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【特番】ゼロから知りたい「生産性革命」〜イノベーションから見える未来〜 解説:平将明 経済構造改革に関する特命委員会事務局長(全4記事)

政治で日本を変えられるか? イノベーションを起こすカギは「規制改革」

自民党の新組織「経済構造改革に関する特命委員会」の事務局長代理に就任した平将明氏が、「ゼロから知りたい『生産性革命』〜イノベーションから見える未来〜」と題して、さまざまな課題や問題点について解説します。ゲストは、ネットメディア局次長のこやり隆史氏、カフェスタでおなじみの生田よしかつ氏。本パートでは、生産性を向上させるために何が必要なのかを語りました。

「革命」という言葉は危機意識の表れ

こやり隆史氏(以下、こやり):国際的な本当に激しい競争というのはわかりやすく、少しイメージしやすいと思うんですね。一方で国内の情報・情勢について、もう一回あらためて再認識したいと思います。

わたしも地元に帰って、いろいろ(な企業を)回りました。滋賀県って、製造・ものづくりのものすごく盛んなところで、大手の企業も中小企業の人もたくさんありまして、ずっと回って行って、人が足らんと異口同音に言われるんです。

いま国際競争が激しくなっているというお話をいただきましたけども、じゃあ足元が本当にどうなのかって見たときに、どこの会社に行っても人が採れなくて、このラインをどう維持するかに四苦八苦をされていると。それがたぶんサービス業であるとか、まさに生田さんの商売の面とか、いろんな面で人が足らないと。

生田よしかつ 氏(以下、生田):うちも足んないんですよ、そうなんですよ。

こやり:だから、ある分野で足らないというだけであれば対処のしようがあるんですけども、すべての分野について人が足らないということです。これはたぶん、日本にとって産業活動を維持するのがなかなか厳しくなっていて、これから少子高齢化がどんどん進んでいって、10年~20年の単位で、日本は本当に持つのかというものすごい危機意識があるんだと思うんですね。

その危機意識がやっぱり「革命」という言葉に出てきているのかなと思います。

まさにそういうなかで生産性革命をやっていこうということがあります。中身をもう少し掘り下げていただきたいなと思います。今日パネルを用意していただいておりますけども、解説者の平局長に教えていただきたいと思います。

イノベーションを起こすための規制改革が必要

平将明 氏(以下、平):ここに書いてあるのは生産、経済政策パッケージ、生産性革命ということで、2020年までの3年間で、集中投資期間としてありとあらゆることをやりましょう、と。

それで中小企業をどうするかとか、企業の収益や投資をどうするかとか、これはいわゆるイノベーション系です。Society5.0 をどうするか。

生田:はい、やりました。

:ということでどうするかなんですけども、わたしがちょうど去年の選挙が終わった直後に岸田政調会長に呼ばれて。生産性革命の政策パッケージを年内にまとめろとご下命をいただいたときにお話したのは、これからはちょっとそれるんですけど、繰り返しになるけども、生産性革命ということは、劇的に生産性を上げることですよねと。

そうすると、キーワードはイノベーションですよねと。それで、イノベーションが起きやすくするためにはなにが必要かというと、日本は規制がものすごく厳しいというか、しっかりした規制、法体系があるので、やっぱり規制改革なんですよ。

それでわたしが国家戦略特区担当副大臣のときも、近未来技術だけを抜き出して特区をつくりましょうと言って、ドローンとか自動走行とか遠隔医療とか遠隔教育をフォーカスして近未来技術実証特区というのをつくりました。今、さらに言うと、ブロックチェーン、フィンテック、IoT、A.I.、量子コンピュータ、いろいろ出てくるわけですよね。秘密計算技術、ね。

こやり:秘密計算技術……(笑)。

:まあ声をちっちゃくしてください。そういうのを考えたときに、やっぱり今の国家戦略特区を活用してる自治体の人や、担い手の企業の人から見ると、今の特区でもスピード感がちょっと足りないんじゃないかということなので。わたしが提案したのは、ここにも入ってると思いますが、レギュラトリーサンドボックス。

