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ネットメディアをもっと面白くするために~リクルート、C Channel、Googleが変える未来(全4記事)

「おもしろいものを作る人がどこにいるかによって産業は変わる」C Channel森川氏がメディアの未来を語る

2016年11月23日に行われた「G1カレッジ2016」。メディア業界のキーパーソン4名をパネリストに迎えた「ネットメディアをもっと面白くするために~リクルート、C Channel、Googleが変える未来」では、インターネット、ソーシャル、分散型と続くメディア業界の変化と、そこから見える未来のメディアのあり方についてトークが繰り広げられました。

メディア・文化の抱える問題を克服するために

高宮慎一氏(以下、高宮):みなさんおはようございます!

会場:おはようございます!

高宮:おお、すごい。だいたい、僕らがふだん登壇するようなおじさん、おばさんが多いセッションだとなかなか元気な「おはようございます」って返ってこないんですけど。

今日は、けっこう難しいテーマで、「メディア・文化の抱える問題を克服するためのビジョンと選択」です。これをここにいらっしゃる豪華パネリストのみなさまに語っていただきたいと思います。

そもそもメディアや文化を語る上で、僕らの方が実は最先端についていけてない話もあるかもしれないので、ぜひ最後にQAのセッションを設けたいと思います。そこで「おっちゃんは、ああ言ってるけど、それ間違ってる! 若者のメディア見てない!」とか「僕らのメディアはそんなんじゃない」とかあったら、ぜひツッコミを入れていただければと思います。

それでは、さっそくセッションに入らさせていただきたいです。まずはパネリストのみなさんに簡単に自己紹介と、とくにどういうコンテキストでメディアと接点があるか、文化と接点があるかを30秒くらいでお願いできればと思います。

では、岩村さんからお願いします。

岩村水樹氏(以下、岩村):みなさん、おはようございます!

会場:おはようございます!

岩村:ああすごい(笑)。Googleの岩村と申します。ちょっと説明っぽいタイトルで申し訳なかったんですけど。私はGoogleJapanに入社して、2017年で10年になります。一応やっていることは、日本のマーケティングとアジア・パシフィックのマーケティングを両方見ているということになっています。

日本のマーケティング……というかGoogleのマーケティングは2つ側面があります。1つは自社製品のマーケティングをするという観点。あともう1つ、Googleというのはメディアプラットフォームもあるので、そちらのB to Bのマーケティングの両方を見ています。

プラス、このマーケティングの中に、Googleのブランドとしていったいどうやって社会に貢献できるのか。Google全体が常にソーシャル・グッドを考えている企業なんですけど、具体的に通常のビジネス活動以外で、どういったかたちでGoogleが社会に貢献できるのか、世界の課題を解決することができるのかといった観点で、カルチャーに通じるようなプログラムをやっています。

なので、今日はみなさんといろんなお話ができるのを楽しみにしています。

(会場拍手)

メディアで起こっている変化

森川亮(以下、森川):こんにちは。C Channel森川です。僕はもともとは日本テレビにいまして、当時インターネットとか衛星放送とか、あとは国際放送というカテゴリの事業の立ち上げをやっていました。その後、SONYに移ってからTOYOTAさんと東急さんとジョイントベンチャーを作りまして。そこは、ブロードバンドの動画配信みたいな事業をやっていました。

その後は前職で、まずはオンラインゲームの事業をやりまして。そこから検索をやって、LINEを生んでですね、2015年からC CHANNELという動画のメディアをやっています。

もともと日本テレビにいるときに、「メディア産業を変えたいな」と思ってまして。海外に出ているメディアブランドって、アメリカの企業以外ないんですね。当時はMTVやCNNに遊びに行って、「こういう事業をやって日本の文化を世界に発信したいな」と、今日本からやっているんですけど、その後、韓国、中国、タイ、インドネシア、台湾でやっています。まずはアジアでナンバー1のメディアを作りたいと思っています。

よろしくお願いします。

(会場拍手)

山口文洋氏(以下、山口):みなさんおはようございます。リクルートマーケティングパートナーズの山口と申します。

弊社も含めてリクルートという会社は約57年間、日本のみなさんの生活に役立つようなインターネットメディアとか、過去で言うと出版メディアを作ってきました。

私が管轄するところで言うと、例えば結婚する「ゼクシィ」、もしくは安心・安全で車を買えるようにした中古車の「カーセンサー」というメディアとか。昨今で言うと、教育を進化させたいという意味での「スタディサプリ」をチャレンジしています。

