2024.10.10
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SHARE × MONEY 〜21世紀に求められるお金の役割〜(全1記事)
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中山亮太郎氏(以下、中山):マクアケの中山です。このセッションは、「21世紀に求められるお金の役割」という題材です。壮大なテーマだなと思っていまして、取っ散らかりそうな気がするんですが、なんとかまとめていけたらなと思っています。
一番気になるのが、お金かなと思っていて、いまどういうベクトルで流れているかという話を今回できればなと。
20世紀は車を作って「ほしいですか?」「買います!」というように、お金と物の1対1の関係だったものが、なんとなく21世紀はお金の流れ方がすごく変わってきているなと思っていて。このまま加速していくと、どうなっていくのか。お金のベクトルみたいなところをお話しできればと思っております。
まずは我々3人がいま何をやっているのかを、若干紹介できればと思います。
林篤志氏(以下、林):Next Commons Labの林と申します。冒頭で何をやっているかという話をしたいなと思っています。僕たちは、日本の地方などをフィールドにしながら、起業家の育成をやりたいと思いました。
けっこう幅広くやっているので、まずローカルで何をやっているのかというお話をしつつ、最後にお金の話につながるようないまの活動。次のお金の使い方であったり、どういう経済圏のあり方にしたいかを、説明させていただきます。
「ポスト資本主義社会を具現化する」というビジョンを掲げてやっていて、「いまの社会って何なんだろう?」から考えたいんですね。いろんな課題がある中で、たぶん今日ここにいらっしゃるみなさんも、僕自身も10年ぐらいいろいろ、ソーシャルビジネスやローカルの現場でいろんなことをやってきたんですが、「社会ってなかなか変わんないよね」というのが、大きな課題として立ちはだかってるんです。
「いまの社会とは何なのか?」と捉えたときに、巨大な1つのシステムだと思ってるんですね。下は国家だし、もう1つは資本主義という、巨大なシステムの上で、我々はのっかって生きているし、課題もいっぱいそこに散らばっています。ここに対して「社会を変えていこう」「課題を解決していこう」と、いろんな人たちがアプローチしてるんだけれど、「なかなか変わらないよね」と。
変わるかわからないものに対してアプローチし続けるぐらいだったら、そもそも社会をゼロベースで作っていくオペレーティングシステムみたいなものを作れないか、ということをやっています。
大きなものを作る必要はなくて、それぞれが作りたい社会の構造を作っていこう。そして、それに対してそれぞれの通貨が生み出され、それぞれの経済圏が生み出されていくような、新しいレイヤーを作っていこう、ということをやっています。
そういったことを概念的に(説明します)。実際にテクノロジーを使いながらもやっていますし、地道に地域の自治体に入っていって、地域資源を活かして起業家を生み出していくといったこともやっています。いまは2020年までに全国100ヶ所にそういう拠点を作っていこう、ということをやっていまして。
これは第1号で始まった岩手県遠野市です。1つのエリアにだいたい10名から15名ぐらい、全国から起業家を選抜して、集団移住させるということをしています。集団移住させて、そこにある地域資源を使って、新しい社会システムや新しいビジネスを作るためのサポートをするということを、全国各地でやっていると。
遠野の1つのプロジェクトで、例えば街のど真ん中にコミュニティブリュワリーができたり、そういったかたちで、いま全国10拠点で29のプロジェクトが始まっていると。その中にはシェアリングエコノミー的なものもありますし、ソーシャルビジネス的なものからスモールビジネスみたいなものもあると。だいたい65名の起業家が全国でやっていて、今年100名ぐらいのメンバーに増えつつある。そういったネットワークをいま持っています。
