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夏野剛×DMM亀山会長対談(全4記事)

日本人は豊かだけど夢がない? DMM亀山会長が読み解く“先進国の病”の正体

DMM.comグループが運営するオンラインサロンにおいて、同社会長の亀山敬司氏と夏野剛氏の特別対談が行われました。その時の対談内容を抜粋、編集して、4回に分けてお届けします。第2回目は、先進国全体に広がる“閉塞感”の正体や今後の世界経済の行方について語り合いました。「夏野剛オンラインサロン~Salon de Natsuno~」

トランプ大統領が引き出した国民の本音

亀山敬司氏(以下、亀山):今の反トランプの人は、トランプになにか言われたらすぐに反論して、罵り合って、憎しみ合ってる。

夏野剛氏(以下、夏野):叩かれたら嫌だから、叩き返す。

亀山:そうそう。自分を守るためには仕方ないんだけど、お互いに殴り合っているうちに、いつの間にやらダークサイドに取り込まれていってる。穏やかだった人までもね。『スターウォーズ』でもそんなシーンがあったよね。アメリカ人ならもう一度観てほしいなあ。

なんでトランプがウケたかっていうと、本音の引き出し方がうまいんだよね。自ら本音を言ってみんなの本音を引き出す。

でも、人の本音って2通りあって。「自分だけが得すれば周りなんかどうでもいい」みたいな本音もあるけど、「みんなが幸せになってほしい」っていう優しい本音もあるよね。どちらも本音なんだろうけど、やっぱり前者のほうが引き出しやすいからね。

夏野:ですね。そちらのほうが、すぐに引き出せる。

亀山:でも、だからこそ、政治家や小説家は、後者の本音を多く語らないといけないんじゃないかな。

夏野:確かに。

亀山:「あいつが悪いから俺が不幸なんだ」とか、「あいつらさえいなければ良くなる」とか、不満のある人たちに、気持ちいい言葉を言って焚き付ける。そのへんは極右とかもうまいよね。

夏野:うまいですよね(笑)。まあ、感情がそのまま結果になったってことなんでしょうけど、そのほうが心情を揺さぶりやすいですから。

亀山:みんな、わかりやすい安易な言葉に乗っかっている。気持ちにゆとりのある時なら世界平和とかを考えたりするんだろうけど、今はみんなの気持ちにゆとりないから、乗っかりやすい本音に乗っかる。

夏野:実は、ものすごくゆとりがあるんですけどね……。

亀山:そう。アメリカ経済は 本当は別に悪くなってないんだけど、自分以外の周りの奴が伸びてて、自分だけが伸びてないってだけで悪く感じる。

夏野:う~ん……根深いですね~。

先進国の病の正体

亀山:今の俺たちって、自分の親父の世代に比べたら、ぜんぜん豊かなんだ。でも、昭和に比べると、すごく夢がない。

夏野:そうなんですよね、夢がないように感じるんですよ。

亀山:すごい閉塞感があって、未来にも不安しかない。でも生まれた時から今までも、昔より他の国よりもぜんぜん豊かだからね。

夏野:豊かですよね。

亀山:でも、人間ってそんなふうにできなくて。やっぱり今よりも、来年とか再来年のほうが良いと思えることがすごく大事で。それで言うと、成長率の低い先進国全体がその病にかかっている。

夏野:まさに。おっしゃるとおり。どの政治評論家よりも一番わかりやすい説明をしてくれますね、亀山さん。

亀山:アフリカとか、ミャンマーとか、今から伸びますってところは、まだ目が生き生きしてるからね。

夏野:一方で、ダボス会議でスピーチしていたイギリスのメイ首相、この人のスピーチを聞いているとけっこうおもしろいんです。

簡単に言ってしまうと、「EUのときより、もっとEU以外にも全部開かれた国にしちゃうぞ」って宣言しちゃったんですよ。

亀山:EU以外にも開かれた?

夏野:要は、EUのときよりもっと開かれた関係を世界各国と結ぶと。例えば、アメリカとほとんど自由貿易にしちゃうとか。

亀山:そんなのになるかな?

夏野:なりますよ。人さえ入れなければ、あの人たちは満足だから。

亀山:あ~、そっかそっか。

夏野:つまり、国民投票の結果を逆手にとっているんですね。もしかしたら、この人たちは超頭が良いんじゃないかって、エリート軍団の逆襲かもって思ってしまうんです。

アメリカ・中国が憧れる日本の特異性

亀山:トランプを非難する日本人は多いけど、トランプからすると日本はすごく理想的な形なんじゃないかと思うんだ。

だって、日本ほど移民がいなくて閉鎖的な国ってないよね。地理的にも海に囲まれてるから、壁もいらないからね。

夏野:アメリカのシリコンバレーで起業している人の70パーセントが海外から来た人。それで成り立っているということがあるので、白人系のなかには、その事実を成功として捉えていない人たちは多い。

亀山:やっぱり、成功は白人だけにしたいよね。日本人は日本人に勝ってほしいっていうのと同じ。

夏野:実はこのままいくと20年くらいで、白人系が50パーセントを切るんです。というのも、スパニッシュ人口が増加する勢いがスゴイですから。

亀山:そうなったらもう多数派じゃなくなる。それは困るってわけか。

夏野:それが、ベースにありますね。

亀山:また一方でさ、中国なんかは、日本の自民党みたいに将来なりたいって思ってるんじゃない?「一党独裁なんだけど、民主主義だよ」みたいな(笑)。

夏野:思ってる、思ってる。間違いなく思ってますね。

亀山:だから、アメリカでも中国でも政治家の人から見れば、日本は憧れの国だね。日本人からしたら意外なところを憧れられている状態。

夏野:まあそうですね。だから、いわゆる日本のネトウヨみたいな人が、ここからもっと元気が出ちゃうのでは。

亀山:これから怖いのは、日本人は人種とか差別とか、そういうところからけっこう無縁で来てること。

夏野:あんまりそこが社会問題にならずに来てしまった。

亀山:ならずに来てるから、ぜんぜん自分の身に振りかかってこない感じで世界を見てる。

夏野:自分のことじゃないから、客観的に見て「いやー、トランプってなんかまずいんじゃない?」って(笑)。

亀山:うん、今は「良くないよね」って冷静に言ってるけど、もし、この恵比寿ガーデンプレイスタワーに飛行機が突っ込んて来ただけで、一気に変わってしまうと思うんだよね。

夏野:世論は一気に変わるでしょうね。

亀山:今のところは、海外に自衛隊派遣しても自衛隊の人が死ななかったり、日本でテロらしいテロがなかったり、世界の中でも日本っていうのはすっごい極めてまれに平和な国。でも、だからこそ一瞬で危ういことになるかもと思うんだよ。

そこは今のうちから、みんなが心にとめておかないと。空気の流れは、なかなか変えられないからね。 

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