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東京・渋谷の街から考える エンターテインメント×地方創生(全11記事)

渋谷にプロジェクションマッピングや立体都市公園 区長が明かした、国際都市SHIBUYAに訪れる未来

2017年6月28日、地域ブランディング協会が主催となったセミナー「東京・渋谷の街から考える エンターテインメント×地方創生」が行われました。同会にはエンターテインメント、音楽業界を牽引し、地域活性化にも積極的なヤマハとポニーキャニオンの事業者も登場。基調講演となる本パートでは、渋谷区区長の長谷部健氏が登場し、渋谷区の今後のヴィジョンを語りました。モデレーターの太下氏と2020年のオリンピック・パラリンピックに向けた渋谷区の構想をディスカッションしました。

2020年オリパラへの施策は

司会者:はい、それではここから、お1人加わっていただいて、ディスカッション形式で進めたいと思います。三菱UFJリサーチ&コンサルティング 芸術・文化政策センター長、太下義之さん、どうぞよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

太下義之氏(以下、太下):では後半は、私がいくつか質問をさせていただいて、長谷部区長とやりとりをさせていただきたいと思います。講演の中では言いそびれたお話もあるのではないかと思いますので。

今日は区長には大変お忙しい中でお時間を取っていただいてるかと思うのですけれども、実は私も直前まで別の会議に出ていました。どのような会議かと言いますと、小池都知事がご一緒の会議だったのですね。

長谷部区長のご講演にも関連すると思うのですが、東京都は文化・芸術政策にとても力を入れていまして、「東京芸術文化評議会」という、東京の文化政策全般について検討する会議が立ち上がっています。実は今期その第1回目の会議が、急きょ開かれることになりました。おそらく、選挙対策という面もあったのかなと思いますが(笑)。

ただ、逆に言うと、選挙前の慌ただしい時期に、小池知事が文化のことに配慮していただいてるという事実は、文化政策を専門としている立場からすると大変心強いことだと考えています。

実は東京都が文化を重視している大きな背景として、先ほども話題にもなりましたけど、2020年に東京でオリンピックが開かれるということがあるのです。

今日お集まりの方はご存知の方が多いと思うのですけれども、オリンピックというと普通は「スポーツの祭典」というイメージが非常に強いのですが、実はオリンピックは「文化の祭典」でもあります。

イントロが長くなってしまい恐縮なのですけれど、オリンピック話を少々続けさせていただきますと、2012年のロンドンオリンピックの時に、オリンピックに伴って文化プログラムというのが盛大に行われました。その総数が約12万件でした。

これを受けて、日本の文化庁は、日本全国で文化プログラムを20万件実施するという基本構想を発表しています。

全国で実施される文化プログラムですけれども、当然東京はポストシティでもありますし、いくつかの中心的な都市においては、この渋谷もそうだと思いますけれども、文化がかなりクローズアップされるだろうと予期しています。

先ほど紹介した東京芸術文化評議会においても、その文化プログラムをどうするのか、ということが大きな懸案事項になっているのです。

そういった背景の中で、現時点で渋谷区として文化プログラムに関して何かお考えをお持ちでしたら、または正式な政策がまだ決まっていない場合には、区長としての個人的な思いでも結構なのですけれども。

2020年へ向けて、文化やエンタテイメント、クリエイティブという面で、渋谷がどうなっていったらいいのかという思いがあれば、ぜひお聞かせください。

テクノロジーの波が渋谷にも好影響

長谷部:たぶん、10年ぐらい待っていれば、いろんな世界中の街はプロジェクションマッピングで彩られ、そして携帯ももっと進んで、いろんなものが便利になると思うんです。

でも、もう目の前にある技術とかを、なぜ早くできないんだろうというのがやっぱりありまして。やっぱりいろんな規制だったりとか、邪魔してるものがあるんですよね。

ある意味、このオリンピック・パラリンピックを目指してると、少しそこが、なし崩し……って僕の立場で言っちゃいけませんけれども(笑)、進むチャンスだと思うので、そこはぜひ捉えていきたい。

具体的に言うと、5Gはまず目の前に来ているテクノロジーだと思うんです。本当に目の前に来ていて。これはもうキャリアとの交渉をし始めていて、「渋谷区を実証実験の場にしてくれないか」と。

たぶん5Gが来れば、今より容量も増えて、スピードも上がって、ってなると、Wi-Fi並み、それ以上の速度でいろんなことが、もう街を歩いててできるようになるわけですよね。

例えばそこでどんな変化が起きてくるかなぁと思うと、もっと動画とかARみたいなものが間違いなく普及してくると思うので、それを通していろんなイベントが街で行われるようにするようなことはぜひやりたいです。

プロジェクションマッピングとかも、大きなビルに投影したりするのも今は屋外広告物条例というのがあってなかなか難しいんですけど、むしろ災害時にも役立つ、緊急アラートを知らせるものにもなりますから。

そういったものをこれを機にどんどん進めていければ、本当に街を全部使っての、本当に見えるかたちでプロモーションが打てたり、キャンペーンができたり、イベントができたりする。それはぜひ狙いたいと思っています。

いろんなものが変わると思うんです、たぶん読者モデルとかも、今までは紙の中、ネットの中にいましたけれども、街を歩いている読者モデルと思われる子にパッと(端末を)当てると、もうその服はどこで売ってて、今いくらで買えるということだってあると思うし、やっぱり今思いつかないことがどんどん変わってくる。

