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「新聞がなくなる日」 河内孝×ひろゆき(全5記事)

もし新聞社が倒産したら、政府は守るか? 毎日新聞・元常務がひろゆき氏に教える、メディア界のウラ話

「もし新聞社が潰れそうになったら、政府は救済に動くつもりがあるのか?」「渡邉恒雄(ナベツネ)氏って、実のトコロどれくらい権力持ってるの?」など、尽きないマスメディア界への疑問。ユーザからの質問に答える形で、毎日新聞・元常務である河内孝氏がギョーカイ人しか知り得ない情報を、西村博之(ひろゆき)氏に明かしました。

日米ジャーナリズムの問題点

スタッフ:次の質問です。

「日本とアメリカ、現時点でジャーナリズムという側面で、大きく違う点、または同じ点はどこでしょうか?」

ひろゆき:この話を1時間聞いてくれれば、それで終わりな気もしますけど。

河内:アメリカのジャーナリズムがこの10年ですごい変わったのは、9.11が原因だと思います。事件があってブッシュの息子が大統領をやっていたこともあって、あのニューヨーク・タイムスを含めて右傾化した。

パールハーバーでやられたのは、戦闘員を含めて1,700人くらいと聞いているんですけど、それで原爆落としちゃう国でしょ。ニューヨークという、事実的アメリカの心臓部に特攻攻撃されて3,000人、日本人も二十何人か亡くなっている。やられて、ジョン・ウェインが2丁拳銃で乗り込まないはずがないんですよ。

アメリカの戦争は、ベトナム戦争もイラク戦争も湾岸戦争も、始まったときは圧倒的な国民の支持で始めてますよ。5、6年経って死者が何万人にもなると反対になるんですけど。

何が言いたいかというと、あの時からアメリカのジャーナリズムはすごく右傾化し始めた。もちろんリベラルな声もあるけれと、全体としてはとてもイラク戦戦争に反対するなんてできなくなっちゃった。

むしろイギリスのメディアからは、大量破壊兵器なんてないんじゃないのって声や、イラクって占領するのは簡単だけど、あれだけ部族とか歴史とか複雑だと占領なんかできないんじゃないか、と言ってたんだけど、戦争に突っ込んじゃった。それから立ち直りきってないのが、アメリカのジャーナリズムだと思うな。

日本のジャーナリズムの問題は単純に言えば3つ。尖閣の問題で一色さんのビデオが来られたら困っちゃう、なんて腰の引けた面を持っている。

ひろゆき:でも報道しても怒られるし、しなくても怒られるし。「来てくれるな」しかないですよね。

河内:いやいや、あのビデオが来て、放映したら新聞協会賞だよね。それで総務省や警視庁が家宅捜索やったら、もう言論弾圧で3カ月くらい騒げるじゃない。映像より全然いいじゃない。「本社に家宅捜索、言論弾圧許せるか」ってね。なんでやんないのかな。がっかり気分。

ひろゆきさっきのTBSの人以外は、保身に入るというわけですよね。

河内:TBSの特定個人ね。社として言ったわけじゃない。

ひろゆき:新聞社の社員の人も、人生守りに入っているところがあるんですか?

河内:不思議でしょうがないんですけどね。昔はよかったとか昔話で威張るのは嫌なんですけど……ロッキード事件を僕ら現場でやったときには、国会の理事会やなんか秘密会に出した資料は、だいたい朝刊で抜いていたよね。出してくれる人もいた。

今回、あのビデオを国会に提出されているわけですよね、予算委員会に。その前に全国1,700人の海上保安官が、相当数見ているわけです。ぼく、千葉支局にいたから。第三管区海上保安区で、横浜と調布と千葉に出張所があって、海保の船に乗って、取り締まりに一緒行ったりしますよ。

海上保安庁の人と消防署の人って、警察の人と違って僻むっていうのかな、大事にされないじゃないですか。警察って捜査するからチヤホヤされるでしょ。

4年間の中央記者生活もあったからわかるんだけど、同じ労力使うなら、海保とか消防とか、税関の人と仲良くしていると、時々思いがけない情報が入ってくることがある。逆に日本に何万人の新聞記者がいるのか知らないけど、(尖閣ビデオについて)聞けるような海保の友達が誰もいなかったわけだよね。

ひろゆき:そういうことですよね。

河内:これがヤバいと思う。朝日新聞の敏腕記者があのUSBを手に入れたのに、上司が押さえた、というならまだわかるよ。その形跡はゼロ。これは日本ジャーナリズムのヤバさ。アメリカのジャーナリズムは戦時体制みたいになったことがあった。

ひろゆき:記者の個々の能力が下がっている? やる気がない?

