2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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宗像淳氏(以下、宗像):みなさん、おはようございます。モデレーターを務めさせていただきます、宗像でございます。本日は、2時間少々おつきあいいただければと思います。今日は「“いいね!”が変えるにっぽんの将来」ということで、特にファンベースがテーマです。
これだけ広がっているSNSを活用することで、ファンと世の中を変えたいなとか、こうなったらいいのになということを後押しする人たちが活躍できるようになってきたと思います。今日は、ファンを集める側の人と、ファンとなって応援している側の人にご登壇いただいて、お話を聞いていこうかなと思っております。
私は一応モデレーターをやらせていただいていますが、震災をきっかけに起業しまして、マーケティングの会社をやっています。SNSやインターネットでどうやって発信していくかという仕事をしていますので、モデレーターとしてご拝命いただきました。では、江守さん自己紹介をお願いします。
江守敦史氏(以下、江守):「日本食べる通信リーグ」の江守と申します。食べ物付き情報誌という、雑誌に食べ物が付いてくるサービスをやってます。詳しくは後でお話したいのですけど、もともとは編集者を20年近くやってきました。かつては『週刊ファミ通』という雑誌を(編集していました)。
古川未鈴氏(以下、古川):えっ!
(会場どよめき)
宗像:事前打ち合わせでも聞いてないですよね(笑)。
江守:はい(笑)。その(『週刊ファミ通』の)編集者や、CD付き音楽雑誌の『ザッピィ』の編集をしていました。
古川:懐かしい(笑)。
江守:その辺りを終えて、今は地域や食をテーマに活動したいと思って、この仕事をしています。あと、イノシシや鹿を撃つ猟師もやっています。よろしくお願いします。僕は突っ込みどころが多いので、次にいってもらったほうがいいと思います。
宗像:ちょっと後にとっておくということで、次は森さんお願いします。
森歩氏(以下、森):初めまして、森歩と申します。外国人の方に日本語を教える仕事をしています。はい、以上です。
宗像:ありがとうございます。森さんもいろいろ引き出しが……。あまり言ってはいけないですよね(笑)。
森:はい(笑)。
宗像:おもしろいので後で(笑)。では、大庭さんお願いします。
大庭啓太氏(以下、大庭):初めまして、青山学院大学の2年生の大庭啓太と申します。よろしくお願いします。学内では1年生の時に愛好会からボランティア団体を立ち上げ、去年度から公認になったUN:LIMITEDという団体の代表をやらせていただいています。緊張しているんですけど、よろしくお願いします。
宗像:ありがとうございます。では、みなさんお待ちかねの古川さんです。
古川:みなさん初めまして。アイドルユニットのでんぱ組.incの古川未鈴と申します。でんぱ組.incは、秋葉原を拠点に活動しているグループで、今は7人体制です。どんな感じかをわかりやすく言うと、たぶん今日は多少ファンの方もいらっしゃってくれているようなので、いつもの挨拶をやってみましょうか。
宗像:はい。ぜひ、ぜひ。
古川:よかったらみなさん、ここだけは盛り上がっていただけると(笑)。じゃいきまーす!「上上下下ABAB、みりんのハートに?」
会場:「Bダッシュー!」
古川:『歌って踊れるゲームアイドル、みりんちゃんこと古川未鈴です!』
会場:「せーの! みりんちゃーん!」
古川:みたいなことをふだんはやっております(笑)。みなさん、ありがとうございます(笑)。
(会場拍手)
宗像:こういうイベントって真面目な感じになりやすいので、こっちの立場としてはけっこう難しいですよね。みなさん、いい感じで盛り上がっていいんじゃないかなと思います。
古川:おおっ! そんな感じでございます(笑)。
宗像:はい。ありがとうございます。実は、自己紹介Ver.2が準備されています。今まではどちらかというと表向きの肩書で、次は裏の肩書というか、はまっているものを中心に自己紹介をしていきます。
まず、自分を晒すようでちょっと恥ずかしいですけれども。私は表向きはマーケティングの専門家で、一応、本も出させていただいるんですけれども、実は一皮剥くと……。古川さんはこれ何だかわかりますか?
古川:フェレット?
