2024.10.10
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ifs fashion insight vol.2 いまどき女子にとってのファッションを再定義する: めざせ、“いじられ上手”!―SNS世代との「関わり」のつくり方(全3記事)
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中村ゆい氏(以下、中村):(ファッションは)オケージョン(行事)を盛り上げるツールになっていて、何か(洋服など)を手に入れる満足感というよりも、「シーン全体を楽しみたい」という意欲がすごく高いんだと思います。
稲着達也氏(以下、稲着):確かに。10年前だと自分は大学生くらいで。それより前の高校の頃を思い浮かべると、オシャレな奴って、やっぱりいたんですけど、そういう人って昔は「服そのものが好きだ」っていうタイプのオシャレ。「こいつすごいな! 個性的でオシャレだな」という人が多かったんですけど、きっと今は違うんでしょうね。そういうシーン全体を含めて作れる、その中の1つのツールとして、服があるだけというような。
中村:うん。
稲着:そこで良い写真を撮って、雰囲気を作れるような人が「あぁ、オシャレだね」と言われるような。そこが、すごく変わってきている実感はあります。
中村:昔だと「ファッション好き」と、(稲着さんが)おっしゃっている人って「ファッションオタク」だったと思うんです。(今は)「いい雰囲気の子だね」という感じになって。全体的に情報感度が高いほうが、オシャレだなという感じになっている気がしますね。
稲着:それそのものを追求するのが好きというタイプって、基本、オタクだなと思っていて。一方、今の時代のオシャレな人は、それそのものを追求するんじゃなくて、コミュニケーションのツールとして最大限活用したいっていう、活用センスがある人になってくるということですね。
中村:そうですね。「活用センス」って、いい言葉だと思います。
稲着:次に、「音楽」と「ファッション」っていうキーワードが何度も出ていたのですが。
中村:はい。
稲着:見澤さんがおっしゃったK-POPもそうですが、音楽に限らず、韓国人気というのがあると思います。「なんでここまで人気なんだろう」というところに触れておきたいんですけれども。こういうコンテンツは、お二人のメディアでも人気ありますか?
見澤夢美氏(以下、見澤):そうですね。今、韓国人気みたいなものって無視できない状況だと思っています。
(スライドを見て)これは、左が「ブラックピンク」っていう韓国の女の子のグループなんですけど。彼女たちに初めて(雑誌に)出ていただいた時に、「表4からの逆読み」というのをやって。『mini』ではありえないぐらいの反響で、Twitterでもすごく盛り上がって、この号は完売したんです。
中村:うんうん。
見澤:「WEBやSNSはライバル」とか言われがちですけど。案外、SNSで盛り上がって、結果『mini』を買ってもらえるみたいな。そういう還元も大切にしているので、(SNSと雑誌が)うまく支え合っているなというのは、実感としてあります。
彼女たちは、(楽曲に加えて)「歌えて踊れて実力もある」「顔もかわいい」「メイクも気になる」「ファッションもかわいい」みたいな、総合的に「こんな感じに憧れる!」というマインドがあります。ブランドで買うというよりは、「憧れる誰かが着ている」というのが、購買意欲に繋がるような気がしています。
なので、こういうK-POPの子たちだけでなく(スライドの)「E-girls」「Happiness」の2人などもそうです。メンバーがいっぱいいる中でも、YURINOちゃんと須田アンナちゃんはすごくファッション感度が高く、『mini』でフィーチャーしています。この2人も昔の『mini』だとちょっとありえない髪色ですね。
昔、あるモデルさんが突然金髪にした時、ヅラをかぶせたことがあったんです(笑)。『mini』の世界観としては、その時はありえなかったんですね……。でも、今は逆にこういう派手な子が、むしろリアル。ギャルにも見えそうなんですけど、「ギャルではない」と本人たちも言っていて。
付けまつ毛はここではしていなかったり。メイクでいうと、そういうちょっとした差で、私たちはギャルではないという。だけど、きっと着ている服は『STUSSY』だったり、ストリートブランドだったり。これが今、新しい層として『mini』の読者に入ってきている典型のタイプですね。
稲着:仕事場の近くに1校、美容専門学校があって、学生さんがよく集まっているのを見ると、もう本当にこの感じですね。派手髪ブームはどういう気分の現れなのでしょうか。
見澤:やっぱり憧れなんだと思っています。K-POPの子たちもすごく色が派手なんですよね。E-girlsの子とかもそうだし……たまたま今、憧れの対象に派手な子たちが多いということなのかと思うんですけど。でも、たぶんストリートの風潮ですよね。例えば『sweet』だと違うので。いわゆるストリートではこれがすごくリアルなんだと思うんです。
稲着:個人的には、中村さんもけっこう、毎月会うたびに違った派手な色を入れられてるなと思うんですけど、やっぱり気分とかってあるんですか?
