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SHARE × WORK 〜働き方の再定義 21世紀の働き方と規制とは〜(全1記事)

未来の働き方は『オーシャンズ11』型になる シェアワークが実現する、新しい社会の理想像

2018年9月7日、シェアリングエコノミーの価値を発信する「SHARE SUMMIT 2018」が開催されました。「SHARE × WORK 〜シェアリングエコノミーの将来:21世紀の働き方と規制とは〜」には、経済産業省・伊藤禎則氏、Mirai Institute小柴美保氏、WeWork Japan高橋正巳氏、住友生命保険相互会社・堀竜雄氏氏が登壇。クラウドワークス吉田浩一郎氏をモデレーターに、シェアが可能にする未来の働き方について意見を交わしました。

21世紀の働き方と規制について議論

吉田浩一郎氏(以下、吉田):みなさん、こんにちは。先ほど自己紹介が抜けていたのですが、私自身がシェアリングエコノミー協会の理事をさせていただいていますので、その関係で私がモデレーターを務めさせていただきます。

今日はSHARE SUMMITということで、まず1回目のセッションになります。北海道の件や大阪の空港の件などございます(注:2018年9月に関西国際空港で台風被害、北海道の胆振地方で地震)が、東京からまた元気にできるように、精一杯やってまいりますので、よろしくお願いします。ではさっそく小柴さんから自己紹介を含めてお話をお願いします。

小柴美保氏(以下、小柴):こんにちは。小柴と申します。私は、Mirai Institute株式会社という、一応インデペンデントシンクタンクと呼んでいるんですけども、そこで「みどり荘」というシェアオフィスの運営をやっております。

みどり荘ですが、中目黒にある(植物の)緑に覆われた建物をはじめとして、2011年からやっております。多くはクリエイターやフリーランス、独立したての人、小さな始めたばかりの会社、海外から来た人、そういう仲間たちが集まって働いている場所を中に作っています。また表参道のCOMMUNE246では、遊休地をうまく使って、「みどり荘2 」というのをやっております。

そして(会場の)GRIDビルの5階にもあります。ここは一昨年の秋から始めておりまして、だいたい100人前後の会員メンバーがいます。いろんな国の人が1つの場所に集まってコミュニティを作りながら働いている場所を運営しております。私たちは、みどり荘で「働く状況をいかに作っていくか」というのをテーマに、日々やっております。よろしくお願いいたします。

吉田:よろしくお願いします。

(会場拍手)

WeWorkが持つ、コミュニティ機能

吉田:続いて、またグローバルのほうですけど、今度また「働くスペース」ということで、小柴さんと高橋さんの対比にもなると思いますが、両方おうかがいしていきます。

高橋正巳氏(以下、高橋):みなさん、こんにちは。WeWorkの高橋と申します。私、前職ではけっこう真剣にシェアリングエコノミーに関わる仕事をしておりましたので、久しぶりにこういう場に戻ってきたなという感じです。

吉田:(高橋氏を指して)元Uber Japanの社長です。

高橋:だいぶ事業が変わっていて、今はWeWorkというニューヨーク発のコミュニティ型ワークステーションの日本事業に携わっています。今年の2月に日本で事業を開始しまして、はじめは六本木一丁目のアークヒルズサウスでオープンしました。2月から先月まで、合わせて6拠点オープンしております。

個人の方から大企業までさまざまな業種をまたいで、日系・外資系の企業が同じ場所に集まって、そのコミュニティを作る。そういった事業を展開しております。我々のミッションとしては、そこで働く一人ひとりの方が、生きがいややりがいといったものを感じながら、お互いに意見をぶつけあったり、新しい情報を得たり、いろんな刺激を受けながら仕事をする。そういった環境を提供しております。

今、全世界で事業を展開しているんですが、世界中に約300近い拠点がありまして、今25万人以上のメンバーがWeWorkのメンバーになっています。また、世界のどこかの拠点でWeWorkのメンバーになっていれば、例えば出張や旅行でも、Wi-Fiがあるカフェを探したりといったことをせずに、WeWorkのアプリからポッと予約すると、世界中どこへ行ってもそこの拠点のワークスペースやミーティングルームが使えるという状況になっています。

その中には、個人だけではなく、いわゆるエンタープライズといわれる大企業もたくさん入っております。そういう企業と個人が接点を持つ。そのような機会が生まれてきています。

