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「グローバル・政治経済」における創造的破壊とは?(全4記事)

政府が言えない「全世代型社会保障」の本当の意味 日本のリスクと若者が備えるべきこと

2018年12月9日、多様な分野におけるリーダーが一堂に会する「G1カレッジ2018」が開催されました。第3部分科会「『グローバル・政治経済』における創造的破壊とは?」には、五常・アンド・カンパニー株式会社代表の慎泰俊氏、衆議院議員の細野豪志氏、参議院議員の森まさこ氏、東京大学・慶應義塾大学教授の鈴木寛氏が登壇。本パートでは、日本が置かれている危機的な状況と、その中でできること、考えるべきことについて語りました。

「東京政府」が破壊される

鈴木寛氏(以下、鈴木):はい。(ボードを出して)パネラーのみなさん方にだけ負荷をかけるのは申し訳ないので、私も破壊的創造によって壊されると思うものを出します。

これから破壊されるのは「東京政府」。「千代田政府」と言ってもいいと思います。要するに、永田町も霞が関も千代田区です。そこで国のガバナンスをいろいろとやっていますが、それが破壊されるだろうなと私は思います。だから(政治家を)辞めたわけですけれども(笑)。

僕は消費税を上げる時に「3党フレームワーク」を作りました。社会保障国民会議といって、そのとき僕は政調副会長だったんですね。2019年4月から、やっとその合意が実現されて(消費税が)上がるには上がりますが、やっぱりこの間のタイムラグはすごく痛い。

3党で社会保障国民会議を作った時にあれがワークしていれば、僕はなんとか復元できたかもしれない。それが結局、この間議論できなかったのは非常に残念だと思っています。

今の国債残高、要するに我が国の債務残高は1千兆円を超えています。今朝、調べてきましたが、10年ものの国債金利は今、0.55パーセントでした。これが1パーセント以内に収まっているから予算を組めているわけです。

この中で法学部の人はいるかな? 民法・商法で、もしも当事者がお金の貸し借りで約束をしていなかったら、それはいくらになるでしょう。民法の場合は何パーセントになるでしょうか。法学部の人、知っていますか? 民法だと5パーセント、商法だと6パーセントです。

これが2020年から変わって3パーセントになる。だけど、変わったとしても3パーセント。3パーセントって普通の金利なんです。でも、もしも国債金利が3パーセントになったら、毎年30兆円の利払いをすることになります。

東京オリンピック・大阪万博後に訪れる危機

鈴木:仮に1パーセント上がっても、今だいたい1パーセント以下、0.5〜1パーセントですが、これが2パーセントになったら10兆円です。これがどのくらいかと言うと、文部科学省の予算と防衛省の予算を足したら10兆円です。

ということは、国防と教育という、我が国の極めて重要な政策が、金利が普通に近づいただけで……普通というのは3パーセントですからね。1パーセント上がって普通に近づいただけで2省(分の予算が)飛ぶ。2パーセント上がったら20兆円飛ぶ。

要するに、今の医療予算は42兆円ですが、3分の1は国庫が補填しているんです。3パーセントの金利になったら、医療・教育・国防という、国家が提供しなければいけないベースの分の予算がポーンと飛びます。それぐらい危うい、vulnerable(脆弱)な壊れやすい構造の上に我が国は立っている。

それについて、この間に政治に携わったみなさん、あるいは経済……そういう意味では大手町も千代田区ですね。この銀行の人たち・生命保険会社の方も含めて、千代田区の人たちが一生懸命考えてきても、結局らちが明かない。これはどうも先が見えない。そういうことです。

僕は、その問題はもう絶対にサステイナブルではないと思っています。東京オリンピックが終わった2年後に、相当なクライシスが来ると思っていました。

だけど、世耕弘成さんと川竹絢子さんのおかげで、今回万博が取れましたね。(川竹さんは)京都大学医学部の5年生です。それを支える「inochi学生・未来フォーラム」のおかげで、2025年まではなんとか延期できたかもしれない。

とはいえ、5年postpone(後回し)、延期できただけで、2027年ぐらいには相当な問題が顕在化します。(会場に向かって)2027年でも君らはまだまだ若いよね。そういう時代だと思います。

「ベーシックソーシャルサービス」という概念

鈴木:僕は、ソリューションは結局徳政令しかないと思っています。この国は75年に1回徳政令をやっています。明治維新の時は、江戸幕府に全部の借金を押し付けて、江戸幕府ごとぶっ飛ばしてチャラにしました。

第2次世界大戦の時は、軍票(軍隊が使う代用貨幣)を刷りまくりました。そして第2次世界大戦が終わって、日本国憲法を作って憲法9条とともに軍票をチャラにしました。たぶんそういうことを起こさないといけない。

よく僕たちは「借金を君たちの世代に負わさない」と言うけど、その手法はある意味、今の大人たちに(借金を)全部抱かせて、一緒に吹き飛ばすという。だから、これから金融や財政を本当に勉強してください。ここにいろいろな創造のネタがある。

要するに、いま円建でやっているわけで……時間がないので、この続きは「すずかんゼミ」に来てください。

今日はビデオを撮っているから大きなことは言えないけれど、例えば円建・ドル建の、今の基軸通貨で世の中に流通している通貨建の債券が暴落したとする。でも、ブロックチェーンや仮想通貨建のほうは関係ない。ファイアウォールですね。

千代田区が、あるいはワシントン・ロンドン・パリが作り出してきたパラダイムは、Disrupt(破壊)される。

そこでファイアウォールを作って、逆にこちら側で新しい交換通貨やバリュー、あるいは新しい社会保障(を作り出す)。僕は今、「ベーシックインカム」ではなく、「ベーシックソーシャルサービス」という概念を出しています。

