2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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平将明氏(以下、平):例えば、なにか、「これならイケる」と感じる時。このテクノロジーとか、この新しいアイデアならビジネスになる、と。日本の農業も変えることができるというのは、それは大学にいても、なかなか思い付かないんじゃないの? それは、どういうきっかけで起業までいったの?
大社一樹氏(以下、大社):日本に帰ってきてからも「農業がやりたい」って、いろんな人に話してたんです。それで、共同で設立した代表の技術者に出会いまして、すぐにやることに決めました。
平:でも農業ってさ、俺、国家戦略特区とか規制改革の世界でやっていると、農地って、農家の人しか持てないじゃない。
大社:はい。
平:それで、参入しようっていうのもすごく難しいよね。あなたのお父さんが農家だったら、農地を持っていればやりやすいっていうけど。外からの参入は難しいけど、それは大丈夫なんですか? どういうかたちで?
大社:難しかったです。
平:難しいよなぁ。
大社:なので、紹介してもらった知り合いの農家さんのところで修業したりして。
大澤咲希氏(以下、大澤):それは、何歳のときにしたんですか?
大社:それは大学生のときです。それで、農地を正当に借りることができて、始められました。
平:今、借りてるんだよね。所有はなかなかできない。
生田よしかつ氏(以下、生田):あれ、借りるのだって大変なんだよな? 農業委員会とかナントカ、通すわけだろ?
大社:はい。
生田:めんどくせぇよな。
平:これはね、僕はここはおかしいと思っていて。
日本の仕組みをね。農家だからいいけど、農家じゃないとダメですよって言うと、自分たちのコミュニティで、「こいつはいい奴だから、貸してやるよ」はちょっと違うんじゃないかなぁと。漁業でも農業でもそうだよね。
生田:漁業でも、もろそうだよ。漁業権なんか、もろにそうだもの。
平:なかなか大変だと思いますけど。そこで、実際に借りて、新しい農業をやろうと思ったんですよね? アメリカの農業と日本の農業を比べて、ぜんぜん違う。たぶん生産性なんかもぜんぜん違う。じゃあ、どういう農業をやっているんですか?
大社:気付いたのは、アメリカの強いところは広大な土地なんです。そこで適当なものを作っても、たくさん採れるので、アメリカではそれでよかったんです。
ただ、日本にある武器はなにかと思ったら、広さはない。ただ、水田がある。あとは、綺麗な水です。
生田:なるほど。
大社:この水田と綺麗な水を、なんとか武器に戦えないかなと考えて。水田を活用した、水耕栽培を考えました。
生田:なんで水田を活用して米を作らなかったの? 普通だったらさ、水田が余ってる・活用するんだったら、米を作るんじゃないか?
大社:米はなかなか儲からないんです。
生田:なるほど! 正直でよろしい(笑)。
平:これはさ、画期的ですよね。これ、ちょっとなんのパネルが出てるのか、僕自身知らない。あ、全部出てますね。
なにを作るんですか? 水耕栽培で。
大社:葉物野菜なんですけど。現在は、リーフレタスを作っております。
平:このイメージですよね。ちょっと説明してもらっていいですかね? 水田を使って、野菜を作る。大丈夫ですよ。優秀なカメラマンがちゃんとフォーカスするので。
大澤:水田って、もともと米を作るものなんですか?
大社:そうですね(笑)。
平:そこからかよ!
生田:すみません、今のカットしてください。生放送ですけどー。
大澤:やばい、やばい。
大澤:野菜はなにで作るものですか?
大社:野菜はもともと畑で作る(笑)。
生田:黙れ、咲希。お前の出番じゃねぇぞ(笑)。
大澤:すみません(笑)。
大社:これが、普通の水田なんです。水田に水が溜まっていて、そこに発砲スチロールが浮いていて、ここで野菜を生産することができる技術なんです。
生田:ほ~。
平:ちょっと解説しますと、水田は稲、野菜は基本、土。ね?
大澤:あ~、わかりました! そうだ、そうだ。
平:なんにもない野っ原に作っているのが、外で作ってるのが露地栽培。でも、温度が不安定だったりするので、ビニールハウスやラスハウスで作ったりします。あと、土じゃなくて、水耕栽培でやりますっていうのも、もっぱらハウスの中が多くて、例えば、貝割れ大根とか三つ葉とかさ。
大澤:あ~、好き。
平:こういうのは、水耕栽培。最近、こういうレタスも出てきた。あともう1つ違うところで、けっこうこれ儲かるんだ。キノコ。
大澤:あ~、フランケンシュタイン。
生田:キノコ、得意じゃん。
平:得意です。得意です。エリンギとか。これはね、すごく高いんですよ、付加価値が。
平:ここがすごいのは、私も初めて見たけど、水耕っていうと普通は(ビニール)ハウスなわけよ。
生田:そうだよね。俺もハウスじゃねぇなと思った。
平:ハウスじゃなくて、オープンエアーなんです。外でやってることと、水田を使うというのがミソで。私的に言わせると、ものすごく着眼点がいいです。
大澤:お~!