そのコミュニティの促進をどのように行っているのかには、いくつか(方法が)あるんですが、その1つに、各拠点にコミュニティマネージャー、コミュニティチームというのがいまして。そのメンバーたちがそこを実際に使っている企業や個人と日々接点を持って、どういったニーズがあるのかを吸い上げて、さまざまなイベントなどを開催しております。

この背景に大きくあるのが新しい働き方なのかなと。これは世界的な動きなんですが、とくにミレニアル世代の台頭があります。彼らはSNSを当たり前として育ってきていますので、よりオープンな環境、より人と接点を持つ、よりコネクションをつなげる・強くする、そういったものを求めています。なので、そういった世代にも適用しているような環境を提供しております。

吉田:ありがとうございます。

(会場拍手)

住友生命保険「Vitality」の可能性

吉田:続いては、また切り口が違い、生命保険からそういう個人をどのように支援しているかということで、堀さんに自己紹介をお願いします。

堀竜雄氏(以下、堀):みなさん、こんにちは。住友生命保険の堀と申します。今ご紹介いただきましたけれども、「なんで保険会社が?」と思われるかもしれません。まさに私どもとしましては、仕事もそうですけど、シェアワークのみなさまに健康で豊かなご自身の生活を、しっかりと「保険」というかたちでお支えしたい、サポートしたい。いわゆる福利厚生的なサポートをさせていただきたいということで参加をさせていただいております。

弊社はいわゆる生命保険会社ですので、例えば亡くなったり、病気をされたり、お怪我をされたりしたときのリスクに備える補償を提供するということをずっと生業としてきたんですが、直近においては大きく方向性を転換しています。もちろん補償は同じなんですが、非常に少子高齢化が進んで日本の平均寿命がどんどん伸びていくなかで、シェアワークのみなさまに限らず、必ずしも健康寿命が延びているわけではないというところがあります。

なにかあったときの補償ももちろんあるんですが、なにかが起きないようにリスクを減らしていくために、お客さまの健康増進をサポートする取り組みにより力を入れていきたいということで、最近スタートしました。やはり「身体が資本」というところがおありだと思いますので、いわゆる健康増進型の保険でシェアワークのみなさまのお役に立てないかな、と。

それは南アフリカのDiscoveryという総合金融会社が20年間かけて育ててきた「Vitality」という保険で、日本では唯一住友生命が直近7月の終わりからお客さまにお届けできるということでスタートをしています。これが非常におもしろい内容です。

もちろん保険ですから補償はあるんですけれども……例えばご加入いただいたお客さまが健康診断を受けられたり、あるいは1日8,000歩、1万歩、1万2,000歩……と歩くと、歩数に応じてポイントがつくようなかたちになっています。またはマラソン大会に出るとか、がんの予防検診を受けるといったことをお客さまが意識をすることでもポイントがつき、そのポイントに応じて提携した11の企業の割引を受けられます。

楽しみながら健康に取り組み、万が一のことがあったら補償があるという「Vitality」をスタートいたしますので、ぜひシェアワークのみなさまに健康を意識していただきながら、リスクにも備えていただくというかたちでお役に立てないかということで、今日はまいりました。よろしくお願いいたします。

吉田:よろしくお願いします。

(会場拍手)

経産省で「働き方改革」を推進

吉田:続きまして、伊藤さん、よろしくお願いします。

伊藤禎則氏(以下、伊藤):あらためまして、経済産業省の伊藤です。私は2年半、政府で「働き方改革」に深く関わってまいりました。「働き方改革」という言葉を毎日のように聞かれると思うんですけども、「『働き方改革』ってなんだっけ?」ということをここで考えたいと思うんです。

どうしても「働き方改革」というと、労働時間・長時間残業の問題、ここにフォーカスが当たると思うんですね。日本で1947年に「労働基準法」ができてから、労使が合意をすれば、つまり組合がOKすれば、残業時間は無制限に青天井に設定することが可能でした。

これが変わります。もういよいよ上限を規制(する)ということで労働時間にキャップがかかる。でも、これは労働時間を減らすことが別に目的ではないんだと思うんですね。

ボーリングで言うと、それはファーストピンかもしれないが、ストライクではない。ストライクとは、1つには生産性を上げること。でも、これもまた少し違っていて、生産性のために仕事をする人はいないんですね。

自分もそうですが、働く個人の立場からすると、やっぱりモチベーションだったり働く喜びだったりエンゲージメントだったり。「それを支えるのは何か?」ということをずっと突き詰めて考えてきたんですけど、やっぱり「選択肢」だと思っています。

