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クラウドファンディング参加者によるビジネスの可能性(全4記事)

「既存システムに縛られたくない」ブランド3社がクラウドファンディング参加に込めた思いを語る

2016年12月1日、「Fashion Crowdfunding Night」の中で、実際にクラウドファンディングを行ったブランドによるセッション「クラウドファンディング参加者によるビジネスの可能性」が行われました。登壇したのはTO NINE・増田氏と、成遂寺・安藤氏、FACTOTUM有働氏。モデレーターはBridge of Fashion・小林氏。本パートでは各ブランドがクラウドファンディングをするきっかけや経緯、そこに込めた想いなどが語られました。

「1回きり」ではなく、なにかを残したい

小林佑樹氏(以下、小林):もうご存知の方も多いと思いますけど、軽く自己紹介をしていただければと思います。では、有働さんからお願いします。

有働幸司氏(以下、有働):みなさんこんばんは。……静かですね。僕、こういう場で話すの苦手なんで、いろいろ失礼な話もしちゃうかもしれないですけど、今日は気にせずいろいろ楽しい会話ができればと思います。

僕は「FACTOTUM」というブランドをやってます。レディースもちょろっとやってますけど、基本はメンズです。立ち上げて12年ぐらいになるんです。

FACTOTUMのブランドコンセプトが「デニムを中心のミリタリー、ワーク、テーラードで構成したワードローブ」です。先ほどの第1部でもあったと思うんですけど「リアルクローズ」というところが、うちの服図のベースになっているんです。

そのあたりに立ち上げ当初からテーマを設けて、それに合った世界各国に行ってきたんです。訪れた国からインスパイアされたものを洋服に落とすことで、毎シーズンコレクションやってます。

今回クラウドファンディングでCAMPFIREさんに2016年12月末ぐらいにローンチされるんです。初参加ってことで、ぶっちゃけ話をすると、僕はクラウドファンディングについて、数ヶ月前までは知らなかったんです。

CAMPFIREさんのことも……失礼ですけど、知らなくて。友だちの紹介でたまたま知り合って、意気投合して。本当にここで話せるような立場ではないですけど、軽い気持ちでスタートしたんです。

「スタートするからにはなにやろう?」と思った時に……。今日、僕が着ているのが亀田島という生地なんですけど、今ちょうど映像で流れているのが、そこの織屋さんです。300年の歴史がある中、大量生産というか、海外のものに日本の生地は替わっていって、生産がほとんどストップしている状態だったんです。これは、2004年から2社だけなんですけど、そこが復刻させた生地なんです。

先ほどお話した「毎シーズンテーマを設けてやっている分」ですね。どうしてもファッションとして消費していく。「次に新しいもの」っていうかたちで、毎シーズン新しいものを出しているんですけど、そんな中ですごくいい出会いでした。

「なんとか1回きりじゃなくてなにか残せないかな」と思った時に、たまたま紹介でCAMPFIREさんと知り合い、新しく「CLOSS(クロス)」という事業を立ち上げるってことで「ちょっと参加してみようかな」と、話が進んでたらいつのまにかここに立っている。そういった状態でございます。

小林:ありがとうございます。今回、有働さんは、これからクラウドファンディングを12月にやられるってことですよね。

有働:そうですね。なので、まったく無知です(笑)。

小林:これから期待していることとか、お話ししていただければと思っています。

有働:そうですね。期待しているというか、軽い気持ちでやっている分、むしろ「それで楽しみたいな」と思っているんです。自分も12年、ビジネスやっていて、大変な時もあったし、いい時もあったんで。ファッションビジネスを真剣にやればやるほど、見落としている部分があると思っています。

そういう意味で、ファッションのシステムに縛られず、いいものがあったら、そこに共感してくれる人と商品を共有できる。これがすごく素敵だなと思って実施しました。

コワーキングスペースの立ち上げにクラウドファンディング

小林:続きまして、真ん中に座っていらっしゃる安藤さんです。自己紹介をお願いします。

安藤龍司氏(以下、安藤):よろしくお願いします。安藤です。一応プロフィールが出ていますが、なにをやっている人やら、よくわからないプロフィールなんですけど。

主にはPRエージェントのお仕事を中心に、ビジネスコンサルティング業務など手広く活動しております。ファッション案件で言うと、過去に外資系スポーツメーカーやメゾンブランドなどのPR、プレス業務をを手掛けてきました。PR会社や広告代理店、時にはメーカーと直で契約して動くので、いろんな名刺を持ってお仕事させていただいています。