中村:そうですね。ただ、髪を染めるみたいな、ファンシーな感じというのは、たぶん10代後半、20代前半の特徴だなと。オタまでいかないんですけど、ちょっとギークっぽい感じ? おもしろかわいいものが良いよね、という感覚があるのかなと思っています。
なので、ど直球にかわいいというのから、ちょっとハズしておもしろくするという。そこにちょっとインターネットっぽい感覚が入ると、こういう感じになると解釈してますけど。
稲着:アニメのキャラとかじゃないと、ありえない色ですよね。
中村:はい、(そういう)感覚がベースに入っていると思います。その雰囲気と今の『mini』みたいなストリートの感覚がすごいマッチしてるんだと思うんですよね。
稲着:韓国系コンテンツが人気といっても、たぶん、例えば『ローリエプレス』だと、またちょっと違うものが流行っているんじゃないかなと思うんですけど、どんなものが見られていますか。
遠藤優華子氏(以下、遠藤):そうですね、『ローリエプレス』は比較的甘めの媒体なので、あまり派手色ブームみたいなものはないんですけど、「韓国」というキーワードはすごく引きが強いです。やっぱりコンテンツを出すと、すごく伸びるジャンルではあります。だいぶ前から言われてますけど、やっぱりオルチャンメイクとかはすごく人気ですし。あと、テリちゃん。
みなさんもご存知かと思うんですけど、韓国のすごい人気のモデルさんがいて、最近日本でも活動されていてプリクラのプロデュースをされたりしています。テリちゃんを出すと、もうすごい人気だったりとか……ありますね。
あとお洋服も日本よりちょっとプチプラで、かつ、人とかぶりにくいハイセンスのアイテムを買えるというのもあるので、韓国風ファッションも人気は高いです。通販サイトを見ていても、やっぱりそういうサイトを利用して購入している子たちはすごく多いなぁというのはあります。
中村:韓国は日本にいる子たちからすると、どういう位置づけの場所だと思いますか?
遠藤:勝手な分析としては……もう日本の中で流行っている場所は、みんなが(既に)行っちゃっている現状があるなと思っています。「インスタ映え」という言葉が去年流行りましたが、インスタ映えするカフェや、フォトジェニックなスポットに行ってみると、けっこうみんな行ってるという現状があったりするのかなぁと思っていて。
ただ、近いんだけど、ちょっと憧れの存在として韓国みたいなところに足を運ぶと、まだ誰も知らない場所に自分が一番最初に行ける……みたいな。そういう、新しい発見を求めている部分もあるのかなと思います。「先取りしたい」ではないですけど、「かわいいものを知りたい」という。「先にもっとかわいいものがある場所に行こう」と、若い大学生の子とかでも、けっこう頻繁に韓国に行く方が多いなと思います。
稲着:単純に、そういう大学生とかが思い立った時に行ける距離というのはあるかもしれないですね。
中村:うん、身近。
稲着:大学生でパリ、ミラノに行くって、やっぱり20万とか30万かかりますもんね。ちなみにこの韓国系人気でいうと、うちのアソビシステムという会社は、やっぱり原宿系というのはすごく言っています。「原宿カルチャーを世界に」を標語にしているんですけれども、最近その原宿にも韓国系のショップがすごく増えてきました。去年『STYLENANDA HARAJUKU』とかができてから、原宿が韓国系ストリートファッションの聖地みたいに紹介されることがでてきて……なんでだろうと。
Webメディアで『HARAJKU KAWAii!! STYLE』っていうのをやっているんですけど、そのアクセス数のランキングを見ると、韓国コスメの発売情報とかがあって。本当に無視できないくらい流行ってきているというのは、ふだん感じることが多いですね。
見澤:東京がファッションを牽引しているかと思いきや、最近はロンドン、パリ、ニューヨーク、ソウルなんですよね。だからアジアでも台湾の人とかと話していると「今、ぜんぜん日本じゃないよ、韓国だよ」と言っているぐらい、ちょっと負けているなという印象があって。ストリートでいうと、韓国で流行ったものが、日本で流行るという現象がこの2〜3年ぐらいありますね。
私自身もとても韓国が好きなので、しょっちゅう行っています。向こうでみんなが白いキャップを被っているなと思っていたら、その後に日本で流行ってきて、みんな白いキャップを被ったり。ちょっと日本は遅いんですよ。スポーツブランドの人気や、アディダスとかのジャージをふだんオシャレで着るのも、先に韓国で流行っているものが日本で流行るという。原宿の韓国化みたいなのものも正直わかる気がします。
稲着:このGENERATIONSさんとかも、どちらかというと韓国の方がこの感じって早かったのかなと思いますね。
中村:うんうんうん、確かに。