宗像:フェレットが本当に好きで。今は子どもがアレルギーで飼ってないんですが、当時は4匹飼っていました。
古川:フェレットって、けっこうサイズが大きいですものね。
宗像:そうですね。尻尾を含めるとこれぐらいです。フェレットは本当に良いので、ぜひ飼ってください(笑)。それと最近はヨガや瞑想ですね。僕の話はそんなところです(笑)。
古川:すごく女子力の高さを感じますね(笑)。
宗像:そうですか、女子力が(笑)。ありがとうございます。では、次は江守さんです。
江守:はい。表向きはこういう肩書き(「ファンとともに社会を変革するコーディネーター」)になっています。僕の会社員時代は、とにかくお金を稼ぐことが大好きで、資本主義にまみれていたんですけど、その後、考え方が変わりました。今は自給自足というか、どんどん自給しようということで、これ(スライド)は、全部僕が作っている野菜です。
宗像:あっ、本当ですか。
江守:何かあらゆるものを作りたい、獲りたいという流れで、狩猟もやっています。今日も畑仕事をやってからここにきました(笑)。
古川:もうガチでこういう(笑)。
江守:ガチでこういうのを(笑)。
古川:ああ、すごい!
宗像:次は森さんお願いします。
森:私は普通にフルで仕事をしているんですけど、お休みの日を活用して、農家さんや漁師さんの応援活動をしています。今応援している岩手県大船渡市にある漁協の『綾里漁協食べる通信』から名刺をもらいながら、その浜で作っているおいしいものを東京のみなさんに知ってもらう活動をしております。
宗像:漁協の名刺はもらえるんですか?
森:もらえるって「うん」とは言えないですが(笑)。ただ「漁協の応援をしてます」と東京で言っても、ちょっと伝わりにくいんですよね。みなさんに、まず「漁協って何?」「応援ってどういうこと?」と言われるので、漁協の方とも相談して「怪しいものではない、勝手にやっているのではない」というところで。
(漁協の名刺は、仕事で使っている名刺と)同じ情報が載っているようなものなんですけれども。すごく悩んだんですが、一応「東京コーディネーター」という名前で、その浜で獲れたものを東京で販売したりしています。
宗像:なるほど。ひょんなきっかけで関わってきたということですね。
森:そうですね。スライドの右側が実際の漁師さんで、左側に一緒に私が写っているんですけど、わかりますか? 一緒に船に載って、手前でオレンジの服を着ているのが私です。これは水揚げをしている様子なんですけれども、何の水揚げかわかりますか?
海産物は水揚げされた状態では、雑物(ざつぶつ)と呼ばれる栄養がすごくたくさんついているので、そういったものをまずは船の上でガンガン取り除く作業があるんです。そういったものを取り除くと次の写真です。
これはホタテですね。さっきの写真で見ると、どれがホタテかわからないぐらい雑物がついています。本当に必要な栄養があるからなんですけども、そういうホタテなどを一緒に収穫させてもらってます。これは船の上で食べるのが一番おいしいです(笑)。
古川:最高!
宗像:確かに(笑)。
森:塩加減が最高なんですよね。これはまさに作業後に食べている写真ですね。
宗像:何もかけなくてもおいしい?
森:本当にいらないです。よく聞かれるんですが、まずはそのまま食べてください。
江守:ここの漁師は僕も知っている人なんですけど、醤油をかけたら怒るんですよ。
古川:えーっ!(笑)
森:いやいや、海の塩味がきいているので醤油はいらないです。
古川:確かにそうですね。
宗像:テレビなどでもときどきありますけど、実際にそうなんですね。
森:1つが漁師バージョンで、もう1つが農家バージョンです。福島でアスパラガスを作っている農家に四季ごとに通って、一緒にアスパラなどの野菜の収穫をさせてもらっています。友だちにも声をかけて一緒に行っていますが、初めて行った人同士でも、現地に行くと仲間になってくれるので、アスパラの収穫がない時期にもツアーを組んで回っています。
宗像:ありがとうございます。生産者さんをいろいろ応援しているという感じですね。次は大庭さんです。
大庭:僕も普段は青山学院大学で、授業をとってレポートを出してという生活を送っています。さっきボランティア団体と言ったんですが、夏休みや春休みは、韓国やネパールに足を運んでもらうことをテーマに、大学生が大学生に向けたスタディツアーの企画・運営をする団体をやっています。
次のスライドに、この団体を始めた3人の仲間の写真があります。「UN:LIMITED」という名前は「限界を壊そう!」ということなので、作業着を着て軍手持ってという、わけがわからない写真になってしまっているんですけど、そういう意味を込めて撮りました。
古川:ちょっと芸人さん感がありますよね(笑)。
宗像:大道芸人さんとかそんなイメージですよね。
古川:何で靴を(肩から)下げているんですか?
