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東京・渋谷の街から考える エンターテインメント×地方創生(全11記事)

かつての「辛気臭い」が見事なエンタメに いま、地方の伝統芸能がおもしろい

2017年6月28日、地域ブランディング協会が主催となったセミナー「東京・渋谷の街から考える エンターテインメント×地方創生」が行われました。同会にはエンターテインメント、音楽業界を牽引し、地域活性化にも積極的なヤマハとポニーキャニオンの事業者も登場。第2部となる本パートでは、地域ブランディング協会とヤマハの「おとまち」、2つの地域活性化プロジェクトをそれぞれ紹介。地域×エンタテインメントの方程式の解を探ります。

4名とのパネルディスカッション

太下義之氏(以下、太下):ここからは私が進行させていただきたいと思います。エンターテイメントとシビックプライドの関係をテーマとして今日はいろいろとお話を伺っているわけですけれども、ここからは最後のパートとなります。

パネルディスカッションということで、4名のパネルの方がいらっしゃいますけれども、それぞれ短いプレゼンテーションをしていただいたあと、全体でディスカッションしていくことにしたいと思います。そして最後に、会場のみなさんからも質疑応答というかたちでやりとりをさせていただくという、三段構成で進めていきたいと思います。

お話いただく順番は、最初は地域ブランディング協会の高橋さん、次がヤマハミュージックジャパンの佐藤さん、その次にポニーキャニオンの村多さん、そしてシブヤ大学の左京さん。こういう順番で、それぞれ5~10分くらいでお願いいたします。みなさんパワーポイントを使われると思うんですけども、プレゼンテーションをしていただいて、それからディスカッションというかたちにしたいと思います。

じゃあ最初、高橋さんからよろしいでしょうか。

高橋俊宏氏(以下、高橋):あらためまして、よろしくお願いいたします。今回セミナーを主催させていただきます、地域ブランディング協会について、おさらいになりますが紹介させていただきます。

地域ブランディング協会とは、こちら(スライド)に書いてありますように、いろんなプレイヤーが集まって、それぞれの得意分野で力を発揮しながら地域の魅力を高めていくことを促進する、地方創生のプラットフォーム形成主体……ちょっとかたいですね(笑)。というような思いで、協会を立ち上げております。

人材育成とセミナー

簡単に言いますと、地域活性とか課題とかを、クリエイティブの力を使って質の高いものにしていこうという思いでやっております。

なので、会員としましてはクリエイター会員がいまして、法人・団体の会員の方々、個人会員、あと行政会員の方々というような構成になっております。

ちょうど今日、帰りに行政会員の申し込み用の紙も用意しておりますので、ぜひチェックしていただけたらなと思います。

具体的になにをしているかというところですが、人材育成的なところもなんですけども、まずセミナーですね。先ほどクリエイティブと言いましたけども、今日本で一線で活躍されているクリエイターの方々、建築家の方とかデザイナーの方とか、あとは高野山のお坊さんに来てもらって、得意分野について、地域活性にどう活かしていくかということをセミナーでやらせていただいております。

そして(スライドの)右側なんですが、日本橋のとやま館というアンテナショップがあるんですけど、そこで月に1回、「クリエイターズトーク」というセミナーをやっております。セミナーを通して、地域活性が今どんなことが行われているのかというところとか、コツみたいなものをみなさんに学んでいただいているというかたちですね。

具体的な事例なんですが、エンターテイメントに関わるひとつの事例を持ってきました。去年から島根にある石見神楽で、そちらのブランディングプロジェクトを今現在進行形なんですけども、お手伝いをさせていただいております。

石見神楽でのブランディングプロジェクト

いわゆる神楽って日本全国にたくさん残ってるんですけど、石見神楽は地元の方々に連綿と守られてて、地元の方々が自分の楽しみのために神楽をやられてる。それが石見神楽なんです。それが観光のコンテンツとして、世の中に出してみてどれくらいポテンシャルがあるのか、改めて調査をしたい。というところから、我々がお手伝いさせていただいております。

去年やらせていただいたのは、現地にいろいろ視察に行きまして。先ほどのクリエイターの方々を活用するのと同じ発想で、石見神楽をいろんな有識者の方々に観に行っていただいてご意見をいただきました。そこにヤマハの佐藤さん、我らが協会を代表する佐藤真一さんにも参加していただいて。