河内:やってもどうなるってもんじゃないかもしれないけれど……(笑)。

ひろゆき:沖縄の事件があったとき、知り合いに海保の人がいたら絶対聞くじゃないですか? そしたらうち、尖閣ビデオ来てるんだよねって話、チラッとでも聞けると思うんですよね。

河内:僕らなんか、鑑識から死体の写真見せてもらって「ああ、マサカリでやったのと柳葉包丁でやったのはこんなに違うんだね」なんてことが夜の当直になるとあった。暇だから。

そういうことってよくあったと思うんだけど、日本の数万人の記者にテレビ、新聞に引っかからなかったらしいことにヤバいな、と。だから敗北だとかドギツイ見出しを使ったんだけどね。

ひろゆき:ほー。それはわりと、どうしようもない問題のような気もしますけどね。

新聞社が倒産した場合、政府は救済するのか?

スタッフ:次の質問です。

「日本では、戦後新しい新聞社は生まれていないと聞いています。これはなぜでしょうか? 何か障害や規制があるのでしょうか? また、日本で新聞社が倒産した場合、銀行のように、政府が援助して救済したりするのでしょうか?」

河内:新しい新聞社ができない理由は簡単で、新聞社ってすごいインフラがいるんです。印刷工場とか、輪転機のワンセットって大体5億円くらいしますから、4セットで20億円、それに土地がいるから、どこに作るか別として、トータルで100億円近い出資になる。

それも、東京だけってわけにいかないから。他人の印刷機を借りてやるというのもあるけど、1985年くらいからは業界としては満杯になっちゃったので、新規参入を認めないって雰囲気はあるんですよ。

僕の記憶では、大森実さんっていうこのあいだ亡くなった方、毎日のOBが、ハノイ爆撃(記事を書いて)、ライシャワー大使から攻撃され、毎日を辞めたんだけど、東京オブザーバーって新聞を作ったけれども、3年くらいで倒産しましたね。後を継ぐ人もなかなかいなかった。

ひろゆき:日刊じゃないやつはちょこちょこありますけどね。IT新聞みたいなやつとか。

河内:ブログがあるから、それならできるんじゃないですか。

それから、潰れたらどうするか? えっとね、経産省の人と、何回かケーススタディやって、担当課長に言わせると、新聞社が潰れるとき、監督官庁がないんだけど、どこにお鉢が回って来るかと。そうするとやっぱり経済流通過程の問題だから、経産省らしいんだよね。

「心配しなくていい。当面は業界再編みたいになって、飲み込んでいくから、バッターンって倒れることはないよ」って。なぜなら、新聞社って、毎日が今1,700億くらいで、朝日が3,000億……。経済規模でいったら小さいの。

ひろゆき:そんなに大きなわけじゃないですよね。

河内:借金ベースでいっても、みんな数百億ベース。日本航空なんて5,000億、従業員何万人じゃん。新聞は業界全部じゃあ何万人だけど、あまり影響ないよね、って感じで。僕は国からってことはないと思う。

質問者にぜひお答したいのは、新聞社というのは再販制度とか国の規制で守られているから、国としてはこれ以上差し出す手はないというのが現状だと、私は思っています。

ひろゆき:ほー。後は本当に、補助金とかやるかどうかみたいな。

河内:難しいですよね。子ども手当も出さないうちに、新聞手当なんて。朝日新聞だと給与が平均1千数百万くらいでしょ。ちょっと待てよ、って話になるよ。

ひろゆき:まあ、そうですね。じゃあ、潰れるということで(笑)。

河内:いや、潰れたとしても、国として救済することはないだろうという。

ひろゆき:すんなり、潰れてくれるそうです、はい(笑)。

毎日新聞がプロ野球の2リーグ制を誕生させた

スタッフ:次の質問です。

「新聞がなくなると、掃除や何か敷くとき、包み紙に困りますが、そのあたりはどう思いますか?」

ひろゆき:たまにあると便利ですよね。

河内:駅に行けば、フリーペーパーもあるしね。

ひろゆき:引っ越しのとき困ったんですよ。そんなに大量に新聞紙なかったんで。

河内:まあ、それは別の方法考えていただくとして、昔はインクなんかがあれば防虫剤になるなんて話もありましたけどね。今は僕の家、どこにも敷いてないです。掃除のときどうするの?

