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2017 ユーキャン新語・流行語大賞(全2記事)

【全文1/2】2017ユーキャン新語・流行語大賞は「インスタ映え」「忖度」、トップ10は「Jアラート」「35億」など

12月1日、2017 ユーキャン新語・流行語大賞の発表・授賞式が開催されました。「忖度」「インスタ映え」「35億」など、ノミネートされた30語のなかから選ばれた流行語トップ10が発表されました。

金のことばは「忖度」

宮本隆治氏(以下、宮本):本日はお忙しい中、2017 ユーキャン新語・流行語大賞にご出席たまわりまして誠にありがとうございます。本日の司会をおおせつかった、宮本隆治。そして……。

櫻田彩子氏(以下、櫻田):櫻田彩子です。

宮本:どうぞよろしくお願いいたします。

櫻田:お願いいたします。

宮本:1948年、昭和23年に『現代用語の基礎知識』が創刊されました。創刊時流行した言葉が、「斜陽族」。その後「三種の神器」「団地族」「私は嘘は申しません」「無責任時代」「モーレツ」「記憶にございません」などなど。

まさに言葉は時代を映す鏡として新たな言葉が生まれ、そして消えていきました。その時代の言葉を残すため、1984年、昭和59年に新語・流行語大賞が誕生したわけでございます。

『現代用語の基礎知識』は今年70周年を迎えます。70周年を記念して読者および書店を訪れる人々に言葉の選挙と題してノミネートされました、30の言葉の中からお一人3つ、3語まで選出し応募投票をしていただきました。まずその結果を発表いたします。

もっとも応募の多かった言葉、金のことばは「忖度」。銀のことばは「インスタ映え」。銅のことばは「35億」でございました。

ただいまから2017年度新語・流行語大賞を発表いたします。選出されましたトップ10は読者の投票と同じなんでしょうか? どうなんでしょうか? お楽しみください。

「2017 ユーキャン新語・流行語大賞」は、その例年、該当年間において発生したさまざまな新語・流行語の中から、より軽妙に世相を突いたもの、また強烈なインパクトで世情に牽連されたものに対して、その新語・流行語の発生源・周辺の人物を顕彰するというものであります。

今年で34回目になりました。選考委員会ではノミネート30語を選出し、本日2017 ユーキャン新語・流行語トップ10として発表いたします。それでは選考委員のみなさまをご紹介しましょう。

櫻田:東京大学名誉教授・姜尚中選考委員、歌人・俵万智選考委員、女優・エッセイスト・室井滋選考委員、漫画家・やくみつる選考委員、『現代用語の基礎知識』編集部長・清水均の各委員です。

言葉の劣化が著しかった一年だった

櫻田:では選考委員のみなさまに一言ずつ、本年度の選考にあたった感想をいただきましょう。はじめに姜尚中委員お願いします。

姜尚中氏(以下、姜):どうも。今年は個人的にはやや言葉の劣化というものが著しい、そういう1年だったのかなぁと思います。ただ全般的には、確か室井さんも書かれていたと思いますけれども、都議会選挙や総選挙もありましたのでどちらかと言うと政治にまつわるような言葉がけっこう多かったのかなぁということですね。

それから先ほど「インスタ映え」がありましたけれども、非常に個人的なというか私的なメディアの世界というのが著しくなって。そういう2つの印象を持ちました。

いずれにせよ年間大賞はあとで明らかになってくると思いますけれども、いい意味でも悪い意味でも政治の季節だったというのが私の印象です。

櫻田:ありがとうございます。俵万智委員、お願いします。

俵万智氏(以下、俵):俵です。今年は、「わ〜豊作!」という印象はなかったんですけれども、やはり言葉が並んでみると、こんな1年だったなという感じがします。豊作な印象がないというのは、1つはテレビドラマの大ヒットですとか、あるいはスポーツ界からの言葉というのが意外と少なかった。それが1つの要因かなと感じます。

相変わらずネットから生まれ、そしてネットで消費されていく言葉というのも多いなと思いました。ネットで充実するということと現実の世界で充実するということが、どれくらい離れてどれくらい重なっているのだろうとそういうことも言葉を見ながら考えさせられました。

一方で政治から来ている言葉でなかなか古めかしい言葉が急にスポットライトを浴びるというようなその事象も大変印象に残りました。以上です。

言いづらい言葉が並ぶのはおかしい

櫻田:ありがとうございました。室井滋委員、お願いします。

室井滋氏(以下、室井):みなさま、こんばんは。室井滋です。せっかくの新語・流行語ですので楽しかったり、口にするとおもしろかったり、そういう言葉がどんどん出てきてくれたらうれしいなと思って1年間テレビで、ニュースソースの中で太字になる文字を追っかけてずっと見ておりましたけれども。