佐藤さんは、音楽という分野で観ていただきました。企画のところでは「バリュー・クリエーション・サービス」という、地域ブランドを創る第一人者である佐藤真一さんに企画をつくってもらい、外国の方目線でカメラマンのエバレット・ブラウンさんに観ていただきました。

あと、ブランドというところでいいますと、「レクサス」を海外に向けてブランディングを手がけられた高田さんという方がいらっしゃるんですけども、そういう企業側の目線でブランディングをやられた方に観てもらったと。ちょっと異色なんですけども。

あとは、学問のところでは國學院大學の教授を入れて文化的に観てもらう、みたいな。私は『Discover Japan』の情報発信側として、どれだけポテンシャルがあるのかを担当して観させていただいたと。こちらの来期に向けてどうターゲットを絞っていこう、とか、石見神楽のあり方自体をどう考えていったらいいのか、みたいなことを考えているところです。

課題に対して事業主体を見つけ、役割分担を振り分ける

そういったことを、先ほどみたいな調査を通して地域のものを、我々は雑誌をやっておりますので情報発信を、やっぱり人に知ってもらわなきゃいけないので。そこのところを『Discover Japan』の毎月の本誌を含めて、「地域ブランドクリエイターズファイル」とか「地域ブランド実例集」、こちらは1冊に地域活性に特化したムックをつくって発信しております。これは毎月、本誌でも地域ブランド協会の活動をお伝えしたりですね。

役割としましては、こういうことですね。こういった課題に対して事業主体を見つけて、運営とか事業とかあると思うので、そこらへんの課題をどのように役割分担を振り分けるかというところと、そこの調整的なところ。そして、情報発信を通してみんなに知ってもらうというところをやらせていただいているのが、我々地域ブランド協会の活動です。

太下:地域ブランディング協会のご紹介、ありがとうございました。ちなみに今、石見神楽のご紹介ありましたよね。石見神楽を実際にご覧になった方っていらっしゃいますか? おそらく「お神楽」と聞くと、関係者がいたら大変恐縮なのですけれど、辛気臭いなとか思ったりした方もいるのではないかと思うのですけど、この石見神楽は完全にエンターテイメントです。

ストーリーは、たぶんみなさんご存知のヤマタノオロチの話です。これを、お神楽なんで神事にのっとったかたちで行うのですけど、ヤマタノオロチが火を噴くわ煙は吐くわ、たいへんなエンターテイメントなのですね。

高橋:目が、電飾で光るんですよ。

太下:けっこうすごいですよ。

高橋:意外とすごく、ちゃんとエンターテイメントになってるんですよ。

太下:確かに、ちょっとアレンジをすれば集客力のある観光コンテンツになるだろうという予感はありますよね。すごくおもしろい素材だなと思います。高橋:貴重なご意見をいただきました。

太下: では続きまして、ヤマハミュージックジャパンの佐藤さんのほうから、「おとまち」の話をよろしくお願いいたします。

エンタメの変革期に入ってきている

佐藤雅樹氏:ありがとうございます。ちょっと立ってもいいですかね、見えづらくてごめんなさい。手短に「おとまち」の話を少しさせていただきます。ヤマハ音楽のまちづくり、「おとまち」ということで。先ほどもご質問いただきましたように、10年近く進めさせていただいてます。

「おとまち」とは。ちょっと長くてかたくてごめんなさい。地域の資源を最大限に活用した音楽の取り組みです。それを自分事で進めていくところを、一緒になってやっていけたらいいなということを考えてます。

今回のテーマのシビックプライドということもありますが、それを誇りにつなげていくことができたらどんなに素敵かなということで、みんなで一生懸命やってる。

今、こういう取り組みをさせていただくとつくづく思うんですね。エンタメの変革期に入ってきていると。弊社の中にもエンタメ事業というのがありますけども、あらためて考えてみると、エジソンが蓄音機を発明したのが1877年と、140年くらい前なんですね。そこからくだって、70年前くらいのところでやっとドーナツ盤のレコードが製品化されると。

