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AI×交通勉強会~移動格差のない社会の実現に向けて~(全5記事)

ライドシェアで自動車の数は4分の1に? AI配車、自動運転、乗り合いが実現する、公共交通の未来の形

2017年7月4日、ドコモ・イノベーションビレッジの活動の一環として、「AI×交通勉強会~移動格差のない社会の実現に向けて~」と題して勉強会が行われました。登壇したのは、株式会社未来シェアの代表取締役、松舘渉氏。世界の最新ライドシェア事情から、現在の交通が抱える問題、そしてその解決策まで、交通業界の最前線を紐解きました。本パートでは、松舘氏が会場からの質問に解答。ライドシェアがもたらす産業・ユーザー・地域社会への影響について、シミュレーションをもとにした検証結果を語ります。

近距離ではなく中距離で使われた場合は?

質問者5:お話ありがとうございました。素朴な疑問になりますが、これが中距離の通勤に使うような、電車を置き換えるような物として、こういう技術は使われるようになっていくのでしょうか? もしそれが現実的になってくるのであれば、駅から遠いから家賃が安い。みたいな図式がだいぶ崩れていくのか、ちょっと気になっていまして、その辺はどのようにお考えでしょうか?

松舘:まさしくそうだと思いますね。先ほどSWATのお話をしましたが、これはある程度ルートは決まっていて、仮想バス停が通っている定点乗り合い型です。そんな利用シーンは十分ありえるかなと思います。それと、東京にお住まいの方多いと思うんですが、東京のタクシーと地方のタクシーは使われ方がだいぶ違う気がします。

なぜなら、東京だと「ライドシェアなんてそんなにないだろう」と言っている。というのも、手を上げればすぐタクシーが捕まるし、そもそもアプリで予約しなくても来るでしょう、と。なので、ライドシェアの用途としては、まさに深夜の終電が終わった後の乗り合いとか、そういったところがあると思います。

一方地方では、それほどタクシーが走っていない所は、けっこうな割合でタクシーを予約するんですね。少なくとも電話で呼んだりとか、そういった所で流行っていくんじゃないかなと思っています。

あと、まさに地価の問題もあると思います。これまで駅から遠くて不便な所は安かったですが、逆に地価が上がることもあったりするのではと思います。例としては、今、日本全国のいろんな所にオールドニュータウンと言われる場所ができています。できた時には人もいて駅からもシャトルバスが走っていますよと。でも人口が減少していくとそもそも普通の路線バスもなくなってしまっている。だけど、こういったライドシェアの形で移動しやすくなれば、地価が上がってくるという可能性もあるかなと思いますね。

質問者5:ありがとうございました。

事業者目線、ユーザー目線のバランス

質問者6:お話ありがとうございました。オンデマンドの乗り合いということで、事業者目線からのシミュレーションのお話は沢山いただいてよく理解できたんですが、ユーザー側で事前に運賃確定するということになると、時間もある程度確約した形で、時刻を先にお知らせすることになると思うんですが、それが乗り合いになった時にずれていくということに関して、アルゴリズムをチューニングしたり、カスタマイズしたりというところで、事業者目とユーザー目線のバランスをどのように取ろうとしているか、お考えをお聞きしたいと思います。

松舘:そこはもうすでに考えられています。予約する時に「何時以降に来て欲しい」と。例えば「飛行機が何時に着くので、その時間以降に来て欲しい」「絶対この時間までに着きたい、そうじゃないと電車に乗り遅れるから」など、そういったところはデータとしていただいています。それらを条件として組み合わせの計算をしています。

質問者6:デマンドを受け付けるパラメータとして効力が出るという感じですね。

松舘:そうですね。

質問者6:ありがとうございます。

渋滞の解消や効率化の効果は?

質問者7:お話ありがとうございました。地域全体の交通最適化というお話あったと思うんですが、渋滞といいますか、その交通密度によって、効率化の効果がどのくらい変わるのかということ。あとは逆にこのサービス使うことによって渋滞がどれくらい解消されるのか、みたいな効果はシミュレーションベースでもございますか?

松舘:今までの実証実験では、渋滞がどれ程解消されるかというシミュレーションはやっていないんですが、かつて函館のほうでデータをもとにシミュレーションした結果がありす。それによると、函館は30万弱くらいの人口エリアで、タクシーとバスを合わせてだいたい1,000台くらい走っています。それ以外にはやはり田舎なので自家用車をみなさん持っています。

自家用車がだいたい10,000~20,000の間。アバウトで申しわけないですが、15,000くらいの車両が地域全体であります。これを全部乗り合い型の車両にしてどのくらい効果があるかというシミュレーションをしたことがあります。

その結果、だいたい3,000台の車両があれば、函館市内どこに居ても5分以内に来ます、というシミュレーション結果が出ています。なので16,000くらいの台数が3,000台のSAVでまかなえれば、当然ながらそういう効果が出るだろうとご想像いただけるんじゃないかなと思います。

質問者7:その3,000台の効果というのは実際に函館市での使われ方に即したシミュレーションですか?

