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ここまでわかる! ツイートデータから見えてくるマーケティングの未来予想(全4記事)

「クリスマス前後、20代男性は諦めモードになる」ツイートから見えてくる、ユーザーの喜怒哀楽

日々さまざまな感情が飛び交い、賑わっているTwitter。流れていくツイートからは、どういった未来を読み解くことができるのでしょうか。WOMマーケティング協議会が主催するイベント「WOMJクチコミフェスタ2016」では、Twitter Japanの櫻井泰斗氏が登壇。クリスマス・イブはTwitter上でもっとも喜怒哀楽が分かれる1日と言われています。ツイートを軸に見られる、男子高校生と20代男性の感情の違いについて語られました。

おせちで最もツイートされるのは「栗きんとん」

藤崎実氏(以下、藤崎):今までは生活の部分、世のなかの流れでしたが、次は、人々の生活をツイートから予想していく事例をご紹介していこうと思います。

櫻井さんからお話があったように、「眠たい」を見ても、平日と土日は違う。そのツイートから見えてくる暮らしがあるんですね。これはどんなことが読めるんですか?

櫻井泰斗氏(以下、櫻井):年末にケーキをよく食べると思うんですが、それを対象にして分析をしました。

これは、どういうケーキが上位にくるのかを集めたものです。結果、1位がチーズケーキ、2位がショートケーキ、3位がチョコレートケーキでした。ただ、クリスマスイブの日は、このショートケーキとチョコレートケーキが逆転するんですね。

こういうものを見ていくと、世のなかの動向がわかります。昔はケーキ屋さんでもない限り、売上比率なんてわからなかったと思うんです。でも、ツイートを分析することで、飲食産業の素人でもなんとなく「こんなケーキが人気がある」がわかる。

藤崎:なるほど、おもしろいですね。このままでも参考になりますが、実際にマーケティングに活かす場合は、このデータをもとに、もっと細かく分析していくこともできるわけですよね。

例えばお菓子メーカーだった場合、「どういうツイートが多いのか」をより細かく知ることでユーザーの個々の嗜好性が見えてくる。いろんな切り口と視点を持って分析すれば、大きな傾向から個人の嗜好性までわかりそうですね。

櫻井:次の分析例はおせちです。ツイートされているおせちの名前から、なにが人気なのかを見てみました。1位が栗きんとん、2位がほぼ同じツイート数で黒豆でした。

藤崎:これはあれですか、「おせちの王様は栗きんとん」という話ですか。でも、栗きんとんと黒豆が多いのは、納得感ありますね。実家の母が、栗きんとんを作ってくれているとかあるじゃないですか。手間ひまかけて作ってくれた美味しさ、あるいは買ったものでもいいんですけれど、王様な感じはわかる気がします。

櫻井:そうですね。この分析結果を広告に活かすのであれば、おせちの広告のクリエイティブを作るときに、どんな具材の写真を使えばいいのかという参考になるかもしれないです。

例えば、栗きんとんがバッと出れば、それはけっこう受け入れられているおかずだから、写真を撮ったときに、目立つところに配置するといいんじゃないかなど。あるいはローストビーフやカニ、そういったものもよくツイートされているので、端っこに入れておくと人によっては食いつきがあるかもしれない。そういったヒントが見えてくると思います。

行きたい場所と「ツイートしたい場所」は違う

次は旅行業界ですね。これは「旅行」という言葉と一緒にどんな地名、あるいはどんなランドマークがツイートされているかを調べたものです。

東京、京都、沖縄と、このあたりは年末年始に人気があるのはわかると思います。でも、ディズニーが6位に出てきています。実は福岡よりもディズニーのほうが人気がある結果になっているんですね。

藤崎:これすごいですよね。ツイートしたくなる地名も関係あるんですかね。

櫻井:もしかしたら次のスライドは、けっこう考えさせられるものかと思います。同じようなものを、海外でもやってみました。

韓国、台湾、ハワイがあると思うんですが、おそらく実際に渡航した人数を考えてみると、台湾とハワイの2つでは、圧倒的に台湾が多いと思うんですよ。では、ハワイがかなり台湾に迫っているのは、どういうことなのか。そういった考え方のきっかけにもなりますね。

藤崎:実際に渡航の人数を測ってみると、ハワイはもうちょっと下にいきそうですよね。どうなんですか?

櫻井:私も旅行業界はあまりくわしくないのでわからないんですけど。ただ、年間渡航者数でいうと、台湾、韓国に比べると、ハワイはそんなにないと思うんです。

藤崎:飛行機も限られていますしね。もちろん行く人は日焼けして帰ってくるので目立っていますが。これはひょっとすると「ハワイに行ったんだよ」とツイートしやすい理由もあるんですかね?