ひろゆき:いや、掃除のとき使わないです。引っ越しのときに食器包んだりするじゃないですか?

河内:昔、弁当箱包むのに新聞紙なくなったらどうしたらいいって、これは大正時代の話だからなあ。今はタッパーウエアにねぇ……。どうでしょうか、お答えしかねる。

スタッフ:次も独特の質問なんですが。

「河内さんの新聞記者時代、新聞購読の特典で、人気のあった商品はなんでしょうか? 私は30代ですが、後楽園球場の巨人戦のチケットをもらいました」

ひろゆき:読売は巨人戦ってありますが、毎日はなんかウリあったんですか?

河内:読売が巨人軍のチケットでガンガンやったときに、焦って、当時2リーグ制ってのをやって。2リーグ制って言い出したのは毎日なの。

ひろゆき:そうなんですか?

河内:それで、阪神から別当とか優秀な選手を片っ端から集めて、毎日オリオンズっていうのを作って、大毎オリオンズになって、今、なにになっているのかな。要するに、いかにプロ野球のチケットが効果的だったのかいうのは、毎日が2リーグでプロ野球球団作ったことでもわかるでしょ。毎日の地下の喫茶店は「オリオンズ」ってなってますよ。

ひろゆき:えっと、ロッテ・オリオンズかな。いまどき野球も興味ありませんからね。

河内:だからナベツネさんに、巨人戦が年十何回中継できるぞ、って言われて、その気になって大洋なんとかという球団を買った某テレビ局は、思惑外れたんじゃないかな。

ひろゆき:売りに出ていますけどね。

河内:当時、プラチナだったことは事実ですよ。

ひろゆき:やっぱ野球なんですね。

ライバル社の元重役が語る、渡邉恒雄氏の桁外れたパワー

スタッフ:今も名前が出ましたが、最後の質問です。

「ズバリ、ナベツネさんについての質問です。一体どんな人なんでしょうか? 黒幕、フィクサーというイメージが強いですが、本当に権力はあるのでしょうか?」

河内:彼は1985年に確か取締役になっていますね。今、2011年ですから、25年。オギャーと生まれた赤ん坊が大学出てサラリーマンになってる間、取締役やっている。

ひろゆき:リビアのカダフィ大佐みたいですね(笑)。

河内:それは、あなたが言ったんですからね?(笑)。

ひろゆき:(笑)。

河内:コレって、オーナーじゃなくサラリーマンとして入ったわけでしょ。それは凄まじいものですよね。もちろん僕らも現役時代知らないし、今の読売以外の新聞社の社長の人って、ナベツネさんから見たら、ハナタレ小僧なんじゃないかな。

しかも、ニュース畑出身の氏家(齊一郎氏:元日本テレビ会長)さんという人と、新聞、テレビとやっている。すごいパワーですよ。

それを抜きにしても、ナベツネさんって人が一筋縄でいかない面白い人なのは、学生時代、学徒動員で新潟で塹壕掘らされて、ある意味戦争被害者で、反軍思想で。その点ではしっかりしているし、ある意味じゃ、昨今の経営者よりも思想もしっかりしているよね。

ただ、問題は、これから新社屋を作って率いて行くのにどうなのか。ちなみに、毎日も、朝日も、新社屋作ってから、なんか下り坂なんだよね。

ひろゆき:なんで、新社屋を作りたがるんですか?

河内:毎日の場合は当時、もう借金が多かったから、有楽町の土地を売ることで借金返した。わかりやすい。「バカだな。貸しビルにして読売のビックカメラみたいにすればいいじゃないか」(と思ったけれど)。後の祭りだよなあ。売っちゃったんだもん。

ひろゆき:TBSは不動産屋として成功しているみたいですね。はい、ということで……え? ニコニコ本社について触れろ? あれ、失敗作じゃないですか……。ニコニコ動画でニコニコ本社というのを原宿に作ったんですけど、上手くいってないという。

河内:それは新聞社じゃないでしょ?