もっと言えば、「国家を作れるような仕組みを作ろう」という考え方です。理論的に言えば、たぶん誰でも貨幣が作れるようになった時代、経済圏を作れるようになった時代。次にどうなっていくかと言うと、誰でも国家が作れるような時代になっていくと思っているんですね。
いま国連に登録されている国家の数はだいたい200ぐらいあるんですけれども、僕たちのチームの中では、2030~2040年ぐらいにかけて、国家の数が数十万人から数百万人に増えていくんじゃないかと考えています。
このCommons OSを導入する先として、どういったところを想定しているか。いま決まっているのは国内の自治体ですね。石川県加賀市に導入が決まったり、名前は伏せますが、信者が80万人ぐらいいる宗教法人さんからお声がけいただいて。80万人というのは国(の規模)なんですよね。
中山:そうですね。ちょっとした県レベルはありますね。
林:そうそう。要は物理的に線引いて「○○市」という概念ではなくて、共通の価値観やビジョンを伴った経済圏が生まれ、それが国になっていく時代になると考えています。
いまの法定通貨をベースにした経済圏ではなく、ブロックチェーンを使って、例えば共通の価値観をベースに、いろんなものについて価値交換のスピードが上がっていくような、独自の経済圏が無数に生まれていくようなものを作っていく。
シェアリングエコノミーで大きなプラットフォームを1個作って、大きな経済圏を作る考え方ではなくて、それぞれが立ち上げたい経済圏を、それぞれの価値観ベースで作っていく。それに必要なオペレーティングシステムを、オープンソースで提供していくプロジェクトです。
具体的にはウォレットであったり、地域通貨やコミュニティトークン専用の取引所であったり、実際にその社会関係資本みたいなものをビジュアライズするダッシュボードみたいなものを、いま開発しています。
僕たちは「ベーシックアセット」と言います。もっと言い換えれば、「人生定額で生きられるよ」という言い方を僕たちはしていて。
千葉孝浩氏(以下、千葉):携帯プランみたいな。
林:そうそう。「人生定額プラン」と言っています。ですので、限界費用ゼロ的な視点で、要は食糧生産、エネルギー、居住空間みたいなものは、基本的にはフリーで提供できる。
だって、日本全国、廃戸だったら6,000戸持っているんですよ。空きもめちゃくちゃあるんだけれど、新築の家がバンバン建っていくという、よくわからないおかしなことになっているわけです。フードコストだってそうですよね。食糧はめちゃくちゃ余っているんだけれど、みんな働いてお金を払って食べ物を買っているわけなんです。
要は放ったらかしにして私有財にしているぐらいだったら、みんなで管理をしてみんながアクセス可能な公共財にしてしまおう、というプロジェクトをいまやろうとしていまして。これをいま、国内の人口数十人のある島を舞台に、そういう未来モデルを作ろうということで、実証実験をスタートしようとしています。
こういった動きを作りながら、先ほど言ったような、誰でも共通の価値観を持っている人と独自の通貨を生み出して、その通貨のデザインをして、そこの経済圏から生み出されたものを、また自分たちのコミュニティに再還元していくような仕組み作りをCommons OSというものを通じて、自治体や宗教法人、エコビレッジや国単位でも導入を進めていくことを、いま順次やっていまして。
それをただどんどん広げていくだけではなく、日本のローカルみたいなフィールドをうまく活用して。やっぱり個人でやると消費しか進まないんだけれど、ただ消費だけではなく、自分たちが一人ひとり、人間として生産活動にコミットできるような世の中を作っていきたいことを考えているプロジェクトです。以上です。
中山:ありがとうございます。それだけのテーマで、僕はものすごく語り合いたいなと思ったので、今度飲みに行きましょう、という感じなんですが(笑)。
(会場笑)
林:はい(笑)。
中山:やっぱり村だったり、同じ価値観で、距離関係なく集まっていくということは、僕もすごくテーマかなと思っているので、深く堀っていきたいと思いました。
