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ライフネット生命・出口治明×未来食堂・小林せかい対談トーク(全6記事)

女性は子供を産むと不利になる? ライフネット出口氏が指摘する、日本社会の歪み

2017年11月23日に「『未来食堂』の秘密を語る 未来食堂店主 小林せかい×ライフネット生命 出口治明 対談トーク」が開催されました。登壇したのはライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長の出口治明氏と、未来食堂・店主の小林せかい氏。質疑応答では、来場者から挙げられた「女性の子育て」に関する質問に、出口氏が回答。フランスの政策を例に挙げ、今の日本が抱える問題点と目指すべきしくみについて語りました。

常識よりも効率性を重んじる

司会者:みなさん、では時間ですので、あとお1人分、あと最後のご質問になります。いらっしゃいますか?

出口治明氏(以下、出口):お2人、手を挙げられたので。お2人で最後に。

質問者12:お話、ありがとうございます。小林さんに質問です。

本を読ませていただいて、そのなかで「まかない」に来てもらった人に、手伝ってもらう仕事の内容で、食器の片付けとかをむしろさせないでお客さん対応のほうをさせると。そちらのほうが、お店を使ったことがある、お客さんの立場を経験していれば、どういう対応をすればいいのかだいたいわかると。でも、食器片付けは、忙しいなかで細かいことを教えられないので、絶対パニクるという……。

小林せかい氏(以下、小林):「ここに上向きに置いてくれ」とか。

質問者12:そうです。そうです。

小林:「棚の上」「引き戸のなか」とか、言わないといけないですもんね。

質問者12:……というくだりを読んで、その趣旨をまとめられた言葉として、「常識よりも効率性を重んじる」と書かれていたと思うんですけれども。

それは、言われてみれば「なるほどな」とは思うんですけれど、例えば「たまたま来た人にお客さん対応させるというのはどうなのか」とか、いろんな迷いが生じる余地があるかと思うんです。そのへん、小林さん的には迷いはとくになかったのか、あるいは迷った末にそういう結論に達したのかをお聞かせいただければと思います。

小林:実は修行時代にあることに気づいたので、「まかない」が逆に実現できたんです。サイゼリヤってわかりますかね、みなさん? 「ミラノ風ドリア299円」のサイゼリヤで1年弱ぐらい修行をしていたんですね。

内容についてはちょっと言えないんですけど、サイゼリヤはガイドがものすごく充実しているんですよ。絵が描いてあって「この場面ではこの表情でこのセリフを言いましょう」というのがすべて書いてあるんですね。

ものすごくうまくできていて、初日「おはようございます」と言って行ったときに、レジ打ちまでやらせてもらったんですよ。それも、急いであーだこーだじゃなくて、ものすごく機能的に談笑しながら、「週に何回来られるんだ」みたいな、いわゆるバイトの話をしながらリラックスさせながら、でもレジ打ちまでできる。そのオペレーションの効率性にものすごく驚くとともに、ガイドがあればここまでできるんだと少し気づけたんですね。

もちろん「でも、そうはいっても……」といろいろあると思うんですよね。「はじめて来た人がお皿を割ったら」「トラブル起こしたら……」とか。

そこって、違法という意味ではなくて、グラデーションなのかなと思うんですね。任せられると思うとそこまで任せられるし、任せられないと思うとどこまでも任せられない。よく「まかない」を「人を信じているね」と言われるんですけれど、そうですね。たぶん、一番肝になるのはそこなのかなと思っています。

あと、不手際やトラブルということに関して言うと、「Aさんがトラブルを起こしたから、Aさんはダメだ」じゃなくて、「こっちが悪かったんだ」を常に考えています。Aさんが「ありがとうございました」を言うのを忘れていたのを目撃したとしても、「ああ確かに。言うの、自分も言ってなかったな」と。

次の向上だったり、フォローだったりはもちろんその場で入れます。でも、気付きがあれば、自分が引き受ける覚悟と気づきがあれば、範囲が増えていくと思いましたね。……ちょっと抽象的でしたかね?

出口:いや、大丈夫だと思いますけれど(笑)。

小林:(笑)。

保険=レバレッジである

出口:今言われたことが、例えば、アメリカと日本で労働生産性を比べたら、飲食業なども含めたサービス産業がだいたい4分の1というレベルですよね。

小林:どっちがですか?

出口:日本が。例えばディズニーランドがよく例に挙げられますけれど、マニュアルがちゃんとしていて、誰でもサービスができるとされています。やっぱり常識よりも効率性で考えると、むしろ日本の社会常識よりも、たぶん標準化とか生産性という意味に、僕は効率化という文章は読み替えています。

質問者12:ありがとうございました。

質問者13:お話、ありがとうございます。出口さんに質問させていただきたいんですが、保険って、やっぱり必要ですか?