今、本当に、働く人のニーズとか価値観が多様化しています。もちろん出産・育児、そして昨今はとくに介護の問題。「一億総活躍」という言葉が踊っていますけれども、やっぱり「一億総制約」。ある意味では、みんななにかしらの制約を抱えながらそれぞれ働くと。そういうなかで「働き方」も多様化しなければいけない。

テレワーク、フリーランスという働き方をしてみたい。兼業・副業したい。限定正社員。いろんな働き方が出てきていると思います。だけど、やっぱり日本では、1社専業というかたちで長く働くことがデフォルトになっています。これはいろんな国の制度、そして企業の慣行もそうです。

2016年から、まさに吉田社長さんたちとご相談をしながらなにをしてきたかと言うと、もう徹底的にいろんな制度で、働き方に中立的な制度をどうやって作っていったらいいのか、あるいはフリーランスという働き方、兼業・副業、そういったことを選ぼうとしたときに、なにが問題なのか、なにがハードルなのかということをある意味で浮き彫りにしてきました。

2018年3月に「モデル就業規則」を改定

伊藤:フリーランスの研究会、兼業・副業の研究会、それが1つの大きなスタートとなって、霞が関全般、厚生労働省も動きました。公正取引委員会も動きました。今、政府をあげて働き方ということに正面から向き合っています。その一例として、兼業と副業。日本の大企業ではまだ兼業を禁止している企業が多いんです。それはどういうふうに禁止しているかというと、就業規則・雇用契約で禁止しているんです。

ところが、実は国で「モデル就業規則」というのを作っていて、そこにご丁寧に書いてあるんですね。「労働者は、許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」。これをほとんどの企業が踏襲しているから、兼業禁止なんです。実は今年の3月にこれの改定をしまして、すでに「 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」とされています。表現としては本当にちょっとした違いです。でも、原則と例外がまるで逆になりました。

もちろんそれぞれの企業で、兼業・副業を認める。さらに言えば、働く人が実際に兼業・副業するかどうかは、個人の自由、企業の自由です。

吉田:これは意外に知られていないんじゃないですか。3月ですね?

伊藤:そうなんです。これは3月にもうすでに変わっているんです。したがって、よく「兼業していいの? しちゃいけないの?」というような議論があるんですけど、実はそのフェーズはもう終わっていて、あとはむしろその企業で「兼業禁止」と言ってもいいと思ます。

では、その会社の経営リーダーが、どういうかたちでその社員なり働く人の成長を確保していくのかということの説明責任を負うようになってきた。こういう変化が今生じています。

経済産業省では、「次官・若手プロジェクト」というちょっと話題になったレポートがありました。ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。私の後輩たちがいろんなことを言っていたんですが、訴えていたことの1つは、「昭和の人生すごろく」というような働き方や結婚、いろいろなロールモデルがあったと思うんですが、(それが)もう変わってきているということなんです。

キャリア観で言えば「キャリア論」ですごく重要な概念としてのキャリアラダー、はしごですよね。あるいはすごろくでもいいと思います。サイコロを振って、コマを1つ2つ進めていって、最後はアガリという労働のモデル。ある意味でのキャリア観というのは、私もそうなんですけれども、けっこう多くの方に根強く染み付いていると思います。

でも急速に変わってきているのは、考え方によっては『Pokémon GO』と書いているんですが、いろんなステージに出かけていって自分の持ち札を増やすこと。その持ち札には、経験もあるし、スキルもあるし、人脈もある。『Pokémon GO』なので、なんでもかんでもいいということではたぶんなくて、自分の専門性の核ということだと思いますが、「自分なりのレアカードをどう探すか?」「その専門性の核を補完するような持ち札をどう増やしていくか?」。今、こういうキャリア観に変わってきているんだと思います。

今日はSHARE SUMMITにお呼びいただいて本当にうれしいんですが、やはりシェアリングエコノミーの本質が、眠っている資産をマネタイズして有効に活用することだとすれば、それは私どもからすると、日本で眠っている最大の資産は人材だと思っています。

そういう意味では、このシェアリングエコノミーという人材、兼業・副業もフリーランスもそうです。いろんな働き方ができるということが、このシェアリングエコノミーの一丁目一番地になってくるんじゃないか。そんな気がします。

吉田:なるほど。ありがとうございます。

(会場拍手)

