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働き方の未来 - 広告業界にとって大切なアクションは何か?(全4記事)

「業務を1~2時間削減するのはわりとすぐできる」Googleの調査でわかった“働き方改革”の実情

「Advertising Week Asia 2017」に、「Women Willプロジェクト」の平山景子氏、女性のライフイベントに関する著書を多数執筆してきたジャーナリストの白河桃子氏が登壇。「働き方の未来 - 広告業界にとって大切なアクションは何か?」というテーマで、女性の活躍をテクノロジーを通じて支援するプロジェクト「Woman willプロジェクト」や、復職する女性を応援するための「Happy Back to Work」などの取り組みに触れ、Googleの行った調査結果の報告などを行いました。

復職する女性がもっとハッピーになるように

平山景子氏(以下、平山):とくに去年から、安倍内閣も働き方改革というところに本腰を入れて、本当に潮目が変わってきたなというところが実感された1年だったかなと思いますけれども。

白河桃子氏(以下、白河):そうですね。

平山:私のほうから、実は2014年から始めておりますWomen Willというプロジェクトの実証実験からの学びということで、少し共有させていただきたいと思います。Women Willというプロジェクトですけれども、聞いたことあるという方どれくらいいらっしゃいますでしょうか?

(会場挙手)

平山:あ、すごくうれしいです。

白河:すばらしい。

平山:これは、Googleがアジア太平洋地域で行っております、女性の活躍をテクノロジーを通じて支援したいという、女性の抱えてる問題をテクノロジーの力で解決できるんじゃないかというところから始まった試みであります。

日本では、女性の抱える問題というのは、仕事と家庭の両立というところで、2014年は非常にいろんな話がありました。その頃は安倍内閣も「女性が輝ける社会を作りたい」という話をされていました。

私たちは、2014年の後半から大きく2つの活動をしてまいりました。まず、未来の働き方コンソーシアムやプレイブック。これは本当にテクノロジーを使ってどうやって働き方をスマートに変えていくか、というところをずっと模索をしてまいりました。

コンソーシアムではパートナー企業さんですね、日産さん、KDDIさん、そして広島県さんとでご協力をいただきながらコンソーシアムを発足させ、その結果をプレイブックにまとめて。去年は、31社の方々に参加していただいたトライアルというものもやりました。その結果を今日はお話したいと思います。

また一方で、先ほどの白河先生のお話にもありました通り、企業のカルチャーという、考え方という部分も変わってこないと、日本人っていうのはなかなか、「制度がある。ツールもある。でも使わない。なぜなら誰も使ってないから」っていうのが、もう本当にバッドスパイラルであると思うんですね。

白河:そうそう(笑)。テレワークとかあっても、結局「これは育児期の女性のためのものである」みたいな感じで、他の人は誰も使わなかったりするんですよね。

平山:そうなんですよね。2015年に日産さんがこのコンソーシアムに入ってくださった時も、日産さんってものすごくテレワーク、在宅勤務を推奨されてたんですけども、その時に選んでいただいた100人ぐらいのチーム、誰1人在宅勤務をしたことがなかったんですね。

白河:えー。

平山:女性もいらしたんですけど、本当に介護とか育児がある女性向けのものだとみなさん思ってたんですよね。というので使ったことがなかった、と。

そういったカルチャーとか雰囲気を変えたいと思ってやったのが、「Happy Back To Work」ですけども、「復職する女性たちがもっとハッピーになるように、みんながなにか1つ考えよう」というキャンペーンを進めてまいりました。今、サポーター企業さん1,100社もの方々から、この趣旨に賛同してくださっております。

テクノロジーで働き方をスマートに変えていく

一方で、私たちここ3年間やってきて、政府であるとか企業のトップの人たちの、マインドであるとかアクションというのが変わってきたというところ、すごく感じてはいるんですけども、じゃあ実際の働く人たちがどうなのかっていうところで、今年、Google調査になりますけれども、今の現状を聞いてみました。