例えばまだ他に思うのは、路上を使ってオリンピック・パラリンピックを、実際に3Dというか、リアルに見るようなことだって技術的にはもうできるし、どんどんそういうことはこれを機会にやっていきたいですし。

これから渋谷はどんどん変わる

2020年の文化事業とかいろんなイベント、これからどんどん考えてますし、問い合わせが来ることもあるので、これは警察との話し合いになりますけれども、なるべく道路でやれたりするようにすれば、歩行者天国への近道になるかもしれないし。

みんな実は気づいてないんですけれども、2020年ってオリパラと言われてますけれども、明治神宮の100年でもあるんですよ。これはやっぱり渋谷区、僕は原宿の人間ですから、とくに大きくて。

やっぱりあれは100年で自然の森になるという計算で作られてるんですけれども、じゃあ次の100年を目指してどういうふうにしていくかという話も始まるだろうし。

100年を機に、本当は表参道は「参道」っていうかたちなので、歩行者だけの道になったらいいなぁみたいなことは個人的には思っているんですけれども、そういったチャンスになると思っています。

大切なのは、2020以降にどういったレガシーを残していくかっていうことだと思っていて。今まではどっちかって言うとハードのレガシーばっかりがオリンピックは注目されてましたけども、もちろんそこにプラス、ソフトだったり、意識の変化。

パラリンピックを見て多くの人の気持ちが変わるチャンスだと思いますので、マジョリティの人の意識が変わるチャンスにできるっていうことをどんどん仕掛けて、その後に残していきたい。

宮下公園もこれから立体都市公園として整備して、3階建ての施設の上に空中公園になりますけど、上にいくつかスポーツ施設を作るんです。

まだ決定してませんけど、例えばバスケットコートとかを作るんだったら、そこは車椅子バスケもできて、ウィルチェアラグビーも外でできて、月に1回そういう障害者スポーツがデモンストレーションできるようなエキシビションをやりましょうと。それがレガシーとしてこの街に残っていくんだ、とか。

やっぱりいろんなことが考えられると思うし、考えているので、ぜひね、みなさんからも「YOU MAKE SHIBUYA」ですので、どんどんそういったご意見をいただけるとうれしいなと思います。

2020以後、レガシーの意義は

太下:1つ質問しただけですが、すごくいっぱいアイデアが出てきましたね(笑)。そういったアイデアが実現されていくと、渋谷がより楽しい街になっていくのではないかと思います。

今、長谷部区長から「レガシー」というキーワードが出てきました。これについてはご存知の方が多いと思いますけれども、レガシーという言葉を辞書で引くと、「遺産」「昔の遺物」みたいな訳語が出てきます。ただ英語ではレガシーの他に遺産っていうと、「ヘリテージ」という言葉もありますね、たとえばワールドヘリテージとか。

「ヘリテージ」と「レガシー」はなにが違うのかと考えた時に、ヘリテージは、現在から見て「過去の遺物」というイメージだと思います。これに対して「レガシー」は、過去から現在、そして現在から未来へ継承していくもの、というイメージがより強いと思います。

実はオリンピック・パラリンピックにおいても、IOCはこの「レガシー」というコンセプトを非常に重視してるのです。オリンピック・パラリンピックを開催して盛り上がることは間違いないわけですが、開催した後どうなるのか? という課題です。

かつて、1964年の東京オリンピックはさまざまなレガシーを残しました。渋谷に関連するレガシーとしては国道246号線が大幅に拡幅されました。首都高、モノレール、そして新幹線が開通しました。あとはみなさんご存知のとおり、東京の主要なシティホテルはだいたいこのタイミングでできています。

なお、今挙げたものは、ほとんどハードのレガシーですね。これらはみんな、その後の経済発展の礎になりました。ただし、おそらく2020年に向けて我々が考えるべきレガシーは、もはやハードだけではないのだろうと思います。さきほど長谷部区長がおっしゃったような、いろいろな仕掛けなのだろうという気がするのですね。

長谷部:そのとおりだと思うんです。やっぱりそういうレガシーをどういうふうに次の世代に残していくかっていうのがやっぱり大切ですね。ハードの部分とか、黙ってても進むんですよ。なので、今から考えていかなきゃいけないのはソフトの部分だったり……。

やっぱりあとはもう1つ、オリンピックもそうですけど、今まで以上にパラリンピックも注目されてきていますよね。やっぱり地方行政の立場からすれば、教育と福祉っていうのが行政の大きな柱であるので、この福祉に対する意識が大きく変わるチャンスだとも思うんですね。

ロンドンのパラリンピックは非常に良くて、かっこよかったですよね。ポスターもすごく良くて。オール黒バックにね、かっこいい選手たちが、義足だったり、腕がなかったりする写真で出てる。かっこいい写真のコピーが、「Meet the Superhumans」って書いてあって。「超人たちに会いに行こう」ってなってるんですよ。

やっぱり今まで手を差し伸べる対象だった人たちを、尊敬の対象にあげている。で、決してそれは尊敬だけしてくれっていう話じゃなくて、僕ら健常者って言われるマジョリティの人たちと同じだって言って。いい奴もいれば、悪い奴もいるし。だけどこうやって優れてる奴がいるんだから、それは讃えようよっていう。

やっぱりそういう、まさに「普通になる」みたいなことがキャンペーンとしてすごくうまくいったと思うんですね。だからそれはぜひ、それを超えるようなことをこの街でやりたいし、それを超えるようなことを残したいっていうふうに思います。

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