2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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平野隆則氏(以下、平野):柿次郎さんも編集長というお仕事をされてて、今聞いたみたいに、こういう集まってきた情報を、どれを伝えていくか。集めて捨てる仕事。やっぱりドライになるのも必要ですか?
徳谷柿次郎氏(以下、徳谷):そうですね、僕は集める作業をしている人がわりと多いと思っているので、そもそも深く埋もれてるものを見つけて、Web上で多くの人に届けるっていうやり方をとっています。それはやっぱり、まだまだこちら側の経験値がないので。その全体像が、2年経ってようやくちょっと見えてきたかなぐらいで。
ジモコロを始めて一番気付いたのは、知れば知るほど知らないことが増えていくんですよ。知らなかったことすら気付いてなかったので。そこからどう自分が立ち位置を作るのかなっていうので、2つあるんですけど。
1つは、見つかる状態にする。見つかるっていうのは、いくつかアウトプットがあると思うんですけど、一番最強なのはマスメディアじゃないですか。テレビとか新聞に取り上げられるっていうのが、結果その地元の人がやってることに対して自信を持てる。要は、自信を持っていない地域がけっこう多かったりするので、それのお手伝いをしたいですと。
例えばTwitterとかFacebookとかブログとか、そういうジモコロの記事を作って、その情報を求めている人が検索したら、たどり着くような設定をする。そのための手段がいくつかあるなとか。
もう1つ、指出さんもおっしゃっていた考え方なんですけども、雰囲気づくり。雰囲気って僕、「ファンタジー性」って呼んでるんですけど。例えば、プロレスラーって強そうじゃないですか。
平野:強そう。
徳谷:プロレスラーの中でも、弱そう、強そう、悪そうとか、いろいろキャラがいるんですけど、強そうな雰囲気づくりをどうするかっていうと、人が勝手に期待値を持っていくので、その空気感をその土地土地で仕込んでる人が、たぶんむちゃくちゃいると思うんですね。
最近だと、岩手の遠野市とか。たぶんここ1年で和歌山自体もなんとなく空気感的に、「なんか盛り上がってるらしいから行こうよ」って。取材する側が、ちょっと足が動くような雰囲気づくりというものをどう仕掛けるかというのは、その地域の人とちゃんと連動して進めていかないといけないのかなと考えてますね。
平野:その地元の人たちが、自分たちの地域に自信をなくしてしまっているというか、持ててなかったりという人たちに向けて発信してる意識があるってことなんですかね。
徳谷:そうですね。成功体験って、やっぱり必要なんじゃないかなと思うんです。
平野:なるほど。自分たちの地域の情報を発信した結果、知ってもらった結果、評価されるっていうのが成功体験につながるってことですかね。
徳谷:そうですね。それがぜんぜん評価されないまま何年もやってると、どんどん諦めてきちゃうといいますか。そこを外の視点としてお手伝いしたいなって、ジモコロは考えてます。
平野:それ、すごいありますね。地域の町づくりとか町おこしとか、団体がやってるものとか、商店街の活性化とかでもう息切れしちゃってて、つらくなってるものって全国にたくさんあるんじゃないんですかね。私は和歌山のことしか知らないんですけど、全国でそういうものってたくさんありますよね。
指出一正氏(以下、指出):今、柿次郎さんのお話の中で、「見つけてもらう」みたいなキーワードがありましたけど、まず発見することがとても大事で。発見というのは47歳の僕の発見性よりも、今こちらにいらっしゃる20代、30代のみなさんの発見性のほうが、はるかに高いんですよ。
例えば善光寺の門前町を、メインストリートを外れて横道を僕が歩いても、僕の地点の発見というのは、あまりたくさんの人に響かないんですよね。それよりは20代とか30代のみんなが、古ぼけた自動販売機とか缶コーヒーの並びとかを見て、それに気の利いたコメントしてくれたほうが、はるかにリーチすると。
これは先輩世代に僕がいつも言うんですけども、例えばある町に偶然興味を持った若い女の子がいたとき、彼女からしてみたら、その町を発見したんですよね。
