2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
リンクをコピー
記事をブックマーク
田中美和氏(以下、田中):続きまして、弊社小崎からお話させていただきます。先ほど小安美和さんがご参加されたとお話いただいた、スイスのビジネススクールIMDのギンカ・トーゲル教授のご著書が、今年(2016年)の6月、日本で発売されております。
こちらピンクの表紙の本になります。この本の構成と翻訳を弊社の小崎が手がけております。小崎からはギンカ先生のご著書の内容を踏まえた上で、リーダーシップを考える上でのエッセンスというところをお話しさせていただければと思います。では、小崎さん、よろしくお願いします。
(会場拍手)
小崎亜依子氏(以下、小崎):みなさん、こんばんは。Warisの小崎と申します。
私からは、ギンカ・トーゲル教授の著書のエッセンスをお話しさせていただきます。先ほどの小安さんのプレゼン、本当にすばらしかったですね。女性リーダーの話というと、「私がロールモデルです」みたいな成功体験ばっかりで、私も本当にうんざりしていたので(笑)。
(会場笑)
小安さんのプレゼンを聞くと、ギンカさんのプログラムに私もぜひ参加してみたいな、と思いました。
それでは、私からは、こちらの本(『女性が管理職になったら読む本 ―「キャリア」と「自分らしさ」を両立させる方法』)のエッセンスをご紹介させていただきます。
私は、Warisに昨年の9月にジョインいたしました。それまでは、株式会社日本総合研究所というところで、企業の非財務側面、社会性、どれだけ従業員にやさしいか、どれだけ環境に配慮しているか、そういったことを調査して、それを投資家に使っていただくという仕事をずっとやっておりました。
足元2年くらい、2014年、2015年は、「なでしこ銘柄」(女性活躍推進に優れた上場企業)などの仕事も担当しておりまして、女性活躍推進に関わるなかで、「これは本当に働き方改革の問題だな」ということを痛感し、働き方改革の現場に飛び込むしかないということで、すごくジャンプをしたんですけれど、ベンチャーのWarisに、昨年9月に参画し、現在に至ります。
ギンカさんのこの本、こちらを読んでらっしゃった方っていらっしゃいます?
(会場挙手)
ありがとうございます。そんなに多くなくて、ちょっとホッとしました。
(会場笑)
私が今日お伝えする以外にも、たくさん役に立つ話がありますので、よかったらぜひ読んでみてください。この本の中には、本当にいろいろお伝えしたいことがあるんですけれど、私からは2点お伝えしたいと思います。
まず1点目は、「管理職になりたくない」のはなぜかという点。先ほどの小安さんの話にもありましたけれど、「なぜこんなに日本の女性は、リーダーになりたくないのか?」というお話は、ギンカさんもたくさんしておられました。そのなかでこの背景にあるもの、本当にいろんな問題があるんですけれど、1つ大きなものとして、無意識バイアスの問題というものがあります。
無意識バイアスの問題って、日本ではそんなに取り上げられていなくて、「女性が管理職になりたくないのは女性の意欲の問題でしょ」というふうに片付けられちゃうことが多いんですけれど。これは本当に、非常に根深い日本社会に潜む問題です。もちろん日本だけではなく、海外でも言われているんですけれど、私は本当に根深い問題だと思っています。
それから2番目としては、これはギンカさんが日本の女性に向けた本当にすばらしいメッセージなんですけれど、「女性こそリーダーに向いているよ」というお話。ちょっと気持ちが明るくなるようなお話です。
こちらの本は日本のために書き下ろされた本です。ギンカさんがいろんなところでスピーチされた内容と、ギンカさんが書いた論文や、ギンカさんが引用された論文を、私ともう1人、林(寿和)さんでいろいろと読み解いて、ギンカさんとも相談しながら、日本の方に伝えたいメッセージを、いろいろ話しながら構成して、できた本になります。
最初の、リーダーシップに対する無意識バイアスとは、いったいなんなのかということなんですけれど、簡単に申し上げると、「男性はこうあるべき」とみんなが思っていることと、「リーダーはこうあるべき」と思っていることって、けっこう一致することが多いということなんです。
一方で、「女性はこうあるべき」と社会のみんなが思っていることと、「リーダーはこうあるべき」というのは一致しないんです。
ですので、女性が「リーダーになりたくない」と思ったり、会社の人が女性をリーダーとみなさなかったり、そんなことが起こるのです。
非常に難しい論文で読み解くのが大変だったんですが、このリーダーシップに関する無意識バイアスの問題についてアメリカのラドガース大学のラドマン教授たちが非常によい研究をしておられますので、ここで紹介したいと思います。
彼らの仮説というのは、男性が上、女性が下といった暗黙のルールが私たちのなかに存在して、それと食い違うときに反発が起きる、というものです。この反発というのは、女性リーダーですごくリーダーシップを発揮している人って、「なに? あの人。威張ってて」とか、けっこう嫌われることが多いと思うんですけど、そういうことを、反発と言っております。
この研究では、人が持つ64個の特性を列挙して、2つ調査をしました。
