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地方創生 × インターネット(全4記事)

人の本来あるべき姿は「助け合い」 地方創生とシェアリングエコノミーの可能性

2017年6月10日から11日にかけて、世界遺産である和歌山県高野山にて、47都道府県がつながる地方創生イベント「地方創生会議」が開催されました。初開催となる今回は、地方創生に関わるさまざまな分野のキーパーソンを招いて、トークセッションやワークショップを行いました。トークセション「地方創生 × インターネット」では、インターネットを活用する4社が登壇。地方創生に関する取り組みについて語りました。

技術を出すかどうかは農家側が選択すればいい

森戸裕一(以下、森戸):ほかにありますか? じゃあ、どうぞ。

質問者3:はい。広島出身で、今、淡路島で農業をやっております○○と申します。今、農総研さんにもお世話になっております。

(会場笑)

及川智正(以下、及川):恐縮です。

質問者3:農業をしている身から及川さんへのご質問なんですが、農業の技術を吸い上げて、それを統一することによって農業全体を安定化させたいというお話があったかと思うんですが、農業をしている身からすると、やっぱり自分の技術は自分で持っていたいと思う方って、すごく多いと思うんですね。

そこで、どういうふうに拡大を考えられてるのかというのが疑問でして。例えば日本全体で、これから農業が衰退しないように頑張っていこうとお考えなのかなと思ったんですが、いかがでしょうか?

及川:農家さんに、天秤にかけてもらえばいいと思うんですね。技術を出したくないっていうのであれば、先ほど言った、その技術を使っていいものを作って売る、っていうところで儲けてもらえばいいですし、それこそ世に広めたいでもいいですし。もしくは、この技術で安定的な収益を得たいっていう気持ちが強いのであれば、技術を放出していけばいいのかなと。

どちらかを絶対やらなきゃいけないってことじゃなくて、農家に選択肢があるので、農家さんが選んでいただければいいんじゃないのかなって思ってます。

質問者3:ありがとうございます。

森戸:ほかにありますか? はい、お願いします。

地域にシェアエコが普及するかは、東京でも苦労している

質問者4:岐阜県から来た○○と申します。実は来週シェアリングエコノミーをやるので、上田さんにお話をおうかがいしたいんですけど。

地域にシェアリングエコノミーという概念を浸透させる上で、たぶんこういうことが起こりえるんじゃないかというところがあれば、おうかがいしたいということと。あと、シェアリングシティーをやってらっしゃるんですけど、あれに対して例えば実際の反応とかを教えていただきたいんですけど、よろしくお願いいたします。

上田祐司(以下、上田):ありがとうございます。シェアリングシティーというのを宣言すると、シェアリングエコノミー協会のみんなに声をかけて「この街でシェアリングエコノミーを受け入れてくれるらしいから、どんどん提案を持っていけよ!」と言って、100社ぐらいあるシェアリングエコノミーの会社がいろいろ提案を持っていく、という枠組みなんですね。

それが1個1個うまくいくかは、それはわかりません。ただ、情報の流通は飛躍的に良くなります。

前回、4、5ヶ所に申請していただいたんですが、今年はおそらく20ヶ所は超えていくと思います。本当にすごく積極的になっています。地域にシェアエコが普及するかどうかは、東京でもけっこう苦労しているのが実態なんです。

シェアリングエコノミー協会のプラットフォーマーからすると、おそらく日本中でシステムは1個のほうがいいだろうと。例えばライドシェアをやるのも、各地域でシステムを作ったら絶対採算が合わないんで、1個がいいだろうと。

その1個を作ってる会社からすると、いちいち1個1個の地域で浸透させるのも面倒くさいんですよね。費用も割れちゃうんですよね。そこのプロモーションは、やっぱり地域のほうで手伝ってくれないと。

それは市の広報誌なのか、もっと説明会を開いてやるとかでもいいんですけど、それをやってくれるんだったら、喜んでこっちも乗り込んで説明会をやりますっていうスタンスです。そこは力を合わせていくしかないかなと思ってます。

質問者4:ありがとうございます。

森戸:よろしいですか。10分切りましたね。あと1つか2ついきたいんですけど、すいません、お願いします。

質問者5:○○と申します。吉野さんにおうかがいしたいんですけども、遠隔でやることの生産性とか、モチベーションとか、管理体制とか、成果の基準みたいなのをおうかがいしたいんですが。

とくにクリエイティブ関係でデザイナーとかプログラマーとか、そういう成果を得るのが難しい職業の人たちを遠隔で使っていくときの話なんですけども、営業であれば数字でどれだけ成果を出したかというのが基本になってくると思うんですが。

そばにずっと一緒にいて働いてると、取り組んでる姿勢とかわかりやすいと思うんですが、遠隔で働くときは、ある程度の仕組みがあって、うまく生産性を上げるためのコツとか、そういうのありますでしょうか?