生田:俺なんか素人だけどさ、この葉っぱものが屋外は、歩留まり悪いんじゃないの? できる感じの。
大社:歩留まりは悪くないです。従来の土よりも、むしろよく採れます。
生田:そうなの!? だって、外からのアレがあるんじゃないの? あと、日照りとかさ。
大社:天候。えぇ、そうですね。雨が続くと、レタスが採れないというのがよくあるんですけども。あれの原因は太陽が足りないからではなくて、雨がずっと降ってると、土がずっと湿ってるんですね。土がずっと湿っていて、土の中の酸素が足りなくなっちゃうんです。
大澤:もともと水だから?
大社:そうなんです。
平:これでコントロールしているわけね。水を。
大社:そうなんです。それで、菌が土に繁殖して、腐っちゃったりとかがあったんですけど。これはもう、常に水が流れているので大丈夫です。
生田:なるほど、そうか!
大澤:すごーい!
生田:なんだよ、お前(笑)。
大澤:わかったんです!
平:今、理解したのね。理解したリアクションね(笑)。
これは、ビジネス的に見ると、なにが優れているかと言うと、まず、水耕の常識はさ、ハウスっていうか、屋内なんですよね。これ見ると、無いから、イニシャルコストがかからない。外物、上物ね。
生田:初期投資はいくらもいらないもんな。それで、発砲スチロールだろ?
大社:そうです。
生田:発砲なんて、魚河岸に行きゃ拾えるよ。
大社:(笑)。
平:もともと水田だったところに浮かすだけだから、追加投資がほとんどいらなくて、この仕組みだけだな。でも、これはもともと水田であるしな。
生田:それ、どこかで見たことがある図だね。豊洲市場の地下水管理システムみたいな(笑)。なんかそんな感じでね、見ちゃうという。嫌だな、俺(笑)。
平:そうすると、イニシャルがかからなくて。もともとあるところを借りるから、ランニングが安くて、それで収量が高ければいいですね、というのと。
先ほども言ったように、水田で稲作るよりも米よりも野菜のほうが儲かるんですよ。ビジネスモデルとしては。一方で、野菜のほうが手間かかるんですよ。米って、田植えのときは忙しいし、収穫のときは忙しいけど。
生田:あとはほっぽらかし(放ったらかし)だもんね。
平:ほっぽらかしとは言わないけど(笑)。やっぱり手間かかるんですよ。そういった意味では、今ある水田が増えてくところに、「じゃあ、野菜作りましょう」「でも、俺、米作ってるからさ」って。米を作ってる人が野菜を作るって、ものすごく抵抗があるのね。
生田:あぁ、そうなんだ。
平:だけど、今ある水田でできて、たぶんフロートを陸に上げて収穫するから、けっこう楽に。そういうことでしょ?
大社:そういうことです。
生田:手間もかかんねぇな。
大澤:すごい~。
平:ビジネスモデルとしては、僕はすごいなと。
生田:これは、やっぱり米が儲かるなって言って、すぐ稲作に変えることもできるんだもんな。
大社:すぐに辞められます。
生田:そうだよね。
平:じゃあ、米作ろうと思ったら、また米に戻せるから、ケース変更がいらないってことだね。
生田:すごいじゃないか! ところでさ、米が儲かるような仕組みって作れないの? お百姓さんが。米のほうが大事だよ、俺(笑)。
平:米はですね、儲かる仕組みは、結局ね、日本の国内マーケットだけ見てたから、たくさんできると値段が下がるよね。でも今、日本食ブームで世界中で「日本食!」ってなってきていて。中国の観光客なんかも、10万円の炊飯器を持って帰るようになりました。
金持ちの数は、日本より中国のほうが多いし、ASEANも周りの金持ちいっぱいいるので。彼らが、チャーハンとお粥の世界から炊飯の世界に入ってきた。10万円にふさわしい米。例えば、コーヒーメーカーだって、いいの買ったらいい豆使うでしょ?