大庭:ちょっとインスタ映えというやつですね(笑)。
古川:インスタ映え(笑)。
大庭:SNS的に(笑)。
古川:だとしたら、ちょっと履き違えているかもしれない(笑)。
(会場笑)
宗像:上手い!(笑)
古川:靴だけに(笑)。
宗像:もうむっちゃ切れるなあ。これ今、完全にアドリブでしたね(笑)。
大庭:全部持っていかれましたね(笑)。
宗像:打ち合わせにはなかったですね(笑)。ありがとうございます。次は古川さんです。
古川:はい。私はアイドルがベースにあるんですが、じゃじゃーん! こんな感じで、趣味でテレビゲームが大好きです。まだアイドルとして駆け出しの頃に、当時のプロデューサーから「未鈴、お前は本当に何の個性もないから、何か個性を作ったほうがいいんじゃないか」というアドバイスを受けまして。
私はゲームが好きなので「ゲームアイドル」って名乗り始めたんですよ。本当に最初は自称だったんですけど、それが数年経って、アメリカのロスアンゼルスでやる世界最大規模のゲーム見本市「E3」に、3年連続でお仕事として行かせてもらったりしています。
趣味が仕事になった瞬間というか、ここはちょっと自慢のポイントではあるんですけど、本当にアイドルでこのイベントに行っているのは私だけなんじゃないかなと。
宗像:そうですね。下手したら、世界でゲームアイドルって古川さんだけかもしれない。
古川:でも、やっぱり今は多いですよ。
宗像:競合がいるんですか(笑)。
古川:ゲームはやっぱりみんなに愛されているものなので、そこは何かうれしいなと思います。ゲーム好きの一面と、もう1つお願いします。じゃーん!
宗像:うわっ!(笑)
古川:今、「うわっ!」って言いました?(笑)
宗像:ちょっと敵ですね(笑)。
古川:フェレットとはちょっと共存できないかもしれないですけど。パッと見トカゲと思う人が多いんですが、これはヤモリです(笑)。
宗像:僕はヤモリならOKですね(笑)。
古川:本当ですか? ヒョウモントカゲモドキという、トカゲにすごく似たヤモリです。2017年の1年間、いろいろな事情がありまして、でんぱ組.incはライブを休止していたんですね。私はやっぱりライブが1番好きなので、それがなかった時がすごく辛くて、自分が生きるために何か守るものが必要だと感じたんです。
その時に、ペットとしてヤモリを飼い始めました。名前はケル君と言うんですけど、ケル君を守るために私がお金を稼がなきゃ、働かなきゃと、自分を奮い立たせるために飼い始めて、今ではすっかり親バカです。人によっては気持ち悪いという子もいるんですけども、意外と見たらかわいいんですよ(笑)。
宗像:かわいいですよ。この写真もかわいいですよね。
古川:表情があるんですよね。ゲーム好きとヤモリ好きということで。
宗像:わかりました。1つインプットされました。ありがとうございます。じゃあ、みなさんに自己紹介いただいたところで、今度は会場のみなさんにもお付き合いいただこうかなと思っています。みなさんもおもむろに起立していただいて。
古川:ヤバい! 授業みたい!(笑)。
宗像:隣同士で簡単な自己紹介をしてください。それから、今のヤモリやフェレット、ゲームでも何でもいいですし、大庭さんのようなものでもいいので、自分がはまっているものを教えてください。場を和ませることと、よりみなさんに聞いていただこうということで参加型です。1人1分ぐらいで簡単に話していただければと思います。お願いします。
(自己紹介タイム終了)
宗像:みなさん真面目にというか、けっこう熱心にやってもらっているのはすごいなと思いますね。でも、けっこうやってくださるんですよ(笑)。終わった方は着席されてけっこうです。ありがとうございます。
中川:盛り上がっちゃってるんじゃないですか(笑)。
森:終わらない、終わらない(笑)。
中川:オタクの方は好きなことを話し出すと止まらないので(笑)。
宗像:はい。ありがとうございます。じゃあ、「こんなのはまってるよ!」と言いたい人は、ちょっと手を挙げてみましょうか。
(会場挙手)
宗像:まず黒いTシャツの人。どんどん当てられていくやつです(笑)。
発言者A:はまっていることは、やっぱりでんぱ組.incさん。人生の支えというか生きがいになっております。今日も京都から来ました。
(会場笑)
宗像:ちなみに、このイベントって知ってたんですか?
