2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小林佑樹氏(以下、小林):ありがとうございます。もう中盤みたいになっていますけど、これから始めていきます。そういったお3方に、今回は5つのテーマでお話をしていただきたいと思っています。有働さんのお話にありましたけど、最初に「そもそもなんでクラウドファウンディングに目を付けたのか」、そのきっかけをお話しいただきたいと思ってます。有働さん、そこはいかがでしょう?
有働幸司氏(以下、有働):先ほどと話が重複するんですけど。まずはクラウドファンディングを知らなかったですけど、たまたま友人からCAMPFIREの方を紹介してもらって、軽い気持ちでスタートしたんです。スタートすることすら、実は内容も把握していませんでした。
「せっかく作った亀田縞の生地を引き続き持続したいな」という気持ちが強かったので、「クラウドファウンディングやりたい」というきっかけは後ですね。形はどうでもよくて、「持続できることをできたらいいな」が、たまたま縁で繋がったんです。
小林:そこはけっこう、ガシッと繋がった。
有働:そうですね。緩い感じで話してたので「ガッツリ売ろうぜ」みたいな、そういう熱い気持ちじゃなくて。「新しく『CLOSS』(クロス)って立ち上げるし、なにかファッションに特化したことをやりたい」と言ってたので。
うちもファッションでやっているんだったら、「今まで知らないお客さんに知ってもらいたいな」と思っていました。FACTOTUMは、メンズですごくニッチなブランドなので、知らない人も多いですし。
クラウドファウンディングって、俺も知らなかったくらいだから。この中の年長者……44歳、先週45歳になりました。年寄りなんでよくわからなかったんですね、そういうの。せっかくだったら、もっとトライしてみたい。そんな感じです。
小林:ありがとうございます。安藤さんはパルコさんからお話をいただいたんですね?
安藤龍司氏(以下、安藤):そうです。先ほどの第1部でパルコの佐藤さんもお話しされていたんですけど。若手発掘と言いますか、「小さく光る人材を」というところで、ご連絡いただいた感じです。
成遂寺に所属しているブランドデザイナーたちは、バンタンデザイン研究所というファッションの専門学校出身なんですけど、僕もそこのファッション・マーケティング学科出身ということもあって、その席に同席したんです。
その場で「プロジェクトリーダーやって」という流れになり…。同席したブランドが秋のアジアファッションコレクションで優勝して、ニューヨークコレクションに出場して、そして「これからビジネスにしていく」という段階の時に、パルコさんからお誘いがありました。
有働さんと同じで、うちのデザイナーたちもクラウドファンディングを知らない者もいたんですけど。僕自身は、ふだんからビジネスのほうでクラウドファンディングに関わるPR活動もやっていたので、認識していました。しかし、実際にやったことはありませんでした。
機会をいただいたので「ビジネスとして、そもそもファッションブランドの活動をランニングできていない僕達が資金を集められるか」というチャレンジングな発想からスタートしました。
自信は全然なかったです。そもそも服を売って飯を食べる前に「服を作りたい」「そのためのアトリエがほしい」という内輪的な目的であり、お金を集めるのはすごくハードルが高いものだと思っていました。そういったところからの始まりでした。
小林:後でスライドで話していただきますけど、ひと筋縄ではいかなかったようですね。
安藤:そうですね。なかなか苦労が多かったと思っています。増田さんのお話のような規模の話ではなくて、きっと「これからビジネスにしていく」という段階の視点での意見、経験談のお話ができると思うので、学生の方や「右も左もわからないけど、やってみたい!」と思っている方々の参考になれば幸いです。
小林:増田さん、いかがですか?
増田智士氏(以下、増田):先ほども少し触れましたけども、資金調達が目的ではなかったんですね。そもそもクラウドファンディングする前からプロダクトもできていましたし、販売するインターネット通販サイトも、KEIに関しては作ってあって、先にローンチさせていました。
ある程度売れていたので、やる必要ないんです。でも、僕らみたいに名も知れないブランドが最初の1段を上がるためには、認知を掴まないといけない。
ただ「ブランドというのは広告では育たない」と僕は思っているので。どういうふうに共感を得られるか、ファンを掴めるか。昔だったら雑誌だったかもしれないですが、今の時代だったらインターネットでクラウドファウンディングがある。そこでプロモーションというか、PRというか。なので、最初から「ファンを作りたい」「ファンとコミュニケーションとりたい」があって、やりました。
小林:ありがとうございます。そういったきっかけで始められたみなさんが、実際にクラウドファウンディングを進めたり、実施し終わってみて、どういうところを魅力に感じたかをお話しいただければと思うんですけど。有働さん、そこはいかがですか?
有働:やってないのでわからないです(笑)。
小林:最初にお話しいただいた時に「ここがいいな」と思ったのは、さっきおっしゃられたような、継続してできるような話だと思うんですけど。
有働:そうですね。魅力はやっぱり……。ファッションだと、ファッションシステムがあるんです。半年に1回受注オーダーがあれば展示会をやって、オーダーをもらった分、生産する。それを数ヶ月後に専門店もしくは取引先に送るという流通があるんです。
クラウドファンディングは、1部でもお話しましたが、思いつきやその人の思い、誰もやっていない新しいことを発表する場だったりします。1つのコンテンツとしては、なにか新しいファッションが生まれるんじゃないかという気がするんです。そして、自分も興味あって参加した次第です。
小林:安藤さん、どうですか?