残念ながらやはり政治的なこと、それから社会的なちょっとびっくりするような出来事のときに、バラエティ、ニュース、いろんなところでその言葉は大きな文字で出てきたかなぁと思います。

そんなふうだとちょっと言いづらいような、「このハゲ」とか、言っちゃいましたけど、そういう言葉を選ばなくちゃいけないのかなみたいなことを正直ちらっと思ったりもして。そんなことはおかしいなぁというふうに思いながらも。

でも、そのたびにそもそも流行語とか新語というのは一体なんだったかなぁということを自分自身考えてしまうような、そんな1年間だったかなと思います。今回おそらくみなさまも想像なさっている言葉がこれからたくさん登場すると思うんですけれども、そういう中でじゃあ一体どなたに今日来ていただくのか、それがまたすごく難しい問題で。

選考委員で会議をしましたときも、この言葉で満場一致はいいけれども一体どなたに来てもらおうかということでけっこう悩んだりということも実際ございました。

ただしそんな中なるべく気持ちが明るくなったり、それから2017年を出発にしてこの言葉は流行っていったよねという言葉を中に盛り込もうという意見もございまして、私たちはそのあたりを工夫したつもりでございますので、どうぞお楽しみくださいませ。

「Jアラート」など、批評性のある言葉も含んでいる

櫻田:ありがとうございました。やくみつる委員、お願いします。

やくみつる氏(以下、やく):やくでございます。今、俵委員のほうから「スポーツ関係の言葉はなかった」というお言葉がございました。「髄液漏れ」や「万歳三唱」とか、かなりセンセーショナルな言葉が出たのにいささか遅きに失した感がございましたね。そこを救いきれなかったのは残念ですけれども。

(携帯電話を取り出しながら)あ、すみません、こんな最中に携帯なんか出してると行儀が悪いと言って怒られそうですが。実は今日先ほど、私はスマホでなくガラケーなんですけれども、衝撃的なネットのニュースが配信されておりました。

「さよなら、新語・流行語大賞。君の時代はもう終わった。すっかり消えた時代性と批評性」。実に甘っちょろい記事だと思いました。

もうすでに言葉は10語お伝えしてあると思いますので言ってしまいますが。例えばJアラート、これに批評性が欠けているだろうかと。これは単に目新しい言葉だからとか今年よく使われた言葉だからということで選んでいるわけではございません。もちろんそれもありますけど。

「Jアラートって結局役に立ってないじゃん」とか「いたずらに驚かすだけじゃない」とか。そういう言葉もあえて入れているわけですね。流行り言葉というのとはちょっと違いますね。「しっかりしてくれよ」「もっとちゃんとしたシステムなりないの!?」ということで、実はJアラートという言葉を選んだことにも批評性がある。

それからプレミアムフライデーという言葉も入ってますね。「流行ってないじゃん」「誰も月末の金曜日の夜に動いてないよ」「ごくごくわずかな人しか享受してないよ」と。早くもこの言葉は化石化しているというか。

今日はそれを推進されている方がお見えなので滅多なことも言えないんですが、言葉のみが先行してしまって現実が追いついてないじゃないと。実はそういう言葉も入れているんですね。これを批評性と言わずしてなんと言おうかと。

そういうことをわきまえていないこの記事、私もとかくなにかあるとなんとか言いたくなるタチなので、この方の気持ちもわかるんですが。もうちっとちゃんと見ていただきたいなと、そのように思っております。

宮本:ありがとうございました。

数字にまつわる言葉が目立つ

清水均氏(以下、清水):自由国民社の清水です。1984年に始めた「新語・流行語大賞」が、みなさまのおかげをもちまして、34回目を迎えることができました。

同時に、この言葉は『現代用語の基礎知識』から選ばれているんですが、この本も本当に長い間ご愛好いただきまして、昭和23年の創刊から、先ほど司会の宮本さんからもご紹介いただいていましたが、70周年を迎えることができております。

これもう本当に今日あるということを感謝して、70周年の感謝の気持ちを込めて今年実施したのが「ことばの選挙」。先ほど金賞・銀賞・銅賞、金のことば・銀のことば・銅のことばを発表させていただきました。

今年はみなさんに選考委員の選考とはまた一味違うことをもう1つ楽しんでいただこうということで、読者投票、読者の投票で投票の多い順に1番・2番・3番、金・銀・銅、一・二・三ということで、数字で今年の言葉を決めようじゃないかということを実施させていただきました。