稲着:いわゆるラグジュアリーストリートの流れですよ。ちょっとモードの話になります。ストリートと話がずれてしまうんですけど、『VETEMENTS』とか『Off-white』ってすごく流行ったじゃないですか。『BALENCIAGA』とかもそうですけど。またちょっと話が戻りますけど、あれって結局、SNSに上げる時に分かりやすいというのが1個あるのかなぁと思っていて。
中村:そうですね。
稲着:ああいうブランドも、けっこう海外のストリート系のインフルエンサーみたいな人たちと一緒に成長していったイメージがあります。日本でいうところの『Droptokyo』とかのスナップに出ているような。ちょっとした派手さ、SNS映え、繋がるようなファッションというところで、その感度がもしかしたら、韓国の若者はちょっと高かったのかもしれない。
中村:戦略的にすごく早く取り入れたなという感じがしますね。昔だったらギャルはL.A.とかに憧れたと思うんですけど、それがより身近じゃないとリアルじゃないというところで、韓国という憧れに変わったなぁという。
稲着:なるほど。L.A.でリアルを感じづらいですよね。
中村:そういうことかなと思ったりしますけど。
稲着:あともう1つ思うことが、ここではストリートファッションが人気という書き方になっているんですけど、コスメも人気じゃないですか。
中村:そうですね。
稲着:なんとなく単純に(理由の)1つに安いというのもありますよね。韓国のコスメの全部が安いわけじゃないですけど。
中村:どうですか? 韓国コスメとか。
稲着:ローリエの中で、けっこう……
遠藤:安いのもあるし、パッケージがかわいいという……。
稲着:あー、なるほど。
遠藤:そういうのがやっぱりあります。新しいなあと思うことがけっこう多くて。
稲着:そうか、それもSNSに関係してくるのか。パッケージがかわいくないと。
遠藤:そうですね。反応としては、実用性が高いアイテムも韓国のコスメにはすごく多くて。『Innisfree』っていうブランドがけっこう……。
稲着:緑茶の。
遠藤:そうですね。最近日本にも出店したお店で。
稲着:表参道とかに。
遠藤:そうですね。人気ですけど……「良い」というウケはあるんですけど、わかりやすく、かわいいものがすごく多いから、ワクワクさせてくれるんだと思います。ラメシャドウでも、めちゃめちゃキラキラしていて「かわいい〜!」みたいな。それで「この価格!?」というのもありますし。最近だと、ペコちゃんとコラボしたコスメをローリエプレスのInstagramでアップしたら、最近の中でエンゲージが一番高くて。
中村:へ〜。
遠藤:だから、目新しさも求めているところはあると思います。人のInstagramを見ていて、「これどこの?」と聞きたいし、聞かれたいってちょっとあると思うんですよね。だから新製品だったり、あんまり出回っていないけど実はすごく良いものを上げたりすると、反応がすごく良かったりします。そういうおもしろさの発見も、韓国コスメの魅力かなぁというのは思っています。
中村:いっぱいありますもんね。うんうん。
稲着:今の話の関連で、最近の傾向でプチプラというのはすごくありますよね。
中村:そうですね。
稲着:さっきの韓国コスメもプチプラ系で、いわゆるテパコス(デパートコスメ)に対する対立軸ですよね。10年、もうちょい前くらいまでは、デパコス以外のものって、単純に安かろう悪かろうというイメージがすごく強くあったと思うんですけど。今はぜんぜんそういう時代でもなくなってきたということで。
中村:そうですね、なんか……。
稲着:これ(スライドの内容)は服のほうなんですけど。たぶんコスメも一緒なんですよね。
中村:そうだと思います。全体的に、お金を使わないとか物を買わないと言われがちですけど、選択肢が増えているということもあり、妥協しないで買うことが身に染み付いている人たち(SNS世代)だなぁと思っています。2000年代は安いことがブームだったと思います。とにかく安いものをどんどん買って使い捨てるのがトレンドだったと思うんですけど、そこも通過して終わっている。
価格にも質にもそれなりに納得をしたいというのが気分だなと思いますね。昔の同じくらいの歳の人たちと比べると、お金がないというのは、もちろん現実としてあると思います。その中でも納得ができるお金の使い方を、すごく意識しているなと思います。
稲着:自分が思うのは、日本の全体的なあらゆるプロダクトに言えることで、低価格帯の商品の質が純粋にめちゃくちゃ上がってきているというのもあるんじゃないかな。
中村:そうですね。企業努力の賜物だと思います。
稲着:今、ユニクロの服よりも素材や縫製がいいような服ってもう世界にない、と言われる方もいます。普通にふだん食べるものでも、プライベートブランド「ファミリーマートコレクション」のプラチナラインって知ってますか? めちゃくちゃ引くくらいうまいんです。
中村:(笑)。
