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BuzzFeedのルールは「クソ野郎になるな」古田氏とヨッピー氏、著作権侵害するコンテンツの是非を問う

2017年7月4日に行われた「メディアミートアップ」で、アジャイルメディア・ネットワークの徳力氏がライター・ヨッピー氏とBuzzFeed古田氏とともに、2016年に起こったWELQ騒動以降のWEBメディア事情について議論しました。本パートは、著作権の侵害とメディアの信頼性について語っています。第2回は8月24日に行われる予定です。

メディアの信頼性を問う

徳力基彦氏(以下、徳力):じゃあさっそく、議論に入っていきたいところなんですけれども。今回このイベントをやるきっかけになったのは、去年のいわゆる「WELQ」騒動とか、海外のフェイクニュース絡みの騒動なんですが。

ざっくりした聞き方ですけど、まず去年の一連のメディア騒動って、なにが一番問題だったと思いますか? すごくいろんな話があるじゃないですか。医療系から始まって、著作権だなんだかんだ、ステマとか。

今も毎週のように、なにかしらどこかが炎上したりみたいな感じはありますけど。お2人から見て、今メディア騒動で一番問題になっていることってなんだと思いますか?

ヨッピー氏(以下、ヨッピー):僕は信頼性の問題だと思ってますよ。僕は著作権絡みで叩くことはあるんですけど、ぶっちゃけ著作権って、見てる人からしたら別にどうでもいいというか。

徳力:取られた人からすると、ある意味ドロボー行為だけど、読者には関係ないと。

ヨッピー:僕らからしたら悔しくて腹が立つけど、見てる人からしたら別にピンとこないじゃないですか、著作権って。だから、一般の人たちにとってあんまり関係ないけど、ただ情報の信頼性というところは、とくに医療問題とか関わってくると、それはもう。

今日も、僕、変な漫画を見つけてツイートしたやつがすごく伸びてて。なんだっけ、「ガンになっても、なんにもしないのが一番長生きします!」みたいなことを言い切っている漫画があるんですけど、ああいうのは本当によろしくないと思うので。そういうのかなと思ってます。

徳力:信頼性って言っているのは、得体の知れない情報がいっぱいあることが問題だということですか?

ヨッピー:そうですね。得体の知れない情報を、さも正しいと思わせて読者に不利益を与えることですかね。

それは観光も同じなんです。ぜんぜん営業時間が間違っているとか、物理的に行けない距離のところを近いかのように紹介してたりとか、ぜんぜん違う写真を持ってきて、さぞかしそこの写真かのように誤認させるとか。そういうのって実際に行ってみたら、これぜんぜん違うじゃんみたいな不利益になるので、それは良くないなぁと。

世界を席巻したフェイクニュース

徳力:変な漫画の話を知らない人に一応フォローで出すと、今ヨッピーさんが言ってたのはこれ(ヨッピー氏が見つけた漫画)ですよね。これだけ出しても意味がわからないかもしれないですけど、単純に言うと効くかどうかわからない、いわゆる民間療法的なやつですか? 僕もちゃんと読んでないですけど。

ヨッピー:そうですね。

徳力:それを、メディアとして提供しちゃっている。

ヨッピー:メディアっていうか、これ病院のホームページに載ってたんですよ。

徳力:病院がこういう情報を発信しちゃっているということですね。ただ、ちょっと怖くなってきたんで、引き返します。今日はそっちの医療系の話はしないです。すいません。

(会場笑)

ただ、メディアっていう体で、綺麗なサイトに綺麗なかたちで情報として載っていると、なんとなくみんな信じてしまうんじゃないか。そうすると、信じられない情報がたくさん増えてくると、今度はネット全体が信じられなくなるみたいな、スパイラルがありますね。

古田さんはどうですか?

古田大輔氏(以下、古田):僕が思うに、去年の流れからで、一番世界的に話題になったのがフェイクニュースだと思うんです。僕は先月、ウィーンに行ってたんですね。ウィーンで開かれてたのは、グローバル・エディターズ・ネットワークっていう、世界的なメディアの横断組織のようなところがあって、そこが年に1度サミットをやるんですよ。世界中のメディアが集まって、そこでいろんな議論をするんですね。3日間に渡ってシンポジウムを開く。

そこで3日間ずっと話題になってたのが、フェイクニュースでした。「どうやってフェイクニュースと戦えばいいのか」と。世界各国の状況報告を聞いてると怖くなって。日本はまだぜんぜんマシだなっていう感じでした。