1つは、その特性を持っていることが、男性、もしくは女性にとって、どの程度望ましいのか。もう1つは、社会的、文化的に上位にある人、下位にある人、つまり、リーダーなのか、リーダーじゃないのかということなんですけれど、そういう人はその特性をどの程度持っていると考えられるのか。この2点を調査しました。
その結果がこちらです。
まず、男性にとっては望ましいが女性にとってはそうでない特性(スライド左)、「まあ、なるほどな」と思うようなものだと思うんですけれど(笑)。
(会場笑)
「自立している」「野心的」「ハードワーク」「プレッシャーに強い」とかですね。
一方で、女性にとっては望ましいが男性にとってはそうでもない特性として、このようなもの(スライド右)が挙げられました。これも「そうだよな」とみなさん感じられると思うんですけれど、「やさしい」「周囲に気遣いをする」「よい聞き役」「明るく元気」。「女の子は元気でいればいいよ」とかよく言われると思うんですけれど、このような内容がありました。
これって、ぜんぜん違いますよね。右と左でぜんぜん違うのが、おわかりいただけるかと思います。右の方は、心理学で作動的な特性、Agenticと言います。一言でいうと、1人の人間として目指すべき自己成長や達成などに関する特性です。
こっちの女性らしい特性は、共同的な特性、Communalな特性と言われます。一言でいうと、他者との協調や親密さなどに関する特性です。
私たちの社会では、女性はこういう共同的な特性を持ってることが望ましくて、男性は作動的な特性を持っていることが望ましいとみなさん思ってるんです。これは意識、無意識に関わらずです。
では、リーダーとの関係でいうとどうなのかということなんですけれど、もうおわかりだと思いますが、作動的な特性というのは、社会の人みんながリーダーとしてみなすような特性と、ほぼ一致しているんですね。
社会的、文化的に上位にある人が共通して持っていると考えられる特性、みなさんがそう答えた特性と、男性が持っていると望ましいと考えた特性というのは、ほぼ一致しているわけなんです。
一方で、望ましくない特性。男性にとっては望ましくないけれども、女性にとってはそうでもない特性。これも、「そうだよな」っていうものが並んでますけれど、「感情的」「弱い」「自信がない」「大げさ」「気まぐれ」「気分屋」、このような特性があります。
一方で、女性にとっては望ましくないけれども、男性にとってはそうでもない特性として、「威圧的」「支配的」「要求が激しい」「容赦ない」「状況をコントロール」とか、こういうものが並んでいます。
これ、リーダーとの関係でいいますとどうなるのかということなんですが、男性にとっては望ましくないが女性にとってはそうでもない特性というのは、社会的、文化的に下位にある人が共通して持っていると考えられる特性と、ほぼ一致するんですね。
ですので、男性はこうあるべき、男性はこうあるべきではないというものは、リーダーはこうあるべき、こうあるべきではないというものと、ほぼ一致します。
一方で、女性にとっては望ましくない特性というのは、実は完全に一致するわけではないんですが、例えば「状況をコントロール」「支配的」など、けっこうリーダーが持っている特性と一致する部分があるんです。
つまり、女性がこうあるべきということとリーダーがこうあるべきというものは、真逆なんですね。こうした無意識のバイアスは、いろんな影響を起こしています。
例えば、これはよく引用されるデータで、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんけれど。ジョンとジェニファー、まったく同じ職務経歴書なんですけれど、名前、性別のところだけ違うという職務経歴書です。これをいろんなところに配布して、「この人を採用したいですか?」「この人の能力、どう思いますか?」「年収提示額、どのくらいにしますか?」といったようなことを聞く調査を行った結果です。
こちらの茶色いほうがジョン、男性で、こちらの薄いほうがジェニファー、女性ですね。どの項目を見ても、男性のほうが女性を圧倒的に上回っているんです。これ、たぶん、チェックしている人には、女性を差別しているつもりなんかぜんぜんなくて、無意識下でこういうことが行われちゃうんですね。
この無意識バイアスの影響に関するデータ、ほかにもたくさんあります。1つが、『LEAN IN』にも引用されてたケースなんですけれど、「ハイディ・ローゼンのケース」です。
この方は、シリコンバレーですごく活躍した女性で、ハイディ・ローゼンといいます。彼女の成功ストーリーを、男性の名前(ハワード)と女性の名前(ハイディ)で学生に読んでもらって、「この人、どう思う?」と聞いた時に、「有能で結果を出せる人物」「一緒に働きたい」と思ったのは、ハワードのときだったんですね。
ところが、女性、ハイディの場合は、「謙虚さに欠け、権力欲が強く、自己宣伝がすぎる」という評価になるんです。同じストーリーなのに、性別が違うだけで評価が変わってしまうのです。
あと、ビジネス界だけではなくて、クリエイティブ、創造性に関する評価でも同じようなデータがあります。
まったく同じ建築物でも、男性が作った場合、女性が作った場合、いろんな人にアンケートを取って、男性の建築だった場合は、みんな「これはすごく創造的だね」という評価をし、女性の建築だった場合は、逆の結果になりました。女性は創造性に欠ける。こんな、「え?」という感じのデータもあります。
それから、こうした無意識バイアスを認識した上で、状況を改善したケースもあります。それはアメリカのオーケストラのブラインド審査です。実はアメリカのオーケストラって、60年代ぐらいまで非常に男性の社会で、女性奏者の比率は10パーセント未満だったようなんです。