発言者A:でんぱ組.incさんのオフィシャルのTwitterから回ってきました。
宗像:なるほど。ありがとうございます。他にあと2~3名どうでしょうか? ご自身が話してみたい方と、向かいの人がすごいことを言ってたから、ちょっと言っちゃおうかなという他己紹介の方。
発言者B:はまっているのは、先ほどの方と一緒で、でんぱ組.incさんですね(笑)。他には未鈴さんもはまってるゲームなんですけど、僕も小さい頃からファミコンやPCエンジン、セガサターンと、いろいろな筐体を渡り歩いて、今はニンテンドースイッチのいろいろなソフトをやっています。
古川:「OCTOPATH TRAVELER(オクトパス トラベラー)」 やられましたか?
発言者B:はい。僕もやってます。
古川:ああ、いいですね(笑)。
宗像:わかりました。ありがとうございます。今聞きながら微笑んでいらっしゃった、メガネの薄いブルーのジャケットの男性。
発言者C:こんにちは。申し訳ないけど、私でんぱ組.incさんは初めて知りました。すみません。私はたぶん、この中で1番遠いところから来たかなという感じがしました。今日のこのイベントのために、奄美群島の沖永良部島という島から参りました。
宗像:ああ、すごい。
発言者C:私も年齢がもう還暦をとっくに過ぎておりまして、その中で同級生がほとんどこの「いいね!」というのを知らないんですよ。私たちはパソコンに取り残された年代というか、私もWindows95が出た時に「絶対に若いやつには負けんぞ!」という気持ちで。
当時、今思えば本当におもちゃみたいな20数万円のパソコンを無理して無理して買いまして、今やっとLINEもできるようになってきました。それはさておいて、私は沖永良部島のIターン組で14年目になります。私がはまっているのは、この南の島でしか作れない食べ物や植物です。今私が凝っているのは、パパイヤとバナナとコーヒーです。
ぜひ奄美産のコーヒーを自分で飲めるようにしたいということで、今作っています。私の庭で育った島バナナというものがあるんですが、これはネットで検索してもらうとたぶん幻のバナナで、ほとんど市場には出ません。地元の人しか食べない小さなモンキー(バナナ)の一種で、強い甘みと酸味があります。
たまたま福岡のいとこと「そういえば島バナナがあるね」という話になり、さっそく送ってあげましたら、もう感涙の言葉が返って参りました。これからは毎年送らなければならないかなと、最近はその喜びの声を聞くのがだんだん楽しみになってきました。この3つの植物を育てながら、周りの人みんなに喜んでもらえたらいいかなということで、今はまっております。
宗像:いいですねー(笑)。
(会場拍手)
宗像:今日のテーマにもすごい合っていてですね。仕込みじゃないんですけど、ちょうどぴったりですよね(笑)。
江守:僕は個人的にもすごく共感しています。
古川:もう奄美に行きたいです。島バナナを食べてみたいですね(笑)。
宗像:そうですね。今日はお持ちじゃないんですかね?(笑)
(会場笑)
宗像:次に進ませていただきます。(スライドに)「#ムーブメントの起こし方」とありますが、自分が好きなものや大事にしているものをみんなに伝えるには、どうやったらいいのというものがあるかなと思います。
そのヒントになるような動画がネットに上がっていましたので、ご覧いただければと思います。海外のTEDというカンファレンスで流されるもので、動画がホームカメラで撮っている関係ですごく揺れるので、気持ち悪くならないように気を付けてください。
(動画)
宗像:野外で男の人が踊っている動画ですけど、今まで何か変化を起こすには、すごくリーダーシップや精神力がある人がいないとだめなんだと言ってたんですけど、実は2人目が大事なんだというテーマですね。2人目が現れて踊り始めると、それまでしらーっとした感じで周りで見ていた人がなにか気になり出すんですよ。
「あれ、なんで2人目が踊っているんだろうな」という感じになってきて、3人目が来るとますます気になって、周りの人がどんどん参加するんですよね。こうなるともうだいぶ勢いが出てきて、最初の控えの時に踊っていた人はなんなんだろうという話じゃないですか。