生田:そうだよな。そらそうだ。
平:それは、外需を取りに行く政策と高付加価値化なんですよ。今はどっちかと言うと、国内の内需だけ見てるのと、外から入ってくるのをいかにブロックするかっていう政策を転換をして、米を高付加価値化して、攻めにしていく。
そのあと大事なのは、ブランド化。日本の米はおいしい。あれはやっぱり土と気候と水なので。それとあと、技術でしょ。それをやっていくことによって、僕は、米は儲かると思いますよ。
大澤:米を出していけば、逆に儲かるようになるってことですね。
平:海外にね。そんなことを言ってね、自由貿易化するってことは、出るだけじゃなくて、中にも入ってくるから。そこをディフェンスっていうんだけど、たぶん中国の米を買わないと思うよね。日本の消費者は。
生田:いや買わぇよ、俺は。買わない、買わない。
平:だから、あまり心配することはなくて、加工用はね。中国の米とか入ってくるけど。でも、加工用はいいんじゃないの? 海外のやつで。
生田:いいんじゃない。
平:日本は、やっぱり高付加価値の生食のやつの、炊飯の世界に入っていくべきで、そしたら、米も売れるので。だから、今、飼料用米とかね、儲からないから手間かからない飼料用米作ろうという動きがあるんだけど、俺は、飼料用米にいくんだったら、こういうふうに野菜に転作するか、高付加価値化にいくべきだと思います。
生田:そうだよね。休耕水田にしちゃってさ、水枯らしちゃって死んじゃうわけでしょ。田んぼっていうのはね。やっぱり水を張って、いつもなにかやってなきゃいけないんだよね。あれね。
大社:そうです。
生田:そうだよね。
大澤:じゃあ、もう野菜を作っちゃえばいい。
生田:野菜を作ったら保つわけだよ。素晴らしい。
(拍手)
平:これは、水田は水田としか使えませんと、ほかには使えません。でも、米を作っても儲かりませんと言って、みんな辞め始めるんだけど。まず、こういう仕組みとか。あと、この間お話した、錦鯉特区を作りたい。クールジャパン特区の。
生田:あ~、言ってた、言ってた(笑)。
平:新潟県の小千谷市は、錦鯉を作って輸出してるのね。今。ヨーロッパで大流行。
生田:すっげー売れるんだよな、あれな!
平:ヨーロッパで大ブームになると、アジアの成金が着いてくるんですよ。
生田:おぉ(笑)。
平:鯉の農家は生産を拡大したい。一方で、農家の人たちは、水田余っっちゃってる。水田を貸したい人と借りたい人がいるんだけど、農地法とか農振法の関係があってできないんで、そこを特区にしようと思ってるのね。
そうすると、水田のまま、ある程度大きくなった鯉を、そこで放せるわけ。だから、こういうふうに、水田のまま、いざとなったら、いつでも米づくりに戻れるようなかたちで、レタスを作ったり、錦鯉を育てたりっていうのは、フレキシブルだから、ものすごくいいと思います。
生田:錦鯉とかいうと、またちょっと面倒くさい部分が出てくるんだろうけど、これだったらなにも問題ないもんな。そのまま使えるの?
大社:そのまま使えます。
生田:そのまま。じゃあ、明日からやるよって、フロート持って来て、パッとやればできちゃうんだ?
大社:できます。
生田:へー!
大澤:すごーい! 農家の息子さんが思い付いたならわかるけど、ただ農業ちょっと気になっちゃったんだ、それで起業したいんだって言ってて。これにたどり着くのが、そこがすごいと思いました! 同じ慶応生なわけですよね。昔は。
生田:そうだね。
平:あと、これだけは紹介したいっていうパネルを選んでもらいたいと思いますが。ただね、今ね、屋内のほうは、ものすごくまた進んでて。
生田:今、ビルで水耕栽培してるって言うじゃん。
平:そう、ビルで水耕栽培やってるんだけど、いわゆる、LEDがものすごく進化してるので。光合成しやすいLEDをやりながら、屋内だと無菌でできるから、洗わないでいいわけよ。洗わないでいいとなにができるか。カット野菜って、菌のコントロールが一番大事なわけよ。
その菌を殺すために薬剤に浸けるんだけど、あまり浸けるとしなってなっちゃう。今は、屋内のほうのやつは、菌をコントロールして、そのままカットできますよって言うと、高いの買っても、そこで洗浄する工程が丸々省ける。そういう世界になってるの。
生田:それは、いいなぁ。
平:だから、こっちは屋外だから。菌のコントロールのところをどうするかっていうのは、残るかな。
生田:だけど正直言って、ビルの中で作ったのは、あまり食いたくねぇわな。俺は。
平:ただね、今ね、ちょっと技術が違うんだけど。俺の情報は10年くらい前なんだけど、俺やってたのは。やっぱりね、土耕と水耕でいくと、フレーバーは、土耕のほうが強いな。
