2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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馬渕邦美氏(以下、馬渕):ありがとうございます。4名の方にお話いただきました。
先ほどから何度かみなさんのお話しの中で話題として出てきましたが、そもそもこのセッションのきっかけの一つは、やはりWELQの問題があって、ここを語らないとたぶん次いかないという感じがします。
すでにみなさんはこの問題に関してご存知だと思いますし、今までけっこう語られているので「WELQ問題とは?」ではなく、WELQ問題を経た上で「これからのメディアやコンテンツはどう変わっていくのか?」についてご意見をうかがいたいです。
順番に……では、武闘派の宮脇さん(笑)。
宮脇淳氏(以下、宮脇):WELQ問題は正直、編集者としては「あんなことあるんだ!」と驚いたんですね。
今、みなさんに伝わらないかもしれないですけども、隣に小林さんがいて、元編集長で、当時私はバイトだったんですね。だから今ものすごい緊張してて、こういうとおこがましいかもしれないんですけど……WELQはメディアに編集長がいなかったのかなという。要するに、WELQもDeNAパレットには10個ぐらいあったんですよね?
馬渕:そうですね。
宮脇:それだけメディアがあって、それぞれ1日何百本って大量に記事あがってたらしいじゃないですか。その記事を、編集長が全部見ていたとは考えづらいですよね。インターンがチェックしていたのかどうかわかりませんし、そもそも編集していたのかも知らないですし。
ただ、例えばうちが作っているコンテンツは全記事、私は見ています。仮に私が見切れないものはデスクを立てていて、担当編集者が必ず原稿を編集しています。編集長格の人が記事を見ていれば、あんなことには絶対ならないはずだったんですよ。
馬渕:なるほど。組織としての問題が大きいという話ですよね。今後それをどう変えていくかがポイントですね。メディアやコンテンツ作りの体制、組織をどう作っていくか。小林さんはそのあたり、どう思われますか?
小林弘人氏(以下、小林):今、宮脇さんがおっしゃられたように、僕もまったく同じことを考えていて。あれって、完全に編集視点がない。今後、あの程度のライティングはAIがやると思うんでライターじゃなくてもいいんですが、ライティングエンジンとグロースハッカーしかいない感じですね。
クオリティの担保とか「どういう方向性にユーザーを導きたいんだ」とか、そういうグランドデザインする人が不在。これって、すごくユーザーをなめてると思いませんか? 「ユーザーにはこんなもん読ませときゃいいや。SEOで上にくれば、紐付いて広告も見せられるし、俺たちだけ儲かればいい」という話じゃないですか。
だから、そこは事業に対するアティチュードが透けていますよね。断言しますが、これはメディアじゃない。SEOのためのテキストミル(工場)です。
先ほども控え室で話してたんですけど、2003年ぐらいにもコンテントミルという、いわゆるSEO狙いのGoogle虐待と呼ばれる手法でつくられた自称メディアがあったんですね。
SEOで上位に上がる、ゴミコンテンツが大量にコピペされて、テキストモーグルとか呼ばれていました。それに対してGoogleはパンダアップデートして……振り落としてきたんですけど。こういったものはいたちごっこなので、またハックされるでしょう。
ただ、そういう記事を粗製乱造していたところは、当時、時価総額が高いアメリカの上場企業とかもあったんですけど。そのあとけっこう落ちましたね。結局、信頼を失ってしまうわけです。
馬渕:先ほど話に出てきましたが、オールアバウトは昔からGoogleと一緒にサイトを立ててきた歴史があります。そういった観点からはどうですか?