常にメディアを作る前に日本の文化というかカルチャーと、「結婚式を変えていきたい」「車の購入シーンを変えたい」「教育の学ぶシーンを変えていきたい」というものをセットで挑戦していく会社なのかなと思っています。今日はそういった自分がやっている視点から、みなさんと楽しい議論をできればいいなと思っています。よろしくお願いします。

(会場拍手)

高宮:はい。では本題の方に入りたいと思います。メディアは今、いろんな変化が起きていると思います。まず、インターネットが出てきて、ソーシャルが出てきて、さらには分散型メディアが出てきて。インフルエンサーが力を持つとか既存メディアが「自分たちが思ってたことが違った、トランプ当選しないと思っていたら当選した!」みたいなことが起こっていると思うんですが、それぞれ立場で見られたときに、メディアで起こっている変化ってどういうことなのか。

「事象としてはこれが起こっているけど、その裏にはメディアのこういう変化があるんだとかそれによってこんな問題が起こってきている」ということを教えていただければと思います。

「全部」というこだわりは捨てる

まずは、山口さんの方から。「リクルートという本当に既存メディアのジャイアント」としていろんな部分を見られていると思いますし、教育メディアとしても見られていると思うので、メディアで起こっている変化と、それによって出てきている問題を教えてください。

山口:リクルートという会社は、今もずっとメディアを作り続けているんです。実はこの5年10年でできたSNSとかCGM……要するに消費者が自らの情報を発信して口コミやレビューを書いていくことに積極的に取り組んでいないんですね。

時代の波に乗り遅れてしまったと言うのもあるんですけど、一方で、僕らが追求しているのは、Googleさんの世界で無限にある中で……。例えば僕なんかは、「ライフイベント」という、人生に1回とか2回しかない結婚、もしくは車を買うとか、教育でどこの学校に進学するといったときに、「本当に消費者の声だけで作れるのか」「なかなか難しいんじゃないかな」と思っていて。

主従の主でいくと、人生に数度しかない大きな意思決定については、散在する情報の中で、「ここに行けば正しい情報透明な状況がある」という情報作りに、僕らのレゾンデートルがあると思って突き詰めています。

最近ですと、主従の従で、消費者の声も実は取り入れていくかたちで、ゼクシィを見てもなにを見ても口コミ機能は出ているんです。しかし、これはあくまで口コミで織りなす世界ではなく、主でしっかりとした安心・安全な情報を作った上で、そこに消費者の情報を乗っけていくメディアの作り方をすごく大事にしています。

高宮:なるほど。僕らわりと上の世代のもの見方とすると、消費者だけの情報だと有象無象が混合して、信頼できないといった話はあるのかもしれません。一方で、若者の声だと、既存のメディアがプッシュで発信する情報と、テレビで出てくる情報は「メディアの恣意性が入っていて嘘くさい」「信じられるのはソーシャルだけだ」「TwitterとかInstagramの方が、隣の人の意見の方が信じられる」みたいなのも出てきていると思うんです。そこの葛藤に対して、もしくは若者に対して、いかに専門家の意見を正しく伝えていくのか。どうお考えですか?

山口:そこに対しては僕らは葛藤があるのかな、と思っていて。昔で言うと、例えばゼクシィはすべての結婚情報が見つかるようなかたちで使われてきました。でも、最近は結婚式も、インスタを含めて写真のイメージとか口コミサイトで花嫁になる方もいるので、実は使い方が分散化しているんですよね。

ただ僕、その中でもいつも考えているのは、「じゃあゼクシィがなくなったらいいんでしょうか」と。ゼクシィだけではもう情報の意思決定ができない世界になっていくかもしれないと思う一方、それ以外の口コミだけでユーザーは情報を集めて意思決定していけるのかな、と。そういうところに対して、僕らの存在価値があると思っています。

いつもそこを「全部僕らができたらいいなぁ」と思いながらも、最近はその「全部」というこだわりは捨てて、一部でも僕らが絶対に使われていくところを突き詰めていかなきゃいけないというのをやっています。

結局、おもしろいものを見るだけ

高宮:次は森川さんにおうかがいしたいんですが。

森川さんは今まで、LINEやC Channnelを作られて、わりとその変化の波をポジティブにうまくとらえられているかなと思うんです。今、メディアで起こっている変化についてどう思われます? それに伴う問題点について、ご認識されていますか?

