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シリーズTPP第一弾(全7記事)

TPPは日本をどう変える? 貿易以外の意義やポイントについて解説

自民党のトーク番組CafeStaで新たに始まった「シリーズTPP第一弾」。今回は、総裁特別補佐であり、衆議院のTPP特別委員会の理事も務めた西村康稔氏をゲストに迎え、「そもそもTPPとはなにか?」ということについて詳しく解説します。

TPP特別委員会でのやりとり

宮崎政久氏(以下、宮崎):具体的な中身の話に入っていきたいと思いますけども、まず(TPP承認・関連法案が)衆議院を通りましたね。衆議院の特別委員会で、西村さんは理事として先頭に立って野党との交渉もしていただきましたけれども、まずこのTPP特別委員会でのやりとりについてはどんなふうに振り返られていますか?

西村康稔氏(以下、西村):70時間近く審議をして、それから地方も、宮崎県の山の中のいわゆる中山間地域、棚田のある地域とか、一番TPPについて心配しておられる農家の方が多い地域ですし、北海道も行きましたし、それから参考人も農業だけじゃなくて食の安全とか知的財産権、著作権についてもやりましたので、ISDSとかもですね、かなりの審議をしてきました。

それで最終的に与野党で採決まで一旦は合意をしました。合意をしたということは、民進党も共産党も、一定程度の審議時間を認めたということですので、残念ながら農水大臣の発言がありましてそれで伸びてしまったんですけども、その意味で申し上げたいのは、審議時間は衆議院でもしっかりしたというところまでは野党も認めているということをぜひご理解いただきたいと思います。

で、中身についてですね。いろいろな議論が行われましたけれども、まず1枚目のところから。

宮崎:そしたら、いま参議院では、業界で言う「波静か」に進んでいるという状況でありますけども、これで衆でやって参でしっかり審議を重ねていく。いま比較的順調に進めさせていただいていると、こんな理解でよろしいでしょうか。

西村:そうですね。衆議院でかなりの議論をしましたけれども、さらに突っ込んで議論をしようということで、参議院側は丁寧に参考人や地方公聴会を含んでやっているようでありますから、審議が進むにつれ、さらに理解が広まっていくことを期待をしたいと思いますね。

宮崎:私は衆議院。元榮先生は参議院。どうですか?

元榮太一郎氏(以下、元榮):今日もTPP、当番で出させていただきましたけれども、「良識の府」ということで、静かに中身のある議論が行われているのかなと思っています。

初めて当選しまして、こういうような委員会に参加させていただいたりしていますが、なかなか一般の方からすると、確かにどういうかたちで審議されているのかとわかりにくい部分があるかと思いますので、今日西村さんがいろいろとご説明いただくと、多くの方に伝わるんじゃないかなと思っています。私も楽しみにしております。

西村:それともう1点、衆議院の場合は野党にかなり配慮して、全審議時間のうちの2割ぐらいを与党、あと8割が野党ということになっているんですけれども、参議院の場合はそれが5割対5割で、交渉で多少上下するんですけれども、そういう意味では与党の審議時間もあります。

「与党がなんで審議するんだ」っていう人もいるかもしれませんけれども、疑問点はみんな持っているし、農家のみなさんの不安点、食の安全についての不安な点など、与党からも質問して……衆議院のときは野党から不安をあおるような質問も多かったんですけれども、不安をあおるようなやり方だけじゃなくて、より丁寧に説明して、解説的にやっていくということも大事だと思いますので、参議院ではぜひそうしたこともやってもらえればと思いますね。

そもそもTPPとは?

宮崎:じゃあ中身に入ってまいりたいと思うんですけれども、まずTPP、環太平洋パートナーシップ協定といいますけれども、まずそもそもTPPとはなんぞやと、ちょっと大きなところから入りたいと思いますけれども、フリップを上げていただけますでしょうか。

まず西村さん、このTPPとはどういった協定で、どういった国々が交渉しているのかという、まず入口のところからご説明をお願いいたします。

西村:そうですね。元々はブルネイ・シンガポール・ニュージーランド・チリという小さな国ですね。人口も数百万人から、チリが一番多くて2,000万人弱ですけれども、自由貿易をやっていかないとなかなか経済が発展しない国々、P4と呼ばれる4つの国から自由貿易協定を作ろうということでスタートしたんですね。

というのも、全世界で自由貿易の協定を作るWTOがもう百何十ヵ国になってなかなかまとまらないので、じゃあ有志でやっていこうと始めたわけです。

そこにアメリカやカナダ・メキシコ・オーストラリア・日本も入って、新興国で成長著しいベトナム・マレーシアが入って、これで大きなTPPのグループという交渉が始まったわけです。

で、結果的に合意をしたんですけれども、この12ヵ国で全世界の4割を占める経済規模ですし、人口も1割あります。

アジア・太平洋がもっとも世界の中で成長するエリアと言われていますので、その有志が集まって、自由な貿易とか投資とか、新しい21世紀の環境とか労働も含めてルールを作ったということでこれは非常に大きな意義があるんだろうと思います。

