CLOSE

『ライフ シフト』発売記念「100年時代の人生戦略」(全7記事)

“恩恵を受けられない人々”が制度を変えてきた--リンダ・グラットン「日本の若い女性たちは変革の起爆剤」

誰もが100歳まで生きる時代、働き方や人生設計はどのように変化するのでしょうか。東洋経済新報社が主催する「『ライフ シフト』発売記念 100年時代の人生戦略」では、著者であるリンダ・グラットン氏が登壇し、「100年生きうる時代(100歳人生)」での生き方についてトークセッションが行われました。人々の寿命が今よりも延びる時代だからこそ、個人も社会も変わる必要があります。“凝り固まった”と言われる今の日本社会を変える起爆剤となるものとは?

首脳会談は世界平和につながらない

浜田敬子氏(以下、浜田):昭恵夫人はたくさんやりたいこともあると思いますが、今後なにをもっとやっていきたいと思っていらっしゃいますか?

安倍昭恵氏(以下、安倍):『LIFE SHIFT』の話から逸れてしまいますが、私はいつも、「どうすれば世界が平和になるんだろう」と、ずっと考えています。各国の首脳は国益を重視するため、主張がぶつかります。そのため、首脳会談は世界平和につながらない……と、私が言うのもなんですが、思っているんですね(笑)。

(会場笑)

どうすれば本当に世界が平和になるのだろうと考えたとき、マイノリティがつながっていくことが1つのきっかけになるんじゃないかと思ったんです。

今まで表にあまり出てこなかったような女性たち、障がい者の人たち、LGBTの人たち、少数民族の人たち、子供たちをつなげていくことを私はしていきたい。そう、ずっと思っているんです。

あと、この本のなかで「遊びが大事」と書いてありました。日本人はすごくまじめなので、「女性活躍」というと、「あの人は活躍してるのに、私は活躍できない」と思ったりします。100歳まで生きる時代に「歳をとっても働きましょう!」となると、みんなが焦ってしまうかもしれない。でも、人がどうかではなく、自分がいかにワクワクするかを大事にできる世のなかになっていくと、いいんじゃないかと思います。

また、なにか本質的なものが今、見えなくなっている。物質的なもの、例えばお金はすごく大事に見えるけれど、実は目に見えないところにこそ、本当に大事なものがあります。やはり、長く生きれば生きるほどわかるような、そんな人生の積み重ねをしていけたらいいなと思います。

浜田:ありがとうございます。

年寄りの時間だけでなく、若々しい時間も延びる

最後にリンダさん、今後ご自身の人生でやっていきたいことはありますか?

リンダ・グラットン氏(以下、リンダ):まず最初に、安田先生が「iPhoneを英語版にするのはいい」とおっしゃっていましたよね。それをやるんだったら、ぜひWebサイトで、診断をやってみてほしいです。私たちは日本のデータを集めたいと思っています。翻訳版も出しますが、その前にできる方は英語でやってみてください。

私は今、61歳です。100歳まで生きるつもりでいます。

100歳まで生きることを意識したとき、私がなにを変えたのか。まず、結婚することにしました。もし70歳で死ぬことになっていたら、結婚するほどのこともないと思っていたかもしれません。そういった意味では、変化は起きています。

先ほども言いましたけれど、長寿は、年寄りの時間が延びるだけでなく、若々しくいる時間も延びます。昭恵夫人は「遊び心が大切」「ワクワクすることが大切」とおっしゃいました。結局のところ、私たち1人ひとりがよい人生を歩もうと思うなら、そこが大切なんだと思います。

そうした遊び心が必要だから、あの本を私は書きました。エコノミストと一緒に書いたのはなぜかというと、いろいろな議論が長寿社会について言われ、アルツハイマーや死について書かれていました。もちろん、1人ひとりは死んでいきますし、8時間眠れない人についてはアルツハイマーになりやすくなるかもしれません。

ただ、そこばかりにこだわってはいけないと思うんです。こだわるべきは、それぞれの人生を毎日楽しく過ごすこと、そのためにパッションを持って生きるにはなにをすればいいのかを考えることです。今とは違う大学に行ってみる、国内留学をしてみる、ゲストハウスもそうだと思います。とてもよいアイデアだと思います。

ちなみに、私は6人の子持ちの男性とこれから結婚しようと思ってるんです。

(会場笑)

すごいことだと思いませんか? そのうち5名は娘さんですよ。そんなところに、私は嫁ごうとしているんです。

というわけで、それぞれの新しい決断を下していく。私はこれからあと30年、40年、どうなるのか考えると、ワクワクせざるをえません。

浜田:ありがとうございます。どうぞお幸せに(笑)。

テクノロジーの代替が進んでも、新しい仕事は増え続ける

それでは、あとお1人か2人、質問を受けたいと思います。お名前とご所属、どなたになにを質問したいかを言っていただけたらと思います。

質問者1:今日はどうもありがとうございました。私は、金融機関で働いている者です。

池見さんとリンダさん、お2人に質問があります。これからの環境問題として、温暖化や人口増加によって、食料やエネルギーが不足するなどの問題が出てくると思います。それに対して、長寿生活は逆に阻害する要因になったりしないかが気になっています。

とくにマイクロ企業がいろんなイノベーションを起こすことは、じつはそういうエネルギーや社会の問題を考えずにやっていく気もしています。どのようにちゃんとうまくやっていけばいいかを、すごく気にしてるんです。なにかご意見があれば、教えていただければと思います。

浜田:先に池見さんからお願いします。

池見幸浩氏(以下、池見):まず人口増加ですが、これは世界的なお話という認識でいいですか? 