このくらいの歴史の中で、iTunesが登場するわけなんです。なので、1877年、140年前にエジソンが発明をして、70年前にはドーナツ盤のレコードが生まれ、1977年くらいのタイミングでCDに変わっていくんですね。で、2001年くらいにiTunes が生まれてきます。

この間、130年くらい。130年くらいなんですよ。いわゆるCD、レコード含めて音楽をパッケージ化して、ビジネスがわーっと盛り上がった時期っていうのは130年くらいなんですね。あらためて思うと、まだまだいろいろやりようがあるんだなと思います。

4万年ほどの歴史の中の130年

そもそも音楽、歴史上はどうもパーカッションとか、こういうのが間違いなく音楽の原点だろうといわれてるんですね。でも、この笛みたいなものの歴史でいくと4万3千年前、「ネアンデルタール人の笛」というのが、確認されてる中では一番古い音楽の原点と。

音楽そのもので見ると、4万年くらいの歴史がある中で、130年って、まあこの中で我々は一喜一憂してるんですけども、もっともっと音楽の可能性というのを、みんなで議論して取り組んでいったらいいのかなと思うんです。

そういう意味で言うと、音楽の歴史はコミュニケーションの歴史と言えるのかも知れません。我々はコミュニケーションのための、コミュニケーションをサポートするための音楽、みたいなことを進めさせていただいていると考えてます。

人と人が音楽でつながることから、新たな価値を作り出そうということで、「誇り」とか、ともに財産を持つ「共有財産」みたいなもの、あるいは「責任」みたいなものがここから生まれてくるとか。みんなで、自分で「行動」していこうよというようなものが生まれてくるとか、「相互依存と相乗効果」のようなものが生まれてくるとか、やっぱり「開かれた場所」、オープンスペースでやっていくことが大事かなということで、それを持続的に取り組んでいく。

というようなものが、たぶんコミュニケーション、コミュニティの中での音楽の中で生まれてくる価値、みたいに我々は考えて一生懸命進めている、ということです。

この先、地域の中で生まれてくるコミュニティミュージックみたいなものの可能性も、これから議論していけたらいいなと。いま一緒になってなにかを生み出す、あるいは誰かが新しい音楽をどこかで生み出したものに、みんなが「それいいよね」と共感していくようなところから、新たなエンターテイメントが生まれてこないかな、と思っています。

今この瞬間に、ここで新しい音楽が生まれ、世界中でそれに共感してくれるひとがいたときに、もっともっと我々のそばにエンターテイメントが近づいてくるんじゃないかな、みたいなことも考えたいと思ってます。

新しいまちづくりに音楽を使っていく

それはたぶん、コミュニティだからこそできてくる。新しいエンターテイメントも生まれてくる可能性があるのかなと。これからまたさまざまなエンターテイメント、今の神楽の話もそうですけども、新旧独自のものが生まれてくる中で、そこを今後、いろんなキーワードを考えてどこまで対処していくかという議論ができたら、日本はますます元気になるなと思ってます。

簡単に、先ほど長谷部さんからも紹介いただきました、「渋谷ズンチャカ!」。ここにシブヤ大学の左京さんもいらっしゃいます。一緒になって0回というところから、渋谷から新しいものを発信していこうと。渋谷の好きな人たち、みんなが集って新しい文化をつくっていこうということで、4回目を数えます。

地域の少しお年を召した方も含め、みなさん楽しめるようなものをやってます。同じようなかたちで、奈良市の春日大社でやってるようなものもあります。資料も置いてございますので、後ほど見ていただけたらありがたいと思います。

これですね、駅ビルみたいなところに地域のオーケストラをつくる。これは、JRさんの取り組みもお手伝いさせていただく。

それから、柏での取り組みというので、少し福祉の領域のところを。福祉というとどうしてもちょっとかたくなったり、難しく考えたり、自分は参加できるかなと思ったりするんですけど、そこに音楽を入れるとすごく元気に楽しく地域のことが取り組めるということで、後ほどこの辺のご紹介を少しさせていただきます。

ということで、最近は神田の取り組み、新しい街ができていく中に音楽を入れていくという取り組みをさせていただいてます。

いろんな地域、地方、そのケアも含めた新しいまちづくりのところに音楽を使っていくということで、新たな街を生み出していくということをさせていただいてます。長くなりましたが、よろしくお願いします。ありがとうございます。

(会場拍手)

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