千葉:TRUSTDOCKの千葉と申します。よろしくお願いします。私、前職はガイアックスという会社に長くいて、いろんな新規事業をやったりして、いまは、TRUSTDOCKという事業をやっております。
僕らはいま何をやっているかというと、この本人確認をやっています。とくに誰かわからないオンラインのIDについてリアルな人が誰なのかという、オンラインのIDの本人性を担保する技術をしています。
これはプラットフォーム事業者の裏側に入って、例えばPayPal、Stripeのように決済ペイメントゲートウェイというかたちで、本人確認のAPIをお配りして。もしかしたら実は、みなさんが免許証をアップロードされているサービスの裏側で、僕らがやっているかもしれない。
例えば、シェアエコからFinTechまで、いろんなサービスに入っています。今日はシェアエコのイベントなので、シェアエコ系を並べてみていて。例えば買取アプリ、C to Cといった、いろんなところに入っています。僕らはすでに毎月、いわゆる金融機関さん並みに本人確認をしていて、5ケタ以上という非常に多くのトランザクションを毎月さばいております。
本人確認していくと、僕らのアイデンティティ、とくにこのオンラインのIDは、例えば1人1個であるべきなのか、人間の多面性をどうやってオンライン上でデザインするかが非常に問題になる。このあと(話題に)あるかもしれないですが、「このIDの人は信用できるの?」「信頼していいのかな?」といったところを、非常に考えながら日々ビジネスをしています。
やはり、いまもみなさんは個社ごとに免許証をばらまいていると思います。免許証画像がいろんなところにばらまかれることは、僕自身もすごく気持ち悪いなと思うんですよね。僕らはインフラとしてリアルな免許証を提出しなくていい未来を作っていきたいと思っています。
中山:ありがとうございます。さっき言った、いわゆるKYC(顧客確認)的なところだったり、その派生で、信用みたいなところが、中国などではすごく当たり前化されすぎている、いきすぎてしまっているのかなというぐらい、ちょっと怖い未来もあったり。今日は、そのあたりの信用みたいなところも、みんなで深く掘れればなと思っていたりします。よろしくお願いします。
千葉:よろしくお願いします。
仕組みとしては、例えば新製品であれば、プロトタイプや試作品ですね。マクアケでは量産する前のタイミングで、予約販売ができる仕組みになってます。普通だったら、量産して、在庫を作って、小売に売ってもらって初めてユーザーに届くんですね。
ユーザーの反応が見られるまでに、とてつもなく長いジャーニーをしなければいけないんですけれども、デザインと試作品の段階でいきなりユーザーに予約販売ができるということで、いきなりもう「買うよ!」というような反応が返ってきて、しかもお金も普通に入ってくるので、そういったかたちで予約販売を量産前にできてしまうということが、いま製造業にものすごく刺さっていると。
大企業も中小メーカーもスタートアップのメーカーも、いったん量産前にマクアケに全部出して、顧客の反応をダイレクトに見てしまって、テストマーケティングやプロモーションなどをしつつ、売上金が先に入ってくるので、そのお金を使ってちょっと金型を買ってみたり、工場にロットで発注したりというかたちになっています。
いままでの生み出し方のプロセスが、ゴロッと1個変わってきたなと感じていて、ここはすごくマーケットフィットしたなと思っております。飲食店などでは、オープンする前の物件が決まって作っている最中は、すごく暇だったりするじゃないですか。というところで、オープンする前に、ここで会員権やお食事券を販売できてしまうというかたちで。
普通だったら、オープンしてからぐるなびやホットペッパーに出して、ようやく集客して、東京カレンダーに載ったらラッキー、という感じで、しばらくやっぱり赤字で進んでいく、という感じです。
でも、オープンする前にロイヤルカスタマーを何人も抱え込んでしまえば、オープン初日からその人たちが友達を4、5人連れてきてくれたりするので、飲食店にとっては、オープンする前にロイヤルカスタマーを囲い込めてしまう。とても効率的な手段というかたちで、いまマクアケを使っていただいている感じです。