これをぜひ今日お忘れなくお持ち帰りいただければと思います。とくにメディアの方になると、例年と違うことなので、ぜひこのへんのPRのほうをよろしくお願いいたします。

『現代用語の基礎知識』70周年で、延べ3,000万人以上の方に手に取っていただいて、この歴史を、今、70周年を迎えておりますが、これから発表になる流行語大賞、今日のトップテンと特別賞なんですが、数字にまつわる言葉がちょっと目立ちます。

みなさんもうご存じかもしれないんですが、これから発表される中の半数の言葉が数字に関わっています。これが今年のなにか特徴なのかなと思ったりもしますが、それがどういう時代的な必然なのかはちょっとまだ検討はしておりませんが、ぜひそういう見方もしていただいて楽しんでいただけたらなと思います。

お楽しみいただければと思います。以上です。

(会場拍手)

櫻田:ありがとうございました。

銀のことばは「インスタ映え」

宮本:それでは、今年、2017 ユーキャン新語・流行語トップテン、発表してまいります。2017 ユーキャン新語・流行語トップテン。「インスタ映え」! CanCam it girlのみなさん、どうぞお入りください。

櫻田:食べ物、ファッション、風景、すべては自分をプロデュースするための小道具だ。最新通信機器がポケベルだった頃、アムラーだってガングロだって「すっぴんは誰だかわからないね」と陰口叩かれながらも飾っていたのは、確かに自分自身だったものだ。

それが今、撮影された自撮り画像はアプリで加工もしちゃうのだという。盛って盛って「いいね!」をもらうのが喜びなのだそう。この勢いで、2017年はインスタ映えの意識が一般に浸透した年だった。

お店や街、そして2020年東京オリンピック・パラリンピックの自転車ロードレースも富士山の景観を生かしたルートに決まりそう。はたまた、先のトランプ・アメリカ大統領アジア歴訪では、中国の習近平国家主席が究極のインスタ映え、故宮でおもてなしという挙に出たほどだ。

かわいい誰かに変身したいという願いは、いつの時代も、女の子のみならず人を夢中にさせる。インスタ映えは人類の永遠のテーマを叶えてくれるスマホの向こうのおとぎの国のステージなのだ。

宮本:受賞者はCanCam it girlのみなさんです。本日のCanCam it girlの中村麻美さん、白石明美さん、そして尾身綾子さんにお越しいただきました。

櫻田:表彰の盾をやく選考委員より贈呈いたします。

私たちはただただ、かわいい写真を撮っている

宮本:やくさん、どうぞ。やく選考委員から表彰の盾を贈っていただきます。「インスタ映え」、受賞者はCanCam it girlのみなさんでございます。代表して、それでは中村さん。

やく:おめでとうございます。

宮本:ありがとうございました。それでは代表して中村さん、受賞した感想を述べていただきましょう。

中村麻美氏(以下、中村):本日はお招きいただきありがとうございます。今回、流行語に選ばれた「インスタ映え」という言葉ですが、今テレビや雑誌でたいへん賑わっています。

私たちはただただインスタでかわいい写真を撮って、それをインスタにアップしていただけなんですけれども、ただ1つ思うのは、今、購買意欲が低いとされている20代の私たちでも、時代に名を刻めるムーブメントを起こしているということはとてもうれしいことだと思っています。以上です。ありがとうございます。

(会場拍手)

このステージの「インスタ映え」は?

宮本:ありがとうございました。中村さん、今日のこのインスタ映え、このステージのインスタ映えはどうでしょう?

中村:(笑)。でも、すごくカラフルで写真に撮ってあげたらインスタ上が明るくなると思います。

宮本:そうですか。白石さん、マイクの前で。白石さん、ご自分が一番お好きなインスタ映えはどこでしょう? どういう状況でしょう?

白石明美氏(以下、白石):今年だと、夏に行われたCanCamのナイトプールだったり、あと公園とかですかね(笑)。

宮本:公園? どこの?

白石:季節を感じられるので。

宮本:季節感を。なるほどね。尾身さんはどうですか?

尾身綾子氏(以下、尾身):やっぱりこの時代、盛ってなんぼだと思うので、こういう自撮りライトとか使っていかに盛るかをこだわってふだん撮っています。

宮本:一番盛ったのはどんなときですか?

尾身:一番盛ったのは、やっぱりメイクのノリがいいときに、こういうのを使ってよりかわいく映ることをこだわって撮っています。

宮本:今日の盛り具合はどうでしょう?

尾身:100点満点です(笑)。

宮本:ありがとうございました。CanCam it girlのみなさん、どうもありがとうございました。

櫻田:ありがとうございました。どうぞお席にお戻りください。

「35億」のブルゾンちえみは会場に来れず

宮本:それでは続いての発表です。2017 ユーキャン新語・流行語トップテン。「35億」!