(会場笑)

最後にもう1つ。さっきのお話のなかにあるように、「人間として一番重要なのは次の世代を育てる」ということですが、今の世のなかは、……とくに女性にとっては、ちょっと不利な世のなかになっていると思っています。どちらというと、「女性は子供を生むと損になる」「不利になる」ように考えているんです。そのことについてどう思っているかうかがいたいです。

出口:まず保険についてです。僕の意見ではないのですが、保険を売らないファイナンシャルプランナーのみなさんの標準的な意見は「入るなら、手取りの3~5パーセントを上限と考えてください」というものです。「保険の意味がなににあるんですか?」については、ひと言で言えば「レバレッジと考えてください」ということですね。

なにかあったとき、お金がかかります。預金は、すぐ簡単に貯まらないんです。でも、もしなにかが起こり、3,000万円ほしいと思ったとき。ライフネットの保険だったら、30歳の男性でも女性でもだいたい毎月3,000円の支払いだから、1年間でだいたい3~4万円になります。3,000万円に対して、レバレッジが1,000倍あるわけですよ。こういうレバレッジの高い金融商品は保険しかない。保険の意味はレバレッジにあると思っておいてください。

そのレバレッジをなにに掛けるかは、それぞれのみなさんの価値判断です。小さい子供が生まれたら、教育費だけは掛けておこうというのが、だいたい今までの考えです。あるいは1人暮らしだったら、難病や事故に遭ったときに、就業不能状態にレバレッジをかけると考えてもらってもいいですよね。

だから、難しく考えずに上限をちゃんと押さえること、どこにレバレッジをかけるかがわかれば、簡単に保険は選べると思います。

一番安い保険に入ろうと思ったら、これは簡単です。一番は東京都民共済とか埼玉県民共済です。これは原理的に生協がやっている共済が一番安いです。JA共済とか全労済ではありません。あとで言いますが、保険と一緒なので。

それはなぜかというと、共済は簡単です。みなさんが払ったお金で亡くなった方などに払って、それで終わりなんです。積立金を持たないんですよ。足らなければ、来年掛け金を上げればいいだけですから。

これに対して、民間の生命保険やJA共済や全労済は法律で積立金を準備するように義務付けられているので、その分だけ必ず高くなります。

県民共済とか東京都民共済で上限まで入って足らなければ、ネットの保険会社か、大きい組織に入っていらっしゃったらグループ保険が一番安いです。ネットの保険は、グループ保険のバラ売りと考えてもらったらいいんですが、販売に関するセールスの経費がいりませんから、非常に安いのです。

簡単でしょう。「上限を手取りの5パーセント以内に抑える」「どこにレバレッジをかけるか」、それから「入るときには、共済とネットもしくはグループ保険」です。ネットも今は10社ありますから。まあ僕としては、そのなかでは当然「ライフネットにご依頼ください」と言いたいところですけれども、一般に言えばそのとおりです。

質問者13:ありがとうございます。

子どもが生まれても貧しくならない政策が必要

小林:女性のほうはどうでしょうか?

出口:女性も同じですよ。

小林:え、同じってそんな(笑)。

質問者13:子育て……。

出口:あ、ごめんなさい。

小林:すいません(笑)。

出口:もう1つの子育てに関してです。これは日本の社会が歪んでいるだけです。例えば、フランスでは、基本的に仕事に就いていても就いてなくても、「若い女性は赤ちゃんを産むのが当たり前なんだから、産みたいときに産んでください」「赤ちゃんは社会の宝で、次のフランスを支えるんだから、どんな状況の女性が赤ちゃんを産んでも貧しくはしません」という大原則に立脚した、政策を打っていますよね。

簡単に言えば、社会としては、無職の女性が赤ちゃんを産んだら、年に200~300万のお金をあげる仕組みが作れればいい。だから、これはもう国の政策次第ですよね。

ヨーロッパは、基本的にはフランスと同じ方向に進んでいます。人間は動物で、女性は赤ちゃんを産むことができる、でもその人の経済状況にはいろんな運もある。女性が赤ちゃんを産める年齢も、だいたい決まっているわけですから。

だからヨーロッパの基本的な考え方は、「女性は産みたいときに赤ちゃんを産んでください」なんです。「そのために貧しくはしません」「税金で社会全体が世話をします」です。日本も、早く人口1億をキープしたいと思うなら、そうすべきですよね。

質問者13:日本、ぜんぜんできていないと思うんですけれども?

出口:だから、声をどんどんあげてください。

小林:今「産む、すごーい!」「働いている、がんばっている、キラキラ」といった、三拍子みたいなものがあるじゃないですか。でもこれには気負い感というか、そこで思考停止と言ったら、ちょっと言い方が悪すぎるんですけれども。

出口:当たり前のことですからね。

小林:なんか、そこがゴールにしてもしょうもないじゃないですか。

まだまだ自分も言葉を練れていないんですけど、だからあまりまだ言えてないんですけど。わかりやすいことは、ものすごく伝播スピードが早いんですよ。「すばらしい、がんばっている人!」って、パパパっと伝播しちゃうので、そういうふうに追いつけなくなっちゃう感じがしているんですよね。

まあ、もっとフラットになったらいいし、自分もそのためには多少の犠牲だったら払うから、そういういい世界になればいいなというのは思いますけどね。そこがゴールじゃないのに、今はちょっと見誤って……。

出口:ゴールじゃないし、生き方とか仕事に関係のないことですよね。

小林:しかも、この話になると急に延びそうな感じになっちゃいましたね。

(会場笑)

出口:いやいや。

質問者13:ありがとうございました。

小林:どうですか?(笑)。

司会者:はい。どうもありがとうございました。今日はお忙しいなか、本当にありがとうございます。

これにてトークイベントを終了させていただきます。お2人に盛大な拍手をお願いいたします。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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