生田:あ~、そうだよね~。やっぱりコクがあるんだよな。土耕のほうが。
平:実際問題。でも、水耕もすごく、今、これ、リーフレタスだけど、最近、結球のレタスも水耕でできるようになってきたので。
生田:あのさ、ビルの中でやって、LEDを照らして育ててっていうのあるじゃない。あれは、やっぱ抵抗あるよな。
平:だからね、こういう技術が出てきたから、俺もちょっと悩んでたんだけど、農地って安いわけですよ。農地の上にああいう工場を建てたって、そこからレタスが出てくるんだから、それは農地だろうと。
生田:なるほど、理屈はな(笑)。
平:農地のまま建てられれば、イニシャルコストが安くなるし、ランニングコストが安くなる。だから、安いレタスが出てくると思ったんだけど。農業をやってる人から見ると、農地にコンクリートを打つってあり得ないわけ。
でも彼のやつは、水田を水田のままやるから、農業をやってる土が命だと思ってる人たちも、水田が命だと思っている人たちも、ハードルは低いわな。だから、こっちのほうが広がる可能性がある。
生田:いやいや、本当そう思うわ。
大澤:しかも、太陽を浴びてるわけですもんね。なんか、そこに良さって感じられて。太陽浴びてる野菜、みたいな。
生田:だからよ、色の黒いやつでも焼けサロのやつって、わかるじゃん。「お前、絶対、焼けサロだよね!」みたいなね。
大澤:日サロ!
生田:え、日サロか、焼けサロじゃない(笑)。日サロだろって、わかるじゃない。天然で焼けてるやつとさ。だからね、なんかね、俺、野菜も不健康なように思っちゃうの。日サロね(笑)。
平:これは日本に合ってるイノベーションだな。
生田:そうだね! いつでも水田で、また稲作ができるっていうのがいいじゃない。
大社:はい。
生田:これ、たぶん1回ね、無理やり畑に変えちゃったりすると、それを水田にするって言ったら、えらい手間と時間がかかるんだよな。何年かおいとかなきゃいけないとかってあるんだもんな。
大社:そうです。
生田:は~、あんたすごいねぇ!
平:これはおもしろいね。
大澤:慶応の誇りですわ!
平:俺たちはなかなかね、厳しいからさ。この手の、生鮮のことに関してさ(笑)。
大澤:前回とかも、厳しくするぞとかって、首洗って待ってろとか言ってたんですよ。
平:でもおもしろいな。
生田:おもしろい、おもしろい。
平:トマトいきたいな。そのうち。
大澤:トマト、好き~。
平:レタスは、最初はいいんですよ。外食とかサンドイッチに使うので、業務用で市場を通さずボコっといけるわけですよ。それと、価格と数量はだいたい固まるから、契約しやすいんだよね。
でも、実は、トマトのほうが付加価値高いから。レタスよりも。
生田:儲かるよな。トマトのほうがな。トマトのほうが儲かるんだろ?
大社:はい。儲かることもあると思います。
生田:儲かることもあると思います(笑)。無難に答えやがって、コノヤロウ(笑)。
平:あと、なにか言いたいことありますか? パネル使って。
大社:ちょっといいですか。話、戻っちゃいます。
平:いいよ。どうぞ、どうぞ。
大社:ここなんです。
「やはりお米をやっても、なかなか儲からないんですよね」というのが現状でして。これ、1反、10アールなので、1,000平米なんですけど。1,000平米、米を生産しても、売上が10万円に届かないくらいなんです。そこが日本の平均。
そこからいろんな経費を引くと、1,000平米やっても、6,000円くらいしか利益が出ないです。補助金頼りなところがありまして。これだと、若い人は誰もこんなのやろうとしないんですよね。
生田:やらないよな。
大社:という結果、減反というのもあるんですけど。米がピークはこれだけあったのに、今って、ピークの3分の2くらいしか水田が使われてないんですよ。
ただ水田って、いろんな働きがあって、洪水を止めたり、土砂崩れを止めたりっていう大事な働きがあるんですけど。なにか儲かる方法で活用しないと、さらに日本は自然災害が増える国になっちゃうんじゃないかなって考えてます。
大澤:そこにも結びつくんだ!
生田:なるほど~。そこまで見てたの。すごいな。
平:水田は多面的な機能を持っているので、その多面的な機能のために維持をするっていう、国もそういう政策に転換していますね。
大社:というところです。なので、水田を、ぜひ活用したいということを、めちゃくちゃ考えてます。
平:水田活用っておもしろいよなぁ。
大澤:おもしろい。
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