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セカンドキャリアに幸あれ!! 青木理恵×たまじゅん部(全1記事)

サッカーで旅人は増やせるか? タダでJリーグを観戦できる「Jマジ!」誕生の背景

サッカー解説者の玉乃淳がスポーツ・ビジネス界の第一線で活躍するキーマンの半生をたどる「スペシャル対談」。今回は、19歳20歳の若者を対象に、Jリーグの試合のチケットを無料で提供するというサービス「Jマジ!」担当者、青木理恵氏インタビューを紹介します。※このログはTAMAJUN Journalの記事を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

Jリーグと組んで旅人を増やす

一同:よろしくお願い致します

青木:こちらこそよろしくお願い致します。

土屋:早速ですが、「Jマジ!」はどういったキッカケでスタートしたのですか?

青木:「Jマジ!」の前に、「雪マジ!19」という企画をスタートしていて、今では「ゴルマジ!」「つりマジ!」など様々な「マジ☆部」があります。もともと「マジ☆部」は、じゃらんリサーチセンターという国内旅行市場を盛り上げるという部署が始めた企画で、人口減少地帯である地方に対してきちんと人を流していきたいという思いを持ってやっています。

その「マジ☆部」全体で目指しているのが、「観光振興による地域活性」なんです。観光レジャーというのは、都市部から地方に移動する人を作れる市場ですし、地方を元気にしたいという思いが元々ありましたから。

青木:ところで、「Jマジ!」に関連して、「37パーセント」という数字があるんですが、なんだと思いますか?

土屋:37パーセントの若者が初めてJリーグを見に行く……ですかね。

青木:なるほど。若者の新規率っていうことですね?

土屋:はい。

青木:実はこれは私が「Jマジ!」をやる前に調査してきたときにでてきた数字で、若者に限らずJリーグを見に行っている人たちのうちの37パーセントが、アウェイの試合を見にいくという調査結果です。だから、Jリーグを見に行く人が増えれば、極論を言っちゃえば、旅人が増えるというのが見えてきました。旅行を盛り上げる私たちが、Jリーグと組んで、旅人を増やす意味ってすごくあるねって考えたのが、「Jマジ!」のスタートにいたった経緯です。

土屋:ということは、このサービスコンセプトは「地域」ということでしょうか?

青木:そうですね。「Jリーグをキッカケとして旅にでようね」というのが元々の目的になるんですが、もし、コンセプトというのを別の言い方で表現するとしたら、「観るだけじゃないサッカーを」っていうのが、「Jマジ!」のメッセージで、これはロゴの上にチラっと入っています。

観るだけでしょって思われているJリーグを、美味しいご飯があるよとか、キャラクターも可愛いよとか、縁日みたいなこともやっているよとか、あえてサッカーメディアではない私たちが発信していくことで、観ることだけを目的としている人たちではないライトな層を獲得できるのではと思っています。

タダだと人を誘いやすくなる

土屋:では、「Jマジ!」のイメージする主なユーザーというのは、コアなサッカーファンというよりはむしろライト層ということになるのでしょうか?

青木:基本的にはライト層を狙っているんですけれど、もちろんライト層にいらしていただくためには、コア層が絶対に必要です。例えば、元々サッカー好きっていう人たちが、「タダ!」だから、自分の彼女を試合に連れていってあげるとかっていうことを狙っているんですよ。

「0円」の効果って実は、自分が自主的に行きたいって人たちに対しても、もちろんあるんですけれど、それよりも誘いづらかった人を誘いやすくなるっていうものが実は大きいんです。コアな層がライトな層を誘うっていう構図を促進したかったんですよね。

京極:「タダ!」だからいろんな友達を誘いやすいですよね。しかし、無料ってなかなか継続が難しいと思うんです。つまり、この「マジ☆部」というのは社会貢献事業なのでしょうか? それともなにか長期的なリターンを考えた事業なのでしょうか?

青木:そうですね……後者ですね。社会貢献事業に近い部分ももちろんあるんだけれど、リクルートにしても、Jリーグさんにしても、お互いやっぱりビジネスをやっているパートナー同士ですからね。Jリーグさんとしては、リクルートがプロモーションすることで、新しい顧客を連れて来てくれるという期待がありますし、リクルートとしてもスタジアムに足を運ぶ際に、じゃらんネットを使ったり、旅行に触れてもらったりしていただけるので、中長期的にリクルートのサービスの顧客開拓をできるというメリットがあります。

伊藤 実際に「Jマジ!」は、現状でどのような成果が上がっているんですか?

