2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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クリスティア・フリーランド氏(以下、クリスティア):上に行けば行くほど疎まれるという女性のハンデについて、女性の意識を高めたいということですね。若く、これからキャリアを積んでいく、というまだ仕事人生始まりの女性たちが、あなたの本『LEAN IN』を読んで、特に感銘を受けるアドバイスは何だと思いますか?
シェリル・サンドバーグ氏(以下、シェリル):これから仕事を始めていく、または始めたばかりの駆け出しの若い女性に言いたいのは、「仕事を辞める前から辞める時の事を考えるな」です。
ある若い女性が私を訪ねてFacebookにやってきました。彼女はワーク・ライフバランスについて、多くの質問を私に投げかけました。20分経過した頃、ようやく私は「すごく若く見えるけど、あなたは子供がいるの?」と聞きました。彼女は、いいえ、と答えました。「今仕事はしてるの?」、この質問にも、いいえ、の答え。
「大学を卒業したばかり、そして彼氏もいませんが、将来を見越して計画を立てておきたいのです」と彼女は言いました。この22年の私のキャリアの中で、男性はこのようなことをせず、ひたすら前に進んでいくことをよく学び、見てきました。
男性は私のオフィスにやってくると、彼らの次の昇進の話をします。そして彼らは次の昇給の話もする。女性の場合、キャリアをひたすら発展させようとするよりも、将来の結婚・出産等を視野に入れて仕事をするのです。
多くの女性が、成功しようとガツガツしない。まだ子供を産んでいないのに、将来子供を産むことを考え、仕事に保守的になる。しかし、キャリア発展の可能性を追わないことで、実際に子供を産んだ後に発生する養育費を充分に確保できるような仕事、そして子供を産んでも自分のペースで仕事を続けられるようなポジションを確保することが出来ないのです。
仕事を取るか、結婚・子供を取るか、こういった意思決定は誰にとっても難しいと思いますが、特に女性にはとても重要な決断です。女性に言いたいのは、実際に結婚したり子供を産むその時まで、仕事に邁進して欲しい。現状維持しようとせず、上を目指して欲しい、ということです。
クリスティア:とても興味深い話ですね。ワーク・ライフ・バランスを考える、というのはとてもフェミニスト的な、女性応援的な思想に思えますが、ワーク・ライフ・バランスを考えすぎることが、結果的に女性に不利に働いてしまう。とても挑戦的な考え方ですね。
シェリル:「選択」にはレトリックがあると思うんです。本当の意味での「選択」とは、女性にだけ与えられたものだと思います。男性も結婚・家族か仕事かで悩む日が来なければ、男女平等ではありません。
アメリカ国内のビジネストップ全体の14%のみが女性であると言いました。たった4%が専業主夫です。もし本当に男女平等であれば、こんな数字は出てこないはずなんです。
女性にもきちんと仕事の責任をこなしてほしいというのであれば、男性の家庭での仕事や責任についても言及しなければなりません。ワーク・ライフ・バランス、どのように仕事と家庭を両立させるか、このような議論に男性も参加しなくてはなりません。
もし男性も女性と一緒にワーク・ライフ・バランスについて語るようになったら、とても嬉しいです。しかし今現在、ワーク・ライフ・バランスという言葉は女性だけの為にあります。これが現在の最も大きな問題です。
クリスティア:あなたが今話したことが、逆に世の女性たちを遠ざけてしまうと思いませんか? 「そんなことやろうとしても無駄よ。どうせ変わらないわ」と。
シェリル:そこが、私がこの本『LEAN IN』を書きLeanin.orgを立ち上げた理由のひとつなんです。
クリスティアも私と同年代ですよね? 大学生の頃、ワーク・ライフ・バランスについての話なんか全くしませんでした。私は全く覚えていないですが、クリスティアは? 友人皆に聞いて回りましたが、大学生の頃にワーク・ライフ・バランスの話をしていた、という人は1人もいませんでした。
私たちは大学を出てから初めての仕事に、「仕事も幸せな家庭も両方手に入れる」と信じていたのです。私たちの父の世代は仕事、キャリア、守るべき家族があったけれども、母の世代は専業主婦。それでも、私たちの世代は仕事も家庭も両立できると信じていました。
しかし私たちの世代は、この2つを完璧に両立することがとても難しいということを知りました。女性が仕事と家庭という2つの仕事を抱え、男性は仕事にだけ集中していればいいというのは、フェアではないし、女性にとても負担がかかります。
今この時代を大学生として生きる女性たちは、仕事か家庭、どちらかを選ばなくてはいけないということを前の世代から学んで知っている上に、そうであると信じています。こうして、仕事に対してガツガツと前に進もうとしないのです。
私の心配はこうです。私たちが若いときには、ワーク・ライフ・バランスなど考えもしなかった、その結果、ビジネストップの14%が女性という数字を打ち出すことになった。つまり、今大学生である人々が担っていく次の時代には、トップに立つ女性の数が更に減少するのでは、ということです。
だって彼女たちはすでに保守的になり、進んで前に出ようとしない。そしてこのような状況は、男女どちらもが変わらなければ変わることはないと思います。女性が会議室で進んで前に出ようとしても、男性が家のキッチンで進んで仕事をしようとしなければ、状況は変わりません。男女両方からアプローチしなくては。
クリスティア:家庭の中で誰が家事をするか、というのは私たちの個人的な責任となってくると本に書かれていましたね。若い女性はどのくらいこのことについて、問題意識を持っていればいいと思いますか?
