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杉原千畝という外交官が守った未来(全2記事)

杉原千畝はなぜユダヤ人を助けたか? 実の息子が明かす、偉人が貫いたサムライ魂

2017年4月22〜23日、天王洲アイルにて「SAMURAI ISLAND EXPO2017」が行われました。当日は世界の最先端テクノロジーと人類の未来をテーマにした各カンファレンスが開かれ、豪華スピーカー陣が会場を盛り上げました。「杉原千畝という外交官が守った未来」と題されたセッションでは、大戦中に6,000人のユダヤ人の命を救った杉原千畝を父に持つ杉原伸生氏が登壇。父の人柄や信念について触れました。

杉原千畝氏が助けたユダヤ人の子孫

榊原健太郎氏(以下、榊原):みなさん、おはようございます。日曜の朝から本当にありがとうございます。最初のセッションは『杉原千畝(すぎはら ちうね)という外交官が守った未来』からいこうと思っております。

僕が3年前にTOEIC365点の語学力でイスラエルに1人で行ってから、今は出資・インキュベーション先が30社程になりました。そして、大きいコワーキングスペースを持ち、ヨニーという代表が入ってくれたおかげで、僕がイスラエルにいなくても回るようになっていました。

基本的に、それはここにいらっしゃる伸生さん(Silvertech Ventures杉原伸生氏)のお父さまの杉原千畝さんが、第二次世界大戦でユダヤ人の方々を6千人も救ったおかげだと思っております。

イスラエルの街を歩いていると「日本人のおかげで僕はここにいます」「僕のおばあちゃん、おじいちゃんが救われたからここにいます」と言われます。そのとき救われた6千人のビザを持った方々から、子供がたくさん生まれたわけです。みなさん、6千人救ったあとの子孫は何人いらっしゃると思いますか? 

参加者:10万人。

榊原:正解です。杉原千畝さんが救われた方たちのお子さんが10万人います。今、世界中にユダヤ人は約1,300万人いらっしゃると思いますが、その中の約1パーセントを救われたことになります。日本でいうと100万人〜130万人ぐらい救ったということです。そういった歴史的背景から、非常にユダヤ人の方々は、日本人を推してくださっています。

ただずっと日本人にはなかなか表立って日本とイスラエルの関係を大きく話せる方がいなかったんです。そこに、ユダヤ人の方から感謝の気持ちをぶつけていただいて、今は非常に日本と密接な関係を持っているところです。

あと、今日ご紹介しますが、伸生さんは本当ににお父様とそっくりで、びっくりするぐらいハンサムな方です。あとでプロフィールをご紹介します。

そして、あとであらためてスタートアップをご紹介しますが、(紹介スライドを指して)彼女は皮膚をカメラで撮るとがんかどうかが簡単にわかるというスタートアップです。

(スライドを指して)彼はバッタなど虫から新しいヘルシーな食べ物、新しいプロテインを造るスタートアップをされています。

(スライドを指して)そしてダニーです。僕は彼の姿を見て感動しています。言葉がしゃべれない、どもってしまう方の言葉を聞きやすくする。簡単なアフィリエイト収入、メディア収入で世の中を変えるクリエイティブな人たちが来られている。それを後半でお話ししたいと思います。

(スライドを指して)次にヨニー・ゴランです。彼は非常にハンサムです(笑)。僕がなぜイスラエルに行ったかというと、実はヨニーはポーランドの国籍を持っていますが、そのヨニーのおばあちゃんが、なんと杉原千畝さんに救われているというつながりがあるんです。

そして杉原伸生さんに直接会いたいと思い、今では非常に仲良くさせていただいています。

なぜ、ユダヤ人を助けたか?