松舘:厳密なデータは取れないんですが、少なくともタクシーや車両の台数と、地図データもとにシミュレーションした結果です。厳密ではないですが、一応結果として、そんな発表を過去にさせていただいています。

質問者7:渋谷の中心やすごい都市部においても、車が渋滞で止まっちゃっている状態で、どういうパフォーマンスが出るかは……。

松舘:本当、分からないですよね。その割合だと思います。中途半端に普及してもそんなに影響出ないでしょうね。かなりの台数が普及しないと、その効果は見えてこないんじゃないかなと理解しています。先ほど軽く触れさせていただきましたが、とある工場地帯での車両、そこの従業員も何万人もいるような所でやってみたら、データとして出てくる可能性はありますね。

質問者7:ありがとうございます。

産業にとってどういうものが良いのか

質問者4:内閣府や経済産業省、国土交通省などは、今こういった効率化・自動運転化やライドシェアに、当然興味はあると思います。ですが、かたや効率化が進めば進むほど車がいらないという話になってしまいます。今の日本の製造業を引っ張っているのはトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業という自動車産業で、それでも車が売れないと、世界進出しながらぼやいている部分もあると思うんですけど、何が正しいのかなと思っていまして。

実はこの前サウジアラビアの富裕層の方達が一斉に日本に来た時に「ハイヤーが足りない」と。かき集めても日本車が足りないということで、ヤナセでベンツを買ってわずか数日使っただけで新古車で全部売ってしまった、という事実もありましたが、産業にとってどういうものが良いのか、これは立場によって違うので発言が難しいと思いますが、これについてはどんなお考えでしょうか?

松舘:サウジの場合はかなり特殊な例だと思います。我々は自動車メーカーと少しお話をさせていただいている部分がありますので、自動運転という技術の面での連携というところでは相談させていただいたりしています。

ライドシェアもそうですけど、そもそも自動運転が流行っていったら、当然車両は少なくなっていくでしょう。もしかしたら料金が高くなるかも知れないですが。とはいえ、もうやらざるを得ない。みなさんもそうおっしゃっている感じを受けますね。

ヨーロッパの例を見ていても、自動運転では部品メーカーが一生懸命やっています、車両はそんなに売れなくても、少ない車両で常に走り回っているので故障はする。なので部品の交換需要はそれほど落ちないだろうという見方もあります。

車メーカーはどうするのか? サービスや考え方は変えていかなきゃいけないけど、どうしたら良いんだろうね、というご相談もさせていただくことはあります。

しかし、我々の技術を完全拒否して「これはないよね」というようなメーカーさんもあまりなくて。やはりこうなっていく。それに向けて、車を売るだけじゃなくてサービスというところも一緒に考えていこう、ということは、どのメーカーも先を見据えて考えられていると感じます。

質問者4:先ほど日本交通の川鍋さんもおっしゃっていたんですが、「2020年には自動運転の技術は確立している」と。ドライバーが要らなくて、助手席に観光ガイド・通訳ガイドが乗って、お客さんがドア開けて乗ってもらって、運転ではなくて綺麗な女性の方が案内をする。「そうなると男の人はいらないね」って冗談交じりでおっしゃっていたんですけど。けっこうドラスティックな産業革命になるのかなと、その辺り心配しております。

松舘:心配というか私は期待しています。ですが、バスやタクシーのドライバー不足というところは否めないわけで。そこを補わなければいけません。配送屋さんもそうですよね。そこを補わなくてはいけないのは確かだと思うので、直近ではそういうところを解決していくというところかなと思います。

質問者4:ありがとうございました。

ユーザー満足度に対する実証実験について

質問者8:お話ありがとうございます。乗り合いをした時なんですが、乗った人同士の運賃を、割り勘と言いますか、分配の仕方のお話の中で、実証実験で今後いろいろと進めていって、適正で公平な割り勘の仕方を見つけていく、みたいなお話があったかと思いますが、何をもって公平かと言われると非常に難しいのではないかと思います。

例えば、Uberでは「Uber pool」というサービスがあります。最初から相乗りをするかしないか問わず2割~4割近く通常料金よりも安くなる方法だとうかがっているんですけれど。その場合は乗ってこなくても安く上がる。逆に乗ってくると遠回りして時間がかかってしまう。でも料金は一緒だということで、乗ってくる場合と乗ってこない場合によってユーザーの満足度がぜんぜん違うと。

乗ってこなかった時はラッキー。でも、乗ってきた時にすごく不満を覚えて、ドライバーは悪くないのにドライバーに悪評価を付けてしまうという話も聞いたことがあります。今後実験を進めていく中でどういう処方で進めていくのかおうかがいしたいです。例えば、この1週間はこのパターンでやってみるとか、そうやって実際その利用者からアンケートを取って、みたいな形でやっていくんでしょうか?

松舘:ご心配されている点と我々が知りたいところは、まさしくそのとおりです。今までの実証実験では基本的には無料でやっています。「数日間無料で使ってくださいね」と。「どうですか乗り心地」「いくらぐらいだったら満足ですか」と。

でもこれは実際にお金を取らないと本当のアンケートは取れないなと思っています。今、国土交通省とも調整はしているんですが、今年の秋以降は来年度に向けたデータを取るために本当にお金を取りながら、乗り合いの実証実験を始めようと思っています。

それはある程度長期間に渡って、アルゴリズムを分けてABテストのような形でアンケートを取りながら、いろんなデータを取り入れていきたいと思っています。

あとは、乗り合いと事前料金確定というところでは、まさに当たり外れが出てくると思います。これはしょうがないと思っています。今おっしゃったように、乗り合いを許可しているんだから当然最初から安く。それは乗り合いの発生確立に応じてどれだけ下がるか、満足はどのあたりで得られるかを突き詰めていきたいと思っています。

質問者8:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございます。まだまだご質問や聞きたいことがあるかと思いますがそろそろお時間となってまいりましたので、このあたりで質疑応答を一旦終了させていただきます。

これで今日の勉強会は終了になります。最後に松舘さんに大きな泊手でお礼をお願いいたします。

(会場泊手)

ありがとうございました。

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