著作権と信頼性

なんですけれど、ちょっとフェイクニュースだと話が広がりすぎるので、一旦話を日本の、去年の騒動というところに話を縮めていくと、問題は2つあったと思います。

1つは、著作権。著作権ってすごく難しい法律なんですよ。ネット上のコンテンツの扱いについて、判例がそんなにないんですよね。なので、いわゆるグレーゾーンとされるところが非常に広い。

僕らはBuzzFeedに載せるときに、弁護士の先生に相談役として付いてもらったし、それ以外にもいろんな先生にお話をお聞きして、相談して、社内で勉強会まで開いてですね。いろいろ議論をした上で、自分たちのルールを作ってやってるんです。

僕らはそれだけ細かくやっています。一方で、真っ黒なメディアもある。完全に丸パクリしてる人とか、写真は言い逃れができないです。知らない人が多いですけど、写真の引用転載って相当条件が厳しいです。

ネット上の写真だったら取ってきて、引用元を書いておけばいいでしょって思ってる人がいますけど、そんなに単純ではない。

もう1つは何かと言うと、これはヨッピーさんとまったく同意見で、信頼性の問題ですよね。先ほどのスライドで、「8割良ければ良いではない」って書いたじゃないですか。

それはどういうことかと言うと、僕は以前、SEOの専門家の辻さんとイベントを開いたんですね。辻さんってすごい人だなあって、僕思ってるんですけど。「WELQ騒動」のときにいち早く問題点に気づいてて。インターネットで発信してるんですよね。

アメリカで起こったコンテンツファーム騒動

辻さんがおっしゃってた言葉ですごく印象的だったことがあります。十数年前のアメリカで「コンテンツファーム騒動」というのが起こったんですよ。やってることは、言ってみればWELQさんと領域的には一緒なんですよね。

要は、デタラメコンテンツをいっぱい作るけど、SEOをすごくがんばって、それで検索の上位を占めて、PVを稼ぎまくる。コンテンツを、まるで畑で生産するみたいな、コンテンツファームって言われたんですよね。

徳力:アメリカでは10年前にあったと。

古田:十数年前にアメリカでもあったんですけど、そのときにもGoogleはアルゴリズムを変更して、葬り去ったんです。辻さんに言わせると、そのときのコンテンツのひどさに比べれば、WELQは問題はいっぱいあったけど、WELQのコンテンツには役立つコンテンツもあった、と。

これは別に、辻さんはWELQを擁護してるわけじゃなくて、客観的事実なんですよね。僕もWELQのコンテンツ見てましたけど、中には間違ってないコンテンツもあったんですよ。著作権はダメだけど、間違ってないコンテンツもある。でも、中にはすごく間違っているコンテンツもあるんですよね。「肩こりの理由は幽霊の存在」とか。

徳力:一躍有名になりましたよね。

古田:「火傷には濡れタオル」とかですね。そんなことしたら、余計ひどくなる。ひどいコンテンツもあったんですよね。

そのときに僕はオピニオン記事を書いたんです。我々は読者の知的、精神的な健康を養うためのコンテンツを出している。読者はそれを正しいと思って読んでくれているわけですよ。それで知識をためたり、楽しんだりしているわけですよね。

メディア運営は絶対間違えちゃダメ

僕、記事の中で例え話をしたんです。あるところに食堂があります。その食堂はとても安い、品揃え抜群で、そこそこ食べられる。でも、2割の確率で食中毒を起こします。

(会場笑)

その食堂に行きますか? 行かないですよね。食堂をやるなら、10割、絶対食中毒を起こさないようにやらないといけないわけですよ。メディア運営ってそういうものなんですよね。絶対間違えちゃダメで、プロがチェックしないといけないというのが、僕が主張をしたいところなんですよね。

コストで考えると、「8割良ければいい」と「10割良いものを目指そう」だと、飛躍的にコストが上がるんです。だからみんな嫌がる。「いいじゃん、8割で。2割くらい我慢しろよ」みたいな議論になっちゃうんですけど、メディア運営はそういうものではないと。そこはちゃんとコストをかけましょうよと。

だから高い倫理観が求められると思うんですよね。そんなに大儲けできる職業じゃないぞ、というところは心して、そういうかたちでメディアをやっていきたいなと思ってます。ヨッピー:そうそう。メディアでボロ儲けしてる奴はカスしかいないですからね。

(一同笑)

海外のネット文化「ミーム」とは

徳力:著作権の話で言うと、やっぱり今回のWELQ騒動の裏側はあまりにひどかったから、看過できるレベルではなかったという話だと思っています。結果的に、今DeNAさんは一生懸命、申告すると1記事、1ポスト……相場いくらでしたっけ? 1000円くらい? プロの方は数万円とかあるみたいですけど、罰金として払うという結果になりましたよね。