そうしますと、現場の社員の方々にとって「働き方改革が現場に浸透している」と思う人が2割しかいなかったんですね。8割の方が「そういうニュースはいろいろ聞くけれども、自分のところに来てるとは思えない」とか、「一定の効果をあげている」と思う人が25パーセントしかいないというのが、今の現状であります、と。

ただ一方で、「働き方を変えたい」と思う人たちはかなりいます。7割以上の人たちが、「オフィス以外の場所でも自由に働きたい」「残業を前提とした働き方ではなくて、仕事のスタイルを変えていくべきである」というふうに考えているというのが光明かなと思いますけれども、そういったニーズは確実に存在している。

では、具体的なアクションとなると、「働き方を変えたいけれども、実際に取り組むには不安がある」とか「きっかけがない」、日本人なにをしていいかがわからないというところが本当に問題なのかなっていうところが、この調査からも浮き彫りになるかと思います。

こういった現状を踏まえて、Women Willの未来の働き方トライアルでは、女性だけではなくて、女性だけの働き方が変わってもやっぱり世の中は変わらないんですね。すべての人々、すべてのいろんなダイバースなバックグラウンドを持った人たちが、自分らしく働ける社会、会社というのを目指していく必要がある。

そして、そのためにはテクノロジーで働き方をスマートに変えていく。そのことによってダイバースな人たちが活躍できるオポチュニティが生まれるっていうことを信じて、この働き方トライアルというのを実施いたしました。

昨年3回実施したんですけれども、参加してくださった企業が31社、約2,000人ですね。各企業さんたちにモデル部署を選んでいただいて、約4週間から5週間の実験に参加していただいております。

実際にどんなテーマをやったかというと、3つあります。1つ目がWork Anywhere、在宅勤務、もちろん家じゃなくてもいいですけども在宅勤務。それからWork Simply、業務の効率化ですね。それからWork Shorter、退社時間を計画してちゃんと帰れるようにしよう。

この3つを選んだのも、最初のコンソーシアムからこの3つというのが働き方改革をするうえでいろんなレバーになる、ということがわかってきたんですね。なので、「この3つをぜひトライしてください」っていうことで、仲間を募集しました。

ここでキーポイントが3つあります。取り組みの期間を明確に設定するんですね。本当になにをしたらいいかがわからない社員が多すぎるので、アクションです。例えば在宅勤務トライアルでは「この部署の全員が、この期間に最低1回2時間以上の在宅勤務を絶対に経験しなさい」、そういったアクションを明確にしました。

それから、今少し話がありましたけど、「メンバー全員なんです」と。ここは参加したい人とか、そういった事情がある人だけじゃないんです。もう例外なく全員がトライするっていうことが、非常に大事なんです。そのことによって、この働き方トライアルっていうのがみんな事になります。事情のある他人事からみんな事になるんですね。

そして3点目ですけれども、この事前事後アンケート、31社ということでやってますので、みんながなんとなくよかったっていうのは伝播能力がないんですね。なので、アンケートでプレとポストの効果を数値で表すところに、すごくこだわりました。それによって、この結果というものが、それぞれの企業または参加してない企業の方々も、経営者まで話せるような内容になっていくということで設計をいたしました。

退社時間を意識するだけで業務の効率は上げられる

今日は簡単にそこの結果をみなさんにご紹介したいんですけども、「まず在宅勤務にトライしてください」「この6週間の間に最低2時間以上やってください」と言った時に、始まる前は本当にもう。私たちは対象企業の改革推進メンバーが、わりと人事やダイバーシティ推進室の方々が多いんですね。その方々が自分たちの会社に戻って対象部署に話すんですけど、もうアンケートの結果も惨憺たるもので。

「在宅勤務でできる仕事は限られてますよね」「じゃあ、在宅勤務日を決めたら、みんなその日に向けて何をするかをそれぞれ計画しよう」みたいな話があったり、「業務に支障が出るから、誰が責任取ってくれるんだ」という話がたくさんありました、と。

ただ、実際にやってみた後、同じ質問をしたところ、数字を見ていただくと、2人に1人が「在宅勤務でできる仕事って限られているよね」と思っているのが、実際には11.8パーセントまで下がっています。それから「業務に支障が出る」と思っていた人も、「実際に支障が出た」と答えた人は2.9パーセントなんですね。

白河:これだけを見ると、食わず嫌いが多いんですね。

平川:そうなんですよ!