櫻田:世界の人口半分、男が35億人いるという。この35億をたくみに活用した大物女性新人が登場した。マッチョと優男を両脇に従え、やたらとポジティブ恋愛思想を周囲に植え付けまわる意識高い系女子。このポジティブっぶりが少子化で内向く日本の度肝を抜いた。

バブル時代のオヤジギャルとも、アメリカのテレビドラマの登場人物ともとれる、微妙に時代とズレた出で立ちで、オースティン・マホーンの曲『Dirty Work』に乗せ、振り返って決めるスタイルが大ウケした。

女優さんたちが真似したり、巷では振り返って数字を言って遊んだり、大物感を楽しんだ。政治の世界では、2人の男性をリセットした女性党首はあっという間に身を引いてしまったが、このキャリアウーマンの熱気はまだまだ続きそうだ。

宮本:受賞者はコージとダイキという2人組のユニットを従える、お笑い芸人であり女優のブルゾンちえみさんです。本日はご欠席です。会場から「おお」というため息ですが。

平和ボケへの警鐘「Jアラート」

宮本:続いての発表にまいりましょう。2017 ユーキャン新語・流行語トップテン。「Jアラート」!

櫻田:北朝鮮は、7月にアメリカ東海岸に到達可能な大陸間弾道ミサイル「火星14型」発射実験、9月に160キロトン規模の核実験を強行。「今日ミサイルは?」が朝の会話になる日もあり、弾道ミサイル発射の脅威に振り回された1年だった。

戦争中の国民は武器兵器に詳しいが、日本でもワイドショーがミサイルやアメリカ艦隊などについて解説し、原子力空母「ロナルド・レーガン」などを知るようになった。

弾道ミサイル情報のJアラートは今年2回発動した。テレビ画面が一斉に黒くなりぬーんという音が聞こえると、「これは現実なのか?」と不安でいっぱいだ。この不気味なサイレン音は平和ボケ・日本人への警鐘にもなった。

外国の避難マニュアルには、保護スペースやシェルターに逃げ込むことが推奨されているが、日本の家ではこれからシェルター設置はなかなか難しい。将来、シェルター付マンションなどという物件が出ないようならよいのだが……。

宮本:受賞者は、Jアラートのリアルなリポート動画を海外に発信し話題となった、在日イギリス人、クリス・ブロードさんです。クリスさんどうぞ。

本日は株式会社ライフブリッジの櫻井亮太郎さんにもお越しいただきました。通訳をお願いいたします。そして、表彰を……。

東北の魅力を世界に発信する

櫻田:盾を室井選考委員、お願いいたします。

(盾が授与される)

宮本:盾が贈られました。ありがとうございました。クリスさんと櫻井さんは仙台を拠点に活動をなさってらっしゃるということですよね。

櫻井亮太郎氏(以下、櫻井):はい。

宮本:どうして仙台をお選びになったんですか?

クリス・ブロード氏(以下、クリス):東北というところは、世界から見ても日本の「最後に残された秘密」であるということで、まだ世界の人々が発見されていない東北というものを世界に発信したいと思いまして、この仙台、また東北に住み続けています。

海外のYouTuberの方はどうしても東京や関西地区に住んでいる方が多いんですけど、東北に住むことによって東北の魅力を世界に発信する責任感を感じながら住んでおります。

宮本:お二人は動画制作を仙台で行っていらっしゃる?

櫻井:そうですね。一緒に動画制作を東北を中心に、東北のまだ発見されていない魅力というものを、マニアックなところを中心に発信をしております。

櫻田:今日現在、アクセス数がクリスさんの動画が223万回を超える再生回数ということですね。

宮本:世界に発信したことによっていろんな反響があったと思います。

櫻井:はい。

クリス:世界中からあらゆるところから連絡やコメントがあって、驚異的なスピードにある意味、恐怖感もあった。怖かったんですけれども。

ただやはり、すごくおもしろかったのは、YouTubeで動画を発信したときに、イギリスなど海外のニュースサイト、チャンネル……番組からも連絡があってインタビューを受けたんですけれども。彼が北朝鮮の専門家のような扱いをされて、ある意味困ったところもあります。

宮本:はあ、そうですか!お母さんはどんなことをおっしゃっていました?

クリス:クレイジーということですよね(笑)。

宮本:どうもありがとうございました。

櫻田:ありがとうございました。どうぞお席にお付きください。

宮本:クリス・ブロードさん、そして櫻井亮太郎さんでございました。ありがとうございました。「Jアラート」でした。

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