なので、よく「マクアケって資金調達なの?」と言われるんですけれども、資金調達に関しては、一義的にはもう使われていないという。僕らもやってみてわかったことは、マーケットにフィットするのはどっちかと言うと、資金よりお客さんがいることのほうが前に進めることが出てきて、なんとなくお金の相対的価値が下がってきているのかな、と少し感じている今日この頃です。
そうすることで、普通だったら1年半後ぐらいに映画ができて、ようやくお客さんが映画館で1,800円出して、何ヶ月後かに配給会社かどこかから振り込まれるというようなキャッシュフローだったのが、(映画を)作る前に、エンドコンシューマーから、しかも1,800円どころではなくて、応援の気持ちも入っているので1万円ぐらいはぜんぜんもらえてしまう、というようなかたちで、けっこう映画は資金調達みたいな使い方をされているのかな、というところだったりします。
ジャンルとしては、小売で売られているようなあらゆるものですね。みなさんがいま座っている椅子だったり、今日僕がしている時計だったり、今日持っている財布も。もしくはドラえもんグッズのように未来のガジェットみたいな、そういうアイデア商品だったり。
文房具もそうですし、お酒もそうですし。お酒だと、日本酒の酒蔵はすでに100蔵ぐらい使ってくれているという感じになっていて。けっこう意外な感じだったんですけれども、お酒が業界に浸透するのが一番早かった、というものだったり。
千葉:最近流行っているのは、どれになるんですか?
中山:ファッションアイテムは業者の数が多いんですよね。メーカーさんの数がすごく多いので、ファッションアイテムはすごく多いのと。トレンドとしておもしろいなと思ったのが、コンシューマーのプロダクトはすごくやりやすくて。
B to Bの金型加工メーカーなどは、世の中にたくさんあるじゃないですか。そこが「自社の技術を使ってこんな文房具を作るよ」「こんなアイテムを作るよ」というように、B to Bの会社が新たにB to Cの商品を作るところにチャレンジしていくので、使っていただいていることがすごく増えていますね。
そういうこともあれば、すごく寄付っぽいかたちで、例えば祇園祭りみたいなところだと、外国人が増えすぎてしまったことから、ゴミがすごく増えてしまって、「ゴミ処理、どうしよう?」ということで、その運営資金がほしいというかたちで。
そういう寄付っぽい使い方ももちろんあるというように、すごく新しいものが生み出されるのと、古いものを守っていくというような、その両軸で使われ始めてる感じだったりします。これらがいま僕らがやってるサービスです。以上になります。
千葉:そうですね。僕らは非常にいろんなFinTech事業さんの裏側でやっているので、最近のいろんなFinTechに入っていますと。
やっぱり1つすごく衝撃的だったのは、買取アプリ「CASH」。これまで、例えば物を送ってからお金が入ってくるとか、そういうやりとりのプロセスを、先に入金するような、プロセスの順番を入れ替えるだけで、こんなに世界の見え方や概念が変わって、それが1つ手法になるというような。
それ以降、やっぱり「先に入金する」というサービスがどんどん増えてきましたし、入れ替えただけなのに、これだけまた違う市場が生まれるのか、というのが驚きで発見だったと思います。
中山:僕も、さっきのサービスの説明と同じなんですが、作る前にお金が入ってきてしまうんですよ(笑)。というような感じになるので、ほしい人がいるという勇気に変わって、やらなかったかもしれないことが前に進んでいったり。最近、お金と行動のプロセスが、逆になってきているのかな、というのが1つ。
千葉:そうですね。人間は、他人との約束をけっこう守りにいくと思うんですよ。僕も自分との約束、ダイエットはいつも失敗するんですけれども、他人との約束はちゃんと守りにいくので(笑)。
中山:(笑)。
千葉:やっぱり先に他人と約束されるというのが、1つキーなのかもしれないですね。
中山:そのあたりは、けっこう信用的なところが(大きい)。それこそやられているサービスなどで、なにか考えていることはあるんですか?