さっそく最初のテーマからいきたいと思います。

僕らは「サムライ」という名前を社名につけていますが、イスラエルに行くと、まさにサムライイコール杉原千畝さんになります。ミスターサムライです。

彼はなぜ第二次大戦の時、日本と同盟国を結んでいたドイツを裏切ってまで、ユダヤ人の方々にビザを配ったのか? それを最初の質問として、伸生さんに話をお願いしたいと思います。では杉原伸生さんです。拍手をお願いします。

(会場拍手)

杉原伸生氏(以下、杉原):「なぜ、ユダヤ人を助けたか?」ですね。

榊原:そうです。

杉原:僕も父に「なぜユダヤ人助けたの?」と聞いたことがあります。すると「かわいそうだから」。その一言です。別に自分が英雄になろうと思って人を助けたとか、手を貸したとか、そういうことではなかったんです。

ある日突然、ユダヤ人が20人、30人領事館の前に来て立っていた。「自分の家族はみんな殺されて、自分たちも殺される。どうにか助けてください。自分はよその国に逃れなければならないけれども、まずお金もビザも発給してくれない。今残っている方法はシベリア経由で日本に渡り、日本から他の国に逃げることだけです」

そこで父は外務省に何回も電報を打って聞きましたが、いつも条件を付けてきて、それから日本に保証人がいないといけない。その次に日本のビザを持ってなきゃいけない。

それを全部持っている人なんて、もうとっくに逃げてますから、わざわざ父の所に来ないです。外務省は、無理難題を突きつけて、ビザを出せないようにしているわけです。

そこで、もう自分の判断で2,139枚のビザを書いたんです。ですから本当に「かわいそうだから」の一言しかないんです。命がかわいそうだから助けてあげたんです。

それで、自分がどうなるかと言うと、日本に帰ればクビになる。実際、父は1945年の終戦のあとにソ連に抑留されて2年ぐらいシベリアに行きました。

そのあと日本に帰り、外務省に呼ばれ「お前わかってるだろう? なんで辞めてもらうか」と退職をすすめられました。

外務省は人員整理と言っていますけど、本当は「役人のいうことを聞かない人間は外務省ではやっていけない」という理由なんです。

榊原:先ほど裏側でお聞きしましたが、そういった状況下で僕も普通の人も(ユダヤ人を)かわいそうと思っても実行できない。でも(杉原千畝さんは)なぜ行動ができるのか?」 そこを教えていただきたいです。

その理由は、たぶん今の日本に足りない部分だと思います。先ほどは、本当に普通のお父さんだった、ごく一般的な人だったとおっしゃいましたが、どこか普通の人と違うんですか?

杉原:どこが普通の父親と違うか、ですか?

榊原:先ほど魂の話をされましたよね。

杉原:そうですね。自分が信じること、信念、正義を貫くことが杉原千畝です。非常に人間として頑固ですが、一度思ったことは必ずやり遂げる。一度言ったことは必ず守る。そういう昔のサムライというか古武士。そんな人間でした。

榊原:でも、僕なら、そういう英雄的なことしたら「俺やったぞ!」と絶対に目立つように言います(笑)。でも、千畝さんは誰にも気づかれずに、イランの方が探しに探して何十年後に見つけるまで言わなかった。しかも、伸生さんにそういう話はされてこなかったんですよね?

杉原:僕も知らなかったです。

榊原:それがすごいですね。

杉原:イスラエル大使館から「杉原千畝という人を探しているから、ちょっと大使館まで来てくれ」と電話がありました。しかも、その人は父からビザをもらった家族の子供だったんです。その時のスタンプがあるので杉原千畝という人を探していた。でも、外務省に何回聞いてもそういう人はいないと言われ、やっと見つけたらしいです。

当時、助けられた子どもですが、その人が外交官になり、東京のイスラエル大使館に務めるようになった。それで初めてその人から、私たちは何千人もいてポーランドから逃げてきたけど、他の家族もみんなナチに殺された。

でも「この杉原さんのビザのおかげで命を救われた」と。そのことは僕も初めて聞きました。ですから、父や母から子供の時はそういう話は聞かされなかったです。一応外交官であることだけは聞いてましたけど。

平和はリーダーシップから始まる

榊原:伸生さんが話を聞いたのは何歳ごろですか?

杉原:19歳のころです。

榊原:そんな遅い年齢なんですね。おこがましいですが、僕がイスラエルに行った時、「将来、日本とイスラエルをいい関係にする。世の中の平和に繋がるピースを日本に残しておきたい」と考えました。

先ほど信念という話がありましたが、千畝さんの場合も将来のことまで考えられたのでしょうか?