今、みなさんのお手元に資料をお配りさせていただいている「成遂寺」という若手クリエイターの共同アトリエを、クラウドファウンディングで実施しました。こちらは先ほどの第一部で登壇していたパルコの佐藤(貞行)さんにお話をいただいた経緯がありまして、「BOOSTER」さんで実施をしました。金額はそんなに大きくないので恐縮ですが、100万円くらいのご支援をいただきました。

共同アトリエの設備ですね。この中に3ブランドが入居して活動してるんです。ミシンや機材、それだけでなくて、いろんなクリエイター、カメラマン、モデル、ヘアメイク、スタイリスト。色んなクリエイターがその共同アトリエに訪れる、コワーキングスペースのような場所にしたいという思いで、立ち上げの初期費用を集めるべくクラウドファウンディングを実施しました。

成遂寺は「せいすいじ」 と読むんですけど、「成し遂げる」という意味に由来しています。文字通り、「クリエイターたちがそこで成し遂げて行くようなものを」という思いを込めたプロジェクトになります。僕はこの企画立案からプロデュースまでを行いました。

僕自体はブランドを持っているわけでも、服を作ってるわけでもないです。所属しているブランド、「ZOKUZOKUB」と「old honey」、「shinpei SOMA」という3ブランドが所属しています。今日1名、ZOKUZOKUBのブランドデザイナーがあちらの奥にいて、洋服の展示をしているのでご紹介させてください。宜しくお願いいたします。

小林:今日、登壇者では最年少ということで。

有働:はい、高校生です。

小林:(笑)。よろしくお願いします。

合理性と惰性をロジカルに体系化

そして一番手前にいらっしゃる増田さん、自己紹介をお願いします。

増田智士氏(以下、増田):株式会社TO NINEの増田と申します。本日はよろしくお願いします。おそらく聞いたこともない、会社だと思いますので、ちゃんと説明しようと資料を作って参りました。聞いていただければうれしいです。

僕もこの会社でいろんなブランドをサポートしていますし、自分でもやっています。おこがましいことに、クラウドファウンディングも3回やってるんですよね。「お前、どれだけ資金が欲しいんだ?」と(笑)。そんなふうに言われてしまうかもしれないんですが、もちろん意味があってやってます。資金調達が目的ではないです。

そもそもTO NINEがどんな会社なのか。僕は前職でファッションとWebの会社にいて、そこのビジョンが「日本のファッションを世界へ!」でした。「こんな素晴らしいビジョンない」「100パーセント同意だ」と勤めて、100ブランド以上、僕はサポートさせていただいたんですね。

「日本のファッションを世界へ!」というからには、自分も海外を知らないことには始まらない。もう転々と旅行へ行ったんですが、どこへ行っても、誰に聞いても日本のブランドを知らない。ユニクロと無印良品しかない。僕が旅し始めたのが10年前で、そこからほとんど変わってないんですよね。このまま行くと、また10年後も同じことを言われるんじゃないか。まずい。逆を言えば、誰も日本のブランドを知らないままです。

逆を言えば、海外で勝負しようと思ったら、土俵はどんなブランドも一緒。同じスタートラインから……ということになります。僕が新規にやろうとしても、他の日本の1,000億円企業がやろうとしても、海外では知られてないんですから。本当に知られてないんですよ。

「あっ、これはチャンスだ!」と思ったんです。自分でやったほうが早い。今はインターネットでブランディングできる時代です。そこを突き詰めてやっていきたいなと思って、自分で会社を立ち上げて、やり始めてます。

TO NINEは、世界に通じるブランドを作ることと、支援することを軸にやっている会社です。

「マーケティング」って言葉がありますよね。マーケティングは、みんな数字を追っている。結果がどうなるか。何人が来て、何人が買うか。そんな話をするんですけど、ブランドは違う。合理性じゃ動かない。そこは日本人は下手なんじゃないかと、僕は思ったんです。