世間に確実に浸透する副業の意義

吉田:私からは簡単に自己紹介を2点ほど。個人が仕事をするマッチングサイトをやっていまして、ついにユーザーが200万人を超えました。クライアントが23万社です。大企業から中小企業までみなさんがお仕事をしていて、今期で100億円ぐらいの仕事をやっています。これが1点目ですね。2点目は隔世の感があるのですが、iPhoneの無料アプリがApp Storeで今、1位が「クラウドワークス」になっています。

昨日ちょうど『得する人損する人』というテレビ番組に「副業」という切り口で取り上げられたんですけれども。それで、我々は別にソーシャルゲームでもないし、「TikTok」みたいなコンシューマでもない中で、そういう方々からご覧いただいて1位になった。

これはまさにこのSHARE SUMMITの初日にはふさわしいネタかな、と。それほど今、経済産業省の伊藤さんからも(お話があったように)業法が変わってきたという中で、副業に対する見方も変わってきたのかなと思います。

みなさん。やっぱり今日はシャツが多いですね。これは産業革命から200年間変わっていないホワイトカラーの方の姿ですね。そういう中で、どんな人が働いているのか? みなさんのシャツからすると、おそらくちょっと想像がつかない。「どんな人? 具体的にそこで働いていて、本当に生活できるの?」とか、そういったことって、たぶんあると思うんですね。

今日はとくに小柴さん、そして高橋さんからお話しいただいて、そこをちょっと支援するように堀さんと伊藤さんからコメントをいただくというかたちでやっていければなと思います。では小柴さんから。みどり荘では正直なところどんなペルソナの方が働いているのが多いんですか?

小柴:たぶんWeWorkよりも若干ヒッピー寄りかなという……。

吉田:ヒッピー寄り?(笑)。

小柴:例えば、1年に3ヶ月だけ来るスイス人の人がいて、その人はフォントを作ってECサイトで売っているので、どこでも働けると。なので、世界中をいろいろ旅しながら働いていて、1年のうち3ヶ月だけ日本に来て、いろんなデザインや人に会ってインスピレーションを得て、また別の地に3ヶ月行くとか、スイスにまた戻るとか、そういう生活をしています。

『オーシャンズ11』型の働き方とは

吉田:海外ではおそらく年齢をうかがうのは失礼かもしれないですが、だいたいおいくつぐらいの方ですか?

小柴:30歳前半。

吉田:30歳前半ぐらい。それって貯金? 要は、みなさん大企業に行って貯金の中で生活していたイメージがあるので、どうやってその人は……。

小柴:その人は、大学を卒業して、デザイン会社で働いて、独立して、自分のフォントを立ち上げて、フォントのWebサイトを友達と作って、それをECサイトで売っています。

吉田:フォントの販売なんですね?

小柴:はい。フォントを作って、フォントの販売。

吉田:すごい。

小柴:ECなので別にどこでもできてしまうという。

吉田:なるほど。逆に日本人の方って……。

小柴:日本人の方で言うと、例えばですね……。

吉田:あっ、2人ぐらいいますね。

小柴:はい。1人で会社を立ち上げて、1人で映像制作とかをやっている人が多いんですが、『オーシャンズ11』型というか、なにか必要なプロジェクトになったら、人数を集めて、ある程度の組織を作って企業と一緒に働くという、そういう働き方をしている人が非常に多いです。

吉田:なるほど。

小柴:なので、みどり荘は「箱」というのもありますけれど、比較的組織に近くて。そこにいるメンバーが違うスキルを持ち寄って1つのプロジェクトを企業に代わる組織としてやっていくとか、そういうことが非常に多いです。

かつて、WeWorkはコワーキングスペース的だった

吉田:ちなみに今のお話をうかがうと、クラウドワークスも言われるんですけど、「やっぱり能力がある一部の人たちが集まっているのかな?」というようなイメージがあります。実は小柴さんは証券会社出身で文系ということですが、文系の方々がもうちょっと身近に感じられるような方はいらっしゃらないでしょうか?(笑)。

小柴:あとはインターンとか、アシスタントをシェアしているとかですね。例えば、まだ一人前に(仕事を)できないけれども、1人で一人前に働いている人がいて、そこに対して何人かのアシスタントにつくとか。そういうことでスキルアップをしていくという、そういう人がいます。

