2024.10.10
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小泉進次郎氏(以下、小泉):今から少し、この「人生100年時代」がなにか、我々が考えていることはなにかについてお話しします。お手元にお配りした「レールからの解放」を見ていただきたいと思います。
年表に書いた自民党の中の約30人、私と同世代の議員たちと一緒に、これからの社会保障改革を含めて、日本の構造的な改革の各論から入る前に、まずは「将来どんな世の中を作りたいか」という総論から入ろうと思いました。
その総論を描くときには、あえて財政的な制約は取っ払って、「とにかくこういう社会を作ろう」というところから入った上で、そのあとに各論へ入りました。各論から入ると、必ずぶつかってしまうんですよ。そこで生み出した1つのメッセージが、この「レールからの解放」です。
これはまさに我々のバイブルのようなものです。読ませていただきますので、目で追っていただければと思います。
レールからの解放。
ー22世紀へ、人口減少を強みに変える新たな社会モデルを目指して。ー
2020年以降を「日本の第二創業期」と捉え、戦後続いてきたこの国のかたちを創りなおす。それは「人口減少」という確実な未来の中でも、日本が成長していくために、必要不可欠な変化である。
これまで日本社会は、一本道の「レール」を走り抜くような生き方を求めてきた。受験に始まり、新卒での就職、毎日休みなく働き続け、結婚して子どもを持ち、定年後は余暇を過ごすー「20年学び、40年働き、20年休む」という人生こそが普通で幸せな生き方だ、と。
それに基づき、終身雇用慣行や国民皆保険・皆年金などが生まれ、これまでは実際によく機能してきた。戦後日本が一丸となって努力し、ゼロから奇跡的な飛躍を遂げ、今日のような豊かさを持てたのは、そのような日本型経済モデルの賜物である。
しかし、人口減少による少子高齢化、さらに「人生100年」生きていくことが当たり前になる未来に、もはや戦後のやり方は通用しない。レールによる保障は、財政的に維持できないばかりでなく、私たちが望む生き方とズレが生じてきているのではないか。
「一度レールから外れてしまうとやり直しがきかない」。そんな恐れから小さなチャレンジにも踏み出せない。価値観が多様化しているにも関わらず、人生の横並びばかりを意識し、自分らしい選択ができない。かつて幸せになるために作られたレールが今、この国の閉塞感につながっている。
政治がその「レール」をぶっ壊していく。もっと自由に生きていける日本を創るために。新卒や定年なんて関係ない。「65歳からは高齢者」なんてもうやめよう。現役世代の定義そのものから変えていく。
100年を生きる時代だ。いろんな生き方、いろんな選択肢がある。10代のうちから仕事や起業という道もあれば、大学卒業後すぐに就職しないという選択もある。転職を重ねるのも、学び直しをするのも当たり前。いつだって子育てや家族のケアを最優先できる。何かに失敗したとしても、何度でもチャレンジできる。
学びも仕事も余暇も、年齢で決められるのではなく、それぞれが自分の価値観とタイミングで選べる未来へ。政治が用意した一つの生き方に個人が合わせるのではなく、個人それぞれの生き方に政治が合わせていく。そうすればきっと、100年の人生も幸せに生きていける。
それは同時に、働き方・生き方・教育の位置づけ、そして社会保障を見直すことにつながる。真に困った人を助ける全世代に対する安心の基盤の再構築は、小さなチャレンジや新しい人生の選択の支えになる。子育て世代の負担を減らし、現役世代を増やしていくことで、日本社会全体の生産性を高め、人口減少しても持続可能な社会保障になる。
簡単なことではない。しかし、終戦直後、敷かれたレールも無い中で、一人ひとりが挑戦を続け、世界に誇る唯一無二の社会モデルを確立したのが日本という国である。むしろ先人たちが遺した豊富な資産と、日々進化する新しい技術がある今、できないことは何もない。人口減少さえも強みに変える、22世紀を見据えた新しい社会モデルを、私たちの世代で創っていきたい。
