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マンションの新しい捉え方(全2記事)

チームラボ猪子氏「ご近所付き合いなんて、今さら必要?」 マンションコミュニティを考える会でぶっちゃける

様々な分野でイノベーションを起こすチームラボ代表の猪子寿之氏、チャイルドボディセラピストとして活躍する蛯原英里氏、社会問題に対してデザインの力で解決を試みるissue+design代表の筧裕介氏の3名が登壇し、マンションを取り巻く新しいコミュニティの在り方について意見が交わされました。

マンションコミュニティの難しさ

川路武氏(以下、川路):それでは3人のゲストをお迎えして、私のピュアな疑問から始めていきたいと思います。特にご自身の体験から、先に出来上がっちゃっているようなコミュニティに入るって難しいですよね。最近お子さんが生まれた蛯原さんいかがですか?

蛯原英里氏(以下、蛯原):そうですね。まだ3カ月で、なかなか外には行き辛いというか。家から外出先までに限られていて。マンション内で通るとしたら、エントランスが主になるんですけど、朝だったり、夕方になるとママ友同士がいらっしゃって、楽しい話をしているんです。将来、3カ月の娘が大きくなっていって、私もその中に入れるのかなという不安があります。

川路:今は流石にまだ3カ月ですから、年齢が固まった集団に入っていくこともなかなか出来ないですよね。

蛯原:やっぱり、マンションですから、皆さん知っているわけではないので、入りたいけどどのタイミングで入っていいかなっていうのがありますね。

川路:この漠然とした難しい質問に、筧さん! なにかアドバイスをいただけないかなと、ムチャぶりしてしまいます。どうですか?

筧裕介氏(以下、筧):そうですね。そしたら、冒頭になっちゃうんですけど。今、三井さんと進行中のプロジェクトがありまして、これがひとつきっかけになるんじゃないかと思います。

今日、皆さんのお手元に、お土産として「ご迷惑おかけしますカード」というものを入れさせてもらっています。

川路:原稿がない中で今日はやっていて、この話も最後になるはずだったんですけど、大丈夫ですか? では、お手元のバッグの中から出していただきましょうか。

:結構コミュニティに入り難いと言われているんですけど、1番しっくりくるのはお隣さんだと思います。左右の隣だったり、向かいだったり、近いコミュニティでどうやって関係性を作っていくことができるか。隣と知り合うことができれば、その隣とも仲良くできるのではないかと。隣とコミュニケーションが取れるツールが作れないかなと考えました。

きっかけ作りをデザインする

川路:スライドを筧さんのものに切り替えてください。

:そういう視点で考えたものがこのカードで、表と裏でドアノブにかけるというイメージで考えてください。

どういう風に使うか。近年顕著化している問題では、隣の家がうるさいという問題があります。例えば子供がいて、週末に友達がいっぱい来て誕生パーティーがある。騒いでしまって迷惑をかけるのでどうしようかなという心配事があると思います。

そういうときが実は話しかけるきっかけになるという考え方があるのではないかなと。その時にそういうことが起きないように、こういうカードみたいなものでコミュニケーションが取れないかなと作ったツールです。

今度こういうことでうるさくなるんで、ごめんなさいと先に謝っておくというコミュニケーションができないかなと考えました。

「今週娘の誕生日会なのでうるさくなるかもしれません、ご迷惑をおかけしますけど……」と隣にかけておいて、隣の人がなにかしらともらう。実際に事前にそういう話を聞いておくと、元気な誕生パーティーをしているのねと理解が進む、すると意外と騒音も気にならなくて大丈夫じゃないかなと。

そういう気付きから作ったツールです。できれば、隣の人は隣の人で、大丈夫でしたよ、ということで感想を返してもらうようなコミュニケーションが生まれると、次から会った時のきっかけになるのではないかなと。

隣の人と話すきっかけをどうデザインしてあげられるか。そのきっかけ作りが新しいコミュニティに入っていくには重要じゃないかなと。そんな場は色々とできるんじゃないかな。

実はコミュニティは増えている?