吉田:なるほど。リモートでいろんな会社のアシスタントをやっている……。

小柴:はい。みどり荘のそこの同じ空間にいる何人かのメンバーのアシスタントとして学ぶというのもあります。

吉田:おもしろいですね。では一方で高橋さん、大企業の中にはどんな方が多いんですか? 今のお話と共通する部分もあると思いますし、ぜんぜん違う特徴でも。

高橋:ヒッピーは確かにいますね。実は、WeWorkはもともとは本当にスタートアップにフォーカスした、いわゆるコワーキングスペース的なかたちで始まったんですね。ただ、そこからどんどんフォーカスがコミュニティになっていって。

それを展開していくにつれて、どんどん中小企業だったり大企業から「使いたい」「もっとフレキシブルに働きたい」「もっといろんな人と接点を持ちたい」、そういった需要が増えてきた背景があります。

我々のスペースには実は3つオプションがあります。1つは、いわゆるフリーアドレス的なかたちで、どこか、空いているところにポンと座るというオプション。共有エリアに座るというオプションが「ホットデスク」というもので、もう1つは「専用デスク」といって、部屋の中のオフィスの1席をちゃんと契約するというパターン。ほとんどはプライベートオフィスとして、1人部屋から、大きいところですと数百人入れるようなオフィスもあるんです。

個人の方とフリーランサーはほとんどホットデスクという中、企業単位で契約するといったことで、専用デスクを企業が企業単位で契約して使っていますね。業種はほとんどの業種をカバーしているんじゃないかなと思います。

実際にWeWorkをオープン日に始めた方もいらっしゃいますし。ちょっと堅めですけど、弁護士事務所や公認会計士という方もいます。起業する方ですと、イベントを運営するような会社を立ち上げたり、ベンチャーの採用を手助けするようなビジネスを始めた方も日本にはいらっしゃいます。

理想のオフィスとして機能するWeWork

高橋:実は(WeWorkは)アメリカのニューヨークの企業なんですが、2010年から事業をやっています。今、ニューヨークでは「ニューヨークで働く人100人につき1人はWeWorkで仕事をしている」という状況になってきていて、初めて起業する方の5人に1人はWeWorkで起業します。やっぱり個人で立ち上げるよりも、そういったところにいろんなエクスポージャーがあって、いろんな情報のやり取りができる環境を好む方が増えてきているんですね。

それに加えて、メンバー専用のアプリを使うと世界中の25万人のメンバーとつながれて、そこでもまたビジネスチャンスを広げたりといった使い方もできますので、かなり多種多様なメンバー層がいる状況になっています。

吉田:まったくの素人的な目線であえて質問させていただくと、WeWorkって月会費とか年会費が少し高いようなイメージがあるんですけど、「それはどうなんですか?」って言われたりしないですか? あるいは、「それだけの価値が……」とかそういうことを。もっと気軽な、数千円単位のコワーキングってまだけっこうあると思うんですね。

伊藤:ちなみに、だいたいいくらぐらいなんでしょうか?

高橋:拠点によって違うんです。それこそGINZA SIXですとか、そこの最上階は1フロア我々が入ってますし、先月オープンしたのは神宮前の明治通り沿いのところに1棟あったりもするんですけれど。そういったところと、新橋のちょっと入ったところでかなりプライスが違うんです。

今は神宮前のIcebergの「ホットデスク」と呼ばれるのは月7万4,000円。そこに行くとSTREAMER COFFEEも飲み放題で、実はビールも24時半まで毎日飲み放題になっていまして。

吉田:あっ、だから、「コワーキング」というよりは「オフィス」で考えると安い?

高橋:そうですね。私も前職で何度も引っ越しをして、その都度探して、敷金を払って、全部をゼロから自分でセットアップするということを考えると、それがすべてあって、Day1からインターネットもプリンターも使えて全部が揃っていて、イベントにも毎日参加できて。

日によってブロックチェーンのパネルディスカッション、翌日はヨガ、その翌日はビアをしましょうというようなイベントがどんどんあると、やっぱりそこでビジネスにドライブがかかりますので、そのあたりを価値と感じてくださっているのかなと思います。

吉田:要は単なるプロパティじゃなくて、そういったいろいろなコミュニティの機会やネットワーキング、そういったところを踏まえて、7万4,000円を普通に家賃として考えると逆に激安だな、という?