バッジングによって見えないところを可視化している

吉野隆生(以下、吉野):ありがとうございます。営業の部分であれば、まさにおっしゃるとおり数字で、生産性は東京より20パーセント高いという数字が出ている状況です。

同時に私は、営業戦略室とていうところはまさに成果物がない状況で、さまざまなマネジメント、他部門からいくそのデータの分析のリクエストに対して、いかに正確に、いかに早くというところでやってるんですが、これ可視化しにくいんですよね。

やっぱり人間って、なぜ評価するか、例えば給与の部分もあるんですけども、やる気の源泉じゃないですか、評価してもらうっていうのは。

1つヒントにしてほしいのが、バッジングっていうシステムが組み込まれているんですけども、感謝の気持ちを述べるっていうことですね。マネージャーから部下が褒められるのは当たり前かもしれないんですが、お互い社員同士で褒めるっていう制度が根づいています。

例えば、1つの依頼に対してその依頼元の当人の思いよりも十分な速さで、社員同士でバッジを送付するっていうことをやってるんですね。このバッジの送付数をトラッキングしてます。

年間にいくつもらったとかいうのをやって、見えないところも可視化してやると。そうすることによって、社員も同じ仕事に取り組む上でも、できればバッジをもらいたいというモチベーションに変わって、相手を感動する仕事に変えてくれる。こういった仕組みを使うと、見えないところが可視化できるかなとは思います。

質問者5:予想以上にアナログな仕組みで、驚きました。

農家にもメリットがあり、食べる側にもメリットがある

森戸:ラストの質問。はい、お願いします。

質問者6:神奈川から来ました○○と言います。及川さんに質問があるんですけれども、及川さんの「農業とは、作ったものを食べてもらうまでコーディネートすること」という言葉が印象的だったんですけども、従来の農業システムと比べて、実際に及川さんがやられている事業というのは、どういったところが特徴だったり、工夫してる点なんでしょうか?

及川:長いよ。

(会場笑)

誰から見るかによって、たぶん、いいも悪いもあると思うんだけど。農家さんから、出荷する生産者から見ると、今までの流通っていうのは、例えば農協さんに出荷すると、自分で値段を決められない。出荷先も自分で決められない。もっと言うと、自分で好きなものが生産できなかったんですね。農協さんが指定したものじゃないと、農協さんは買い取ってくれない。もっと言うと、持っていったものはすべてお金になるんだけど、傷物は引き取っていただけなくて、産地で捨てていた。

我々のほうはどうかと言ったら、スーパーマーケットで販売したり、農家さんが自分で決められている。自分で好きなスーパーマーケットの店舗まで選べる。自分で好きなものが生産できる。確かに委託販売という形式をとっているので、僕らは売れ残りのリスクは農家から背負うんだけども、傷物でもおいしければ出荷できる。捨ててたものまでお金になるっていうところが生産者のメリットで。あと一番は、さっき言った1,000店舗と、情報発信ができるというのがメリット。

一方、食べるほうのメリットはなにかって言ったら、基本翌日にはスーパーマーケットにお届けすることができる。今までは3、4日かかってたので、鮮度がいいということだったり。

もう1つおもしろいのが、流通に3~4日かかってたから、例えば今までトマトは緑のトマトをとったんです。緑のトマトをとって、3~4日でピンクになって、スーパーに届くと赤くなるみたいな。

一番おいしいトマトは、ご存じのとおり、木の上で赤くなったトマトが一番おいしい。こういうものも翌日出荷なので、おいしい完熟した野菜と果物が買えたり、またすべての生産者の名前がわかったり。

あと、選ぶ楽しさがあって。今、スーパーへ行ってキュウリを買おうと思ったら、3本100円だったら、3本100円じゃん。うちは農家さんが値段を決めるので、3本100円もあったら、5本50円も売ってたりするんですね。