でも、もともとそこに住んでる先輩や地域おこしに詳しい先輩は、「そんなの昔からある町だよ」って平気で言っちゃうんですけど、これは絶対だめですね。スーパーNGワードですよ。
(会場笑)
平野:スーパーNGワード。
徳谷:あ、ソトコト名物のスーパーNGワード(笑)。
指出:やっぱり、みんなが自分の視点で発見したものをみんなで喜び合うようなかたちになると、地域の中には宝物がいっぱいあるっていうことになるんです。それを「昔からあってさあ」っていうのは、コミュニティクラッシャーじゃないですけども、場が冷めちゃうんですよね。
編集者はそういう意味で、場をどのくらい良い体温とか熱量で温められるかというのが大事なので、僕はソーシャル人材の育成講座や講演とか、よくやらせてもらってるんですけども。やっぱりそれぞれ若い人たちが古い町を見つける視点というのが、今ものすごくキャッチーなのかなという気がします。
徳谷:なるほど。
平野:そういう意味で言うと、各地域でいろんな活動をされている方が、今日は集まっていると思うんですけど。たぶん、みなさんの世代間格差もいろいろあると思うんです。みなさんの目で見ておもしろいものとか、もしくは自分たちの下の世代、若い世代が見つけてきておもしろいって喜んでるものって、たくさんあるんだろうなと。
指出:きっと同じものを見つけてもまったく違う表現になるので、無限にあるんですよね。総花的な意見を僕が言っているように見えるんですけども、つまり可能性がついえることは、地方都市にはないんです。
徳谷:力強い言葉ですね。
平野:力強いですね。なんか、今日はこれで大丈夫ですねっていう感じで(笑)。
徳谷:時間がだいぶ余ってしまいますけど。
指出:ごめん、ちょっと焦っちゃって早めにしゃべっちゃった。
徳谷:早く帰らないといけないから(笑)。
平野:イメージ的に、ソトコト編集長もそうですしジモコロ編集長もそうなんですけど、編集長というと、鋭い眼光でネタを一瞬で見抜いて、「これだ!」っていうのをズバッと見抜いてくれる、そういう目利きの人なのかなというイメージを持ってて。
編集長がすごい情報網を持っていて、その人がすべて編集してできているのかなというイメージだったんですけど、今の話を聞いていると、けっこう若い人たちの発見を大切にして、どんどん取り入れていくっていう話が、いろんな地域の活動に活きてきそうですよね。
徳谷:そうですね。あと、情報が集まる状態にするっていうのも、けっこう大事かなと僕は思ってるんですね。
平野:大事ですね。
徳谷:例えば和歌山だったら、みかんが好きで仕方がないと。ミカンの情報発信を適切なやり方でやっていけば、「こんなミカンがあるよ」とか、「ある農家さんはミカンをこんなふうに売ってるよ」みたいなものが、関係性というかコミュニティの中で絶対入ってくるので。好きなものとか興味があるものを、ちゃんと明確にSNSとかを使ってアピールするっていうのが、意外とやれてない人がけっこう多い印象ですね、僕は。
平野:そうですね。私たちも和歌山経済新聞をやってて、地元のネタを探してるんですけど、やっぱり教えられることが多いんですよね。もちろん調べてるものとか、いわゆるプレスリリース、メディア向けに出てくる文章とか、メールとかでお知らせが来るじゃないですか。ああいうものに入っている情報は、けっこう予想がついたり知ってたりすることも多いんですけど。
そうじゃなくて、みなさんが町中で発見したものをTwitterに投稿したり、Facebookに投稿したりということで、そこから始まって「これはおもしろいな」というものがニュースになったり、記事になったりということもありますよね。
徳谷:そうですよね。
平野:そういう意味では、みなさんが一人ひとり発信できる時代になってきて、ソーシャルメディアも使えるようになってきたので、要は一人ひとりの発信が超大事ってことですかね。
徳谷:検索したときに1人しか発信してないネットの場に100人が残していれば、もしかしたら見つかる可能性が100倍かもしれない。なので、そこはみんなが関心を持って、「いや、自分なんて……」ってけっこう謙虚になっちゃうんですけど、それでもあえてその一歩を踏み出して、ちゃんと残しておく。それはブログのエントリーでもいいですし。そういうのは、僕は毎回お話しするときにしつこく言いますね。
