらして。これらを経て(笑)。

静電場:そうです。(スライドを指して)これ、日本のブランドのearth music&ecologyとコラボレーションをやったときの服です。これは中国限定の服で、私がデザインを出して、アースから私のデザインを完成まで作りました。

久保:へえ、デザインもされているんですね。

静電場:これは、中国旅行のお土産かな? 中国のスカジャンのような感じで、ふだんなら万里の長城に登ったときは「私、万里の長城を登りました」という言葉を書いています。でもこれを友だちのブランドでは「私、万里の長城は登りませんでした」と。

(一同笑)

そう書いています。

久保:ネタ的なお洋服なんですね。

静電場:そうなんです。(スライドを指して)これは自分で、昔の中国の皇帝の龍の刺繍を、普通の服にデザインして仕上げたものです。

久保:今日のお帽子もそういったものなんですか?

静電場:帽子もそうですね。

久保:そうした伝統的なものをかなり取り入れていらっしゃるんですよね。

静電場:今好きなのは、日本と中国の昔の伝統美術です。服を新しい感じでアレンジすることが好きです。

久保:男女両方なんですね、そこは。

静電場:メンズの……これは日本の大工さんのですか? 建築の現場で働いている人の作業服を買いました。

久保:ああ、そうなんですね。これはそうした人向けに作られたものということですか?

静電場:ズボンがすごく好きです。

久保:着る人を問いますよね(笑)。

(一同笑)

そういったものが、電さんのInstagramを見ればたくさん載っているので。ありがとうございます。

おかっぱヘアーがタイの学校のルール

久保:次は、まおさんに持ってきていただいたお写真に移ります。すみません、準備を。タイの頃のお写真から見せていただきましょう。

ギャル電・まお氏(以下、まお):もともと、タイの学校では髪の毛をおかっぱに切らなきゃいけなくて、中学校1年生から高3までずっとおかっぱでいたんですよね。でも、やはり日本のギャルファッションがしたくて、日本に行くたびにいろんな日本の雑誌を買って持ってきたりはしていました。

先ほどの電さんと同じで、タイにも『Ray』や『ポップティーン』のタイ語版のものがあって、現地のモデルのページが半分くらいあったりしました。

あとは日本のモデルのページもあったりといった感じで、現地のものを買うとだいたい200円ぐらいで買えるんですが、日本から持ってくるものが一番参考になるので、それを見ながらやっていましたね。ふだんはこんな感じで学校に通っていました。

久保:次のお写真のこれは?

まお:これは髪が違うじゃないですか。ウィッグを大量に買ってあったんですよね。ウィッグで変身をして土日は遊びに行くなど、Facebookで自分が盛れている写真をアップロードして、海外のギャルに評価をしてもらう、というようなことをしていました。

久保:このあたりがそうなんですか。

まお:そうですね。これも益若つばさちゃんのマネをしたり。こっちの写真はウィッグを被ってメイクをしていた頃です。これは誰のマネかは忘れちゃったんですが、中3のときです。

中3くらいのときにやっていたメイクで、シュシュなども日本の雑誌の付録に付いてくるものがあって、それを付けて写真を撮っていたりしました。

久保:さっきのお写真と同じ頃ということですね。そうなんですね。

まお:制服から週末はこうなるというような(笑)。そうした活動をしていました。ファッションも同じような感じで、タイで買えるものと日本で買ってきたものを混ぜて着たりしました。

久保:ウィッグはタイで売っているんですか?

まお:ウィッグは日本で買うのと、中国で通販するのと2つを使っていましたね。日本で売っているものは、もともとは中国からきているんで、直接中国から買った方が安かったりしますから。

久保:日本にいると、そんなことを考えずに高いものを買っちゃっていますが、よく考えれば、そうなるわけですよね。

まお:そうなんですよ。日本で買うよりも値段的には半分以下くらいで買えたりもしましたね。

まお氏のギャル活遍歴

まお:あとは私は「COCOLULU(ココルル)」世代のギャルだったんで、COCOLULUの服を日本から買ってきたり。こっちの写真の帽子などは韓国で安く買った帽子ですよ。

久保:韓国に行ったときですか?

まお:韓国に行ったときに、ストリートで売っているやつで、偽物なんですが(笑)。そうしたものを買って被っていたり、アクセントマッチしてやっていました。帽子などは日本で買って、服はタイ、鞄は韓国で買った偽物だという(笑)。

久保:本当にいろんなところのものなんだ。通販もあるし、実際に買いに行ったりも……。

まお:実際に買いに行くのもあるし、という感じですかね。

久保:かなり旅行もしていたんですね。

まお:そうですね。日本に帰ってくるときに、トランジットで韓国にいったりすることもあって。

久保:その都度、買い集めて(笑)。

まお:買い集めて、ストリートで楽しむという感じでしたね。ファッションがちょっと日本のギャルとはかけ離れているとは思うんですけど。

久保:そうですか。行ったり来たりをしていたというお話ですが、日本に帰ってきたときのプリクラがすごくたくさんあるのですよね、それはほとんどタイに住んでいるときに?

まお:そうですね。タイに住んでいるときに撮ったもので、これはもう日本に帰ってきたときのプリクラですね。あ、こっちですね。日本に帰ってきたときに友だちと撮ったようなプリクラで。

久保:夏などの長い休みに帰ってきて、そのあいだに、すごくこういうことをされている。

まお:すごくギャル活をずっとしていて、というような。

久保:プリクラを撮って、こうした常に週末の格好。

まお:週末の格好。

久保:タイでも週末は必ずですよね。

まお:そうですね。Facebookに週に1回くらいは上げないと(笑)。

久保:街でしていたわけではなくて、家で写真を撮っていたんですよね。

まお:街でしていたときもあったんですが、やはりFacebook上のほうがいろんな人がいるんです。

死に絶えたかのように見えたギャル文化の復活

まお:私は日本のmixiやGREEなどは、日本のメールアドレスがないと入れなくて、コミュニティに属せなかったので。

海外のフランス人ギャルサーや、イタリア人といったように、ギャルに憧れている外国人たちとギャルサーをして、「盛れてんじゃん」「かわいい」というような、そうしたコメントをもらったりしていました。

久保:そうなんですね。タイにはお仲間はいなかった?

まお:タイでは1人か2人はいました。それこそ、タイの『ポップティーン』に載っている人など。

久保:へえ。まおさんが代表に選ばれたときがあったようですね。

まお:そうですね。日本人で世界一周をしているギャルという方がいて、その人が1つの国ごとにギャルに会う「ギャルmeets」っていうことをしていて、タイ代表のギャルmeetsに選ばれた(笑)。

久保:選ばれて(笑)。そうなんですよね。そういったところで他の国の代表とも。

まお:そうですね。名前がつながって「あの人知ってるよ」というような感じ。

久保:リアルなつながりはないんですね。

まお:リアルのつながりはないですね。SNS上のみですね。

久保:そうなんですか。これは?

まお:中3のときに日本に帰ってきて撮りました。

久保:これは最近ですね。

まお:これは最近ですね(笑)。これが最近、日本に来てからのファッションなんですが。

久保:それまでとまた違うんですよね。

まお:また、ネオギャルというギャルが、2012年くらいから2014年くらいまで続いていてそれに乗ったんですが、2016年くらいに1回ギャルが死んだんですよね。

そのときのファッションはかなりギャルみがなくなっちゃっていて、死んでいたんですが、2017年くらいからまた、髪色がすごく派手な人が渋谷の街に出てきて、私もまた復活して金になったというあたりがこの辺の写真なんですが。

久保:1回お休みがあったんですね。

まお:1回お休みしています(笑)。それで、これが最近の……かなり髪は渋谷の子たちも全体的に金髪になったりしているので、浮かなくはなってきましたね。2018年とか19年とか。まあ、こんな感じですね。

久保:このあたりはだいぶ最近ですね。

まお:もうだいぶ最近ですね。けっこう髪色は明るめにしていましたね。

ファッションに光り物をいれて“バイブス”を上げる

久保:そして、ついに本当に光るようになった。

まお:はい(笑)、ついにファッションに光り物を入れるようになりました。光り物があると写真が超盛れると思ったので、それからなにか写真を撮りたいというときは、自分が作った光り物を付けて撮ったりするようになりました。

「ちょっと今はこのバイブスだから、これを作ってみよう」というような感じで、百均で買ったボックスに穴を開けて、百均で買った光るイルミネーション入れて作ったものなど、随時いろんな物を作って写真を撮ったりもしています。(スライドを指して)これは友だちと撮った写真なんですが。

久保:光り物ですね。

まお:はい。光り物ですね。部屋を自分が作った光でライティング、照明を作ってやったりもして。

久保:これはまおさんのお部屋だったんですね。

まお:そうです。自分の部屋で。

久保:そうなんですか。

まお:後ろに光っているのが作った光り物なんです。あとは、やはりネオン管は盛れる、というような感じです。

久保:ああー。

まお:そんな感じなので、かなり光り物があるところで写真を撮ったりしていました。

久保:タイの頃の話をこの前初めてお聞きしたのですが、今も電子工作でいろいろと作っていらして、その原点としてタイでギャルを作るのはそう簡単じゃなかったので、タイでもいろんなところのものを寄せ集めて、ストリートのものを集めてDIYをしていたんだということを知りました。

まお:そうですね。つけま(つけまつげ)1個でも日本で買うと高いじゃないですか。日本円で1,200円くらいするものだと、高すぎて毎回つけてられないので、日本のもの+タイで買った現地のつけまをカスタマイズして付けていたり。

あとは服なども、タイのストリートで買えば600円ぐらいで買える服があったりして、そうしたものを裏返して着たり。そういうところから物作りの楽しさを知ったという感じです。

久保:一番安いものを世界中から集めてきて、手を加えてやるということをずっとやっていらしたんですよね。

まお:そうですね。

久保:さっき、電さんも作るという話でしたもんね。

静電場:そうですね。はい。

久保:やはり全部ビジュアルを手で作っていらっしゃるんですよね。

まお:作った方がバイブス上がるんで。

(一同笑)

久保:上がるわけですね(笑)。なるほど、ありがとうございます。

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