千葉:そうですね。やっぱり信用と信頼。信用は過去から現在までの積み重ねで、信頼は現在から未来までを信じるかだと思うんですよね。そこで、過去の信用がないと信頼されにくいという話。とくにシェアエコでよく言う、最初の取引のゼロイチ問題みたいなこともそうだと思っていて、ここをいかにデジタル上で、オンライン上で仕様設計するか。
しかも個社ごとではなくて、社会全体でデザインするか、というのは、こういうものがマーケットが広がっていくためにクリアしなければいけない課題の1つかなと思います。
中山:なるほどですね。冒頭のプレゼンでも多少触れていましたが、林さんは最近お金について思うことは?
林:そうですね。徐々に現実化していくと思っているのは、たぶん、今度はお金に色が付いてくるんじゃないかと思っていて。いろんな色のお金が出てくるんじゃないかなと思っているんですね。
いまのお金の問題は、お金が回っていないことがけっこう問題なんですが、「じゃあ、どうやったらお金が回るんだろう?」となったときに、地方でいま僕たちがやっているプロジェクトを見ていて、けっこう感じていることは、さっき写真の中で、「岩手県遠野市でスタートしています」と言って、20名ぐらいズラッと並んでいたと思います。あの人たち、集団移住した人たちなんですが、遠野出身の人やもともと遠野に住みたいと思っていた人は、一切いないんですよね。
どちらかと言うと、要はNext Commons Labというプロジェクトの遠野の拠点から生まれる未来にベットする人たちが集まっていて。共通のビジョンで人が集まっていて、その中だとやっぱり価値の交換が速いんですね。
例えば、もう1つローカルネタで言うと、けっこういろいろ見て回っていて、5年前ぐらいかな、ある地域に行って、そこがけっこう移住者が多い地域なんですよね。移住者は「類は友を呼ぶ」で、同じような人が集まるので、そこは「脱原発」「自給自足」「オーガニック」みたいなキーワードに近しい人たちが集まる地域だったんです。
ある古民家を改装した公民館みたいなところで、移住したお母さんたちが集まっていて。0歳、1歳の子どもたちを抱えて、ちょっとお茶会みたいなものをしていたんです。あるお母さんが0歳の子どもを寝かしつけながら、「ちょっと電話してこなきゃいけないから、うちの子どもを見ていてくれる?」と言って置いていったんですね、寝ているから。それで、隣のお母さんが「いいよ」と言って。
5分ぐらいしたら、その子が起きて泣き始めたんですよ。泣き始めちゃったら、隣のお母さんがその子を抱きかかえて、自分のおっぱいをあげ始めたんですね。
中山:ワイルドですね。
林:おっぱいシェアが行われたんです。
(会場笑)
僕的に言わせると、これはけっこう究極のシェアなんですよ。
中山:すごいですね。
林:だって、同じ0歳児を持っているお母さんが東京のカフェで隣合わせになって、「今日ちょっとおっぱいが出ないので、うちの子におっぱいをあげてもらえる?」というのは、超怖くないですか? 怖いですよね。
中山:まあ、捕まりますよね(笑)。
林:(笑)。お願いしている人もヤバいし、「このお母さん、普段何食ってるんだろう?」とか。もうダイレクトじゃないですか。自分の子どもという大切な存在に対して、シェアできないですよね。
でも、そのコミュニティが共通の価値観やビジョンを持っているから。なんとなく前提の条件というか……こういうものをみんなで食べていて、こういう未来をみんなで目指していてというような状況があると、価値の交換がものすごく早くなるんですよ。その中で独自の通貨みたいなものが生まれると、さらにその回転率が上がっていく。そういう感じがすごくいま、各地のローカルとか、宗教法人とか、そういった中で見えてくると思う。
林:昔はそうだったんですよ。農村社会で、みんな同じように朝何時に起きて、田植えして、だいたいそこで生活して、という時代だった。でも、日本中どこへ行ったってみんなバラバラなので。だから、改めてコミュニティの再編成みたいなものが求められている。そのコミュニティに応じて、いわゆるお金みたいなものがいろんな色で出てくるんじゃないかなという気がしますね。
千葉:ちなみに、お母さん同士が知り合いではなかったとしても、共通の価値観で集まっていたら行われる、という話なんですかね?