杉原:何がですか? 

榊原:千畝さんに「自分の行動で将来が変わる」という信念があったのか? と。

杉原:そこまでわからないですが、たまたまそういう運だったのかのかもしれません(笑)。

榊原:僕としては今一番尊敬しているサムライが千畝さんなんです。僕はサムライ魂は8つあると思っていて、「義・礼・勇・誉・仁・誠・忠・挑」です。その中で一番好きなのは勇気の「勇」です。人が嫌がることでも社会にとって良いのであれば飛び込んでいく。

その魂がとても大好きなんです。僕はまだまだですが、自分に目立ちたい気持ちがなくなり、損得勘定なしにパッと動ける気持ちができたとき、伸生さんや千畝さんに近づけるのかなと思います。ちなみに伸生さんご自身はいかがですか? 損得勘定せずに行動することについて(笑)。

杉原:僕の今の夢は「世界の平和」です。でも、中東の和平問題が拡がっている。宗教問題もある。僕はイスラエルに何年もいて、問題もよくわかっています。そこでイスラエルと中東の国との平和、和平に向けて一生懸命やっています。榊原さんも同じ信念を持って協力してくださっています。だから、何とか始めてみようと思うし、何十年、何百年かかると思いますが、誰かが始めないといけないことなんです。

榊原:ありがとうございます。ではお座りください。僕がヨニーとも話していて気づいたことは、こういう強烈なリーダーシップが大事だということです。

例えばイスラエルと日本。僕がイスラエルに行く前の2011年は日本からイスラエルへの投資が3億円しかなかった。けれど、昨年は200億円超えになった。とても大きな流れになっています。

今までイスラエルは戦争の国というイメージがあり、イスラエルの技術を持ってきて、さらに戦争をどう強くするかという話ばかりでした。

でも僕は伸生さんと同じで、日本は戦争をするような国だったけれど、戦後約70年でここまで立ち上がってきた。その他の国々と仲良くやっているノウハウを、逆にイスラエルや日本の技術を利用して、イスラエルから戦争をなくす。その気持ちでここまで来たら、すごい流れが変わって、ヨニーと共によいリーダーシップが取れたと思っています。

リーダーシップについてや、ヨニーにとって、杉原千畝さんというサムライはどう映っているのか? なぜサムライインキュベートに入ったのか? ヨニーから話をお願いします。

ヨニ―・ゴラン氏(以下、ヨニー):こんにちは。

僕が普通、みんなの前でしゃべるは簡単なことです。けれど、今の杉原千畝さんの話は何回も聞いていますが、今回がすごいエモーショナルでした。本当に、ありがとうございます(杉原伸生氏に向かってお辞儀)。

(杉原千畝の)歴史は僕も未来もコミットしています。それが大事だと思います。そして「平和」って簡単に言葉で言えるんです。でもどうやって平和をつくるかは、リーダーシップから始まることです。リーダーするのは人間です。

人間が道を決めることにはいろんなパターンがあります。例えば、上からコマンドがきたとき、それが正しいかどうか? ちゃんと自分の心でチェックすることはすごい大事だと思います。

技術的にもそう思います。例えばイスラエルのBCのエージェントとしては、みんなスタートアップたちが、平和を変えたいと言います。イスラエルでもアメリカでも同じです。でも、それが本心かどうかがちょっと気になる。

アルゴリズムを使えば、いろいろできます。でも今回のスタートアップたちは本当に、普通の人たちの生活を変えることができます。それが一番大事です。そこからスタートアップたちがかわいそう。なぜかと言えば、イスラエルのBCは段階的にいくと、本当にスタートアップが世界を変えることができるから。だからこのスタートアップたちも、手伝う私たちもプロモーションになって手伝えます。本当にこのスタートアップたちは世界を変えることができます。

そしてイスラエルのことわざで「一人の世界を変えたら、それは世界を変える価値になる」があります。英語で言ったら「If you change one person’s life, you change whole world」それが基本です。そこから始めないと私たちの世界を変えられない。

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