2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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佐々木俊尚氏(以下、佐々木):ニュースアプリの「スマートニュース」のCEOをやっている鈴木健氏は、会社の社長であり、同時に社会学者であるという人なんですが、『なめらかな社会とその敵』という非常にすばらしい名著を、3年か4年ぐらい前に勁草書房から世に送り出しています。
竹内知成氏(以下、竹内):あれ、めちゃくちゃ難しいですよね。
佐々木:めちゃくちゃ難しいです。関数がいっぱい出てくる社会学の本という。例えば投票をするときに、我々が与党に入れるのか野党に入れるのかを、0か100で考えなければならないのはおかしいんじゃないかと。どちらにも多少入れたいところもあるし、だめなところもあるよね、と。
だったら、自分の票を1票ではなく10票に分ける。10パーセントずつに分けて、その票をいろいろなところへ分散して入れる。そういうシステムがもはやテクノロジーで可能になっていると。彼はそういうことを言っているんですよね。
ある意味でテクノロジーというのは、今まではきっぱり2つに分けなければいけないもの、多数決で決めなければいけない民主主義のようなものでした。(税金や寄付など)1回お金を払ったものは、それがどこで回っているのかがわからないし、全部がブラックボックスです。そういうものに、徐々にグレーのゾーンを増やしていく。0か100かではなくて、30と70、60と40というようにうまく分けたり、今まで見えなかったブラックボックス化されたものを、だんだん見えるようにしていくとか。
そういうことが、実は技術によって可能になってきているという認識は、けっこう重要なんじゃないかなと。ITに慣れていない人は、どうしても「テクノロジーは人を不幸にする」とか、余計なことを言いたくなるんだけれども、ブロックチェーン自体にそうじゃないところもちゃんとあってほしいな、と個人的には思いますよね。
竹内:社会はだんだんなめらかになっていって、今こんがらがっていることをシンプルにすることと、我々がもっと世界が複雑だということを認めて、それを本当に秩序のあるかたちで進めていけるのがテクノロジーなのかなと。これから10年というスパンでそういう世界が訪れる。そんな期待を込めたいなと思います。
佐々木:そうですよね。最後にお一人ずつ、今日しゃべっていて、どんな感想を持ちましたかというのを一言ずつお願いします。じゃあ、深山さん。
深山周作氏(以下、深山):今日はお時間をいただき、ありがとうございました。すごく楽しい時間だったなというのとともに、けっこう質問がおもしろいなと思っていて。
佐々木:(質問に)答えてもいいですよ。
深山:そうですね(笑)。じゃあ、よく言われることで、すごく正直な答えをさせていただくと、わりとはっきりするなと思うので。「ブロックチェーンをPR的に使っている気がします」という人もいるんですけれど(笑)、これに答えると、「けっこう、そう」というのが、正直今はあります。
とりあえず今はわかりやすい使い方をしながら、目指すべき方向について課題が蓄積されていくので、それを1個ずつ乗り越えていくというところです。ブロックチェーンがほかの技術と大きく違うのは、アカデミックな動きから全然入っていないというところです。
インターネットなどは、完全にアカデミックとか軍事領域なんですけれども、(ブロックチェーンは)そういったところから入っていないので、すごく未成熟なまま世に出てしまっている技術だなと思っています。
なので、民間の事業者がそれをトライ&エラーで試しながら、アカデミックな分野の人たちとやって、資金を投じて、分散的に徐々にいろいろなところで試されていっていると思います。
ただ、現時点で利益はPRすることでしか得られないので、PRしながら若干株価を上げて、資産を注入できるようにしながら、現実と戦ってブロックチェーンを広げようとしています。なので、そう(PR的に使っていると)思われても、一緒になって進められたらなと思っています。かなり正直に言ってしまいました。以上です。
佐々木:ありがとうございます。
(会場拍手)
竹内:ありがとうございます。自分自身にも勉強になったし、素敵な時間だったなと思います。個人的には、2つ思っているところがあります。ICTがアフリカや途上国に普及していって、グローバリゼーションがどんどん広まっていって、本当に生活が便利になっているんだけれども、一番おいしい思いをしているのは先進国の企業なんですよね。