川路:みなさん、良いじゃない!と思ってらっしゃるように見えますけど、猪子さんにもご意見を聞いてみましょう。隣の人もしくは今あるコミュニティに後から入っていく難しさとか、話しかけるきっかけになるようなデザインというか、何かありますか?

猪子寿之氏(以下、猪子):マンションでのコミュニティということですよね?

川路:そうですね、集合住宅で、人がひとつの屋根の下に沢山住んでいるシチュエーションがいいと思います。

猪子:ちょっと、本当、場違いな感じがしますけど……(笑)。

川路:大丈夫です。ライブ感があるので、お願いします。

猪子:大前提として、人類は歴史上ずっと場所が先に在った。場所に物理的制約があって、そこからコミュニティが生まれたんですね。

近現代に交通や移動ができるようになって、都市部で場所に依存するコミュニティは低下しましたよね。今度はネットワーク社会ができて、究極的に場所に全く依存せず人はネットワークを作れるようになったわけです。

場所からコミュニティが生まれるというのは幻想ですよね、近代以前から100万年続いたんで、その幻想がいまだに残っていて。実際、20世紀後半に比べて、今日現在ここにいるほとんどの人は、15年前に比べてコミュニュティを持っている率は高いと思うんです。

人間関係で、今、連絡が出来る人が15年前より減っている人なんて絶対いないんです。今ここにいる人が全員コミュニティに入っていて、はるかに昔より入っているんです。だからコミュニティはあるんです。少なくとも15年前より。30年前に比べてコミュニティは増えているんです。 だから別に、あるよって話。

(会場笑)

「場所」からコミュニティは生まれない

川路:予定調和が壊れていく感じが良いですね。

猪子:何を問題にしているのかわからなくて。近代以前の情報化される前の、ネットワークがないような社会にいたら非常に大きな問題かもしれないけど。

そもそも場所からコミュニティは生まれないんです。例えば、20年前に、町や場所にコミュニティがあって、コミュニティから文化が生まれるわけです、だから街ごとの文化の差が極めて高くて。実際にネットワーク社会になって、20年前に比べて、原宿と中目黒と代官山と渋谷の差が大きくなったか、減ったか? 減りましたよね。場所からコミュニティが生まれていないんです。

でも、文化が生まれていないかというと、新しい文化は生まれているんです。だから、そもそも何を問題にしているかがわからない。

(会場笑)

今はみんな昔よりコミュニティに入っているんです。問題なのはたぶんマンションの方です。

川路:そうです。もっとその辺を言ってください。

猪子:それなので、マンションかというと、場所に依存せずにコミュニティが生まれてきているという現実があるにもかかわらず、ネットワーク社会の前と同じコミュニケーションをとっているわけです。

なんで、すごいギャップが生まれていて。本来は場所からコミュニティが生まれるという幻想を捨てて、そもそもコミュニティが既に場所と関係せずにありますと、場所に関係せずにコミュニティがあって、そのコミュニティに対して場所がアプローチするというアプローチの仕方に変えれば、もう少しそのギャップは減るかもしれない……。

コミュニケーションを生むきっかけが欲しい

川路:この難しいお2人の話を聞いた上で、コメントし辛いと思うんですけど。

蛯原:いやあ! ちょっと難しいですよー!(笑)

川路:コメントしやすいのは「迷惑かけますカード」の方かと思います。話が広がるのは猪子さんだと思いますけど。どうですか?(笑)

蛯原:確かにいっぱい溢れているじゃないですか。情報が。携帯にせよパソコンにせよ。でもマンションの中って掲示板もそんなに見なくなりました、でもネットを開いてマンションのホームページをのぞくと、こんなことをやっていますという情報がいっぱいあって。

川路:アプローチの仕方を変えるといいかもしれないですよね。

蛯原:勇気を出して踏み出す一歩はどうすればいいのかな、っていうのが私としてはあります。

川路:さっきの「迷惑かけますカード」が踏み出す勇気になるかもしれないと。リーチするコミュティはたくさんあるかもしれないと。この話一端切っていいですか怖くなってきたので。