櫻井:ハワイの旅行に関するツイートにはどういったものがあるのか。おそらく、ツイートされやすいものは、人々がなにかしら情熱を持つものだと思います。そういったことを参考にして、例えば旅行会社さんが、旅行先での写真投稿コンテストを実施するなどは考えられます。よくツイートされている場所で実施したほうが、コンテスト応募数は増えるでしょうね。

藤崎:ツイートは先ほど気軽にするものだと言われていました。「ハワイに行って嬉しいんだ」と高揚する気持ちとリンクして、「自分は行ったんだよ」「おもしろいんだよ」「ハワイのすごくきれいな景色を見たんだよ」という、自分の感情とリンクしてツイートしていくので、それが可視化される。そういうメカニズムがあるんじゃないかという気はするんですよね。

櫻井:そうだと思います。

藤崎:派手な感じ。実際の行動とは別の地図がここに見えてくる感じがするんです。

櫻井:そう思いますね。やはり旅行先からのツイート、もしくはほかのSNSなど、みなさん投稿すると思うんです。そこで伝えたいものは、感動だったりすると思うんですよ。そういったクチコミをいかにマーケティングに活かすのか。このハワイは、ツイート数を見ると、話題化に成功している観光地だと思うんですよね。

では、台湾でツイートを上げるためになにが必要なのか。もしかしたらハワイの事例から学べるかもしれません。そういったような見方も、データから示唆が得られるのではないかと思います。

藤崎:なるほど。ハワイのTwitter事例を研究することで、ほかの観光地に活かせる知見が見つかるかも知れないというのは興味深いです。ほかの業界でも、こういう応用はできそうですね。ありがとうございます。

男子高校生は欲しがり、20代男性は寂しがる

次のパートは、「ツイートから感情の推移を予測する」です。今度は個人の感情の推移を予測できるのではないか、ということですが。

櫻井:こちらはどういう方法で分析をしたかと言いますと、形容詞をベースに、どんな属性の人がこの形容詞をツイートしているのか、いつ跳ねるのかを見ています。なお、この属性に関しては、NTTデータさんにデモグラフィック推測という点で一部ご協力をいただいています。

例えば高校生だと、クリスマス前後に「欲しい」というキーワードが上がるんです。 ツイートを見てみると、恋人が欲しい、プレゼントが欲しいなど、そういう欲望です。

一方で大学生、とくに20代の男性は、「欲しい」という言葉も上がりますが、高校生と比べると「寂しい」の言葉がより上がる。高校生は自分の欲望をまだあきらめてないんですが、大学生以降になるともうあきらめモードになる方もいらっしゃるのかなと……。

藤崎:「欲しい」より「寂しい」は、あきらめという……。

櫻井: Twitterを使っている方はご存じかもしれないですけど、クリスマスイブは、Twitter上では、非常に喜怒哀楽が分かれる1日です。

幸せな人、普通な人、仕事している人……。クリスマスを軸にしたプロモーションをする場合、この日に、誰の心をつかむキャンペーンに仕立てるか、考える価値があると思います。昔だと、おそらく自分のブランドのベネフィットを考えて、どういうプレゼントキャンペーンをやろうかということだったと思うんです。

こちらのデータを見ると、自分のターゲットが、高校生なのか、それとも大学生なのか、20代以上の男性なのかを見極めることによって、どういったトーンでキャンペーンを組み立てればよいのかのヒントが見えてきます。

高校生を対象にした製品なら、プレゼントキャンペーンは非常に受けると思います。「欲しい」人たちですから。一方で、「寂しい」と感じているような20代男性には、「ぼっちクリスマスを慰めるこんな企画をやりました」というほうが、ウケはいいかもしれません。

藤崎:私もTwitterを活用したキャンペーン運用に関わることが多いんですが、その感想として「ユーザーはとても素直である」があります。その知見を活かすと、クリスマス前後に、高校生をターゲットにした「○○欲しいキャンペーン」「欲しい欲しい欲しい!キャンペーン」などをやると、高校生たちの気持ちにフィットして、ヒットするかも知れませんね。

櫻井:「欲しい」には裏話があります。どんなものが欲しいかというと、一般的には彼氏やプレゼントもありますが、「コミュ力」「女子力」もあったりします。そういうところからアイデアを得て、「この商品でコミュ力を上げられますよ」とする。そういうことをやっていると、「俺らの気持ちわかってんな」と、一緒に盛り上がってくれたりします。そういうところも、Twitterのおもしろいところかなと思います。

Twitter上では賛否両論あったほうがいい

藤崎:大きな視点から言うと、「話題はないより、あったほうがいい」という話もありますよね。要するに、その内容に少しネガティブな要素があったとしても、話題は、まったくないよりもあったほうがいいという話です。

櫻井:そうですね。よくも悪くもTwitterは、いろんな企業とか製品に対して、直接ツイートで返信が来る。そういった直接寄せられるクチコミを、企業の担当者の方のなかには「怖い」と感じられているところがあります。

ただ、直接のクチコミは、興味があることの裏返しです。そのツイートは、もしかしたら今使っている・次も使ってくださるユーザーさんの不満かもしれません。ツイートは、なにかしらのヒントになるメッセージだと思うんですよね。そういったものをうまく活かしていく。

賛否両論があると思うんですが、僕がよくみなさまにお伝えしているのは、どんな会社もネガティブなツイートを消せないことです。変な話ですが、Twitterというブランドは日々さまざまなことを言われて、Twitterで一番炎上している話題だったりするんですね。

そういったことは期待の裏返しでもあり、トランプさんとかヒラリーさんの話じゃないんですが、ネガティブツイートを恐れるより、賛否両論あったほうがいいのではないかとは思います。

藤崎:それよく言われますよね!

櫻井:ありますね。

藤崎:否であっても、そこに意見がないよりはあったほうがいいということですよね。今回のアメリカ大統領選挙も、隠れトランプ層がいたということで、従来のマーケティングデータからは見えないような層がいっぱいいたと言われています。

櫻井:まあ、この話はオフラインでいきましょうか(笑)。

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