みんなで踊っていること自体が楽しいし、「ああ、良いことあったな」という感じだと思うんです。2人目ですよね。2人目ないしは3人目がこの大勢で踊る不思議なきっかけを作ったという話なんですね。つまり、今日のお題としては、自分がなにかに興味を持った時に先頭で引っ張らなくてもいいんじゃないのと。
1人目じゃなくてもいいんじゃないですか。ぶっちゃけ1人目って勇気がいるじゃないですか。ここで本当に踊り出すのはそこそこ勇気がいりますが、2人目、3人目だったら、ひょっとしたらなれるかもしれない。1人目の関心のあることが、自分がめっちゃはまっていることと合致していたら「俺が2人目になるよ、3人目になるよ」と言えるかもしれない。
実は、「ファーストペンギン」という言葉があります。ペンギンは海で魚を捕るんですけど、ものすごくたくさんの魚を食べるんです。だから何回も潜らなきゃいけないんですけど、海にはシャチがいっぱいいて、すごく食べられちゃうんですって。それでも飛び込まないといけないんですよ。そこで最初に飛び込むペンギンはすごく勇気がある、と。
シャチがいるかもしれないけど、最初に飛び込むペンギンのことを、ファーストペンギンと呼んだりするらしいんです。ただ今日のお話は、「ファーストペンギンもいいけど、セカンドペンギンもいいよね」というお題です。
宗像:真面目な話を少し交えているんですけど、江守さんから、『食べる通信』についてご説明いただきます。江守さんがどんなことをされているのかをお伝えいただければと思います。
江守:このフォーラムの主催者のコーディネーターの方々と話をしていた時に、ファーストペンギンやセカンドペンギンを理解していただくために、僕がやっている『食べる通信』で何か実例ないですか、ということで、今日は時間をいただいています。食べ物付きの情報誌なんですけど『食べる通信』を知っている方はいらっしゃいます?
(会場挙手)
江守:おっ、少ない。僕は少ないほど燃えるんです(笑)。今日は時間が短いのと、実践をされている森さんの話に繋げたいので簡潔にいきます。この写真にあるように、食べ物と情報誌が一緒に届くサービスをやっています。この情報誌では、毎回1名の農家さんや漁師さんのこだわりや人生、こんな思いで作っていますというものを特集しています。
例えばカキの号だったら、その人が作っているカキが一緒に家に届くサービスです。ここで数字を1つ見てもらいたいんですけど、98対2ってなんの数字かわかります? 未鈴ちゃん、ありがとうございます。知っている人は本当に少ないんですけど、この98対2は日本の人口1億2千万人における、食べている人と作っている人の比率です。
宗像:ああ、なるほどね。
江守:だから、みなさんは恐らく98パーセントなんです。バナナを作っているお父さんは2パーセントに入っているかもしれないですけど、ほとんどの人は食べているだけ。僕が生まれた1970年代は、農家さんは日本に1千万人以上いたんです。これは少し前のデータですが、それが今や180万人しかいなくて、最近よくテレビに出ている漁師さんたちは日本で15万人もいないんですよ。
農家さんや漁師さんが稼げないとか仕事が大変だとかいろんなことがあるんですけど、それって僕たちは悩んでないですよね。そのことについて悩んでいるのは作っている人だけですが、その人たちがいないと、僕たちはこの都会で食べ物を食べられないんですね。
そのことをみんな忘れちゃっているなと思って、食べ物付き情報誌を送ることで、農家さんと漁師さんと都市にいる僕たちを繋いでいます。本当に高齢のおじいさん、おばあさんたちがやっているのが現状で、ちょっと真面目な勉強っぽいんですけど、グラフで言うとこんな感じに減っています。
宗像:うわっ、すさまじいですね。
江守:生産者さんたちが毎年5万人くらい減っています。だけど、「うちの子には中国産を食べさせられない」とか、できるだけ国産を買おうとしているじゃないですか。でも、もう少ししたらたぶん国産のものがなくなっちゃうと思うんです。
そんな社会課題に対して、僕たちが情報誌を読んでもらって、その人たちのこだわりを知ってもらって食べる。不思議なんですけど、知って食べるとどうなると思います? わかります?
古川:わかる。
江守:何?
古川:おいしく感じる(笑)。
江守:めっちゃ正解です。
宗像:すごい(笑)。
古川:すごくおいしく感じる(笑)。
江守:そういう経験あります?