森川:そうですね、メディア事業をずっとやってきていますので。メディアって、もともとは政治のプロパガンダとして生まれたところがあります。メディアは特権階級だったんですよね。今でもアジアの国々ではメディア事業に規制があって、外資の規制もいろいろあるんですよね。

ただ、だんだんデジタル化とか多チャンネル化とか、そういう中でメディアの選択肢が増えてくることが1つあったのと、いわゆるインターネットの世界も昔はポータルサイトがあって、そこからGoogleさん……検索が出てきて、コンテンツに直接アクセスできるようになっています。

さらにソーシャルメディアになると、タイムラインの中に自分の友達が発信する情報が出てきて、選択肢が増えれば増えるほど便利かなと思いきや、先ほどの話と一緒なんですけど、一方で信用できないところも出てきた。

ソーシャルメディアもそうなんですけど、Facebookの世代って、多くの人と繋がることによって情報が集まると思っていたんです。しかし、今はむしろSnapchatみたいに「なるべく多くの人と繋がりたくない」「信頼できる数人とだけ繋がっていればいい」と、ちょっと変わってきています。

おそらく、政治の世界の民主化と同じように、全員が入ってくるとくだらない人たちも増えて、多数決になると結局は答えを間違う、みたいなこともあります。現実としては、自分が信じられる数人の情報だけを信じて楽しむ状況になってきていると思うんですよね。

これがいいか悪いかはちょっと難しくて。例えば、セレクトショップと百貨店と、どちらが自分にとって価値があるんだろうかと考えると、もちろん品揃えが多ければ多いほど一般的な概念としてはいいはずなんです。しかし、とくに若い人たちは情報疲れしているので、「情報がありすぎてお腹いっぱいだから、むしろ一番いいものを選んでください」みたいになっている。

その中ではたぶん、Chatbot的なAI、リコメンドになると思うんですけど、これは止めようがない。ただ僕のここ最近の研究によると、人間は便利になればなるほど退化するところがあるので、むしろ不便さと戦ってほしいなと思うんですけどね(笑)。

高宮:セレクトショップが、バイヤーさんのセンスがいいかどうかわかるのは、一般的に充実した品揃え百貨店があって初めて相対化できる。百貨店があって、それじゃ満足できないから「セレクトショップってすごいな」と思うわけですね。

その中で、メディアで見ると旧来のマスメディア、「テレビは年寄りしか見てない」「若者はスマホしか見ていない」みたいな感じになってきて、どんどん相対的には地盤沈下しているとも言えます。

このままマスメディアがなくなって、分散多チャンネルメディアだけが残ると思われます? それとも、また新たなマスメディアのかたちが出てくると思われます?

森川:ちょうど多チャンネル化が進んだ時に僕はメディア産業にいて、当時言われたのは「アメリカと同じように地上波をどんどん見なくなって、専門チャンネルが伸びる」だったんですよね。

ただ、現実的にはそうなってはいなくて。それがシステムの問題とみんなは言うんですけど、実はそうじゃなくて、結局、おもしろいものをただ見るだけなんですよね。おもしろいものというのはなにかというと、「おもしろいものを作りたい人が作る、おもしろいものを作る人がどこにいるかによって産業は変わる」、そういうことかなと思っています。

そういう意味だと、昔は地上波におもしろいものを作りたい人がいっぱいいて、おもしろい人がいておもしろいものを作れる環境だったんです。でも最近メディア企業からのメディア叩きもすごい。

例えば、ちょっと事故があったりすると叩かれたりとか。あとは一般消費者の目が厳しくて、「刑事もので犯人がシートベルトをしないと逃げられない」とか。悪い役の人も、「煙草を吸って捨てるとだめだからちゃんと喫煙所で吸う」みたいな(笑)。

そうすると、こう……なんでしょうね(笑)。おもしろくないんですよね。そういうところに、制作者も疲れてしまっている。最近はテレビ局に入る人も、大手銀行と一緒に受けてどちらを選ぶみたいな、安定志向の人が入っているらしいので。本当にものを作りたい人がそういう会社に行かなくなる傾向があるから、その分おもしろくなくなってるというのはあるかなと思います。

高宮:ありがとうございます。

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