稲着:こんなに安く作れちゃうんだ? みたいな。たぶんそういうのがメイクの世界でも。実際、CANMAKEさんとか、けっこう30代でも使っている人がいたりして。本当の意味で、別に安いから悪いわけじゃなくなってきているのかなというのはあります。
中村:その代わり、中価格ぐらいのものが、「なんでこの値段なの?」と買う理由がなくなっている。
稲着:どうですか、プチプラ特集って。『mini』でも『ローリエプレス』でも、わりとよく見る印象がありますが、やっぱり人気コンテンツですか?
見澤:そうですね、プチプラ特集じゃなくても、そんなに高くなく、買える価格帯のものを載せるというのは意識して作ってはいるんですけど、それでも「もっと安いものを載せて欲しい」と読者アンケートで来るんですよね。プチプラ特集で、本当に本気の安いものを載せても「もっと安いのを見たい!」と言われて。いくらのを求めてるんだろうと。
見澤:でも、先ほどもおっしゃっていたように、本当にお金があまりないというのが前提にあるので、その中で何にどうお金をかけるかというのをすごく考えていますよね。その分量でいうと、コスメが今すごく伸びていて……。
だけど、実はお金を使わないわけでもなくって。使いたいところには、ものすごく使っています。『mini』を作っていて思うのは、好きな物にお金を使う。オタクの心を掴むといい! と思っています。
『mini』では、K-POPとかLDHを出すと、本当に糸目を付けずに買っている印象があります。その中にファッションやコスメも含まれていて。ただ、さっきのCANMAKEの話でちょっと思い出したのが、Twitterなどを見ていて、「CANMAKEのすごいキラキラシャドウがすごくいい!」と呟いていた人が、すごくリツイートが伸びていて。それを下まぶたに付けて推しの握手会に行くと「泣いてるみたいに見えるから、すごく優しくされる」って書いてあったんですよ(笑)。
中村:すごいですね!
見澤:それは別に回し者でもなんでもなくて、本当に1ファンが、自分が優しくされた体験があって、みんなの購買意欲に繋がったんだと思います。
中村:それは、何か言わされたわけでもなくて、心の底から「よかった!」というのがあるということですよね。
見澤:なのでお金をかける時に、推しがどうのとか言ってるというのが(笑)。たぶん、今はすごくかわいい子たちがそういう感じなんですよね。オタクという言葉も正直、かつてのオタクとはもう違うというか。オタクが恥ずかしくて言えないことだった時代はもう終わっていて、みんなが普通に「私、オタクだから」と言えるような時代でもあるなぁと感じています。
中村:うんうんうんうんうん。
稲着:さっき、「もっともっと安いもの!」みたいな話がありました。確かにネット上とかでもダイソーの化粧水が実はいいとか……極端なところまでいくのとかもたまに人気になったりしていますよね。
中村:だいたい、どれくらいなんですか? もっともっとと言われる感じって。
稲着:こういうデータ、個人的には「ホントかよ!?」とは思うんですけど。
中村:これはいくつかの選択肢の中で、この世代の反応が高かったものですね。店名にこだわらずとにかく(価格の)安い(店で買い物する)という。数値は20.7パーセントとさほど高くはないのですが、この世代の傾向を掴む参考にはなると思います。
むしろ本当に欲しいもの、かけるべきところにはちゃんと使っているということが大切だと思います。
遠藤:さっきの韓国ブームに戻るんですけど、ちょっと思ったのが、韓国で買い付けしたお洋服を今、日本で売るのがすごく流行ってると思うんですけど。買い付け先が韓国でけっこう一緒なので、同じお洋服なんですけど価格がぜんぜん違うんですよ。
中村:そうなんですね。
遠藤:だから、みんなめちゃめちゃ調べてる。Instagramとかで販売してるお店でも……例えば白いレースのトップスがあります。ここではこのモデルが着てこれだから、例えば5,000円なんだけど、別なショップで同じものを検索したら実は2,000円だった、とか。
中村:あぁ〜。
遠藤:めちゃめちゃあるんですよ。タグが違っていたり……だけど、デザインがけっこう一緒みたいなので、そういう構造がもしかしたらあるのかもしれない。
中村:すごい比較意識がありそうですね。
遠藤:比較はめっちゃしている気がしますね。コスメも『LIPS』というアプリが今すごく話題で、みんなそこで『@cosme』に書くような感じでレビューを投稿できるんですけど、もっと年齢層がたぶん若くて。そこでかなりスウォッチを見て、色味を決めてから買いに行く、とか。
コスメの場合、プチプラの物ってデパートみたいに自分であんまり塗ったりができないことが多いので、そういう人のTwitterとかを参考にしてる人もすごく多くて。比較傾向はめちゃめちゃある気がします。
中村:色物って、実際に付けないとわからないですけど、そういうのもネットで買ったりするんですか?