途上国の人たちはそれでいいのかなあと。その中で、なんでもかんでもGoogleだ、Facebookだ、Appleだ、というような。そういう中央集権的じゃない動きという意味で、このブロックチェーンというテクノロジーは、すごく可能性があるなと思っています。
林さんのお話にあったように、独自の経済圏がポコポコ小さく生まれてきます、というような。それが、今後の途上国でも生きていく道になるんじゃないかなと。林さんにはぜひ、途上国にも小さな経済圏を作っていただきたいなと思っています。そのときには、私も起業家としてアプライしますからね(笑)。
(会場笑)
これが1つ目。2つ目は、インターネットが出てきて、最初は一部の詳しい人しか使っていませんでした。それがだいたい10年~15年ぐらい経って、誰でも使えるようになって、Google2.0などの時代になって、アプリになったと。
携帯電話も一緒で、最初は一部の人しか使っていませんでした。途上国でもどんどん普及していって、「M-Pesa(エムペサ)」に代表されるような独自のサービスも普及していった。携帯電話が出てきた10年ちょっとあとからなんですよ。そういう意味だと、ブロックチェーンもまだそこまでのステージではないんだろうなということです。
「今どうなのか」「これ、本当に意味があるのか」という判断ではなく「これがあと10年後、15年後に本当に使いやすくなるにはどうしたらいいのか」といった視点で考えていくことが、より良い未来をつくるためによいのかなと思っております。以上です。
佐々木:竹内さん、ありがとうございました。
(会場拍手)
佐々木:林さんはいかがでしょうか?
林篤志氏(以下、林):これから5年、10年がチャレンジの時かなと思っています。(ブロックチェーンは)非常に汎用的なテクノロジーだと思っているんですね。使い方によってはめっちゃ化けるというようなことだと思っています。
たぶん、仮想通貨なども、例えばキプロスの金融危機などのときに、めちゃくちゃこういったところにお金が……ロシアマネーや元が動いたんですけれども、あれは投資家としてブロックチェーンのほうが安心だからということだと思うんですよね。
ブロックチェーンとは何なのかと言うと、国境を越えるサービス、テクノロジーだと思うし、極端な話、核ミサイルが飛んできてもなくならないものだと思うんですよね。一応、「安心」「安全」。だから、そこにお金が流れるという、まっとうな評価だなと思っています。
それを我々はどうやって使いこなしていくのかというときに、非常に大きなチャレンジは、共同幻想をどうやって作っていくかという話だと思っています。つまり、国家やみなさんが持っている日本円というのは……日本円は単なる紙切れなんですね。でも、みんなが信じているから。日本国に属している人の共通の価値観を信じているから、機能するわけです。だから共同幻想なんですね。
たぶん、世界中に生きている人のほとんどは、共同幻想をつくったことがないんです。いったん資本主義とか、世界の流れの中で全部ベターッと均一化してしまったんだけれど、人間性をもっと解放していくというか、我々がもっと自由に生きていくために、もう1個上に独自の世界を無数につくっていかなければならない。
林:つまり、共同幻想ということで、自分で国みたいなものをつくって。どうやってやるのかは、誰も知らないんですけれど。たぶん、それを自分たちでそれぞれにつくる。自分たちで決める。既存のシステムに片足を突っ込みながらも、自分たちで考えてトライ&エラーをしていかなければならない。この10年ぐらいは、そのチャレンジをやっていく時代なのかなと思っています。
そこを、今日ここにいらっしゃっているみなさんと徐々につくっていきたいなと思っております。今、Next Commons Labでそういうことをどんどんつくっていきたいなと思っていますので、起業家として同じようにするのもアリですし、そういった全体設計を一緒にやるメンバーとして、いろいろなパートナー企業を集めていますので、ぜひ一緒にやれたらうれしいです。ありがとうございました。
(会場拍手)
佐々木:今日の話は、ブロックチェーンそのものがどうなっているのかよりも、こういった哲学や技術が社会をどう変えていくのかという、ある種の可能性の話をみんなでできたのが良かったんじゃないかと思います。
だから、これからたぶんいろいろな起業家、研究者、技術者が出てきて、新しいブロックチェーンのサービスを一緒にどんどん出していく。それを我々がいかにうまく心の準備をして、受け入れることができるか。そういうことが新しい社会を変えるんだという、楽観的な気持ちを持つのが良いのではないかと思います。今日はみなさん、どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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