そういう意味で、著作権違反、当然悪いのは悪いっていうのはあると思うんですけど。さっき古田さんがおっしゃったところ、著作権のグレーゾーンの話はおもしろいなと思って。けっこう引用の定義って曖昧だから……。

古田:いや、引用の定義というのはしっかりしてるんですよ。引用の定義というのはガッチリしてて、みんな絶対頭の中に叩きこんでおかないといけないと思うんですよね。メディアをやってる関係者の人はとくに。

ただその定義がきっちりと適用できるのは、テキスト系の引用に関してなんだと感じています。

徳力:確かに、割合のイメージはありますね。

古田:それが例えば、「動画は?」とか、「動画から切り出した画像は?」とかになってくると判断基準が難しくなる。日本は厳しいですね。

徳力:海外のビデオポッドキャストとか、それこそ10年くらい前に、平気で映画とかドラマのシーンを使ってる奴とかいて。こんなの日本でやったら、すぐ消されるなと思いながら驚いた記憶があります。

古田:日本ってそれで言うと、インターネット文化の中で、海外ではすごいのに日本ではほとんどない文化の1つは、「ミーム」なんですよね。ミームって、例えば、動画から一部おもしろい人の動きとかを抜き出して作る映像コンテンツです。映画とかからですね。

例えば、トム・クルーズが大はしゃぎしてる瞬間とか、ブリトニー・スピアーズがエロい表情をしてる瞬間とかを抜き出して、それを自分たちの記事の中にどんどん埋め込むんですよね。それはぜんぜんオッケーとされているんですよ。なぜならそれを通じて、例えばブリトニー・スピアーズの新曲がタダでPRできるじゃないですか。映画もそれによって、新たな客層に刺さっていくわけじゃないですか。

他人のふんどしを使ったら洗って返せ

古いディズニーの映画が、今の10代の人の目に届くようになるというので、ディズニーの古い映画から5秒間動画を抜き取って、それをコンテンツに使うのも、ディズニーの懐が痛むわけではない。変な使われ方でなければ、無料でディズニー映画をPRできる効果もある。でも、日本でそれをやったら、問題視する人も出てくるかもしれない。

徳力:著作権者自体は別になにも言ってなくても、周りで見た人たちが「お前、これ著作権大丈夫か」って叩いてるイメージはありますね。

古田:ミーム文化って世界的にはすごくおもしろくて。笑えるミームっていっぱい作られてるんですけど、日本ではそれがすごくアンダーグラウンドで。例えば、2chのまとめサイトとかだけであると。

これって本当に悲しいことだなと思っています。そういうおもしろい文化を楽しもうと思ったら、エロい広告とか貼られた、丸パクリ記事とかがある、明らかに真っ黒なサイトにいかないと見れない。ほかの日本以外の国の人たちは、正々堂々としたメディアでそういう文化が楽しめるのに、日本はそうはなってないんですよね。

ヨッピー:僕の友達が言ってて、その言葉がいいからどんどんパクろうと思ったんですけど。「他人のふんどしを使ったら洗って返せ」っていう言葉があって。

(一同笑)

徳力:返してほしいかどうかはちょっと人による気がしますけどね(笑)。その例え、わかりやすいかなぁ(笑)。

ヨッピー:えー、わかりやすくないですか(笑)。画像とか勝手に持ってくるのって、僕は本来、そんなにガミガミ言うものじゃないと思ってるんです。著作権にうるさいライターという見られ方もしてるんですけど。

BuzzFeedのルール「クソ野郎になるな」

徳力:PPAPが、海外だとピコ太郎が出ている状態で画像をコラージュして、自分も一緒に出るやつとか。あれ、明らかにPPAPはそれをやっていいように、背景を白で作ってるじゃないですか。ただ日本であれをやると、多分必ず刺されるんですよね(笑)。

古田:それを、僕は悲しいなって思います。BuzzFeedのルールって、すごくいい一言で表すルールがあって。「クソ野郎になるな」と。

徳力:クソ野郎?

古田:クソ野郎。例えば、誰かが苦労して作ったコンテンツを丸パクリする奴は、それはクソ野郎じゃないですか。卑怯な真似はするなと。

徳力:元のコンテンツを作った人に対する、リスペクトがあったかどうかという話ですよね。

古田:そうそう。お互いそれでハッピーになれる。読者もハッピーになれるし作っているほうもおもしろいし、使われたほうも「それくらいいいよ」っていうものならいいんじゃないでしょうか。みんなハッピーなのに「勝手にほかの人のを使ってる!」って言うのは変じゃないの? って思うんですね。

ヨッピー:そうですね。

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