これは改善しなければいけないというので、70年代から誰が応募してきたのか、女性なのか男性なのかわからないかたちでブラインド審査を導入したら、女性比率増のきっかけになったと言われています。私たちがいるのって、こんな理不尽な社会なんです。
こちらはコンピュータ・シミュレーションの結果です。ビジネスのエントリーレベルからトップのレベルまで、こうやってだんだん昇格していくわけなんですけれど、(スライド)左のほうは男女の評価にまったく差がない場合。当たり前ですけれど、半々の人が、エントリーレベル半々で、半々の人が上がっていく。
何パーセントかの比率で必ず離職する人がいて、その人を埋めるために、下から評価で上がっていくというシミュレーションなんですけれど、こちら(スライド右)、男女の業績評価にたった1パーセントのバイアスがあった場合です。
詳しくいうと、業績の分散の1パーセントとか、ちょっと難しいんですけれど、たった1パーセント、ほんのちょっとしたバイアスがあった場合、結果がどうなるかというと、トップのレベルにいくときには、1パーセントのバイアスが15パーセントのバイアスになっちゃうんですね。
もしかしたら、女性はみな、こんな社会だということをなんとなく理解していて、それで「リーダーになりたくない」と思ってしまうのかもしれません。本人も認識してないような、こういうバイアス、ちょとした無意識下のバイアスが、非常に大きな結果になってしまうというデータです。
この無意識バイアスが非常に厄介だなと思うのが、実は女性自身にも影響を与えているということなんです。これは私も、ギンカさんの論文を読むまで気づかなくて、ハッとさせられたことなんですけれど、女性自身も「女性は思いやりがあって、利他的、人に協力するような、そういう存在でなくてはならない」と、自分たち自身も思い込んでるということがあります。
これはギンカさんがクラスで実験された内容なんですけれど、ある課題があって、それをどう解決していくか、グループワークでどんなソリューションを出しますか、といったようなことをやったそうなんですね。
実は、そのグループ分けというのは、性格分析で協調性の高いグループと、協調性の低いグループに分けられていて、これが男女混合だった場合は、協調性の高いグループは、他者に対する思いやりがある人たちの集団なので、それを示すような思いやりがあるようなソリューションが出てきて、協調性の低いグループは、わりと競争志向が高い人たちの集まりなので、ゴールオリエンテッドみたいなソリューションが出てくる結果になるそうなんです。
これを女性だけでこういうグループ分けをした場合、性格の特性に関わらず、両者とも非常に協調性の高いソリューション、NGOを作って途上国を助けるとか、そういうことが出てくる、とギンカさんは言ってらっしゃいます。
そのことがなにを意味しているかということなんですけど、女性だけの非常に安全な環境であったとしても、女性は「自分たちは思いやりがあって、利他的でなくてはならない」、そんな思い込みがあるので、そういう結果になってしまうのではないか、ということなんです。
それから、女性はよく「ロールモデルがいない」とか、「あんなリーダーになりたくない」と言いますけれど、それってもしかしたら、自分たちがそういう無意識バイアスにとらわれていて、そのことの結果かもしれないですよね。
先ほどの実験にあったように、女性が過度なリーダーシップを発揮すると、女性はこうあるべきだということに反しているため、反発が起きてしまう。女性リーダーって、自己主張が強すぎる、権力欲がある、目立ちたがり屋とか、企業で出世する人ってそんな批判を受けていることが結構あると思うんですけれど、それって、無意識バイアスの影響かもしれません。
最後、教育の問題も大きいと思ってます。「女の子だからこうしなさい」とか、「女の子だからそんなリーダーシップ発揮しなくていいよ」とか、そういうことを言われた経験はみな持っているのかなと思います。
そういう育った環境とか、社会に潜む無意識バイアス、それが私たちが「リーダーになりたくない」と思っている背景にあるのかな、と思います。
実はこの「女の子だから……」というところは、けっこう世界中で注目されていて、アメリカのP&Gという会社が「#Like A Girl」というすばらしいキャンペーンをやっています。もし見たことがなければ、ぜひYouTubeで見てみてください。
アメリカでも、「女の子らしく」ということは、非常にネガティブな意味で使われていて、それが少女の自信をそいでしまうと。そのため、「Like A Girl」という言葉を再定義しましょう、ということを訴えるキャンペーンです。
いろんな人に「女の子みたいに走って(run like a girl)」と言うと、みんな、なにかバカげたように走るんですね。女性も、男の子も、少女以外、みんなこういうフザけた走りをするんです。ところが、少女本人に聞くと、本当に一生懸命走るわけです。「あなたらしく走って」と言うと、一生懸命走るんです。
アメリカでもこうなんだから、日本ってこういうことがすごくあるんじゃないかなと思います。いつか、日本の無意識バイアスに関する研究をやってみたいと思っています。
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには