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Session1 資本主義に未来はあるのか?(全3記事)

家入一真氏「個の時代では、すべてが自己責任になってしまう」 ポスト資本主義社会を生き延びるための“幸せの価値基準”

2018年12月17日〜19日、石川県立音楽堂にて「Infinity Ventures Summit 2018 Winter Kanazawa」が開催されました。開幕のセッション「資本主義に未来はあるのか?」には、CAPMPFIREの家入一真氏、DMM.comの亀山敬司氏、スマートニュースの鈴木健氏、面白法人カヤックの柳澤大輔氏が登壇。ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平氏をモデレーターに、アカデミックの観点ではなく、実践者として考える「お金の未来」について語り合いました。本記事では、世界中で起こる国家対資本主義の対立構造などについて語り合った最後のパートをお送りします。

個が力を持つ時代とは、自己責任と断絶の時代でもある

家入一真氏(以下、家入):最近すごく思うんですけど、「個の時代」って言われるじゃないですか。テクノロジーによっていろんなものが民主化していって、個人でもクラウドファンディングやnoteなどを使ってフリーランスとして生きていくとか。クラウドワークスとかもそうかもしれないですね。個が力を持てる時代がやってきた。

これは非常にすばらしいことであると思う一方で、すべてが個の責任になっていく。そのなかでどうしても出てくるのが自己責任みたいな話と、もうひとつはやっぱり断絶だと思うんですよね。

これから先、孤独に苛まれる人がもっともっと増えていくと思っていて。今回のセッションも終始「お金」とか「資本主義」とかの経済の話だったんだけど、ちょいちょい幸福の話が入ってくるじゃないですか。これってもうセットで、切り離せない話になってきているのかなと思うんです。

孤独と向き合うとか、幸福であるにはどうしたらいいかみたいなものか。みんなが追い求めているGDPとか経済成長みたいな指標の中で、ある意味幸せの物差しみたいなのが共通化されて、同じ山のてっぺんを見れて、一緒にがんばれる時代っていうのはよかったと思うんですけど。今ってたぶん、幸せの価値基準がバラバラなんです。

ある人は「年収は高いほうが幸せだ」って思うんだろうし、でもある人は年収下がってでもいいから地方に移り住んで、夕方には仕事終わっているほうが幸せだっていう人もいるんだろうし。そういった幸せの価値基準自体がバラバラになってきているなかで、どう生きるのかっていうのは、これから生きる人たちの心を悩ませる問題じゃないかなって思う。

目の前の仕事できちんと稼げるようになってから言え

亀山敬司氏(以下、亀山):でも、このバラバラがいいよね。統一されてしまうとさ、つまんないよね。時間を求める人もいたり、お金を求める人もいたり、いいねを求める人とかいろいろあってもいいし。俺は今の混沌としている状況がけっこう好きなんだよね。

どっちか一本だとロクなことがない。トランプ側につくのかどっちにつくのかじゃなくて(笑)。あれもあり、これもありみたいなほうがなんとなく平和じゃない? 戦争も起きにくいしさ。

いろんな価値観がぶつかり合って、ああだこうだ言ってるうちは殴り合いしないからさ。なんかけっこう良い気がする。日本はとくにね。

家入:亀山さんって昔からそういう考え方でした? なんか「稼がないヤツはクソだ」とか思ってる時代とかは……。

亀山:ははは(笑)。昔からクソだとは思ってなく、「そのうち俺も稼ぐことに飽きるんだな」という予感はあったんだよ、20代からずっとね。欲望には限界があって、たぶんどっかで飽きてくるなぁみたいな。もともと欲しいものが少なかったのもあったんだけどね。

財産も下手に残すとロクなことねぇなみたいなのもあって。ただ、これを言うと、ウチの子会社の社長たちとかが勘違いして、「僕らも損得抜きでこんないいことやりました」とか言い出すわけよ。「いやいや、お前ら、30年早いから」みたいな。まだ会社の存続が危うい状態で、「稼いでもいないのに、何かっこいいことばっかり言ってんだ」みたいなのはあるよね。

そういった面で言うと、まずは「自分たちが自立してから次のこと考えよう」じゃないといけないと思う。最近学生とかで、なんかいいことばっかり言って、JICAに行って、DMM.Africaに面接に来て「アフリカ人のために何かしたいです」って人がいるんだけど。「いや、アフリカ事業部は稼げないとやってけないから、まず稼げよ」みたいな言い方になるパターンが多い。

同じように、ここにいるスタートアップの人たちはまだ10年早いから。とにかく今は「目の前の仕事で稼ぐべき」というのは思っていて。まぁ、将来自立できたら、ただ稼ぐだけじゃなくて、ちょっと歌って踊れるビジネスマンになったらどうかなっていう話かな。そんな感じです(笑)。はい。

山口揚平氏(以下、山口):含蓄のあるお言葉ですね。ありがとうございます、本当にすばらしいコンテンツです。

ネット業界の現在地は、オイルショック時代の日本と似ている

鈴木健氏(以下、鈴木):ちょっとガラッと話変えていいですか? せっかく業界の人が集まってるんでこういう話をしたいと思ってるんですけど。日本の今のインターネットの業界って、オイルショック前の日本の産業界みたいなのに近い感じがすごいするんですよね。

どういうことかというと、イラン=イラク戦争っていうのが当時起きて、いわゆるオイルショックみたいな危機が中東で起きた。石油がシャットダウンすると経済がいきなり影響を受けて、なんかもう「どうなっちゃうんだ?」ってみんなパニックになって、みんなトイレットペーパー買いに行くみたいなことが起きたわけですよね。

当時の経済界って、オイルショックをぜんぜん誰も予測してなくて、国際政治に対してものすごく無頓着だったんですよ。その後「またこんなことが起きたら大変だ」「石油が切られちゃったら大変だ」ってなった。

それで産業界はどうしたかっていうと、シンクタンクを作って国際政治を研究したり、それから中山素平さんという人が国際大学というのを作って、とにかく国際関係論をちゃんと研究しないと日本の経済・産業自体がもはや成立しないんだってなったんですよね。僕はそれに近いものを感じているんですね。

今、世界で何が起きてるかっていうと、要は、国家対資本主義の対決みたいになっちゃってるんですよね。

日本だとあんまりリアリティないんだけれども、フランスで今起きているルノーとカルロス・ゴーンさんの話って、もともとはフランス国内の格差問題によって法律が変わって、議決権15パーセントしか持ってなかったルノーに対して、フランス政府が持ってたシェアが30パーセント分の議決権を持つようになっちゃったわけですよね。

それによって、マクロン政権がルノーやカルロス・ゴーンに対して「日産と統合させなさい」となって、最初はそれは拒否していたんだけど、最後はゴーンさんがそっちの方向に走ったと。それに対して日本側がブロックをしようとして起きたと言われている。どこまで本当かわかりませんが。

国よりもGDPの多い企業がある世界で

鈴木:それから経済産業省とJIC(産業革新投資機構)の田中正明さんの対決の問題とかも起きてるじゃない。これは完全に国家のロジックと資本主義のロジック、もしくは国家の背景にある民主主義とのロジックというものの対立構造がものすごい強くなっているんです。

米中関係もそうですよ。これが日本のインターネット産業に対してものすごく強い影響を与えるのって、時間の問題なんじゃないかなという気がしています。

ちょっとゆるふわな話をさっきしたんですけれども、超現実主義的に言うと、国家対資本主義っていうのが世界中で起きていて、日本でもたぶん、ここ5年ぐらいの間に大きなテーマになってくるんじゃないかなっていう気がするんですよね。

山口:そうですね、トヨタはそれに巻き込まれそうになっています。だいたい世界のGDPのトップ200を見ると、1位がアメリカ、2位が中国、3位が日本なんですけども、3分の1ぐらいは企業名が入ってくるんです。例えば14位にウォルマートとかが入ってきたりとか、シェルが入ってきたりとか、トヨタが入ってきたりと。

そうすると、国家対資本主義っていう意味でも、この経済的に大きな共同体が、実は企業のほうに寄ってくる。そうすると、今の法定通貨はどうなるのか。もしかしたらウォルマートとかトヨタみたいな企業が発行するお金のほうが大きいんじゃないのと。

それに対して、今最後の戦いをしている国家が、なんとかその資本主義の株を押さえることによって経済界を押さえようとしている、そんなふうにも見えてくるわけですね。

柳澤大輔氏(以下、柳澤):だから、この資本主義というものを上場企業が考えなきゃいけないんだと思うんですよ。売上利益という指標は重要だし、これ自体を否定することはおそらくできないと思う。だから、流通する方法で何か工夫できないか。なんとなく変わるんじゃないかなっていうことなんですけどね、おそらく。

亀山:やっぱここは非上場の俺の出番だね。だからみんな、もう上場やめたほうがいいよね。今上場目指してるヤツいると思うけど。

(会場笑)

柳澤:ここ(IVS)にいる人はみなさん目指してるから。

亀山:資本主義の枠にはめられちゃうからね。

山口:さっきは「がんばれ」って、最初に……。

亀山:ははは、俺はてきとうだから(笑)。

(会場笑)

誰もが「もっとかっこよくなろう」と思えれば、世界はもっとマシになる

山口:お前らはまずがんばれ、10年はがんばれってことでしょうか?

亀山:いや、まぁ、なんかいろいろと難しいこと言ってきたけど。ぶっちゃけ資本主義とか世界経済とか、そんなもの俺たちにはあんまり関係ないじゃない。フランスのルノーの問題とかもね。

(会場笑)

ただそれよりも、「何がかっこいいか?」だけだと思うんだよね。

金持ってるのもかっこいいけど、それだけがかっこいいのかってことだよ。今時のハリウッド女優って、リムジンじゃなくてエコカーでレッドカーペットの前につけたりするじゃない。

そんな時にプライベートジェット乗ってくるのがいいのか、自転車でやってくるのがいいのか。なんでもいいんだけど、何が自分たちの中でかっこいいのかを考えて、それを目指せばいいかなっていう感じかな。

それで、かっこよくなれば、自然にモテるし、モテたらウハウハだし、いいことはいっぱいあるわけよ。金だけ持って、最後寂しい孤独な人生を送るより、みんなに「わぁ、ステキー」とか言われて生きたいじゃない(笑)。せいぜい生きても80、90才までなんだから。

なんで、みんなが一人ひとりそう考えたら、かっこいいヤツに投票して、かっこいいヤツの企業に投資するし、かっこいいとか面白いところが良くなる。そうしたら、勝手にそんなかっこいい社会になるんじゃないかなぁみたいな。

それが、「自分がかっこよくなくても、世間はどうせかっこ悪いんだから、俺もかっこ悪くたって気にしねぇや」って思ってるやつが多くて、開き直ってるからおかしいんだよ。

みんなが、ちょっとでもかっこよくなろうとか思えばさ、ちょっとはマシな世界になるんじゃないかなみたいな。ちょっと熱くなっちゃったね(笑)。すいません。

日本の少子化はDMM.comが原因?

山口:いえいえ、本質だと思います。もう時間もないと思うんですけど、みなさんから何か一言あれば。とくに今日は、若い投資家や起業家も来ていると思います。すごく実績上げられてるみなさんなので、何かメッセージ的なことを。もう今までの話まったく関係ない話でもいいので、どなたでも。

家入:このセッションの最中に思っていたんですけど、「少子化だ、少子化だ」ってずっと言ってるなかで、少子化をいちばん加速させたのってこの人(亀山氏)なんじゃないかと思ってて……。

亀山:すいません、私のせいです。はっはっは(笑)。

(会場笑)

家入:これ、いつ言おうかずーっと考えてたら最後になっちゃった。

亀山:はっはっはっ(笑)。そうだね。みんな、もうDMM見ないで、セックスしよう。

(会場笑)

山口:いろいろ話をしてきましたが、最後はこれですか(笑)。

亀山:これが最後の一言じゃ悲しいからさ、やっぱり。誰か最後にかっこいいこと言ってよ。これで終わるとさ、この場が締まらないじゃない(笑)。

山口:じゃあアラフォー世代として最後に一言。後輩の(鈴木)健さんのかっこいいところは、アカデミックで成功して、かつビジネスでも成功したこと。これがなかなかないんですよ。思想家かつ起業家っていう、かっこいいモデルだと思います。

亀山:あら、ここで時間になりましたね(笑)。じゃあ最後は「みんな、やっぱり少子化対策のためにもセックスして良い社会にしましょう」ということで。

(会場笑)

家入:さすがですね(笑)。

山口:みなさん、ありがとうございました、盛大な拍手をお願いいたします。

(会場拍手)

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