ひろゆき:新聞社じゃないんですけど。なんかすぐ調子に乗って作りたがるんですよね。それで失敗するっていう……。

河内:去年のヒットだよ。河村さんも出たけどね。既存のマスメディアが、なぜ小沢さんなり、神保さんなり、江川紹子さんが来てくれて、この媒体が選ばれているかということ、自分に何が足りないのかを深刻に考えてほしいと思っています。

ひろゆき:別にニコニコ生放送ってUstreamを使うとかで、他の新聞社もやろうと思えばできるわけじゃないですか。そうするとニコニコにしかない何かって特にないので、新聞社が本気を出せば直ぐにできると思うんですけどね。

河内:新聞紙の圧倒的限界は分量が限られているから、われわれが教わったのは、どれだけ原稿を短くできるかってこと。あなたたちのやっていることは極端にいったら無限大で、容量アンリミテッドで、行くとこまで行くことでしょ。

ひろゆき:ダラダラしゃべっているだけでなんとかなりますからね。

河内:でも、それって決定的な違いがあって、どっちが良いとか悪いとかの問題じゃないけれど。逆に新聞記者として育てられた教育のほとんどのことが、役に立たなくなってきていることは間違いない。

ひろゆき:でも河内さん、全然喋れるじゃないですか。

河内:僕は"ニンゲン"として生きているだけです。

ひろゆき:なんで新聞社の人と分けたんですか?(笑)。

河内:いやいや、新聞記者やらせてもらっているうちは楽しく、今でも書いていますけど、途中で素人に経営部門なんかをやらせたのが、毎日新聞の大間違いだったわけで。

ひろゆき:やりたくなかったんですか? 経営?

河内:やっぱり論説委員とか言って、偉そうなこと言ってるのが一番楽しいでしょう。

ひろゆき:へーっ。現場離れるとそんなに面白くないですか?

河内:儲かっている会社なら面白いかも知れないけど、あっちこっちボヤ消して回っているみたいなんだもん。

ひろゆき:責任とらされてばっかりみたいな。

河内:まあ、そんなに責任とらなかったけれどもね(笑)。

新聞社に残る思い込み「紙は永遠」

ひろゆき:って微妙な感じで終わりになりましたけれど。こんなコメント出てくる番組に出てもらったわけですけれど、感想とかあれば。

河内:また、こういう媒体でガンガン話して、どっちかというと敵対的というか、血が出るような議論をしたいですね。渡邉恒雄さんは来てくれないだろうけど、読売新聞の権威ある人が、「河内けしからん、紙は永遠である」と言うような人と、ぜひ議論したいね。

ひろゆき:議論というのは新聞社の人なんですね。

河内:「河内の考えているようなマスメディアの再編成だとか、生き残りとかはあり得ない」と、僕と違う意見を持っている人と議論したいな、と思いますね。

ひろゆき:時節をベースに話している限り、結論はそうなるしかないと思うんですけどね。新聞社側は新聞社側の論理があるんですか?

河内:うーん、「紙は永遠です」と思ってるんじゃないのかな。

ひろゆき:それはそれで面白そうですね。じゃ、次回はそれで。

河内:誰が来てくれるのか、出てくれる人は相当勇気のある人だと思うけど。

ひろゆき:ちなみに、毎日新聞だと佐々木俊尚さんがいますけど、毎日新聞辞めてネットへ行く人が多いようなイメージあるのは、なんでですかね?

河内:毎日辞めた人は島さんにしても、鳥越さんにしてもいっぱいいるけどね。「家貧しくして孝子顕る」ということがあるけれど。

佐々木君には慶応(大学)にも何度か来てもらったけど、僕も彼から教わることが多い。毎日も教わればいいのになあ。彼をコンサルタントにしておけば、WaiWai(コラム)問題なんかも、もう少し上手くやれたんじゃないのかと思ったりしますけど。

ひろゆき:じゃ、佐々木俊尚さんをコンサルタントにして雇ってください。ということで1時間半に渡ってお送りしてきましたけど、ニコ生トークセッション、今日は河内さんに来ていただきました。ありがとうございます。

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