白河:(笑)。

平川:本当に1回もやったことないという。管理職に至っては、事前32パーセントが50パーセントぐらいまで跳ね上がるんですね。なので、管理職のみなさんが「自分がいないと回らない」って言う権利を持っているか、ということなんですけども。本当に管理職が半日いなくても仕事は回る、と。それが逆に言うと健全な会社なのかな、とも思いますけれども。

そういったかたちで、本当に食わず嫌いが多いというのが在宅勤務だということになります。

次に、業務の効率化。これは主に定例会議をターゲットにしました。この定例会議のなかで、2つ見直していただきました。「時間と出席する人たちを、まず見直してください」と。本当にその時間で適正かということと、出席者が本当にそんなに必要かというところですね。

そこを見直していただくのと、あと「会議が始まった時に、この会議の目的は何で、最後アウトプットは何を期待するかというところを考えて、会議に臨んでください」、それだけをお願いしたんですけれども。それで「会議時間が短縮した」と答えた人が66パーセント。

それから「人件費が減った」。要するに無駄な人が出なくなったので人件費が減ったんですね。これもKDDIさんの若い社員さんが思いついて、「この会議っていくらだろう?」ってある日計算したんですね(笑)。

白河:(笑)。

平山:そうすると、KDDIさんはその時80人ぐらいの定例会議があったらしいんですけど、その会議がものすごく高い会議だったことがわかり、「この会議にそんな価値あったっけ?」っていう話になって、出席する人も減り、時間も、もともと3時間の会議だったらしいんですけど、1時間半になった、というお話があります。

そして3点目が、「退社時間を計画してください」と。これをやったことによって、「朝来た時に、自分は今日何時に帰るかっていうのをちゃんと意識してください」「それをカレンダー上でちゃんと退社というふうにみなさんに告知してください」という話をしました。

それだけで平均勤務時間が8時間、9時間あったものが、7、8時間に減ってるんですね。なので、終わりを決めて働くことで、簡単に1時間ぐらいの削減はできるということが、これでわかったと思います。

それで、ワーキングマザーにしてみれば当たり前のことかもしれないんですけども、「本当に6時に今日は絶対出たい、出なきゃいけない」ということを考えて朝からやることによって、自分のワークスタイルが変わる。「今は何をやらなきゃいけないのか?」っていう、常に優先順位を考えるようになるというのが、ここからの知見ですね。

これも、「締め切りや納期内に業務が終わらない不安がある」って答えた人が55パーセントいたんですけれども、実際には25パーセントまで減っているということで。1、2時間の削減というのであれば、かなり意識と集中力の問題で解決できるのかなと思います。それ以上、4、5時間ってなってくると、本当に全体の業務改革っていう話になるかと思うんですけれども、こういったところで1、2時間の削減っていうのは、わりとすぐにできる。

白河:個人の意識を変える、時間という点に着目するだけで、これだけ変わるっていうことですね。

平山:そうですね。といったことが、この実証実験からわかったことになります。

ぜひ会社の中で、該当企業さんも含めて広めていきたいというところで、今回の知見を「トレーニング」というかたちにまとめましたので、もしよろしかったらみなさんもWomen Willのサイトから見ていただければと思います。実際に在宅勤務をするうえでの不安とか、そういったものに対するソリューションというのが書かれております。

あと、みなさんお手元にお配りしているこの「推進ガイド」ですね。これ、どちらかというと経営者や人事の方々でも参考になるようなかたちで進めてますけれども、今私がお話したような内容っていうのが入ってますので、ぜひみなさんの会社でやられる際に参考にしていただければ、というふうに思います。

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