シェリル:誰を伴侶とするか、パートナーとするかが、女性のキャリアにおいて最も大切な要素であると言えるでしょう。自分の人生を決定する上で最も重要な決断でもあります。最大限にサポートしてくれるパートナーが欠かせません。
しかし、男性が女性のキャリアを最大限にサポートするケースは稀です。なぜなら、社会は女性の社会進出を、リーダーとなることを奨励しませんし、男性が家庭に入ることも奨励しないからです。
クリスティア:社会的に成功している女性と結婚する男性は辛いでしょうか?
シェリル:よく聞かれますね。全国放送のテレビ番組でも聞かれました。私の夫はデイブというのですが、「デイブはあなたの(小声で)成功についてどう思っているんでしょうか?」。これも性差の偏見が基になっています。
誰もが羨む幸せなカップルとは、男性側が成功している--成功の定義は色々ありますが、お金を持っている、有名、重要な役職についている等--。女性が「成功」すると、世の中の私たちが信じる「誰もが羨むカップル像」のイメージに沿わない為、混乱します。
デイブとよくこれを笑いの種にします。私が何者であろうが、デイブは私の何倍も自分に自信を持った人です。デイブの頭の中に10分ほど入り込んで、自分に自信があるということの真の意味を学びたいくらいです。
しかし多くの女性にとって、成功した女性とそれをサポートする男性のカップルというのは、ジョークでは済まないようですね。
そこで女性に対する偏見や差別、女性が成功するのを妨害する制度的なバリアが残る。男性パートナーが家事をしようとしない、だとか、私たち女性が成功したが故に男性パートナーに引け目を感じて欲しくないと思うだとか、そういうものは女性が成功していく為にとても厄介な問題で、変える必要があります。
クリスティア:家庭を成功させる為には仕事で成功すべきだ、という話は、「家庭に入ってママになる」という、伝統的な女性の生き方と思われるアプローチと逆を行きますよね。
シェリル:ある講演で、女性たちに聞きました、「会議の日時を決定する時、あなたの都合を優先させる? それともあなたのボスの都合?」。皆が笑いながら、もちろんボスの都合だと言いました。
つまり、あなたがボスになれば、あなたは自分のスケジュールを決めることが出来るということよね? これがつまり、私が言っている多くの女性がトップの座に付くことがいかに良いかということです。外部でもFacebookでも、「私は17時半に帰宅します」と言っています。
クリスティア:帰宅後もオフィスの皆にメールするんじゃないですか?
シェリル:そうですね。でも皆に言っています、「メールは返せる時に返してくれればいいから」と。でもポイントは、私が17時半に帰宅するので、オフィスの皆も17時半に帰ることが出来るということです。
これまでも、「あなたのスケジュールはどうなの? 私のスケジュールばかりに合わせなくていいのよ。一番都合のいい日はいつ?」と部下に聞いてきました。私は子供を持つワーキングウーマンであり、夕方きちんと帰宅して子供たちと時間を過ごすことを大切にしています。
これが、女性たちが日々直面する問題に対して意識を上げることに繋がりました。キャリアを積むうちに、私はだんだん自分が働きやすいように時間をコントロール出来るようになってきました。
しかし、私個人だけではなく、女性たちにも働きやすい環境をつくってきたと思っています。シニアマネージメントのポジションに女性の数が多ければ多いほど、その会社で働く皆のワーク・ライフ・バランスが整う、という研究結果が出ています。
つまり、前に出ていけ、チャンスを掴め、というメッセージを送っているのは、実際に前に出てチャンスを掴んだトップの女性たちの為だけではないのです。女性が前に出てチャンスを掴むと、その会社で働くすべての女性がその恩恵を受けるのです。男性が1ドル稼ぐ間に、77セントしか稼ぐことができない女性も含めて。
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