ポイントはですね、次のフリップを。

21世紀型の新しいルール作りということなんですけれども、いま申し上げた物の関税を下げて、自由な貿易をしようというだけじゃなくて、サービスの自由化とか、投資を保護しようとか、あるいは政府調達と書いてますけれどもいわゆる公共事業の入札とかですね。これを国際的にオープンにしていこうとか、知的財産・著作権をちゃんと保護するとか、国有企業を透明化するとか。

こういった新しいルール、公正なルールを広げていこうということで、貿易だけじゃない、物の関税を下げるだけじゃないというところが大きなポイントです。

宮崎:ちょっと1枚目に戻っていただきますけれども、このP4というのから始まったわけですね。要するにこの12ヵ国でやった経済規模、3,100兆円を超える。GDPで言いますと世界全体の4割を占めることになるんですよね。

これはEU諸国の経済規模をも超えていくというぐらいのことがあるわけですね。やはり戦略的な意味も大きいわけですね。

西村:そうですね。基本的に自由とか法の支配とか基本的人権とかを重視する国々、共通の価値を持つ国々ですので、ある意味で戦略的な意義も持つということでありますので、単に経済的な意味だけじゃなくて、そういった戦略的な意味も持つという意味で、非常に大事な点だと思います。

TPPが内外に与える影響

ちょっと追加でいいですか。2枚目のところですけれども。これはなかなか知られていないんですけれども、原産地規則というのがあって、これはつまりどこの国で作った商品かというのを決めるルールなんですね。

例えば私の着ているスーツですね。仮に中国で糸も生地も縫製もして、最後日本に持ってきてボタンとブランドを付けてアメリカに輸出をするというふうにすると、この商品はどこの製品かということになると、ほとんど付加価値を中国で積み上げてますので、中国製ということになるわけですね。

いくら最後日本からアメリカに輸出をしても、これ中国製ですから、アメリカは関税がゼロにならないんです。アメリカは繊維製品に30パーセント近い関税をかけてますので、仮に1万円だとすると……。

(実際は)中国製じゃないですよ? 1万円よりもうちょっと高いですけれども、仮に1万円だとすると、アメリカに送ったときは30パーセントだとすると1万3,000円で売らなきゃいけないわけですね。

そうすると、せっかくTPPで関税ゼロになるのに、それじゃやめようということで、繊維のアパレルメーカーはそれじゃ中国じゃなくてベトナムで作ろうと。ベトナムはTPPのメンバーですから。ベトナムで糸、生地、縫製もやって、最後日本に持ってきてブランドを付けてアメリカに輸出をすると。そうすると関税がゼロなんですね。なぜならこれはベトナム製ですし、100パーセントTPPの域内で作った商品ですから。そうすると1万円のものが1万円で売れると。

したがって、このTPPの域内で、今中国から例えば繊維製品についてはベトナムに移していこうという動きがすでに始まっていますし、今申し上げたこの原産地のルールをすべての商品について決めていますので、ある程度の付加価値とか部品を12ヵ国域内で調達しないと関税がゼロにならないという原産地規則なんです。

これけっこう大事でして、今の原産地規則がポイントなんですけれども、それとあわせて、工場を作れば投資の保護が行われる、知的財産が保護されるということですから、TPPに入っていない中国に工場を作ると、いきなり没収されるかもしれない、あるいはコピー商品を作られるかもしれない。しかしベトナムならコピー商品は作らないと今回約束していますし、投資も保護すると。

それから今申し上げた原産地規則でTPP商品になりますので、そういう意味では、どっちに工場作ろうかというときに「ベトナムに作ろう」という大きな判断基準になりますね。

したがって、これがまたほかの国を刺激していまして、韓国とか台湾・インドネシア・フィリピン・タイといったこういう国々は外されていくわけですね。(TPPに)入らないと。繊維製品に限らず、電子部品についてもそうですから、こういったところが今「入りたい」と言って意欲を示しています。

TPPが12ヵ国で閉鎖的でそれ以外の国を排除するわけではなくて、「入りたい国はどうぞ」「しかしルールは守ってくださいね」と。本当にコピー商品作りませんか、とか投資を保護してくれますかとか。

ルールを守ってくれればどんどん入ってもらっていい。広げていくわけですね。

元榮:新しい国が入るための条件ってあるんですか?

西村:これは12ヵ国が全員同意をするということが条件になっていますので、今申し上げたようなルールを守ってくれれば、みんな合意しますから入れると。どんどん広がっていくわけですね。

もう1つは、EUと日本は今EPAやってますけれども、TPPが仮に先に進めば、アメリカ市場に日本のものが入ってきます。日本の市場にはアメリカのものが入ってきます。ヨーロッパは取り残されるわけですね。

したがって、ヨーロッパもじゃあ日本と交渉を早くしようとなりますし、TPPがいわば核となって、広がっていくわけですね。アジアの国々にも広がっていくし、EUにも刺激を与えるしということで、こういう公正なルールが、コピー商品作らないとか当たり前なルールを広げていくすごい原動力になると。

最終的に入らない国へのプレッシャーということで、中国やロシア含めて、いろいろな国々、新興国で、入ったほうがサプライチェーンとして部品調達も行われる、仲間に入ってくるわけですけれども、入らないと、どちらかというと工場がそこから移ってくるということもありますので、そういう意味でプレッシャーがかかるということなんですね。

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