平野:しつこく言うんですか。
徳谷:けっこう言うんです。やってくれる人って本当に1パーセントぐらいで。その1パーセントに入るようにどう言葉を使えばいいのかなとか、けっこう悩みながらやってます。
平野:なるほど。見つけてもらう努力っていうのは、すごくいい言葉だなと思いました。みんな、各地方に行ってるんで、たくさん素敵なものが、宝物がたくさん地方にあるってことなんで、それを見つけてもらう努力みたいなのを、これからしていかないといけないかなと思います。
指出:僕『とさぶし』っていう、高知県がお金を出している文化広報誌の編集委員会を2012年からやってるんですけども、その創刊のときに、とさぶしをどういうメディアにしていくのかっていう議論があったんですが、こういう提案をしたんです。
みなさん、高知から来てくださってる方もいらっしゃいますよね。「高知といえばなになに」と言ったときに、だいたいみなさん思い浮かべてください。あれとあれとあれとあれが出てきますよね。坂本龍馬、カツオのたたき、桂浜、ひろめ市場とか出てきますけども、その上から10個は全部捨てて、両手両足を縛って、高知の魅力を発信するっていう編集方針にしようっていうことで合意したんですね。
なにが言いたいかっていうと、都道府県会館っていうのが霞が関にあるんですけども、都道府県会館の地下に行くと、47都道府県のポスターが貼ってあるんですよ。その47都道府県のポスターを見るたびに、がっかりした気分に、かつてはなってたんですね。
なぜかというと、素敵な滝が写ってて、その県出身のタレントが写ってて、おいしいカニとか牛が写ってて、以上。みたいなポスターが多いです。これはなにかっていうと、自分たちの魅力を発信する時に、前に向けて発信しないで、横に向けて発信している業者があまりにも多い。ブックレットにしても。
例えば高知だったら、隣がうどん県とか、それから阿波踊りとかいってるんだったら、「うちは、よさこいだ」っていうのは、これまでの正攻法かもしれないですけど、それって要はけん制球を投げてるだけのメッセージですよね。
大きく言えば、対東京とか、それから隣の県とか、隣の市町に負けまいみたいなかたちで、結果的にそういう合意形成がなされちゃって。なので、じゃあ前に向いたらいいかっていうと、これこそ一番危ないですね。これは僕の中では禁じ手です。禁じ手ばかり言ってますね。
徳谷:(笑)。
指出:本当はコツを誰もわかってないのに、「たぶんこういう人がいるだろう」とか、「こういう建築系の人が好きに違いない」とか、そんな勝手な妄想を元に物を作っているっていうのは、お金がもったいないなというのが僕の考え方で。
それだったら、「どこに向けて作ればいいの?」って言ったら、後ろ向きです。思いっきり後ろ向きに、もう後悔するくらい後ろ向きに、中の人にしか向けないでしばらく発信しようっていうのを、とさぶしはやったんですね。例えば、カツオの特集は作らなかったんですけど、ウツボの特集は作ったんですよ。
徳谷:いいですね。
指出:(ページを)開くと洗濯機の中で太いウツボが目を回しながら、ぐるぐる回ってるイラストとかですね。でもそれは普通に皿鉢料理とか、おきゃく文化(宴会)の中で、幡多地域っていう西のほうがウツボのたたきとか食べるので、たくさんの人が食べるときにヌル(ぬめり)を取るのがとても早いわけですね。
だから本当に、スーパーローカルなリアルな話だけを内向きに載せていったら、ある現象が起きました。なにかというと、「僕も編集員になりたい、私も編集員になりたい」と。つまり、県内の若い人たちがとさぶしをおもしろがってくれる現象が起きて、今20人くらい編集員がいるんですよね。
徳谷:多いですね。
指出:これはやっぱり一番、要は自分たちの町のことをどう盛り上げるかっていったときに、自分事として編集に関わってくれる人が増えた。結果的に1万部増刷したし、とさぶしそのものは、もう20号ぐらいまでいってるから、いいメディアに育ったなと思ってますね。そういうのをやってます。
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