2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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清水祐孝氏(以下、清水):どうもこんにちは。
今日は、私どもの株式会社鎌倉新書の会社のことや、我々がビジネスをさせていただいております「ライフエンディング」、人が亡くなったあとに必要になるお墓とかお葬式とかその世界の話、もう少し全体の、いわゆる最近で言う「終活」のお話や、私たちが考えていることをお話いたします。
みなさまの興味・関心事というのは1つではなくて、それぞれみなさんバラバラだと思いますので、これからさせていただくお話は、その入り口みたいなところです。今日はそのきっかけで、今後いろいろな意味で我々も勉強をしていきたいと思います。ぜひよろしくお願いいたします。
スピーカーの紹介というのは、(スライドを)見ていただいたらおわかりのとおりです。
この会社は私の父親がやっていた、仏教書の出版社でございました。仏教書と言っても、新興宗教でも扱っているんだったらまだ売れるんですけれども、そういったものではなく、歴史の教科書に載っているようなお話を本にして細々とやっておりました。
ちょっと理由があって入社をしたあと、この仏教書というだけではなかなか食べていくのが難しいんじゃないかというようなことで、仏教書から、関連のある「葬儀」や「お墓」などのマーケット向けの出版・業界紙を出したり、葬儀社さんや石材店さんのパンフレットだとか、販売促進のためのツールなどを作っていました。
それをやっておりましたら、私として大きな気づきだったのは、それまで出版社としてずっと本を買っていただいていたんですけれど、よく考えてみたら、お客さんは別に本が欲しいわけじゃないんだなと。本が欲しいんじゃなくて、書いてある情報を得たいんだよなという当たり前のことにハッと気がつきました。
その日から会社で「うちは出版社じゃないんだ、情報加工会社なんだ」「情報をあちこちから仕入れて加工して、お客様の価値ある形に編集して提供するのが我々のビジネスなんだ」「出版社と言っているのは、届け方の1つの方法論に過ぎない」ということを社内で言い出しました。
それから同じ文脈で、例えば雑誌には4ページしか書いてませんが、このテーマについて1日、私が情報を仕入れましたからしゃべります、と。本は通り一遍のことしか、4ページ分しか書いてないので、1,500円ですが、このセミナーはその10倍の15,000円くださいね、みたいなかたちでビジネスをやってきました。
情報加工業という意識や視点があったおかげで、インターネットが普及しだした時に、これはもう情報を届けるツールとして何か役に立つんじゃないかな、何か使えるんじゃないかなということで、勉強会にあちらこちら行きました。
勉強会に行ったら、最初のITバブルみたいな時期があり、勉強仲間の人たちも上場しました。私は泣かず飛ばずで売上ゼロ。楽天さんだったり、当時だとネットイヤーだとか、我々と同じぐらい、あるいはちょっと下の世代の人たちがそういうふうに羽ばたいていくなかで、私たちもインターネットにもっとしっかり力を入れていかなきゃいけないと思いました。
楽天さんだったり、そういった会社の人たちは、優秀だけど、そんなに違いはないんじゃないかと。ただし、やっぱりそういう人たちを見てたら、インターネットに命をかけて、退路を断って、もし失敗したら家族が路頭に迷うという状況のもとでインターネットでショッピングモールをやるんだ、とかですね。
そういうふうにやってきた人と、私は当時から情報加工会社だとか言いながらセミナーとかコンサルをやって、小さいながらも会社は回ってたんですね。借金もほとんどありませんでしたし。そんな気持ちでインターネットサービスをやってるか、退路を断ってやっているかの違いが如実に出たなということで、それからインターネットに力を入れてやってまいりました。
そして今はライフエンディングという領域のポータルのサービスをさせていただくことで、なんとかビジネスが立ち上がるようになってまいりました。
という経緯できた会社の、現在の状況はその次のページに入っております。先月の21日に東証マザーズから1部に指定変更をさせていただきました。
事業としましては、先ほども申し上げたように、月刊『仏事』という実にマニアックな月刊誌……月刊誌というか、葬儀、あるいはお墓、仏壇等の、いわゆる供養の関連のマーケットに従事していらっしゃる方のためのビジネス情報誌ですとか、その関連の出版書籍なども出しております。