これが「レールからの解放」です。まず我々の世代の思いとして、このメッセージを作りました。人生100年型の国づくりに世界で初めて挑戦をしているのが、人生100年国家・日本です。
そして、いかに今の国のかたちが戦後と違うかを示したものを、みなさんのお手元に1枚お配りしました。これはわかりやすいと思います。
ちなみに、この「第二創業期」という言葉を、なぜ「レールからの解放」でも使ったかというと、日本を会社、企業だと捉えてみたんです。戦後の第一創業期の時のビジネスモデルを反映して、いわばベンチャーが大企業にまでなるというサクセスストーリーを描いたけれど、これからのビジネスのあり方は、まったく新しいかたちになる。
つまり、「第二創業期になるぐらいの思いでいないと、これからはいけないね」ということで、我々の中では「第二創業期」という言葉を使い、1945年からを「第一創業期」と置きました。
(スライドを指して)これを見ていただくと、いかに国のかたちが変わったかがよくわかると思います。左が第一創業期、右が第二創業期で見ていくと、出発点はもう明らかです。敗戦による焼け野原の第一創業期が、今の豊富なストックと高度な技術や産業の基盤になりました。
そして経済のあり方も、それを後押しする技術革命の時代になってきました。とにかく製造業のキャッチアップをしてきた第一創業期でしたが、今ではトヨタとソフトバンクが握手をしています。
製造業である自動車産業が、走るスマートフォンをどうやって生み出していくかを考えているように、産業の構造自体が変わってきている。
平均寿命が一番わかりやすい事例だと思います。(織田)信長じゃないけれど、今から約70年前の日本人の平均寿命は、この時点でも50歳でした。それが、2020年では(男性が)81歳・(女性が)88歳。30年長生きするようになりました。
人口構造も、毎年人口が増えていく「人口ボーナス」の第一創業期から、毎年人口が減っていく「人口オーナス」の時代(に変化しました)。
人生設計のあり方も、「標準モデル」と言われるように、「だいたいこのレールを行けば、ある程度の人生設計ができますよ」という一直線のレール型から、一人ひとりの多様な生き方がある網状のネット型になりました。
雇用のあり方も、これまでは終身雇用が一般的でした。ですがこれからは、転職も含めて、副業・兼業を含めた多様な働き方がある。フリーランスもある。
社会保障も、世代間の助け合いで、高齢者への給付が中心のあり方から、年齢を問わず真に困っている人に届けることができる社会保障をいかにしてやっていくか。全世代への社会保障のあり方を考えてみる時代になりました。
教育も、工場のラインで働くような、平均的で質の高い人材を輩出していくあり方ではなくて、まさにクリエイティビティを発揮するような、多様性のある人材を育て、いつでも学び直しができるような教育の改革がこれから必要とされます。
地方のあり方も、田中角栄さんに代表されるように、「均衡ある国土の発展」が第一創業期のあり方でした。これからは「均衡ある」ではなく「特色ある国土の発展」「特色ある地域のあり方」を模索していくようになります。
日本のかたちは、70年の間にこれだけ変わりました。これが、第一創業期・第二創業期の大きなフレームワークの違いです。
社会保障改革を新しいステージに変えなければいけないということで、今はどういうステージかというと、大きく分けて3つに整理しています。
第1ステージは昭和の時代。この時代に生み出された代表的なものが「皆保険」です。これは今、我々の社会保障を考える中でも、本当に先人のみなさんに感謝しなければいけない。誰もがいつでもどこでも医療サービスを受けることができる、この柱を作ってくれたのが、まさに昭和の時代でした。
第2ステージは平成。この30年間は、平成元年に消費税が導入されたことからもわかるとおり、高齢化と人口構造が変わってきた中で、いかに社会保障を回していくか。消費税の導入も含めて、給付と負担を模索した時代です。この模索は、今でもまだ続いていると思います。
そして第3ステージが、これから。この第3ステージにやるべきことは、「人生80年型の設計を、どうやって人生100年型に変えていくか」です。
