2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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別所哲也氏(以下、別所):中村さんにちょっとおうかがいしたいのは、映像という部分でも、最近ではネット上での発信は、どんどん動画配信が増えてきました。僕も映画祭をやっていて、ドキュメンタリーのショートフィルムって大変有意義なかたちで人の心をつかむということもわかってるんですが、その危うさもあるでしょうし、それをご自身で発信されてるうえで気をつけてらっしゃる、手法という部分では何がありますか?
中村真夕氏(以下、中村):今回、ちょうど昨日、『右翼から見た民主主義』っていう、鈴木邦男さんの今つくってるドキュメンタリー映画の一部をアップさせていただいて。テレビよりもすごく即時性があるというか、たぶん私今までつくった番組とか映画より、Twitterとかいっぱいワーッと反響が来ました。
もちろん、10あるうちの2つぐらいの声は、やっぱりネトウヨ的な思想からの批判もあって、「ちょっと怖いな」って思いつつ。江川さんとかもっといっぱいご経験があると思うんですけど(笑)。
テレビだと当り障りのないことしかできないから、あえて原発のことに触れてみたりとか、右翼とか宗教の問題に触れてみることができる、醍醐味みたいなものは、ネットで動画を発表する手法としては、すごくいいなと思いました。
作品をつくってても、一部を見せることでリアクションがすぐ返ってくるので、1人で考えてる世界よりはすごく役に立つんですけども。
あと、もうちょっとロジスティカルというか、実際的な問題というか(笑)。ヤフーの動画をいろいろやってる先輩方から教えていただいたんですけど、やっぱりもともと記事の方が多いので。動画って機材費や編集費がかかるものがけっこう多いんですね。
実際に取材行く時、私1人で三脚担いでガラガラ行くんですけど(笑)。たまにやっぱり現場で「人手がほしいな。けど、やっぱり人手を雇うようなお金もないしな」とか、そういった問題とか。
昨日、まさしくあったんですけど、既存の音楽を、トレーラーみたいなかたちで公開したい時に、つくった方からはOKいただいたんですけど、JASRACのいろんな許可を申請しないといけないとか。それで結局、音楽を外して出さなくいけなくなって。
別所:あー。音楽著作権の問題ね、ありますよね。
中村:大切な問題ではあるんですけども、これから動画をいっぱい発信していくうえでの整理を進めていただきたくて(笑)。今まで映画とかテレビではやってたんですけど、インターネットって私もよくわからない世界で、またぜんぜん違うらしいので。
別所:岡田さん、なにかガイダンス的なことってあるんですか? 例えば、テレビだと看板の電話番号や電柱の住所などに配慮するとか、それぞれトラディショナルなメディアの中での、放送法含めた明快な考え方が、確立はされてると思うんですけど。
岡田聡氏(以下、岡田):インターネットでも、多様であることは当然実現しなきゃいけないんですけど、緩くていいことはないと思っています。誰かが被害に遭うとか、出てはいけない情報が出てしまう、あるいは権利を侵してしまうのは、やっぱりインターネットであっても既存のメディアと変わらないと思います。
なので今、音楽の著作権のこともそうですけども、映像をつくる際、あるいは記事を書く際に出てくる課題は、まだまだ解決しなきゃいけないことがたくさんあって。それに取り組んでらっしゃる方って、先人たちがたくさんそういうことをやってらっしゃるから、我々はそこから学んで、インターネットではどういうやり方をするかを、考えていかなきゃいけない。
5年やりましたけど、まだこんだけ課題が残っているのは、やりがいもありますし、解決するための項目のリストアップをやらなきゃいけないと思ってます。とくに映像に関してはこれから取り組んでいくので、今までにないかたちでのガイドラインが必要になってくるな、とは思っています。
別所:はい。続いて福田さんにもおうかがいしたいんですが、手法という意味で言いますと、先ほどお話しになった、イベントや講演なども大切にされる一方で、ネットでの発信もそうなんですか?