そういったことが、みなさんはものすごくクリエイティブに創造できると思っていて。心配しなくても、千代田区政府・ワシントン政府・モスクワ政府・パリ政府・ロンドン政府、あるいはブリュッセルのEUのフレームワークも、相当破壊されると思います。

まさにみなさんが新しい志士になれるチャンスです。だから、今からいろいろ考えておいてくださいというのが僕のメッセージです。

国境や壁のない世界は本当にやってくるのか

鈴木:あともう1ラウンドだけ回したいです。パネリストの間で、お互いに「慎さん、あれはどういう話なの?」「細野さん、どういう時にそんなこと考えたの?」「森さん、これどうするの?」という話はありますか。

(一同笑)

なにか付け加えることがあれば。

慎泰俊氏(以下、慎):1つだけ。インターネットがやってきた時、あれはハッカーの理想を体現していたんですよね。「これからは政府に関係なく、みんながコミュニケーションできる時代がやってくる」と。今はぜんぜん違います。中には国の中で閉じてしまうようなネットも生まれてきました。

ブロックチェーン、ビットコインもそうです。ビットコインも同様のハッカーの理想から生まれたものでしたが、現状、国家は強いので、それが既存の貨幣の代替物になろうとしたらコントロールしてくると思います。いくらテクノロジー企業がいろんなものを持っていて、お金や技術があっても、国家のような暴力装置は持っていないんです。

なので、ビットコインとかもお遊びやちょっとしたギャンブルでやっているのならいいんですけれど、それが本当に社会を変えるタイミングに差しかかったら、警察権力と軍隊を持っている国の介入は避けようがない。なので、ボーダーやウォールがない世界が本当にやってくるのだろうかというと、私は極めて悲観的です。

細野豪志氏(以下、細野):私はちょっとすずかん(鈴木寛氏)さんの話についてひと言。やっぱり2つ考えておかないといけないなと思っています。

国家としては「財政破綻します」「徳政令出します」なんてことは言えないので、そうならない努力をするんです。みなさんが考えたほうがいいのは……いま政府が、「全世代型社会保障」と言っていますよね。あれの意味はわかりますか?

財政破綻をどう防ぎ、起きてしまった時にどう生きていくか

細野:言いにくいことですが、本当は「高齢者のみなさんに負担してもらって、若い人たちの社会保障を充実しましょう」ということなんです。ただ、「高齢者のみなさんは負担だけですよ」とは言えないので「若い人も」という言い方をしているんですね。

もちろん、高齢者の中にも非常に苦しい立場の人はいるけど、豊かな高齢者が非常に多い。個人の家庭で言うと、孫などにかなり所得の移転が進んでいます。みなさんの中にも、もらっている人がいるかもしれないけど、それは進んでいます。

ただ、そういうおじいちゃん・おばあちゃん・お父さん・お母さんがいない若い世代は非常に厳しいので、そこの社会保障をどうしていくか。

そのときに、「その財源は高齢者のお金持ちの人にお願いしましょうね」ということをどう説明するかは大きなテーマになっています。みなさん、そこははっきりと認識したほうがいいです。

私の世代は「まぁ、しょうがないな」と思っています。親の世代がちょうど70代後半から80代だから。この世代がしっかりカバーしてもらうのはすごくメリットがある。

ただ、みなさんはその孫の世代になるから、「おじいちゃんおばあちゃんのほうが豊かだよね」となる。その世代のみなさんがこの状況をどう変えて、財政破綻をどう防ぐかというのは、1つのアプローチとして一緒に考えたいなと思います。

すずかんさんは外にいるから自由に発言できるので、先ほど年次も含めてかなり明確におっしゃいました。その上でそういうこと(政府が崩壊すること)がないように我々もがんばるけれど、そうなってしまうリスクがないとは言わない。

そうなったときにどうサバイブして、自分の立ち位置を守って確立していくのかということを、みなさんは考えてもいいと思います。

若い人は安心していい……万が一そういうことがあったとしても安心していいと思うのは、そのあといくらでもいろんなことができるからね。でも、人生後半で持っていた資産が全部飛ぶことは、一番悲惨なんです。

みなさんはそういう世代ではないので、そういうことがあった場合についても、そのあと自分たちでどう生きていくか、日本という国として切り拓いていくか。もしくはそれを超えてみなさんがどう行動していくのか。この2つを考えていくといいのかなという気がしました。

若者の負担を減らすには、政治に若者の意見を反映させるべき

森まさこ氏(以下、森):私もそれについてちょっと付言します。先ほど人口構造で世界人口の円グラフの構造を話しました。「若者」対「高齢者」という人口構造で考えると、今は急激に人口全体が減少していて、我が国の場合は若者の数が減って、高齢者の数が増えているんですね。

わかりやすく言うと、私や細野さんの世代は高齢者をだいたい2.5人で1人背負う、騎馬戦方式で1人の高齢者の面倒をみるようになっています。みなさんの世代になると1対1になり、肩車方式で1人につき1人のおじいちゃんかおばあちゃんを背負っていかなければなりません。

働く世代・生産年齢の人口は、我々の世代もみんな「きつい」と言っています。税金・社会保障の負担がきつく、働いた中で出していかなきゃならない。ですが、みなさんの世代はその「きつさ」の3倍を背負っていかなければならない。我々政治家は、それを背負わせたくないと思ってがんばっております。

そこで問題は、若い人たちがどれだけ政治に関心を持って……このルームの方は、関心を持っているからここに来てくれたのだと思います。しかし、選挙に行く若者の割合は非常に少ないわけです。政治を自分たちで動かしていく、自分たちの意見を反映させるということを、ぜひ広めていただきたいなと思います。

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