そしてメインとなっておりますのは、人の死を1つの契機として発生するさまざまなニーズですね。ユーザーのニーズに対応した、WEBサイトを中心に今はビジネスを構成しています。
そのなかで1つ、どうやらマスコミなどでも「終活」というのが一般的に認知をされる言葉になったというなかで、今、あちこちで「終活セミナー」なるものをしています。
とはいえ、シニアの方々はたくさん来られるんですけども、興味・関心の領域はバラバラです。それこそ「田舎からお墓を移したいから来ました」という方もいれば、「相続のことで来た」という方もいれば、「お葬式のことを考えておきたいのよね」という方もいらっしゃるという状況にあります。
終活のセミナーをやると、気づくことがございます。重要なことは、私たちは最初、終活セミナーに来た人たちが、なにかのかたちでお客さんになればいいなと思って一生懸命話すわけですよね。お葬式、お墓、あるいは相続の一般的な入口のところの話をするんですけれども、お客様はセミナーが終わるとスーッと帰っちゃうんですよね。
これはなぜかというと、一番のポイントは、終活のことはすごく心配。心配というか、どうしたらいいんだろうなぁという問題意識はあるんだけれども、別に今日動かなくてもいい。今日なにかしなきゃならないという状況にはないんですね。
ですから、ちょっと心配で、セミナーをやってると出かけて、話を聞きに来るんです。ですが、今日なにか動いてなにかを決めなきゃならないという状況の人はいらっしゃらないんです。そんなところに来ないわけですよね。
問題は、その人たちは、問題意識はあるんだけど動かないわけですよね。でもだんだん時間が経って、「じゃあここでなにか相続のこと決めなきゃね」となるかっていうと、そうはならなくて。だんだん年を取って、体力が弱ってきて、ある日突然ボケちゃったり、病気になっちゃったりして、意思決定を自分ができなくなっちゃうわけですね。
そして、しょうがないからということで、事が起こってから残った家族が粛々とやらなきゃならないことをやっているというのが今のほとんどの現状なんだなと、セミナーをやりながら思います。
ということは、いろんな方々、葬儀の関係だったり、それから保険を売ってらっしゃるFPの方だったり、いわゆる終活に向けたセミナーみたいなものもあちこちでやっていらっしゃるんですけども、ほとんど自分たちのビジネスにはすぐにはつながらないというのが現状でございます。
どんなお話をさせていただいてるかということをちょっとだけ。「終活」をデジタル大辞泉で見ると、こんなことが書いてある。「人生の終末を迎えるにあたり、延命治療や介護・相続などについての希望をまとめ準備を整えること」と書いてあるんですよね。でも、終活ってそれだけじゃないですよっていう話をさせていただいています。
そのデータの1つで、いつもこんな話をするんです。緩和医療のお医者さんが書かれた本がございまして、『死ぬときに後悔すること25』っていうんですけれども。ここのタイトルに、「1,000人の死を見届けた終末医療の専門家が書いた」と。
要は、1,000人の死を見届けたけれども、その方たちが最後に言うこと、「こうしておけばよかった」「ああしておけばよかった」みたいな話は、1,000人の人が1,000通りのことを言うんじゃなくて、だいたい25ぐらいに集約されるということがこの本では書かれている。それをちょっと抜き書きしたものがこのスライドです。
「健康を大事にしたかった」「タバコを辞めたかった」とか、そんなことから始まって、葬儀のことだったり、「遺産をどうするか決めなかった」ということがあったりですね。
それから「旅行へ行っておけばよかった」「夢にチャレンジしておけばよかった」ということがあり、最後のほうに、「神仏の教えを知らなかったこと」だったり、「自身の問題を乗り越えられなかったこと」だったり、「生きた証を残さなかったこと」それから「愛する人にありがとうと伝えなかったこと」などがこの本には書かれています。
そんなことを考えながら多くの方が亡くなっていきますが、セミナーなどでお話ししているのは、相続や、終末期医療、あるいはお葬式やお墓のこと、それから家族に迷惑をかけたくないということであらかじめ準備することをみなさんは終活だと思っておられるけど、終活の意味ってもっと広いんじゃないのと。
