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脳神経科学でグローバル人材開発を考える(全5記事)

予測不能な時代を、リーダーはどう戦うべきか? 変化を乗り越える「地球人財」の必要性

2017年7月18日、一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会が主催するイベント「地球人財創出会議」が開催されました。第27回となる今回のテーマは「脳神経科学でグローバル人材開発を考える 」。異なる民族、異なる文化と接した時、私たちの脳はどのような働きを見せるのか? DAncing Einstein Co., Ltd. FOUNDER CEOの青砥瑞人氏をゲストに招き、脳神経科学の知見からリーダーに求められる能力を紐解きます。

「地球人財」を考える

高津尚志氏(以下、高津):みなさんこんばんは。ただいまご紹介にあずかりました、高津と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

この「地球人財創出会議」ですが、実は27回目になりました。IIBC(注:国際ビジネスコミュニケーション協会)さんといえば、みなさんはTOEIC® Programで親しみがあると思います。そのIIBCさんが、テストを提供することを超えて、今日のグローバル人材育成、グローバルリーダーについて考える場を作りたいと考え、5年に渡ってこの「会議」を重ねてきました。

では「地球人財」とは、どういう人たちなのでしょうか。この会議として役割イメージを以下のように定義しています。

「PL責任、損益責任を持っていて、あるいはそれに準じる、すべての結果責任を持っている人」「安定、保守ではなくて、継続的な財務成長の期待を担う」。

それから、「組織視野が日本だけではなく、直接・間接的に世界に展開している。継続的な環境変化と不可逆性にさらされた役回り」。そうですね、最近いろんなことがありますからね。そして、「多様性の高い個々人を内包した組織を生かす宿命」。

こういう人たちを「地球人財」と考えた時に、「こういう人たちをどのように見つけたり、育てたりしていけばいいのか?」というのが、この「地球人財創出会議」のテーマです。

「地球人財」のつくり方

では、この「地球人財」には、どういう要素が必要なのでしょうか。いろいろ議論をしてまいりましょう。

例えば「標準装備」と言っておりますが、「個としての軸とか核」は必要ですよね。それから決断力もいるし、戦略とかビジネスモデルを作る力も必要かもしれない。異文化を理解する力、多様性を活用する力も必要。そして、そういったものと企業の価値観や理念を繋ぎ合わせていく力。これも必要ですね。そういうことを、これまで議論してきました。

これを2年ぐらい前に「こんなことだよね」と整理したのです。ところが去年、「100年に1回ぐらいしか起こらないけれど、それが起こると、とてつもない影響がある」という現象を、「ブラックスワン」と言いますが、その「ブラックスワン」が2回も起こってしまいました。

誰も予想しなかった、トランプ(大統領)の当選。そして、誰も予想しなかったBrexitが起こった時に、「果たしてこの定義だけでよかったのか」ということを、もう1回考え直しました。

それで2017年は企画テーマを若干変えまして、「混迷する世界で、課題に挑むリーダーに学ぶ」としています。グローバル化、デジタル化により、世界がより一層複雑化する。その中でリーダーはどう在るべきか? あるいは速さと複雑性に対応するためには、何が求められるのか? ということを考えていきます。

例えばキーワードとしては、ラーニング・アビリティやデザイン思考などがありますし、「リーダーの役割、在り方そのものが変わってくるのではないか」という議論もあります。「変化の中で何かを成し遂げようとするリーダーが体現しているものを探求する」という部分もあります。

みなさんも、さまざまな変化の中にさらされていると思います。おそらくその変化のスピードや規模が、10年前、20年前と違ってきていると思います。そういう時に、一体「地球人財」はどうあるべきなのか。それを今年のテーマにしたわけです。

そこで、「世界企業において日本の強みをどう打ち出すか」というテーマで、レノボ・ジャパンの留目社長に来ていただいたり、「世界におけるリーダーと日本のリーダーの違い」というテーマでは、エグゼクティブサーチおよび人材コンサルティングファームとして名高い、エゴンゼンダーのパートナー、丸山氏に来ていただいたりして、お話をしていただきました。

それから、今、計画をしていて……まだ言えないのですが、世界のとてつもない紛争地域で、日本人としてがんばっていらっしゃる方をお呼びしようと考えています。今日は2017年度の第3回目で、「脳神経科学でグローバル人材開発を考える」ということをテーマにしており、ゲストスピーカーに、非常に若くて、はつらつとした青砥瑞人さんをお呼びしました。