稲着:シミュレーションできるアプリがあったりとか。
中村:うーん、できたりしますけど、やっぱり実際試さないと……というのはあるんですか?
遠藤:でも、韓国のものとかだと、それこそ試せなかったりするから、ネットで買っちゃったりすることはよくありますね。あと、例えば今、メルカリで買うのが一般的だったりするので、メルカリで買うものを実際試すのは困難だったり。
中村:そうですよね。
遠藤:いろんなサイトで、とにかく例えば「Diorのなになにリップ」みたいなものを検索して、色味を比較するというのは、インターンの子やローリエガールズの座談会で話していたときに、そういう調べ方をしてると聞いて、あぁ、そうなんだ〜と思いました。
中村:すごい……ふんふんふん。
稲着:でも、このプチプラブームって裏を返せば、さっきも1回出たんですけど、ブランドで物を買わなくなってるということですよね。
中村:そうですね。
稲着:「とにかく安ければいい」と言う人は、とくにそうだと思うんですけど。ブランド指名する感覚は『mini』の10年間の変化とかで見られそうですけど、どうですか?
見澤:そうですね、資料はあるんですけど(スライドは)出ますかね。10年前だとファッション立ち上がりの時期って必ずブランド特集というのがあって……。
稲着:これですね。
見澤:あ〜そうですね。こういう、春の立ち上がりの時期とかに、ブランドごとに見せてくような企画が、ド定番だったんです。同じように毎年毎年、立ち上がりの時期に作っていたら、ある時、人気ランキングであがってこなくなって。ブランドが関係なくなったなとすごく感じた時期があったんですね。
ブランドで見るよりは、とにかくコーディネートで見て、かわいければそれを買うという。それがどこの服でも別に良くて、『mini』ではやらなくなりました。
でも、最近ブランド特集が復活しました。スポーツブランドです。これは読者の人気が取れるんです。
今、ストリートでスポーツブランドが本当に人気で、コラボしてるアパレルさんとかも多くて、オシャレ着として取り入れるのが定番になっています。
稲着:スポーツブランドだけはブランド力があるというのは、すごくなるほどなぁと思うところがあって。これもまたモードの世界を見ても今、そうですよね。COMME des GARCONSとNikeとか、ALEXANDER McQUEENとPUMAとか、ALEXANDER版adidasとか。
ちゃんとブランドを持ってやっているところが組みたがる相手がスポーツブランドというのが、ここ数年ですよね。サカイとNorth Faceとかもそうですね。なんでこんなにスポーツブランドが、今、ブランド価値を残せるんでしょう?