こやり:これですね。

真面目な人ほど生産性革命でコストダウンに向かう

:規制のサンドボックス制度というのが入ってると思いますけど、やっぱり劇的な生産性の向上イコール近未来技術を社会実証するときの規制改革。最強ツールは国家戦略特区(ですが)、それでもまだ時間が遅いから、レギュラトリーサンドボックス、ということで提案させていただきました。

:それがこういうかたちで、規制のサンドボックス制度とか、サンドボックス型特区ということで、先週、衆議院の経産委員会を通過したんです。そこでこういう提案をさせていただきました。

もう一つは、なんかIoT とかA.I.とか言われると、中小企業の人たちとか地域企業の人たちは俺は関係ねえなと。魚屋さんなんかもね。

生田:見ざる・聞かざる・言わざるになっちゃう。

:そう思うんですが、実はわたしは地方創生をやっていて再発見したのは、やっぱり日本の伝統文化の力って、ものすごくポテンシャルが高いなと思うんです。前から西陣織とかいろんな話しましたけど、例えば錦鯉特区の話をよくさせてもらうんです。

新潟の山古志村とか小千谷市とか長岡市は錦鯉の産地で、しかも今までは国内のマーケットしか見てなかったんだけど、やっぱりヨーロッパでブームが起きて再評価されて、いまグランプリを取るような錦鯉は数千万円ですよ。

だから、今までの日本の伝統とか価値を海外のマーケットで再評価し、顕在化させることで生産性革命が起きるんですよ。僕は政治家の人たちとよく話してて、真面目な人ほど生産性革命っていうと、コストダウンのほうに行くんですよ。

生田:ああなるほどそうだ。

:でも、コストダウンってあんまりおもしろい話じゃなくて。それはやったらいいけど、1万円のメロンを10万円で売れたら、生産性革命なんですよ。100万円の錦鯉が1,000万円で売れたら生産性革命なんですよ。

生田:なるほど。さっき言ってた、スタートラインがまったく違うわな。

日本にある高付加価値なものを顕在化させていく

:だから、それは、すべてA.I.とかIoT がなければ生産性革命が起きるわけではなくて、もっと日本の伝統文化、和食、地域のリソースといったものに自信を持って、高付加価値化していく。その高付加価値化を顕在化していくのも生産性革命じゃないですか。

生田:まったくそのとおりだな。

:(そういうことを)岸田政調会長に申し上げたわけです。ですから、そういった意味では今のこやり先生のお話だと、やっぱり現場に人が足りないんですよ。例えば、今インバウンドがどんどん増えていて、ホテル・旅館にどんどん投資して建ててるけど、これ(働く)人がいませんよね。

だからここでいろいろ、外国人の労働者を(入れていこうとしている)。我々委は単純な意味では移民はやらないという大前提のもとで、どういう仕組みで(働き手を)入れてくか。まさに今、こやりさんとわたしのところで、経済構造改革の特命委員会で議論しているんです。やっぱり、高付加価値化とちゃんとカネ取らなきゃ。

生田:そうだよね。

:だから今の例えば観光業の問題は「おもてなし」と言ってタダなのはダメなんですよ。

生田:そうだね。

:おもてなししたら、ちゃんと料金取らなきゃ。

生田:そうだよ。だから築地なんて、(市場の中に)あれだけ外人来てるのに無料だよ。

:お金取ったらいいんですよね。

生田:俺たち見世物だから。これで飯食ってたら、「ほらみてごらん、飯食ってる」って。動物園じゃねえんだ、この野郎って。

:ほらバナナだよ、ってね。だから、同じ日本人のカルチャーのなかで、片やおもてなしが片やあって、片や遠慮というものがあって、バランスが取れてるんであって。それはやっぱり、おもてなしやホスピタリティが大事だけど、やっぱりちゃんとお金を取るとかね。

だから、そういった意味では人手のところは人手の問題として、今回この4月にまとめる成長戦略で、我々はひとつの考え方を出していきたいと思います。一方で生産性革命というのはいろんなやり方があります。王道は規制改革ですよ。

中小企業の後継ぎ問題のための「事業継承税制」

:でも、そうじゃないところでもいろいろあるし。あとさらに言うと、続けていいですか。中小企業のところもいろんな生産性革命の仕方があるということなんだけど、やっぱり後を継ぎやすいようにしたんですよ。事業承継税制。事業承継税制も与謝野さんとかの時代からやってるんですけどね。