安藤:魅力を感じる部分です。先ほどお伝えしたように、「これからビジネスをやっていこう」とか、学生のクリエイターの方とか、そういった方々の話になってしまいますが、クリエイターの方であれば、「服が作りたい」「ブランドを持ちたい」とか。そういう思いで学校に通っていたり、服を作っていたりすると思います。その一方で、ビジネス周りの理解ってあまりできていないと思うんです。
「どうやって稼ぐんだろうか」「そもそも先方にどうやって扱ってもらえるか」とか。MDどころの話ではなくて、その前の段階で作ることしかできない人たちがけっこうたくさんいて。
そこから向上心を持って、自分で学んで作っていくとか、そういったことをできる人と組んでやっていくのが、ベストではあると思うんです。この情報化社会においても、なかなかそこにアクセスできない現状がリアルとしてあると思います。
「自分はいい服を作っているしセンスもあるし個性も持っているけど、これで食っていくことはできない」と思ってる人たちがけっこういる。さらに次のステップで、ある程度服は作れるし、ファッションシステムに乗せて展示会やってショーやって、一応バイヤーさん小さいところで受けて、ちょっと取り扱ってもらって……ぐらいのブランドもあると思うんです。アルバイトしているとか、それでもビジネスにはできていないっていう。
その人達も「もうちょっといろんな人に知ってもらう」「もっと資金があったらこれだけ派手なことができる」など、そういったチャンスをキャッチアップできていない人が意外と多いと思っています。そういう人たちがクラウドファンディングを通じて活動していくことで、今まで1人ではできなかったことを、サポーターの方々にお金で投資してもらうことでアイデアやセンスを形にできる。まずそういう意味で、魅力があると思っています。
2つ目は、実際になにか作ってブランド活動していく上で、営業やマーケティングに向き合うのが苦手だったりすると思うんです。自分たちがいいものを作って、それをアピールしないといけない。コレクションだったりショーだったり、発表の場はもちろんですが、日頃の営業活動も重要ですよね。近年で言えばSNSでの発信とかもそうです。
ファッションクリエイションにおいて制作過程を見せることはあまりしないと思います。一番美しい・かっこいい瞬間と作品を見せて売るのが仕事なので、そこをゴールにしている傾向があります。
資金がなかったり、ファンが増えない場合には、クラウドファンディングをやることで、宣伝と言うか「自分はこんなに頑張っているよ」「こんな思いでやっているよ」という日々も伝えていかなくてはいけない。そういう作業が想いを伝える上で重要になります。
その意味で、クラウドファンディングの活動を通じて、ブランド自身を見つめ直すきっかけになるし、自分がなにをやりたいのかを考えるきっかけになります。「これを誰に伝えたいのか」「誰に届けないのか」というのを見つめ直す機会としても、クラウドファンディングの魅力を感じています。今回一緒にクラウドファンディングをやった各ブランドメンバーとも話しました。
小林:ありがとうございました。
ここまで増田さんはちょっと違った視点を持っていると思ったんですけど。先ほど「アーリーアダプターがいっぱいいるから」というのがありましたけど、そこが一番大きいですか?
増田:それももちろん大きいです。しかし、冒頭にも話しましたけど、「日本から世界へ」と掲げているので、言い方が悪いですが10万円とか20万円ではだめなんですよね。なぜなら、「このブランドは20万円集まったブランドだ」というイメージがあり、後にずっと残り続けてしまう。僕はどちらかというと、本当に怖い。エベレストに登るくらいの怖さを持って挑んでいるんですね。
山へ登るのに裸じゃ登れないわけです。入念に入念に積み重ねてスタートしてます。じゃないと名前がない。これでコケると、ずっとコケちゃう。圧倒的1位を獲らないと難しいんですよね。
クラウドファンディングのいいところは、資金調達はできること。でも、そのビジネスはスケールをどんどんしていこうと思った時には、本当にいい結果を出さないと「その金額のブランドだよね」というレッテルを掲げてずっと生きていかなきゃいけない。そういう不安のほうが大きいというのが僕はあります。
小林:そこって、その人の達成したい規模にもよるのかなと思いますが、そこはどうなんですか?
増田:目的にもよると思っていて。自己実現できる環境を提供するのは、素晴らしいと思うんですよ。僕は自己実現じゃなくて「世界に戦えるブランドを作りたい」があった。だから、エベレストを目指すぐらいの意気込みでやったという話です。
小林:安藤さんは、実際に成遂寺を完成させたわけじゃないですか。そこに行くまでに、この後の苦労話に直接繋がりますけど、そういう不安はあったんですか?
安藤:そうですね、そもそもチャレンジャーという形だったので。例えば、今では所属して作業しているブランドもまだまだパワーがないブランドなので、認知も少ないです。そういったブランドたちも、自分たちから発信して、もちろん周りからも発信してもらって。
どれだけの金額を稼げるのかは本当に未知でしたし、「掲げた目標に達するのかな?」という探り探りな状態で始めました。ただやるだけでは成功しないと思っていたので、戦略を慎重に練りましたね。
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