高橋:本当に見方はいろいろできると思うんですけど、単にコワーキングといったところから「実際はやっぱり違う」ところで我々はビジネスをしていると思っていますので、そのあたりが特徴かなと思います。

コミュニティオーガナイザーの役割

吉田:吉田:今ちょうど個人を取り囲む環境で、仕事以外の話がけっこう出てきたと思うので、このあたりから堀さんとまた小柴さんにもちょっと1度(話を)戻して、個人を取り囲むサポートの状況などを話せればと思います。

確かにクラウドワークスで働いていても、やっぱり社会保障の問題とか、あるいは勉強や報酬、「どうやったらスキルアップができるのか、報酬が上がるのか教えてほしい」というような人がいるんですが、小柴さんのほうでは、そういう仕事以外の周りのサポート面やネットワーキングコミュニティも含めて、どんなかたちで取り組めていらっしゃいますか?

小柴:先ほど高橋さんがおっしゃっていたように、コミュニティをいかに作っていくかというのは同じようにやっています。そこから、新しく始める人でも、そこにいることによっていろいろなつながりが生まれてくるので、新しい仕事が生まれたり、一緒にやってみるというのは非常に多くなってきています。

あとは、WeWorkと同じくコミュニティオーガナイザーのような人を置いているので、「この人とこの人がつながると、もっとおもしろい仕事が生まれるんじゃないか」「こんなイベントがあるから行ったほうがいい」とか、そういうインフォメーションを与えたり。

自動的じゃなくて、一人ひとりが(ちょっとおもしろくなるように)わざわざコワーキングスペースに来たり。家でも働けるんだけども、来ることによって今日は1日おもしろい人に会えたとか、そういう経験が非常に大きいかなと思います。

シェアワーカーにとって「Vitality」はどう機能するか

吉田:これまたここだけの話を1個。質問のボールを投げてるんですけど、WeWorkは怖いですか?(笑)。

小柴:最初来るまでは「私たちはこれからどうしたらいいんだろう?」というようなミーティングはしました。だけど、やっぱり私たちって……。

高橋:ミーティングしたんですね(笑)。

小柴:はい。「これからの働きっていったいどうなるのか?」といったことを社内でいろいろ話して。でも、今までやってきたのは、人と人がどうつながって、新しい企業に代わる組織として、いろんな人がおもしろく生きていくのが大事かなと思っています。その「来る」という体験が非常に大事なのかなと思うので、同じような感じではありますけども、そこにフォーカスしています。

吉田:なるほど。では今のお話を踏まえて、堀さんから、それこそ個人に対しての課題感などを。

:そうですね。先ほど申し上げましたように、お客様の健康増進をお支えしたりサポートしたりということにすごく高い使命感を持っています。問題は結局、私ども保険会社が今まで相手にしてきたお客様は、一所(ひとところ)にいらっしゃって、いわゆる正規雇用のホワイトカラーのみなさんだったり、「ここに行ったらその方に会える」というお客様が大半だったんですね。ただ、どんどんそうじゃなくなってきているということについて、シェアリングエコノミー協会の方とお話しをするなかで、改めて実感しています。

例えば「健康診断を必ず毎年1回受けていらっしゃいますか?」「ご自分の健康だったりご自分の身体だったりをどこまでケアされていますか?」ということが疎かになりがちなのではないかという(シェアワークの)方々に、健康増進型保険「Vitality」をお届けするときについてです。

どんどん変わってきている働き方の変革に保険会社としてもキャッチアップをして、「サポートができますので、なんなりとお申しつけください」といったかたちでお話しをしていかないと、せっかくの健康増進という取り組みをお届けできないのではと、すごく痛感しています。ですから、こういうサミットなどに出させていただくのは非常にありがたいと思っています。

吉田:なるほど。

少子高齢社会にマッチする理想形の保険

吉田:その保険というビジネスモデル自体が、これからの個人に対してどうミートしていくかというのはちょっと興味があるんですけど。本来は正社員がいて、大企業から源泉徴収で介護保険料などといったものが取られ、生命保険も正社員であれば入れる、あるいは、そういう医療保険も入れるといったようなかたちです。

病気をすると、病院で点数が入って、その点数によってまた支払いが行われるというかたちで、保険のエコシステムは回っていたと思うんですけれども、そこのエコシステムは完全に個人と離れています。さらに言うと、今のお話だとそもそも病気をする前の未病の分野ですので、これが逆に普及すると、レセプトの点数は減ってしまうという可能性があります。

それでいくと、イノベーションのジレンマみたいなものは社内ではどういうお話になっていますか?