やっぱり元気な息子が継ぐと、いろんなことやるのよ。今まで帳面でやったのをパソコンでやろうとか、これとこれインターネットを使ってやろうとか、いろんなことやるんですよ。ただ、今まではやっぱり、事業承継をするときの税金をどうするんだと。それで別に、中小企業の株なんて、売れないんだから紙切れなわけよ。

生田:そうだよな、売れねえってか、誰も買わねえよみたいな。

:でも、税務当局はやっぱりそれなりの価値として評価して、税金が掛かってくるわけですよね。それを継ぎやすいように事業承継税制というのをつくりました。僕が議員になった頃は、株価がこれだけ評価されたら、1割しか減額してくんなかったわけ。

それを僕らのときに8割減額させるようにしたわけですよ、それで、株は3分の2(を持っていれば)もう完全な支配権でしょ。3分の2の8割は減額するというのをやったわけ。

生田:へええ。

:でも、そのときにいろんな要件が付いて、なんで中小企業だけそんな特別扱いするんだという議論があったから。その当時の12年前に、「いやいや、それは中小企業で働いてる人たちの雇用を守るためなんです」という理屈をつけたんですよ。

だから、雇用要件8割というのが付いて、10人の会社だったら、8人まで(首を)切ったら猶予していた税金を払えと言われちゃう制度になったわけ。

僕がそのとき与謝野さんや柳澤伯夫さんに言ったのは、いやいや先生方、例えばうちの会社も50年続いてるけど、中小企業というのは、もう良かったり潰れそうになったりの繰り返しでひいひい言いながら50年も60年も続いてるわけですよ。

生田:粘っこいなあ、うちもそうだけど。

事業継承と設備投資を支援

:そうでしょ、粘っこいわけ。そしたら、人がドンと減るときもあれば増えるときもあるから、この雇用要件はもっともっと緩和すべきだってずっと言ってたわけ。でも、それは中小企業にその恩恵を与えるのは、雇用を守るためだというから外せなかったんですよ。

それを段階的に緩くしてきたんだけど、今回のこれはもう劇的にやっていて、今までは株の3分の2の8割減額だったのを100パーセントの100パーセントにしました。

生田:ほほう。

:だから、継いだときにお金は出ていかないですよ。

生田:また大胆なことしたね。

:そう。それと雇用要件の8割というのは外したわけ。だって今、生産性革命だと言ってITを入れて、人が減って売上が一緒なら、人を増やす必要ないよね。しかも、増やそうと思っても人は来ないし。

だから雇用要件も外したんです。更に言うと、お父さんから引き継いた時は絶好調で株価がこれだけありました。息子が継いだら環境も変わってものすごく株価全体が落ちちゃいましたと。ここでギブアップして、転売したり廃業する。そうすると税金猶予だから、このときの評価額で税金がかかってきちゃうわけ。

生田:ああそうか。

:それをここの価格で評価するようにしたわけ。ということは、さっきも言ったように株の持ち分は100の100、雇用要件を外す、リスクを取って継いだらギブアップしたときの評価額で税金がかかる、というふうにものすごく継ぎやすくしたんです。

生田:当たり前っちゃ当たり前だよな。

:当たり前だけど、これはもう劇的ですよ。これは、総理のリーダーシップだと思う。だって僕らが10年間やったってどうにもならなかったんだから。それで、さっきわたしは岸田さんとの話を出しましたけど、総理からは今回の件は1にも2にも中小企業でしたよ。

生田:ほう、いいこと言うね。

:総理が言ってたのは1にも2にも中小企業。この事業承継の支援と設備投資だな。設備投資のやつはどこありますかね。中小企業の設備投資というのがあるんですよ。

こやり:そうですね、深掘りする。

:深掘りする、中小企業、大企業もあるですけど。

こやり:これですね。

:これか、投資促進。

あと、企業が設備投資をすると固定資産税がかかるんですよ。総理は事業承継税制を劇的に改善したのと合わせて、どんどん設備投資してもらいたいんだから、「固定資産税を免除します、なんならゼロにします」という政策を今回入れたんですよ。

生田:また大胆だね。

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