「グローバルリーダー」の定義

現在32歳。UCLAの神経科学学部を飛び級卒業。すごいですね。脳神経の奥深さと無限の可能性に惹かれる一方で、教育にも熱い情熱を持ち、学びの楽しさと、教える尊さを伝えることが生きがいで、研究結果を教育現場や人の成長する場にコネクトし、人の学習と教育の発展に人生を捧げたいとおっしゃっている。

そんな青砥さんは、脳・教育・ITを掛け合わせる世界初の「NeuroEdTech」という分野を立ち上げ特許を取得。ダンシング・アインシュタインという会社を創設して、人の成長に関わることを企画していらっしゃいます。この方のお話を聞いていただくのですが、私自身も非常に楽しみにしています。

実は、しばらく前に「HeForShe」というイベントがありました。これは国連がやっている、「ジェンダー平等を実現しよう」という取り組みに関連するもので、PwCとユニリーバと文京区が共同開催をしたものです。たまたま、そこで私がパネルディスカッションのスピーカーの1人として招かれたのです。私のパネルもそれなりにおもしろかったと思うのですが……(笑)。

(会場笑)

でも青砥さんが出たら、やっぱりめちゃくちゃおもしろくて。「これはちょっと青砥さんを別途呼んで、じっくり話を聞いた方がいいな」ということで今日の場があります。

ここからだいたい40分ぐらいお話をしていただき、そのあと1時間ぐらい、みなさんとじっくり議論をする場を作りたいと思っています。この場は、一方的に話を聞いて「ふーん」と言って帰る場ではありません。

ここにいらっしゃる方々は、それぞれが、十分にスピーカーとして成り立つような実力をお持ちの方がそろっています。そのような前提で、ご自分の意見を言ってもらう、青砥さんからどのようにインスパイアされたか語っていただく、そんなインタラクティブな場にしていきたいと思います。

そして、みなさんに今日の議論のヒントとして、お見せしたいスライドがあります。

私はIMDという、スイスのローザンヌにあるビジネススクールに勤めて7年になりますが、そこでは「グローバルリーダーを育てる」ということを1つのミッションにしています。

そして「グローバルリーダーとは何なのか?」ということを、IMDではこのように言っています。「現在と未来の複雑で不確かな環境において、組織の変革の旅出を形作り導くのがグローバルリーダーである」。

「組織の壁」を超える時代

「VUCAワールド」という言葉を聞いたことのある人はいると思いますが、「volatile」(変動が激しく不安定)で「uncertain」(不確実性が高く)、「complex」(複雑)で、「ambiguous」(曖昧)な世の中。そういう中でリードをしないといけない。しかも単に何かを管理するのではなくて、何かを変えていき、進化させていくことをしなければならない。これはなかなか大変なことですよね。

こういう人たちは何をしなければならないかというと。

「複雑性と不確実性の海で舵を取り、いくつもの境界を越えて」……「ボーダー」ですね。「さまざまなステークホルダーを成功裏に結束させる」。大変ですよね。では、ボーダーには何があるのでしょう?

普通、グローバルと言えば、まずは最初に地理的なボーダーのことを考えます。しかし、今のようなオープンイノベーションやデジタルな世の中になってくると、機能や業界の壁、組織の壁を越えなくてはいけない。こういう時代になってきているはずです。

まず「境界を越える」とはどういうことなのだろう。そう考えると、人類というものは多分、「境界を越える」ということをやってきたからこそ、今に至っているわけです。例えば「アメリカ大陸を発見しました」「月に行きました」など、すべて境界を越えてきたといえます。

しかし一方で、人間はその生存戦略の中で、境界というものに対して怖さや警戒心などを持つようにもプログラムされています。そう考えると、「境界というものを意識して、それをどのように乗り越えるのかという脳の働きと、境界を本質的に『怖い』と思う脳の働きの2つを、どのように自分の中でマネジメントするのか」というのが、グローバルリーダーとしての大きな条件なのかもしれない。そういうことを、「HeForShe」で青砥さんの話を聞いて思いました。

今日はその観点から、「境界を越えるってどういうことなの?」「その時に、脳はどういうふうに動くの?」「神経はどうなるの?」そして「それを効果的にやっていくためには、自分の脳や神経をどういうふうに意識したらいいの?」といったようなことについて、青砥さんからうかがう予定です。

それを聞いた上で、議論をしていきたいなと思います。よろしいでしょうか? ということで、ダンシング・アインシュタインの代表でいらっしゃる青砥瑞人さん、みなさん拍手でお迎えください。

(会場拍手)

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