(会場笑)

蛯原:すごく知りたい気はしますけどね。

川路:「感情の共有」が僕はすごく印象に残っていて、(コミュニティが)場から生まれないとはいえ、同じ場所に住んでいると環境を共有していて、例えば「このマンションのエレベーターが来ないな……」とかありますよね。

蛯原:ありますね。

川路:おなじ場所にいる人は同じ感情を持っている。もしかしたら、同じ場所に住んでいる人で、同郷なのになとか。そういう気持ちが印象に残っているんですけど。

蛯原:実際、私も田舎育ちだったので、隣近所と密接した関係だったんですけど、マンションに住むとしたら隣の人とか、隣の隣とか上の階、下の階の人とは接する機会がなかったんです。

でも、マンションの中に住んでいる人の中には、私は宮崎なんですけど、宮崎の同郷の人がいると知ると話しかけやすかったり、親しみを持てるので、よりコミュニケーションが生まれるかと思って。その一歩として、同郷の人とかを知りたいなと思います。

つながりを求める都市部の住民

川路:猪子さん先に聞きましょう。住んでいる場所によらないコミュニティには納得するんですけど、同じ場所の中に同郷の人がいると、宅急便とか、場所を介して、時間を掛けてやらなくてもすぐ隣にピンポンってなにか渡せるとか、そういう要求、ニーズがある時に、どんな方法で繋がっていけるか、どんなデザインどんなテクノロジーとか思い浮かびますか。

猪子:えー……。

(会場笑)

川路:良いですねこの感じ。素直な欲求として隣近所の人も繋がりたい。先ほどおっしゃられたように今はテクノロジーが進んでしまって、もっと多くの人と今は繋がっているはずなんです。

猪子:にもかかわらず、隣とつながりたい。面白いですね、人って。なんなんでしょうね。

川路:1個だけエピソードを挟みますと、それまでは都心のマンションって、隣がだれが住んでいるのかも知らない、鍵一本と言っていたんですね。3.11の日にやった行動って、100万円あってもタクシーが動かないということがあって、隣の人にコンコンってして、「大丈夫ですか」って言い合ったんですよね。日々の中からちょっと隣の人とつながりたいというニーズが出てくる。

猪子:都市部のマンションでも? 本当なの?

(会場笑)

川路:ところがね、本当なんです。単身で住んでいるマンションでもそうです。

蛯原:都市部に住んでいる人ほど、私もそうなんですけど、結構地方から出てきて住んでいる方が多いと思うんです。ちっちゃいころから都市に住んでいる人とは違うと思って。

猪子:僕もすっごい田舎から来ましたよ。

蛯原:えぇっ! 本当ですか?

:コミュニケーションの弱者とか、ある程度、満たされていない時の欲求だと思うんです。お母さんとかって普段からそういう立場だと思います。仕事をしていて、会社の友人がいて、友達がいてFacebookとかで繋がっている状態とかはコミュニティ欲求が高まっていないので問題ないんですけど。

猪子:子供ができた瞬間に今までのコミュニティと分断するからですよね。

:その時に近所の人とのコミュニティとのつながりがあるといいんですけど、自分としてはアクセスできるんじゃないかなと思いつつ、できていないのが問題なのかなと思うんです。

コミュニティを作って、そこに住みたい人を集める

川路:定年後のお父さんもそうかもしれないですね。会社ですごい繋がりがあったのに、帰ってきて家にいると、アレっていう感じですよね。

:そういうネットワーク弱者がけっこういて、そういう人たちにとってはコミュニティが求められている。それは震災の時も同じですよね。Facebookが繋がらないとかの状態は、同じことが起きていると思います。

川路:ネットワーク弱者を救う方法としてはどうですか?

猪子:さっきも言ったように、コミュニティにアプローチするような住む場所という概念が増えていくと思うんです。すごくいい例としてはニコニコ超会議とかはそうですよね。コミュニティが先にあって、後から場所が生まれるという。そういうアプローチをもうちょっと……。

川路:というと先にコミュニティを作って、そこに住みたい人たちを集めるという手法があるかもしれないですね。面白いですね。

猪子:そうなると思うんです。そういうニーズは高いと思います。そうなると、マンション屋さんが変わればいいんじゃないですか?