日本は人口減で、世界が増えていく。ほとんどのことについて、まずテクノロジーで代替可能な部分になっていくと思います。今の例でいうと「ソイレント」という、それだけ飲んでいるとなにも食べなくてもいいような粉が開発されていたりします。うちも社内のエンジニア向けにそれを売ってるんです。これ、すごく売れているんですね。

(会場笑)

うちのエンジニアはめんどくさがりだから、そればかり飲んでいるんです。それを飲んでたら、ほかになにも食べなくていいという粉がもうすでにあったり。テクノロジーで、さまざまなことは解決されていくと思います。質問は、そういう時代において最終的には僕たち働く人間がどうなるかということですかね?

それでいうと、僕は先ほどの話に戻りますが、やはり新たな仕事が生まれていくべきことだと思うんですね。

例えば、ソイレントばかり食べている場合。これはアメリカのレポートなんですけれど、30日間それだけ食べてると、健康面はまったく問題ないですが鬱になるデータがあるんですね(笑)。

(会場笑)

それをフォローするための食品カウンセラーみたいな仕事が必要だったりするなど。僕としては、さまざまなことがテクノロジーで代替していく、それを補うかたちで仕事は絶対に必要になってくると思うし、それは誰かが作っていかなくちゃいけないと思っています。そういった前向きな進化をしていけるといいと思っています。これ、回答になっていますかね?

浜田:はい。リンダさん、先ほどのご質問に。

リンダ:多くの意味において、日本はまさに先進国であると思います。私は明日、日立(製作所)さんと1日ご一緒しますけれど、日立さんはソーシャル・イノベーションのリーダーでいると思っています。日立の技術も、まさに池見さんがおっしゃったように、どのように環境面に答えていくのかに資するものだと思います。

例えば、ロンドン・ビジネススクールで将来に関する1週間のプログラムをやっています。世界中から多くの方々に参加してもらっています。この学生のみなさんが非常に関心を持っているのが、環境問題です。どのCEOでも、最優先事項として環境問題を今、考えていかなくてはいけません。つい最近も、この気候変動の条約がようやくまとまりましたね。日本がその主導的な役割を果たしました。

そして、私たちの遺産が若者に対しての負担になってはいけません。「世界を壊した」なんて、遺産として渡してはいけないと思います。こういった問題のソーシャル・イノベーションという意味では、日本はまさに先進国だと思います。

浜田:ありがとうございます。

自分に残された長い時間を、愛する誰かと過ごしたい

質問者2:貴重なお話、ありがとうございました。リンダさんに質問です。最後にコメントされた結婚についてなんですが、今まではなぜされなかったのか。そして、どうしてこの本を書いて、結婚を考えたのか。価値観の変化について、もう少しくわしく教えてください。

聞きたい理由は、ライフキャリアにおいても、無形資産においても、パートナーシップはとても大事だと思うからです。よろしくお願いします。

浜田:いいですか? リンダさん。

リンダ:私は以前、結婚していたんです。まず、それを言っておきますね。その後で、未婚の状態になりました。意識的に夫婦をやめるということを何年も前にしました。

そして、何年もシングルとして過ごしました。そのため、この本で人間関係についての章を書いていたとき「私は誰にもアドバイスできないな」と思ったんです。結婚について、私は成就できていなかったので、人にアドバイスできた義理ではない、と。

自分がうまくできたこと、できていないこと、いろいろあるのが人生ですよね。結婚については言える立場にはありませんでした。長期的に結婚生活を続けていけるのは、すばらしいことだと思います。みなさん、可能であればそうするべきだと思います。私は1度目はできませんでしたが、そのようなことができている方はたくさんいらっしゃいます。

私の子供たちも独り立ちしました。そして、私にはあと30〜40年ほどの時間が残っているわけですよね。その残された時間を、自分の愛する誰かと過ごせたらすばらしいと思ったんです。だから、決意しました。

結婚する以外に、同棲も可能性としてありましたが、結婚したほうがいいと思いました。そして、私たちはきちんと結婚式を挙げて、結婚しようと思います。

浜田:ありがとうございます。日本では今、熟年離婚が非常に問題になっているので、100年時代になったらこれはどうなるのか。私は、個人的には楽しみなんですけれど。

古いシステムを壊す起爆剤になるのは、若い女性たち

あと、お1人くらいは質問を受けられそうですね。では、横の方。

質問者3:ありがとうございます。1点、質問があります。「制度が関連している」「壊すには洗練した力が必要」というお話があったんですが、もう少し「洗練した力」についてお聞かせいただけますでしょうか? よろしくお願いします。

リンダ:それは答えがないですね。ただ、可能性としていくつか思いつくところはあります。日本の若い女性がこの起爆剤になるんではないかと思っています。

というのも、一番恩恵をあずかれていないのが女性です。例えばイギリスでは、一番恩恵を受けている人たちがシステムを変えていたのではなく、むしろ逆の人たちがそうしました。それは、グローバル化が進んでいたときに起こりました。

日本では今、制度が作られていて、その恩恵を一番受けられていない女性、とくに若い女性がそれを変える起爆剤になるのではないかと思っています。

浜田:若くないんですが、女性としてがんばりたいと思います。今日はみなさん、本当に長時間ありがとうございます。残りの質問もぜひ受けたかったのですが、お時間の関係で受けられなくて本当にすみませんでした。4人の方々に改めて拍手をお願いいたします。本当にありがとうございました。

(会場拍手)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 大企業の意思決定スピードがすごく早くなっている 今日本の経営者が変わってきている3つの要因

人気の記事

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!