江幡:そうですね。うちもそうですが、今現在もサーチは、とくにハウツーのメディアをやるにあたっては、必ず重要なリーチポイントになるんですね。ですから、Googleで1ページ目に出ないと意味がないので、当然、検索上位に出すということは我々も一生懸命やっています。
それを科学的にとらえて、検索のクエリー数とか広告の売上ポテンシャルの多寡等を指標として、展開するコンテンツテーマとかを決める材料にもしておりますから、それはこれからもずっと続いていっていい話だと思います。
また先ほどからおっしゃっているように、メディアなのかプラットフォームなのかという言葉もよく議論される観点ですよね。
昨日もちょうどその件で、某キュレーションメディアの決算発表にて質問で突っ込まれてるとき某社の社長が「うちはプラットフォーマーですので、通報があれば消します」という話を発表されておりました。つまり責任はコンテンツ投稿者にあって場を提供している側にはないと。そこの境がけっこう難しいなと思ってまして。僕らは少なくとも場の提供者も責任を持つべきだと思っているんですね。
ただ、すべて完璧にクオリティコントロールをすることはできないにしても、まずはコンテンツのクオリティに責任を持つ姿勢があって、一応それなりのことはしっかりやって。その上でどうしても漏れたものについては「ちゃんと対処します」はわかるんです。そこはポイントだと思っています。
この12月か1月ぐらいから「量から質への転換のタイミングが来たよね」とよく聞きますね。
馬渕:その話はけっこう出ますよね。
江幡:僕は、それは違うと思っていて。「量と質を両方求める」をずっとやっておりますから、これから先も変わらなくて。それが実現できる構造をインターネットの生態系で作ることが、やっぱりすごく重要だと思うんですね。
でないと、本当に役立つ、人生を豊かにするような、いろんな人に影響を与えるようなメディアやサービスを作らないと、まっとうに社会的に大きなビジネスになっていかないですよね。
今回も十把一絡げように「インターネットのメディアは全部ダメなんだよね」みたいなことを言われるのは非常に心外で、そういわれないように役立つことについて、僕は積極的に取り組んでいきたいと思っています。
馬渕:今、「量と質、両方を求めていきましょう」という話が出ましたが、そのあたりについて小林さんどうですかね?
小林:僕は多様性があっていいと思います。もちろん量と質という考え方もあるんですけれど、逆に1つのテーマにすごく深くフォーカスしていくようなターゲットメディアとか、そういう考え方もあるでしょうし。マネタイズはそれぞれの観点で違ってくるでしょうね。
ただ、メディアって仕入れコストが高いので、いいものを作ろうとしたら薄利多売の労働集約型になるんですよね。仕入れ原価を抑える努力はすごい重要なんですけど、それでもある程度高い。
コツコツやっていたら、成功したというのが普通ですが、最初からメディアが短期で上場や売却益を狙うとかあり得ないんで。よっぽどズルをしないと(笑)。
馬渕:なるほど(笑)。
小林:はい。
(会場笑)
馬渕:楽屋では「メディアは儲かんねぇんだよ」みたいな話がけっこう盛り上がったんですけど(笑)。とはいえ、コンテンツマーケティングってすでに海外ではマーケティングの1つの手法として確立してきていますし、日本も2017年はコンテンツマーケティング元年じゃないかという話がありますよね。
これからコンテンツマーケティングの市場とクライアントからの投資を更に大きくしていくためには一体なにが必要なのか」をお聞きしたいと思います。
石村浩延氏(以下、石村):そうですね。僕はどちらかというと、コンテンツを作る前の段階で……。要はクライアントさんにオウンドメディアをやりたいと言われたり、逆に「やりませんか?」って持ちかける場合もあるんですけども。
オウンドメディアをやる上で「どういう文脈でやりますか?」という問いかけが非常に大事だと思います。
例えば、ある程度名前が知れたブランドであれば、発信するコンテンツの信頼性って、最初にある程度は担保されていると思うんですね。
そうじゃなくて、今普及させたい、もしくはコンテンツをどんどん出さなきゃいけないような中小企業や無名企業の場合、信頼性が最初に担保されているわけではないものの、コンテンツで大企業やブランドに勝てるチャンスがあると思うんですよ。実際、アメリカをはじめとして、海外で注目されてる文脈はそこらへんだと思うんですね。
今回のWELQの問題で浮き彫りになったのが、「コンテンツの量さえ投下すれば、まだ日本の市場は取りにいける」だと思うんですね。検索順位、つまりSEO的な意味で。
その中で質を担保していくこと。この流れを実際に取れるんであればいいんですけど、今のところKPIや費用対効果をひとまず無視してオウンドメディアを運営できる会社って、大資本のところばかりなんですね。
あまり声を大にして言えないんですけど、あるブランドのオウンドメディア担当者さんなんかは、セミナーなどで登壇されたときに「オウンドメディアにKPIを設けないでやってます」と言い切ってしまって。それを鵜呑みするのは非常に良くないです。特に中小企業は。
やはり、マーケティングとして運用していく以上、どこかしらの指標ってちゃんと持っておかないといけないんですね。少なくとも担当部署内では。
それが例えばブランディングに関する指標なのか、それともジェネレーションなのか、ナーチャリングなのか、あとはロイヤル化なのか。それぞれあると思うんですけど。
やっぱりKPI、KGIをしっかりと設定した上で「どれほどの効果だったのか?」を、愚直にやり続ける。「1〜2年やってみよっか」という話ではなくて、計画的にやっていくものなんだと。
広告で集客をやっていく以前に、自分たちのフィールドをしっかり持っているんだと。そこで「KPI、KGIを設定してコミュニケーションしていくんだ」「文脈を作るんだ、繋ぐんだ」という認識でやってかないといけない。企業自体もそのへんに対する理解が進んでいかないと、コンテンツビジネス自体もアメリカみたいに成長しないと思っています。
馬渕氏:楽屋で態度変容のインデックスをオールアバウトがお持ちだってお聞きしたんですけども。
クライアントとお話されるときに、それをもとに「じゃあこのインデックスだったら、ここに投資してみよう」というような、クライアントを口説けるポイントはどのへんなんですか?