これなんかもそうですね。何十万円もするLOUIS VUITTONのバッグと3万円の日本製のバッグ、品質は3万円のほうが、もしかしたらいいかもしれない。「職人が素晴らしいことだ、いいものを作れば売れる」という時代は、確かにあった。でもそれは、物が溢れてなかった時代だと思っていて。

今、物が溢れていて、誰もが手に入れることができる。そうすると、30万円と3万円どっちがいいか。結果、30万円のほうが売れちゃうんですよね。「ここのブランドってなんなんだ」を突き詰めていくと「チャンスあるな」と。しかも、これを説明できる人は、この日本のみならず世界中にほとんどいない。

マーケティングのプロフェッショナルは中にいるかもしれない。「ブランドってなんですか?」と聞いたときに「これです」「こういうことです」とロジカルに言える人が、この世の中ほとんどいないことが、チャンスだと思っているんです。

前の会社では理性、マーケティングを徹底的に学ばさせていただいたので、ここに情性が入ったらどうか。情性と合理性が融合させたらどうか。両方を軸にやらないとスケールはしないと思っているので、この2つをいかにロジカルに体系化できるか、これが僕の中での課題です。

クラウドファンディング=おもしろいものが好きな人がいる

最初に手掛けたのが「Knot」という時計ブランドです。ご存知の方います? (何人か挙手がある)ありがとうございます。

ここは2回もクラウドファウンディングやってるんですよね。すごくがめつく見えますよね。でも、これはマーケティング的に考えると当たり前の選択だったんです。後ほど話すかもしれないですけど、クラウドファウンディングは「おもしろいものがある」と思ってみなさんが来ている。つまり、おもしろいものが好きな人がいっぱいいる。

マーケティング理論って、「イノベーション理論」と昔から言われているものがありますよね。アーリーアダプターとかイノベーターとか、数パーセントいますよね。アーリーマジョリティになって、最後は……今ガラケー持っている人は「ラガード」って言われるんですよ。生きた化石のように扱われてしまいますが、その理論に倣ったら「アーリーアダプターとかイノベーターがそこにはいるはずだ」と。

アーリーアダプターやイノベーターという人たちは、発信力がある人たちです。その人たちがファンになってくれると、どんどん広がっていける。そういったマーケティング的な観点で活動させていただいています。

今回、「KEI」も新しく立ち上げています。これはアパレルブランドなんですよね。アパレルは2次元で違いを表現するのが難しいです。右にあるシャツ、左にあるシャツ。「どちらが欲しいですか?」と言われて、みなさん選べますか? 選べないですよ、2次元では。そこで「どうしようか」と。1つは合理性ですよね。「オーダーシャツが5,000円で作れる」という合理性を持たせた。これはわかりやすいですよね、マーケティング観点で言えば。

そこに情性です。僕らは「最上の日常」というテーマを持っています。この写真を見てもらうと全部、日常なんですよ。改めて日本の景色なんです。でも、格好いいんですね。外国人が日本に来て、変なところを撮ったりするじゃないですか。彼らにとって、新鮮に見えるんですよね。その観点は必要だと思っているんです。なぜ彼らは、そこで情が生まれたのか。気付けないところに、気付かせてくれるものがあると思っています。

そういうインスピレーションを僕らは持っています。僕らは「モデルを使わない」と決めているので、モデルは素人です。(スライド)ニュージーランド元代表アイザック(・ロス氏)ですね。

一方で、やらないことも決めています。僕らは「最上の日常」と言っているので、最上じゃないものは提供したくない。僕らは化学繊維をやらない。あるいはプラスチックボタンをやらない。自然が最も美しいものなんです。最高の芸術だと思っているので、原価は何倍もしますが、それでもやる。

小林:あまり長いとアレなんですが(笑)。

増田:そんな感じでやってます。今すぐQRコード出していただければチェックできますので。3回やっていて、アパレルウェアでは国内最高額の500万円を調達させていただきました。以上です。

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