林:それはそうですね。ぜんぜん知り合いじゃないけれど、だんだん、そこに入ってくるということが、なにかしらのプロセスでやっぱりフィルタリングされたりするので、早まってくるという感じがしますね。
中山:「同じ地元なだけで」というのが人間にはありますよね。ライトだとしたら「同じ価値観で」というので、思い描いているところがしっかり一緒だったりすると、さっきのコミュニケーションの円滑さみたいなものもありますし。それから、人が集まってくるのが、すごくおもしろいなと思っていて。会社も組織も一緒だと思うんですよね。
マクアケもけっこうビジョナリーファーストな会社なんですが、どっちかと言うと「売上No.1になるぞ!」というのではなく、「ビジョンをどう体現していくか」というようなものだと、採用がものすごく楽なんですよ。
ものすごくびっくりするぐらい、採用コストがかからない。Wantedlyに出したらすぐいっぱい来るという感じでできるんですが、遠野市でそれができたというのが、お金というよりは、ベットしているのがお金ではなくて自分というのがすごいですよね。
林:たぶん、今度は生産や消費の話になってくるんですが、地方創生などの文脈ではなくて、いま、人はある種の家族みたいなものを求めていると思うんですよね。それは血縁の家族ではなくて、自分たちがこれからこの不安定な社会の中で生き延びていくための、同志を求めていると僕は思っているんですよ。
都市部にいると、消費しかできないんですよね。ほとんど消費しかできないけれど、どこかやっぱり人間として生産みたいなことをしたいと思ったときに、その生産をするときの仲間というか、家族みたいなものが、どこにいるんだろう? と考えていて。
そのフィールドとして地方というものがあるんだけれど、Next Commons Labというのは「地方に移住しませんか?」ではなくて、「ここのフィールドを使って、こういう未来を作りませんか? その当事者、来い」というかたちで人を集めているので、地方に集まっているというよりは、場所はあまり関係ない。ただ、その生産としての、フィールドとしてのポテンシャルやリソースが、地方のほうが余白があるのでやりやすいという感じなのかなと思います。
中山:今日、地方関連の方、自治体もしくは地銀のような地方とビジネスしている人は、どのくらいいらっしゃるんですか?
(会場挙手)
いらっしゃいますね。僕がけっこう地方のテーマだなと思っているのが、「人が来てくれ」と黙っていても、絶対に来るわけなくて。「じゃあ、どうしようか?」というときに、価値観を作っていくのはすごく意味があるなと思って。
ただ、遠野市の場合は、全員が「こういう未来を作るぞ」ではなくて、「遠野市でこういう未来を作るぞ」という人が集まってきた、というパターンなんですよね。
林:そうですね。だから、結局もう1つは「人間はそんなにシンプルではない」という話で。例えばAlipayの話では、中国だと全部スコア化されて評価される。さっき、打ち合わせをしながら、「それはユートピアなのか、ディストピアなのか」という話をしていて。
千葉:そうですね。
中山:信用については、例えば中国では、お金を返した・返さないといったいろんな行動がデータ化されて、「こいつはもう出国させられないぐらいダメな奴だ」というデジタルタトゥーを貼られる、というところまでいってしまう世界だったりして。
ただ、その人が子どもや家族の前ではぜんぜん違っていて、とてもいい奴だったり。1週間後、本を読んだらとてもいい奴になった、というかたちで変わるかもしれない、というような話をしました。
中山:そうそう。僕はけっこうディストピア的だなと思っていて(笑)。
千葉:そうですか(笑)。
中山:評価するのは、小学校・中学校の通信簿ぐらいでもうやめてくれ、という感じなので(笑)。だから、人間はそんなにシンプルではなくて、「首尾一貫した1つの人格が、個人がいて、それをスコア化すれば社会が安定化するんじゃないの」というような設計思想でたぶん組まれている気がします。
でも、おっしゃったように、家族の前での僕と、例えばここで話している僕と、地元の仲間と話している僕は、もしかしてぜんぜんキャラが違うかもしれない。でも「それも含めて俺じゃん」というように思っていて、「そんな俺をスコア化なんてできないでしょう」と言いたいわけです。