青木:一昨年のデータですけれど、会員登録数では、約3万2千人の登録という数字があるんですね。この会員さんのうち、4割くらいの人が実際にスタジアムに行く頻度が増えたり、しばらく行かなかったのに行くことが復活したりという効果が出ています。

一方で、先ほどのご指摘のような、「無料で来る人は、無料でしか来ない」というような問題に対して、「来シーズンは無料ではないけど来たいと思うか」という観戦意向のアンケートをとっていますが、84.3パーセントの人が、「無料でなくても行きたい」と回答してくださっています。

他にも「2年前に会員になった方が、翌年に有料でスタジアムに行ったかどうか」というデータがあるのですが、77パーセントの方が実際にスタジアムに足を運んでくださっているという結果となっていますので、「無料で来る人は、無料でしか来ない」神話というのは、必ずしも正しくはないんじゃないかなと、私は思っています。

「若者」の可能性

土屋:マジ☆部は、若者向けキャンペーンの先進的な事例とよく言われていますが、実際に若者のインサイトや動向の分析というのは事前にしているのでしょうか?

青木:もちろん分析は事前にやりました。サッカー観戦に関するインサイトについて、Jリーグ観戦における若者のマーケットというのはどんなことになっているのかということを調査しました。観戦層で言うと、20代後半から40代の男女が多かった。ただ、観戦意向、行ってみたいと思う人は、実は観戦数とは乖離が出ていて、18歳から25歳の若い人たちが一番高かった。なので、若者の潜在性が高いというのが分かってきました。若い人の方が高い観戦意欲を持っていられることからわかるように、年をとってからJリーグデビューする人は意外に少ないのです。

この調査で分かったことは、観に来ている人達は30代40代が多いんだけど、実は10代20代の若い人たちは興味を持っていて、かつその人達をハマらせることができると熱が冷めにくくなるということです。鉄は熱いうちに打てっていうことですね。

その調査の中で「あなたはどれくらいJリーグに入れ込んでいますか?」っていう超主観的設問があるのですが、この結果はちょっと面白かったですね。

同じ若者でも18~25歳のグループと26~29歳のグループとでは、入れ込み具合に差があるんですよね。18~25歳のグループの方が、5パーセントくらい入れ込み具合が上回っています。学生世代が多い18~25歳のグループの方が、いろいろ経験を重ねた26歳以上のグループと比べて、素直に感動することが多いのではないでしょうか。

若ければ若いほど、経験が少ない分、何事も素直に入ってくるわけで、Jリーグに関する調査以外でも全く同じような調査が出ています。「雪マジ!」もそう、「ゴルマジ!」も。つまり、若い人たちは総じてハマりやすいという特性を持っているんです。当たり前ですけれど、ハマっている人の方がアウェイに行く確率が上がってくるし、かつ若い方は時間もあって、フットワークも軽い。だからアウェイ観戦率は、若い人の方が圧倒的に高いんです。

野口:現状の「Jマジ!」の課題があれば、教えてください。

青木:申し上げたように、そもそも「Jマジ!」はライト層を呼びたい企画なんですよ。でも現状は、やっぱりコア層が多いなと感じています。男女比率を見ても、男性が多いんですね。ですから、これまであまりサッカーを見たことがなかったような女の子にもこのサービスをぜひ知ってほしいなという思いはありますね。

京極:最後に、青木さんが考える、「実際にスタジアムに足を運ぶ価値」みたいなものがあれば、教えていただきたいです。

青木:いっぱいあると思うんだけれど……私はなんだかんだ言ってミーハーファンなんですよね。もう10数年も観ているけれど、コアではないと思っています。私は観戦するのはもちろんだけど、美味しいものを食べるのが好きで、スタジアムに足を運んで、ビール飲みながらスタジアムグルメを口にするのが趣味なんですよね。そういう楽しさって、テレビで見ているだけじゃ、全然わからないものじゃないですか!

もうひとつ。あげるとすれば、やっぱり応援かなぁ。サポーターのテレビで見ているだけでは絶対に伝わってこないし、正直ちょっと怖いイメージもあるけれど、声援や野次が反響したりする独特の感じ、応援の旗がバッてあがる感じ…あれは私も口で説明しろと言われてもなかなかできない、スタジアムでしか体験できない価値だと思っています。

一同:貴重なお話ありがとうございました。

青木:ありがとうございました。

【青木理恵プロフィール】東京外国語大学卒業後、「雑誌の編集がしたい!」という一心で編集プロダクションに入り、旅行ガイドやタウン情報誌の編集・ライターとして社会人デビュー。2006年に株式会社リクルート(現(株)リクルートライフスタイル)に転職し、旅行情報誌「じゃらん」編集部に配属。月刊誌やムックシリーズの編集デスクを歴任、アプリ「週刊じゃらん」の立ち上げなども経験。編集業務の中で、今後の旅テーマとして可能性があると感じていた「Jリーグ×旅」を絶対に定着させたいという強い想いから、2013年に「Jマジ!」を立ち上げるに至る。現在は「Jマジ!」に加え、「ゴルマジ!」も担当。

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