宝物を探すような、掘り出し物を探すようなアミューズメント感があって、プラス、なかなか大量流通や大量販売に乗らないイタリアの野菜とか、アーティチョークとか、リーキとか、こういう珍しい野菜と果物を買えるっていうのが、末端のお客さまのメリットじゃないかなと思います。もうちょっとしゃべれるけど、やめとく。

(会場笑)

人の本来あるべき姿は助け合いだ

森戸:それでは、そろそろお時間のほうがきてますので、最後に、今日こちらの参加者のみなさんは明日の18時まで、いらっしゃるということなんで。上田社長のほうから一言ずつでけっこうなんですけど、エールを送っていただければと思います。

上田:地方の活性化のために、シェアリングエコノミーという新しいものが普及していったらいいんじゃないかみたいなことを聞くんですが、すごく言葉の流れが納得いかなくて。

人の本来あるべき姿は助け合いだと思っていまして。シェアリングエコノミーは、単にネットを介した助け合いを現実化するものであって、企業と消費者、もしくは官公庁と消費者みたいな関係から、人同士が助け合う世界を作るためにシェアリングエコノミーがある。これがまた地方に、絶対ドンピシャであると信じています。

みなさんも、ぜひシェアエコを一緒に頑張っていきたいんで、なにかあれば言ってください。ありがとうございました。

(会場拍手)

森戸:及川さん、お願いします。

及川:僕からは簡単に3つ、お話しさせていただきたいと思います。今僕のところに、いっぱい若い子が来るんですよ。「こんなことどうですか?」「こんな業界、こういうことを考えてるんですよ」って言われるんですけど、僕、そういう人にまったく興味ないんですよね。お前らの業界にもまったく興味ないし。

(会場笑)

なにが興味ないのかって言ったら、やる前から「これどうですか?」って言われても、「知らねえよ」って話なんですよ。重要なのは、まずやってくれっていうことじゃないのかなと思うんですね。

やって、困ったことがあったらぜひ先輩に、ここにいる先輩に相談していただければ、できることができる、お手伝いができるんじゃないのかなっていうことなので、まず重要なのはやるということ。

もう1つは、地方創生って言われてますけども、だまされちゃダメですよ。本当に地方って創生しないとダメですか? 誰が地方って決めてるんですか? 誰が地方がダメだって言ってるんですかっていうのを、ちゃんと考えたほうがいいんじゃないのかなって思うんです。

和歌山に本社を置いて、田舎、地方って言われるんですけども、飛行機で1時間で東京に行けるんですよ。日帰りで行けるんです。日帰りで、時間あれば、どこでも行けるんですよね。地方じゃないんじゃないんですか? ITだけじゃなくて、今、物流網も広がっているので、本当に地方っていうのがなにかっていうのを、もう一度考えたほうがいいんじゃないのか。

あと最後に、今はとてもいい時代なんですよ。うちみたいな会社が、なんと8年で上場できるんですね。僕、現金50万円でこの会社を作ったんですよ。それが頑張れば、本当に上場できる。本当に、いい時代っていうことを、みなさんに認識してもらって、プラス、本当に情熱があればなんでもできると思うんで、ぜひ若いうちにいろいろ挑戦していただければと思ってます。

森戸:はい、ありがとうございます。

(会場拍手)

吉野:はい。ちょっと大きなテーマ、働き方改革っていうところから入っていきたいんですけども、先ほどうちの子どもと嫁もいたんですけども、生産性が上がって、すごくいい充実した生活ができてるんですが。

それって、和歌山に来たからじゃなくて、和歌山で築いただけなんですよね。そこで思ったのが、やっぱり小さなコミュニティーがつながっていく、それが広がっていくってことが個人の充実だったり、社員の満足につながるってことは、よく理解できたと思います。

できればみなさん若いうちに、ネットワークの大きさを大きくするんじゃなくて、いろんな価値感の違うネットワークをつなぐ、この線を増やしていただくこと。まさにこの会がそれだと思うので、こういった線を作るということを使って、みなさん全員で地方創生、日本全国が盛り上がるような取り組みにしていただければと思います。今日はありがとうございました。

(会場拍手)

森戸:ありがとうございました。それでは、セッションのお時間が来ておりますので、最後にパネラーの方3人に、もう一度、盛大な拍手をお願いします。

(会場拍手)

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