だから、それぞれの価値観やそれぞれのキャラというか。それぞれが属する、いわゆる人格というものは非常に多面的で、それに合わせた経済圏とコミュニティが存在していて、それぞれの中で私という人間が生きている。そういうお金の使い方というか、経済のあり方が、どちらかと言うと日本のシェアリングエコノミーみたいなものが目指す世界なんじゃないかな、と僕は感じてます。
中山:曖昧が許されるというか、ちゃんと曖昧をフレーム化されているよね。
林:多重人格でいいじゃん、という。
千葉:難しい話ですよね。やっぱり一個人としたら、「いろんなものを把握されたくない」というような、いつ『マイノリティ・リポート』みたいな世界になるかわからない、という話がありつつ。
中山:ありますよね。
千葉:どちらも正義があって、というような。この正義と正義のぶつかり合いで、どうデザインするか。例えば一見さんには冷たいけれど、常連さんにはやさしい居酒屋マスターがいて、この人は果たして冷たいのかやさしいのか、どっちでスコアするんだって。
林:そうですね(笑)。
千葉:評価する人の見方でバイアスがかかって。
林:めちゃくちゃレートが低くなったり(笑)。
千葉:僕らはいま、例えばソーシャルメディアみたいなものの第一世代だと思うんですよ。これが、例えば10年、20年とどんどん歴史を重ねてくると、僕らの子どもたち、孫がググったら、もしかしたら過去のおじいちゃん、ひいおじいちゃんたちのいろんな行動が出てくるというような。
ひいおじいちゃんが中学時代にアルコールを飲んだ写真が出てきただけで、そのひ孫の就職活動に影響するというようなことになったら(笑)、ソーシャルカーストが仕上がっている話で。
例えば、忘れる権利とか。KYCをやっていると、「果たしてアイデンティティとは?」「人権とは?」「死刑制度はあるべきか?」というように、いろんな哲学的なところに行きつきやすくて。
中山:そうですね。
千葉:どういう仕様設計をするのがいいのかは、中国のもの、エストニアのものといった他国のものをそのまま持ってきても、パズルがはまらない気がしていて。やっぱり日本版のデジタルアイデンティティというか、そういうものをちゃんと作らなければいけないのかなと。
中山:いまおっしゃっていたところで、お金の流れ方は2つだけではないんですが、最近2つという括り方で出てきているなと思っていて。
未来の確からしさという括り。例えば「こいつちゃんとしているから、金を返すよね」という未来の確からしさだったり。さっき言った、「ここでやるこの活動は、きっと未来につながるであろう」というようなところに対してお金が流れていったり。単純に「このプロダクトがちゃんとできて、素敵な体験になるに違いない」「このお店は、素敵な体験ができるかもしれない」といったものだったり。
その未来の確からしさに対して、なんとなく寄付、消費、投資するといったように「儲かるかもしれない。投資する」という、未来の確からしさという括りが1つできるかなと。
例えばAI(スコア・)レンディングなどでは、いろんなデータで集めていたり、さっきの信用みたいな話の多様化だったりするんですが、それをいま思いっきり数値化しようとしているというようなところではなくて。
もうちょっと曖昧な日本人らしい未来の確からしさとして、信用みたいなものができてくれば、「その人が」「その会社が」「その自治体が」やることは、未来に対してなにかキラキラしたものが待っているに違いないとなると、すごくお金が流れてくると思うので、そのあたりにうまくテクノロジーなどを使っていけるといいのかな、と思っています。
千葉:シェアとマネーでテクノロジーという話になると、例えばブロックチェーンがトークン化したものはすべからく二次流通できる。流通できるものは金銭的価値を帯びてしまうので、例えば給料を何で受け取るかが選べる時代が来るかもしれないし(笑)。
中山:そうですね。確かに。
千葉:結局それも変えられるので。
中山:でも、そういう感じで選べるというのは……。
林:スタッフからは、「まだ円がいいです」という感じになりますが(笑)。
中山&千葉:(笑)。
中山:もう1つは、さっき林さんが本当にばく進されている価値観へのベットというか。そこはすごくお金が流れるなと思っていて。「こんな未来が待っているよ」という価値観。イーサリアムではないですけれども「こんなのを一緒に作ろうぜ」というところに対して、ICOなどの話もありましたが、お金は流れていくときに、その価値観の作り方は、どうやったんですか?