中村:やっぱり(ブランドを)意識して買わない人は総合すると 81.8パーセントなのですが、買う時に意識して買わないということなので、ブランドには興味がある人はいるんですよね。……。
稲着:たぶんその8割、(ブランドは)意識しないんだけれども、その人たちにとってもスポーツブランドだけはちょっと別なのかもしれない。
中村:スポーツブランドに関してはたぶん、ブランドは入り口になるのかもしれないということですよね。まったく意識してないわけではないけど、フックとしてはすごく弱くなってきているということだと思っていて。あとたぶんやっぱり、スポーツ系のスタイルってロゴなどが雰囲気をつくる要素として重要だったりするので、スタイルの特徴も関係ありそうです。
古着も、昔流行ったスポーツライセンスブランドものがわりと売れていたりします。今は知る人ぞ知るブランドになっているけど、昔は一世を風靡したとか、そういうストーリーが面白いのかもしれません。
遠藤:アイコン化……となっていると、そこはブランド力が強いのかなとやっぱり思っています。最近だとagnès b.のTシャツが若い子の間で人気で、今、けっこうみんなそれを買っていたり。ロゴTの中でも、買うならそれ、という流れもあったり。
スニーカーも人気。けっこうモテ系とか甘めのテイストではありつつも、スニーカーという軸はけっこう人気です。CONVERSE、Nike……そういう人気のものは、指名買いというのは今の時代的にはちょっと違うのかもしれないんですけど、まだまだそこら辺のブランド力が強いのかなと思うので。
ちょっとアイコンというか、それを身に付けているだけでテンションが上がるとか、それをアップしたい、という気持ちにさせられるストーリーを持っていると、そこはまだまだブランド力もあるのかなぁとは思いますね。全体的には弱まってはいると思いますが。
中村:そうですよね。実際に買い付けをやっている方に話を聞くと、ちょっと上の世代だと、「これ」ってわかっちゃうのは恥ずかしいけど、逆に20代の子に向けだと、「これ」って逆にわかる方が買ってもらえるとおっしゃっていました。せっかくブランドを着るなら、着る意味のあるものを着る。それがスポーツだと非常にわかりやすいんだと思いますね。
稲着:なるほど。ありがとうございました。そろそろ時間になってきているんですけれども、結局、これ一番最初に出したやつ(スライド)ですけど。この一番最初に出した、問いなんですけれども、今どき女子に、じゃあ、どうアプローチをすれば良いのかというところで……これ見澤さんが上げていただいたポイントですか?
中村:弊社の視点とお二人とのお打合せの内容から見えてきたことをまとめてみました。1つは、やっぱり顔が見えるとか、信頼できるという関係性が大事なのかなと思っています。「ファッションの情報源を聞くと、身近な人のおすすめとか、一般人でフォローしている人とか、あと名前がわかる有名人のSNSなど顔を知った人への反応が高い傾向が見られました。
稲着:身近な人のおすすめって、おそらく友達がInstagramに上げているものとかが含まれる。
中村:親、友人、知人とか兄弟などです。
稲着:直接おすすめされた人ということなのか、それともお友達がInstagramに「これいい!」と上げていたら、それはやっぱりおすすめされたということになるのかというと……なんかそれも入ってそうな数字な気がしますね。
中村:そうですね、はい。実際そういうスタイルを(近くで)見て参考にしているとか。次のスライドなんですけど、暮らしを豊かにする知恵として「信頼できる情報を発信している人をフォローする」が、この世代はトップに挙がっています。
(感度の良い人に)ピンと来て(フォローして)もらうためにも、そもそもこの人(発信者)は信頼できるという関係性を築いていることが必要です。(SNS世代は)「これは売りたいがために言ってるな」「これは広告だ」と察知する意識、感度が高い。
稲着:雑誌とかだと、その雑誌のブランドや編集部を信頼して買うというのがあると思うんですけど、Webだと、各記事を書いている人が見えるようになっているじゃないですか。だから、その特定の人の記事が好きで読む人もユーザーさんの中にはいるということですよね。そういうので、良い反応が得られるような情報……人をアイコンとして、その人を立てて、信頼してもらうために、工夫していることとか見せ方とか、何かありますか?
遠藤:やっぱりその人の声を届けたい、というところがあるので、基本的に本人のおすすめや本人が考えたコーディネートをヒアリングさせていただいて記事に落とし込んでみたりすることが、すごく多いんです。そういうもののほうが、反応はすごく良いです。やっぱりみんな、嘘っぽいものに目がすごくシビアになっているので、Instagramとかを見ていて、ただPRしているなというのはすぐわかっちゃうんですよね。
だから、その(投稿の)熱量だったり、何のためにそれを紹介してるんだろう、という、ちゃんとした意味合いが伝わらないとユーザーさんにはぜんぜん響かないです。今、クライアントさんも企業さんも、みなさん「フォロワー(数)じゃない」というところはだんだん気づいてはいると思うんですけど。
ユーザーが信頼できると思うところは、それこそフォロワー(数)ではないので、ふだんからの文脈だったり、どういう投稿をふだんしている人なのかというところで、インフルエンサーとの信頼関係みたいなところに気づいていっているのかなぁというところはありますね。
稲着:なるほど、ありがとうございます。
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