:やっぱり生命保険、私どもの民間の保険というのは、いわゆる社会保障を補完するものだということでずっとやってきました。ではその社会保障というのは今後どうなるかということを考えると、なかなか先行きが不透明だというところが正直ありますね。これだけ少子高齢化が進んで、年金だったり医療だったり社会保障給付費がものすごい勢いで増えていくなかで、その源泉たる収入や若い人がどんどん減っていくのはもう見えています。

もちろん、そのうえで補完するということなんだけれども、そこはやっぱり長期的に、老後の備えにしろ、医療だったり介護だったりの備えにしろ、もしそれで不安があるんだったら、そこはやっぱり長期的にご自分で備えるしかない。

先ほども言いましたが、そもそも寿命は伸びても健康寿命は決して伸びているわけではないというなかで、いつまで健康で元気で自分で生活できるのかがやっぱり大事になってきます。

未病の部分により力を入れていく。健康増進というところに力を入れていく。ただ、人間ってわかっていてもやっぱり弱い。健康的な生活に変えるきっかけがなかったり、変えたとしても続けることができないことが圧倒的に多いので、そこにピタッとくるものを「Vitality」ということでお届けをしたいなと思っています。

吉田:なるほど。そこに今のお話を加えて伊藤さんと少し総括をしていきたいと思います。

これからのセーフティネットとスキルアップについて

吉田:今の未病の話、健康増進、それはコンセプトとしては正しいと思いますが、私がクラウドワークスでユーザーと接してきて思うのは、個人として生きていくことに対してのリテラシーが日本人は非常に低い。要は、新卒で大企業に入ると社会保障はなにも考えなくてもついてくる。

アメリカであれば社会保障は正社員じゃなくても自分で選ばないといけないので、自分で勉強して、自分の収入の何パーセントをそういった保障に充てるべきかということをそもそも自分で考えないといけない。

ところが日本人は、そこが無意識についてくるから、生命保険というとアドオンされた費用のように感じてしまう。要は、どうしてもそういうふうに考えてしまうのを変えていかないといけないと思うのです。そういった個人の働き方や働き方の周辺の啓蒙についても、ちょっと。

伊藤:ありがとうございます。私はフリーランスの研究会をして、3,000人を対象にフリーランスの方に政府が初めて大規模調査をしたんですね。「一番何が課題か、何に困っているか、何に不安があるか」。回答は2つで、1つはセーフティネット。「身体の調子が悪くなったときにどうなるんだろう?」。もう1つはスキルアップ。「学びの手段がない。普通に会社で正社員で働いていればOJTで働けるのに」。この2つでした。

でも本当は、セーフティネットも学びも「フリーランスの人だから手段がない」「正社員だから手段がある」ということではたぶんなくて、本当は企業に雇用されている正社員だって、本当の意味でのセーフティネットはないし、学びだって、今この4次産業革命のなかで、全部OJTで学べるわけはないんですよね。

そう考えると、政府としていろんな制度、社会保障制度を充実させるとともに、個人が雇用されていようともフリーランスで働いていようとも、自分でしっかりその制度を学び、そして自分の足で立つと。そのときの1つの大きな鍵は、学び続ける力。

これからいろんなスキルの賞味期限が短くなってくるなかで、(私は)先ほど「持ち札」と言いましたが、自分の活躍のフィールドをどこに設定して、そのためには何のスキル、何の人脈、何のパッションが必要かということを自分で見極めて、自分でキャリアを作っていく。それがいま吉田さんがおっしゃった、ある意味でのリテラシーということだと思います。

吉田:なるほど。ありがとうございます。

シェアリングエコノミーは今後どうなるか

吉田:それぞれの方面からの動きは感じてきたなと思っていまして。副業の条文が入ってきた。あるいは保険会社が、病気になってからの対策ではなく、未病のほうになってきた。WeWorkが7万4,000円でいろいろついてくると(笑)。そういうことで、グローバルのネットワークに対して、日本人がはどうしても日本語圏で生活するイメージがあったので、そういった日本にいても個人がダイレクトに世界とつながれるチャンスが生まれてきた。

そして、小柴さんのほうは、証券会社(を退職して)からこういった個人の人たちを支援するような「箱」を自然につくるような時代になってきた。というような、世界の動きをすごく感じます。最後に30秒ずつぐらい、シェアリングエコノミーが今後どうなるかということと、みなさんへの投げかけも含めて、ご自身の抱負を30秒ずつ4人からいただいて終わりたいと思います。では小柴さんから。