(会場笑)

川路:いい感じでブーメランが返ってきていますね。「マンション屋さんが変わる」今日はそのキーワードですよね。どれだけイノベーションを起こせるかという。

猪子:ただ、子育ては突然起こるんで。

蛯原:突然(笑)。

猪子:あるコミュニティに入ってそこで住んでいたとしても、分断されるんで。難しいですね。

蛯原:新しいところが必要に。

コミュニティはそもそも必要か

川路:考えていただいている間に、筧さんどうですか? 感情の共有とか、その場で起こることを共有できる方法とか。

:コミュニティの必要性とかを考えはじめてしまっていて。

猪子:前提として、100万年くらいの歴史の記憶の幻想だと思うんですね。場所にコミュニティがないことに対する不満感って、そんなにあるのかな?

川路:求められるコミュニティの質として、分譲マンションだと共有物という概念があるんです。みんなでこのマンションを維持して資産価値を上げていく、震災など何かあった時の助け合いみたいなことも、コミュニティのニーズがあるというのは、今の蛯原さんの話を聞いていても、それぞれのセクターで隠れているんじゃないかな。幻想の裏側にはそういうニーズがあるのではないかな。

:コミュニティのニーズがある人には応えることが必要だという気がしていて。私は文京区の千駄木に住んでいて、谷根千といわれるところですね。昔ながらのコミュニティがあるエリアに住んでいるんですね。

とはいっても出張で半分以上東京にいませんし、深夜にしか帰らないので、こういうコミュニティの仕事をしているけど、そこのコミュニティには関わっていないという(笑)。

妻と娘がいて、娘は2歳なんですね。妻と娘はそのコミュニティの中にかなりどっぷり入っていて、それが彼女と娘にとってすごく大事なものになっていて。

そのコミュニティは彼女たちにとってすごくありがたい、必要としているものなんです。でも同じ場所に住んでいても、僕はそのコミュニティは必要ではないけれど、家族としてはそのコミュニティを必要としている。

マンションに関しても、必要な人と、そうではない人が間違いなくあって、みんなが無理やり繋がらなくてはいけない、コミュニティは大切だよと言う時代ではない。つながり方は非常に多様で……。

ハードよりソフトが求められる時代に

猪子:実際に人がコミュニティに入っている量だとか、コミュニティの影響に関しては15年前、20年前に比べたらめちゃくちゃ大きいわけですよ。

コミュニティのパワーってめちゃくちゃ強くて、半端なくコミュニティへの接する時間とか影響力とか、経済的にも、昔だったら経済とコミュニティを分離していたのが、コミュニティが経済活動にもなっているという現象が起こっていて、世の中全体で言うとコミュニティってめちゃくちゃ伸びているんです。

場所のコミュニティという人たちが、他のコミュニティに負け続けていて淋しいっていう。今まで俺たちだったのに! みたいな。

(会場笑)

川路:ポテンシャルがマンションひとつとっても、小さな経済圏の中でもっとコミュニティのパワーがもっとあるはずなのに、猪子さんがおっしゃった通り、SNS含めて場所に依らないコミュニティが沢山あるので、SNSは関心縁だと思うんですけど、地域のコミュニティが特に東京では、地域縁とか関心縁とか縁の問題がことマンションに関して切れかかっているという問題があって。そこで、われわれはどうするかという。ないままでもいいという話もあるんですけど。

猪子:コミュニティはめちゃくちゃ伸びているので、コミュニティに対してアプローチするべきで、場所がコミュニティを生むとかではなく、場所はコミュニティのために存在する。場所がコミュニティを生むみたいな、ちょっと厚かましいですよね。

川路:ソフトとハードでいうと、ソフト重視というか立脚点がそこなのかもしれないですね。

猪子:本質的にはそうだと思いますね。

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