林:今のところ発展途上という感じかな、と思いますね。どちらかと言うと、けっこう僕たちの中でもこれからの実証実験のテーマなんですが、お金も国家も共同原則ですよね。
中山:そうですね。
林:国家も100年前になんとなく作ったようなものだし、お金は紙なんだけれど、一応、日本国民が「この紙が使える」と信じているから使えるわけですよね。ただ、重要なのは、一応ホモサピエンスとしての最大の能力は、共同原則を作れるかどうかという話だから。
中山:はい。
林:たぶんいまこの世の中に生きている人のほとんどが、共同原則の作り方を知らないんですよ。要は自分たちの価値観をベースに、ある種国家的なものを作っていくという行為をいままでしたことがなかったので。それをたぶんこれから作っていくのは、すごく重要な取り組みになるかなと思っています。
信用は過去のものだから、(千葉氏の肩に手を置いて)「おまえ、さんざんひどいことをやってきたけれど、俺はおまえのことを信頼するぜ」という世界は、絶対に必要だと思っていて。家族だったらどんなひどいことをしても、最後は「信頼するよ」というような。
千葉:愛ですかね(笑)。
林:愛なんだよね。別に家族だからと言って、愛があるかどうかはわからないんだけれど。愛というか、信用の無限増殖装置みたいなものを担保できるようなコミュニティであったり。拡張家族みたいなものを誰もが持つようになっていかないと、たぶんかなりひどい世の中になるんじゃないかなと思っているので。
どういうふうにそのアーキテクチャを設計していくか、というのは重要なポイントだと思うし。自治体や企業はいままでの役割どおりやればいいのではなくて、ある種のホームポジションみたいなものを、自治体・企業がどうやって担えるようにトランスフォームしていけるかがすごく大きなテーマかなと思います。
中山:見事にまとめていただき、ありがとうございます。
林:(笑)。
中山:ちょうど時間になりました。質疑の時間が取れず申し訳ないですが、よろしければこのあとも、というところで。意外にまとまったかなと思っていまして。
林:本当ですか?(笑)。
中山:お金のかたち自体が変わっていくのは、変わっても変わらなくてもどっちでも、便利になればいいのかなと思っているんですが、それの流れ方みたいなものが、いま話した中で少しでもヒントになっていただけたらな、と思います。
まさに最後に林さんがおっしゃったところですが、企業や個人、自治体が、どうあっていくのかについて、少しでもおみやげができたらなと思っています。
千葉:お金が共同幻想であるところから、その共同幻想の作り方を僕らが学ぶと、僕らがみんなお金を作るという話ですよね。
林:誰でもお金を作れるようになる世界になっていくでしょうと。そして、僕はいずれお金はなくなっていくんじゃないかなと……。
中山:最近、「お金をなくす」というような感じでZOZOの前澤(友作)さんがそういうツイートをしていたなと思って。壮大なテーマなので、時間はいくらあっても足りませんが、いったん以上で締めさせていただきます。みなさん、ありがとうございました。
(会場拍手)
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