我々が今、「皆保険」という今の日本の社会保障の枠組みと足腰を作ってくれたことを昭和の先人に感謝しているように、これから我々の世代で、将来の日本人が「あの時に人生100年の基盤を作ってくれたことに感謝したい」と言えるような時代にしなければいけない。それがこの第3ステージへの思いです。
今のことをいったん整理すると、これからの人生100年時代の国づくりは、社会保障改革抜きには語れません。これからこの社会保障を、第3のステージに運んでいく必要があります。
そして、その第3のステージでは、多様な時代に合わせて一人ひとりが選択可能とするような制度設計が必要なのではないか。
今までの社会保障改革はだいたい二者択一で、給付をカットするか、負担を増すか。そうやって社会保障をファイナンスさせていくのが、従来の考え方でした。
最近は政策を考える際にも「ナッジ(相手の自発性を促す)」という考えを活用していますが、これからは一人ひとりの行動の前向きな変化を促していくようなさまざまな仕掛けを、いろんな政策にも入れていかなければいけない。それが行動の変化を生みます。こういったことを大切にして、その考え方を入れていくことが大事です。
つまり、第3のステージとは、「社会保障改革」だけではなく、まちづくりのあり方や教育のあり方なども含めて、社会保障にとらわれずに経済社会の構造全体の歯車を回せるように変えていくことです。それが「人生100年時代の国づくり」という考え方です。
そして、その時代に大切なのは、働き方も新たなステージに向かわせることです。これも合わせて、第1・第2・第3という3つのステージで考えていくと、まず第1ステージに昭和の働き方がありました。
私の世代ではもう違うと思いますけれど、「企業戦士」と言われる働き方、「モーレツ社員」と言われるような時代だったと思います。安宅さんは今でもそうかもしれませんね。
そして、今(第2ステージ)は「もうそういう働き方ではないよね」「一人ひとり違っていいよね」というかたちで、働き方改革が進められています。
じゃあ、働き方改革のその先(第3ステージ)は何なのか。働き方改革のその先にあるのは、(スライドを指して)「人生100年時代の『生き方(行き方)』改革」とも言えるようなものだと思います。
この生き方に、カッコで「(行き方)」としているのは、「働き方とは」「働くとはなにか」という、今まであまり問うことがなかったような、基本的な概念を問い直していく時代が人生100年時代だからです。
その時に「働く」意味をもう一度日本に考えさせてくれると私が思っているのは、小林一三さんです。宝塚歌劇団を作り、阪急を設立し、今の住宅ローンを作ったのも小林一三さんです。
その小林一三さんは、「私の行き方」ということを言っていました。小林一三さんは、未来に「向かって行く」のが行き方だから、「行き方」という言葉を使っています。
小林一三さんは、社員に対する人生最後のスピーチで「働くとはどういうことか」を語っています。あとで時間があれば、それも紹介したいと思います。つまり「こういう時代に行きますよ」ということです。
そして「人生100年時代」と大きく関係する「第四次産業革命」というキーワード。この2つの言葉は、日経新聞では毎日見ますね。そしていろんなところでも使われています。そうは言っても、「人生100年時代」「第四次産業革命」は、身近なこととしては考えられない方が大多数だと思います。
だけど、その2つのキーワードは世界共通です。これを自分ごととして考えられる人がいかに増えるかが、これから日本の未来を形作っていくには大事なことです。
私なりに「人生100年時代」「第四次産業革命」を日本流に言うとしたら、「もしあなたが100年生きるとしたら、これからどういう生き方を考えますか?」と同義語だと思っています。今日この機会に、もし自分が100年生きるならどうするかを考えるきっかけになればと思います。
「年金リーフレット印刷忘れ、コピー中」ということで、あとでみなさんにコピー忘れのものが配られると思います。
(会場笑)
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