福田芽森氏(以下、福田):はい。自分が記事を書く時は医療情報なので、やはり研究結果から客観的な事実として正しいと出ていることに関しては、ちゃんと出典を明記するとか、そういう事実としてわかりやすくしています。
自分の中の解釈として言う場合に、「まだ研究としてははっきりしてないけど、私はこう思っています」ということに関しては、それをわかりやすく明確に分けるようにしたほうがいいかなと思っています。どちらかというと、医療情報に関しては客観的な証拠をわかりやすく楽しく伝える、っていうことをイメージしてやっています。
別所:なるほど。山本さんはどうなんでしょうか? 発信という意味では手法ですけども。
山本一郎氏(以下、山本):結局、私の場合は、テーマを誰に読ませたいかということで、手法を変えざるをえないことがけっこうあります。
別所:はい。
山本:例えば、サイバーセキュリティについて書く時に、サイバーセキュリティについてあんまり詳しくない一般の方々にわかりやすく読んでいただくにはどうするかから、記事をちょっとずつ作るんですけども。
そうするとやや浅めに、みなさんが使っている端末や馴染みのある会社さん、人物などに引っかけてセキュリティ関連の記事を書かないと、むしろ読んでいただけないんですね。
ただ、本当にセキュリティを専門にやってらっしゃる方っていうのは、「なんでこんな浅い記事をYahoo!ニュースに書いてるんだ?」とお叱りをされる方がいて、「うるせー」と思うんですけども。
(会場笑)
だから、この媒体だからこそ読んでいただける客層に対して、ちゃんと伝えるためにどういう手法なのかは、やっぱりブレイクダウンしていかなきゃならないです。あと本当にコアな技術的なものであれば、それはかえって「Yahoo!ニュース 個人」に書いたほうがいい場合もどうしても出てきます。
例えば今、中立の議論って出てきて、みなさん今、7ギガの使い放題をやっている中でも、少なくとも2年ぐらい後には従量制になっていくかもしれない。
そうなると今、動画見放題で垂れ流しをしながらYouTubeを見てたりとか、いろんなサービスやっているところも、だんだんお金を払われるようになってくると、「じゃあ、これを見るのにだいたい120円か。じゃあ、やめておこう」みたいな話になってくる可能性もやっぱり出てきますよね。
時にはやはりちゃんと整合性に基づいて、各省庁に対しても「あなたはこれ、どう思ってるんですか?」と話を聞いたものを取りまとめて出さなきゃいけないです。それは手間はかかるけども、それはしっかり書かなきゃいけないので、手法がどうしても変わってくると思います。
別所:さあ、ここからはもう本当に、クロストークでみなさんに話してほしいと思います。発信、手法という意味でいうと、テレビ関係者の方もいらっしゃるかもしれませんし、配信もされてますけども、テレビメディアだと視聴率が必ずあります。
やっぱり数字をどう取るかということと、本質的に伝えるべきことが乖離しないかどうかが、私たち発信者は常に考えているところがあると思います。
課題解決を発信する手法として、どんなことを今、課題に考えていらっしゃるか。例えば、ネットメディアでは、もっとこんなサポートがあったらいいとか、お気づきになってる点。ディフィカルティというか、「不自由だな」と感じるのか、逆に「自由だな」と感じるのか、なにかありますでしょうか?
江川紹子氏(以下、江川):今、社会全体が大事な価値観の1つに「文句を言われないこと」が上位に位置しちゃってると思うんですね。マスメディアなんかでも、今までずっと最大の課題は、わかりやすさが第一のプライオリティになっちゃっていることが、私は問題だと思っていたんですけども。最近はそれを越して、文句を言われにくいことが、上に来ちゃってる感じがするんですね。
その点、「Yahoo!ニュース 個人」の場合には、そういうタブーみたいなものがないので、すごくいいメディアだなと思って喜んでいるわけです。ただ、やっぱり最初に言ったいわゆるクレーマーや炎上などの問題がいろんなところで起きてますよね。
その点、私自身も、例えば記事をアップした後にTwitterでそれをPRするとか、それ以外にも、Twitterでいろんなことを言っていると、いろんな方たちが「早く日本から出て行け」「お前はもう不要だ」「北朝鮮に行っちまえ」っていう、そういうのがてんこ盛りで来るんですね(笑)。
とくに気に入らない言動に対して非常にバッシングなどがものすごくある。会社にだってそうですよね。例えば朝日新聞の問題になった時に、ダーッと朝日新聞のことは徹底的にこき下ろしていいみたいな感じになって、「売国だ」とかになる。あるいは、自民党から呼ばれたとか、そういうことがある時にメディア同士が助けないんですね。
前に、沖縄の密約問題で毎日新聞の記者が捕まって、裁判になった時は、ああいう結果(注:西山事件。西山太吉記者らが国家公務員法違反で有罪)にはなりました。でも、あの時の裁判の記録見ると、(読売新聞社の)ナベツネ(渡邉恒雄氏)さんや氏家(齊一郎)さんら各社、他社の人がみんな、弁護側証人に立って自分の経験をしゃべって、非常にサポートしてるんです。
その時は権力との戦いでしたけれども、今、バッシングなどが行われる時に、私自身も誰かが非常に理不尽な叩かれ方をしてる時には、どうやって助けるか……。助けるかってところまではいかないでも、なにかその現象を改善するために、自分はなにかできないかを考えてみる必要があるんじゃないかなと思うんですね。
それはヤフーに対して言いたいというよりも、私自身もそういうことを考えていかなきゃいけないと思っています。
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