終活というのが「家族の負担を減らす」「子どもたちに迷惑をかけたくない」とかですね。それはお墓のことだったり、医療・介護のことだったり、相続だったり、そんな話が1つありますよねと。これは辞書にも載っていることです。
(スライドを指して)あとはこの『死ぬときに後悔すること25』からもわかるように、終活は、やり残したことをやりきること。例えば「旅行に行っておきたかった」「趣味でこんなことしておきたかった」「勉強しておきたかった」「社会貢献がもっとやりたい」とか、元気な間にやっておきたかったこと、チャレンジしておきたかったこと。こういったやり残したしたことをやりきる、これも終活なんじゃないんですかというお話をさせていただいているのがもう1つ。
そして最後に、「生きた証を残す」ということをお話をさせていただいています。これは具体的に、例えば150年前、幕末の時代に生きた証を残すというのは、たぶん大変難しかったでしょうねと。
ときどき幕末に活躍した人の書いた手紙がどこかのお寺の蔵から出てきました、みたいなことがありますけれども、当時はコピー機もなければ、ワープロもなければ、パソコンもないというなかで、自分が考えてきたことだったり、メッセージみたいなものをあとの時代に残すということはけっこう難しかったんですよね。
ところが、この時代はそういったことが、もうコンピューターがこれだけ発達して、そしてそれをサーバーに預かってもらえば、おそらく物理的には100年でも200年でも、あるいは500年でも1,000年でも、あなたが生きてきたということを残すことは、もう確実に簡単にできるようになっているんですよね。
せっかくですから、(セミナーに)来ていただいた方はそれだけの時間があるから、もしその気があるんだったらそういったことにチャレンジする。それも終活ですよというお話をさせていただいております。
私どもの会社は、お葬式やお墓などのポータルサイトを中心に展開していますけれども、「ライフヒストリー」っていう、昔は「自分史」と言っていたようなものを作るお手伝いもしています。
「自分史」も、ときどき「自費出版でやりませんか?」みたいなこともですね。そうすると、出版社が見積もり250万とか300万とかですね。たぶんああいうのを残したい人はたくさんいると思うんですけど、自分で書ける人は、10人に1人もいないんだと思うんですよね。
それを例えば本にして、印刷して、製本すると、例えば250万から300万かわからないですけれども、「それだとちょっとハードル高いんじゃないの?」と。ハードルが高すぎるから、もう少し手軽にライトにできるようなもの、そういったところにニーズがあるんではないかと。
私も今54歳なので、私の子どもの頃の写真なんていうのは、捨ててはいないんですが、当然デジタル化されていません。小さい時の写真とか、大学の卒業式の写真とか、ああいうのは紙のアルバムみたいなものに入って、ダンボールの中に入ってるんですね。
自分では持ってないですけど、母親のところに行けばあると思うんです。あれもなにもしないと、たぶんどこかのタイミングで、ゴミの片付けみたいなことでガサッとなってしまいますね。
全部が全部残す必要はないかと思いますが、節々の思い出みたいなものは、今はデジタル化することは超簡単にできますから、「時間があるんだったらされたらどうですか?」という話をします。
終活は、相続や、葬式、お墓だけではなく、やっておきたかったことをやりきること、それから自分がせっかく生きてきた証を残すとか。孫とか、孫の孫くらいまでは物理的にあるかもしれないけどその次はたぶん物理的に不可能ですよと。
そうした人たちにも必ずそういうメッセージを残すことができる。向こうは迷惑だって言うかもしれないけれども(笑)、それはわかりませんけれども、別にいいじゃないですかと。人生という旅の恥はかき捨てなんだから、自分が思ったことをやればいいじゃないですか。あとの人がどう思うかっていうことは、「別にそんなことまで忖度する必要はないんじゃないの?」というお話をさせていただいています。
そういった文脈のなかで、私たちは、現在は主に亡くなってからの、いわゆる供養の領域ですね。そんなところを中心にビジネスをさせていただいてますけれども、まだ終活全般、生きた証を残す、やり残したことをやりきるといった分野でビジネスをできる領域をこれから見つけていって、展開をしていきたいと考えているところでございます。
以上が終活の概略を、端折ってお話をさせていただきました。
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