江幡氏:そうですね。別に我々だけじゃなくて、これからのコンテンツマーケティングが賑わっていくのが大前提だと思うんですが。
まず一般的に言われている通り、生活者ニーズが多様化している。それに対応する売り手サイドも商品が多様化している。結果、嗜好性の高い商品や、説明が必要なものが増えていると思うんですね。
だから従来のマーケティングのやり方が成り立たなくなっているんです、お客様にちゃんと理解をしていただいたり、興味を持っていただかないと、うまく買ってもらえない。
2000年当初からずっと、こういう前提がすでにあって、大きなメーカーさんの中でも、まずは嗜好性の高い説明型の商品などから、コンテンツマーケ的な手法がマッチする形でお手伝いを重ねてきました。
そのときに「それを知らなかった」「これによって知れた」「こんなものがあるのか」というような定性的なサーベイと、あと1つは、どうしてもインターネットの広告なのでCPM、CPC、CPA、CPOだとか、いくつか時代とともに変化してきた定量指標もありますが。
そこに換算して、単純なCPC、CPMと比べて、「少しここの効率をこれだけかけてもいいよね」というような“にぎり”をクライアントさんとさせていただいた上でやることを地道にやってきました。といってもわかりにくいので、創業期……実はオールアバウトを始めたころ、その比較対象は主に雑誌広告だったんですね。
雑誌広告の実閲読コストを指標として、「その5分の1でさらにリーチの絶対数を増やせますよ」いう具合にして説明をしました。指標がないと売るのは難しいので。
そういうのが共通言語になっていくことで、先ほど言ったような嗜好性の高い商材の広告マーケットに態度変容効果を共通の指標として提供していけるようにしていきたいと努力しています。そうなればコンテンツマーケティングはもっと広がっていくと思います。
馬渕:なるほど。
コンテンツマーケティングの議論をメディアの方としてると、よくあるのが、「物とか商品はすごく売りやすいんだけど、ブランドアライアンスを軸にしたものは非常に売りくい」。営業の方だと「どこで売っていっていいかよくわからない」という話をよくされるんですけど。小林さんのところはたくさんメディアをお持ちですが、どうやって解決されてるんですか?
小林氏:メディアってL字カーブだと僕は読んでるんですよね。普段はすごく低調でも、ある日突然ドカンって跳ねるときがあるんですね。そこまで我慢できるか否か。最初の初期投資に対しての見返りを企業は求めますが、すぐにリターンがあるほど単純なものではない。
その場合、僕はスマートKPIって呼んでるんですけど。それをちょっとずつ達成させてくんですね。でも「1,000万円使ったから売上1億円くるよな」など、そういうのは無理なんですよ。スマートじゃないんですよ。
だからもう1つ、態度変容。小さな態度変容の積み重ねが大事だと思っていて、「そのスマートKPIの設定をどうするか」「ナーチャリングに使うのか、ダイレクトにいきなり商品を買ってもらいたいのか」など目的が定まらないまま、始めるのはやめたほうがいい。
2013年に「Tech Crunch」のアメリカ版でいいことを書いてたんですけど、メディアはブランドパーセプションにすごく似てると。僕もそう思うんですよ。ブランドの刷り込みは時間がかかるんですけれど、のちに態度変容という効果が表れる。
これからそれを盛り上げていくためには、方法論よりもアトリビュージョン分析とか「本当にこの記事が効いたのかどうか」の視覚化や数値化が、すごく求められていると思います。これがないと説得力がなくなるので、第三者から投資してもらうことを考慮するとそのあたりが鍵かなと思います。
馬渕:アトリビュージョン分析をして、なにが効いたのかを掘り下げていくということですよね。
小林:そうですね。単にバナー見たのか、それとも記事を読んだのかによって、たぶん態度変容の仕方が違ってくるでしょうし。店舗の場合だと、トビー(テクノロジー)ジャパンとかが、赤外線によって視線を追跡するアイトラッキングとかを使って、広告の訴求力を見える化している。
そういったものをツール化するなりして、もう少しWebでもみんなが使えるようになると違ってくるかもしれないと思います。
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