古川:例えば私、「このお菓子はこうやって作られました、この産地です」というのを読むのが好きなんです。その説明書を読むか読まないかで、だいぶお菓子の味が変わるというか、「そうなんだー!」と思いながら食べられるので、そうなのかなと思いました。
江守:すごい。これは仕込みじゃないですよ(笑)。実は「食べる通信」は、Facebookの中で、農家さんや漁師さんに「ありがとう」「ごちそうさま」と言える仕組みを提供しています。僕たちは、そういった農家さんや漁師さんの裏側を知って欲しいなと思ってやっています。
野菜がきれい、安い、おいしそうということじゃなくて、本当にこういう大変な現場で、僕たちの代わりに作ってくれているんだよということを知りたくてやっています。これは岩手の三陸の漁師さんたちなんですけど、ここは津波がきた場所なんですよ。今でもこうやって貝などを捕ってくれているんですね。この人たちが浜辺で採った貝は30円とか50円なんです。
宗像・古川:安い!
江守:でも、東京のオイスターバーに行くと、1,000円とかするんですよね。それはどうなっているんだろうな、ということも伝えたくてやっているんですけど、僕たちは結局、都市の人の価値観を変えたいんです。安いものばかり買っていたら、作る人がいなくなって、最後に自分たちが食べられなくなるんです。
江守:でも、それは『食べる通信』を運営している僕たちだけではできないので、ファンを巻き込んで一緒にムーブメントや運動として広げていきたいと思っています。おもしろいのが、農家さんや漁師さんを呼んで、都会で飲み会イベントとかをやるんです。
これがすごくて、居酒屋のドアがバンと開いて、農家さんや漁師さんが入ってくるでしょ。そうしたら、「きゃあー!」という感じなんですよ。さっきの冒頭の雰囲気で、インディーズアイドルが来たみたいな感じなんですよ。
よく農家さんや漁師さんはかっこ悪いとか稼げないとか汚いとか言われるんですけど、そこにはそう思っている人は誰もいなくて、みんなが『食べる通信』を読んで、その人をスターだと思っているので、入ってきた瞬間に歓声が上がるんです。
古川:もうファンなんですね。
江守:そうなんです。ファンなんだけど、そうやって会って一緒に飲んで、その人が作っているものを食べて話すと、友だちや仲間になっていくんです。
宗像:なるほど。
江守:そうやって仲間になった人たちが、都会で営業マンみたいにいろんな活動をしたり、「いや、こんなかっこ悪いラベルを貼ってたら都会では売れないですよ」というようなことを、農家さんや漁師さんにフィードバックしてあげたり。そんなことが起きています。これはその一例で、秋田の農家さんで起きた事件です。
ある時、(田んぼが)ぬかるんでいて、コンバインで稲を刈り取れない事件があったんです。その時に農家さんが『食べる通信』の読者さんに「一生に一回のお願いだから助けてくれ」と。「子どもと嫁と4人で刈っているだけどだめだから」と言ったら、遠くは関西などから夜行バスに乗って、みんなが秋田まで駆けつけたんです。
森:これは私です(笑)。
江守:それでお金がもらえるわけじゃないし、バス代も出ないですけど、駆けつけて手伝った人がここに実際にいるわけですよ。
古川:実際に刈ったんですか?
森:刈りました、刈りました(笑)。
古川:えーっ!(笑)
森:一緒に手刈りで全部やりました。
江守:よく新聞に「今年も農家さんが大変だ」「稲が台風で倒れて」と書いてあって、今北海道もえらいことになってますけど、普通はなかなか手伝いには行かないですよね。なぜ秋田の農家にいくペンギンになれたかというと、そことの繋がりがあって、その人のことを知っていて、友だちだったから行った。飛び込みやすかったんだと思っています。
我々がやっていることをまとめると、食べ物と情報誌を送ることで、いろんなコミュニケーションを起こしてコミュニティを作り、生産者さんがやる気を取り戻して、食べる人たちは作ることにどんどん参加したくなるんです。自分も関わって行きたくなるんです。そういうことをやっています。
今、東北から始まった『食べる通信』が全国34ヶ所に展開していて、実は台湾にも『台湾食べる通信』があり、僕はその全体の統括をしています。これは前段なんですけど、僕たちだけではこの社会は変えられません。
そこに森さんのような方が現れたことで、社会の変革のスピードが上がったと思っています。森さんがセカンドペンギンかというと、僕はやっぱり森さんはすごいファーストペンギンだと思っています。そういう振りで、森さんにお話をお渡ししようと思います。
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