小柴:個人が主役になるという時代が来ると思っています。みどり荘とかシェアオフィスというのが、企業に代わるものとして位置づけられて、ある意味1つのセーフティネットになってくればいいなというふうには思っています。

そのために、いろんなバックオフィス機能だったり、ホームとか、そういうことである程度シェアサービスをうまく組み入れることができたら、一人ひとりが働きやすくなるんじゃないかというところと、あとは「働く」という概念自体が、プライベートと分けているという状況から、生きるということと同じようなことだとの認識が強くなってくると思うんですね。

そのなかで「どうやって生きるか・働くか」というところを、一人ひとりが自分の意思で勝ち取っていかないといけないんだろうなと考えています。

吉田:はい。今日はありがとうございます。

(会場拍手)

「シェア」の概念が変える未来の社会

吉田:では、高橋さんお願いします。

高橋:弊社の1つモットーとして「Do what you love」というのを掲げていて、生産性という議論もそうだと思うんですが、一人ひとりが自分のやっている仕事に対してワクワクしていてやりがいを感じていれば、たぶん自ずといろんな工夫もするし、いろんな新しいアイデアもいろんなチャレンジもすると思うんですね。

やはり、そこが根底にあるのかなと思っています。まさにその「シェア」という概念に基づいて、もっともっといろんな人が交流して、そのアイデアを含めてシェアしていくような、そういう場になってくると、それぞれにもっと情報が入ってきて、いろんな出会いがあって、そこから本当に自分がやりたいことを見つけていける。

そういった世の中になっていくと、もっともっと盛り上がってきて、一人ひとりがもっと生きがいを感じながら生活できるのかなと思っています。そういったものを我々も会社としても促進したいですし、ぜひみなさんと一緒にそういった世の中を日本で作っていきたいなと思っています。

吉田:はい。本日はありがとうございました。

(会場拍手)

では、堀さん。

:健康増進型保険でお支えしたいと申し上げましたけども、私どもとしては、「Creating Shared Value(共有価値の創造)」ということで、健康増進を含めた保険・保障をお客様にお届けすることで、まずはお客様に健康になっていただく。お客様に健康になっていただいて非常に(良い)評価をいただければ、会社としてはお客様が増えますので、会社にとってもいいですねと。

なにより社会にとっても、国民一人ひとりが健康になって、社会保障費の削減ですとか、社会の活力となってくるときに、それぞれにとっていい共有価値を創造していくことを標榜して取り組んでいます。

これから今後の社会やお客様と考えたときに、先ほど申し上げましたとおり、正規(雇用)の方だけではなくて、シェアワーカーの方々の新しい働き方の部分がどんどん増えていって、社会の多くを占めてくるようになることは間違いないので、「とくに健康増進という意識がどうしても薄くなりがちなのでは……」と思う方々にこそしっかりお届けすることで、我々もがんばっていきたいなと。なにかまたご用命等あればおうかがいしますので、よろしくお願いします。

吉田:はい。ありがとうございます。

(会場拍手)

それでは最後の締めを。

伊藤:さっき小柴さんがおっしゃった「『オーシャンズ11』型の仕事」。あれはすごく重要なメッセージだと思うんです。今日は大企業の方もたくさんいらっしゃっていると思うんですけれども、たぶん営業1課で完結する仕事ってもうないんですよね? 社内でいろんな仕事がプロジェクト化していて、他部署、あるいは社外のいろんなパートナーとアライアンスを組んでいる仕事ばかりやっています。タコツボの典型の(ような)。霞が関だってそうです。

あと、いま日本が抱えている最大の病気もやっぱりタコツボで。これから日本で本当にイノベーションを起こそうと思ったら、今日まさにいらっしゃっているみなさん、我々がタコツボを超えて、フリーランスとか社員だとかに関係なく、民と官も関係なく、つながっていくということがこれからどんどん大事になってくるんじゃないかと思います。

私ども経済産業省もぜひその結節点となりたいと思っていますので、よろしくお願いします。今日はありがとうございました。

吉田:ありがとうございます。

(会場拍手)

ということで、私も毎回SHARE SUMMITのモデレーターをさせていただいていますが、やるたびにみなさんの意識がどんどん変わってきているなと感じます。ぜひ今日のこの機会に、今日をきっかけに、一人ひとりがシェアに巻き込まれる側からシェアを仕掛ける側になっていければなと思います。本日はありがとうございました。

(会場拍手)

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