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テーマ「次世代の学校」について(全1記事)

若者はチープな言葉に騙されない 教育・地域を語る大人のNG例

2015年1月25日に、文部科学省は教育改革を目的とした「次世代の学校・地域創生プラン」を発表しました。コミュニケーションプロデューサーの若新雄純氏は、すべての公立学校を対象にしているこれらのプランがあまり話題なっていない根本的な理由を語りました。(TOKYO MXとの共同企画でニュース番組『モーニングCROSS』を書き起こしています)(TOKYO MXとの共同企画でニュース番組『モーニングCROSS』を書き起こしています)

「次世代の学校・地域創生プラン」

堀潤氏(以下、堀):さぁ続いて、若新さん。テーマの発表をお願いします。

(テーマ「次世代の学校」について)

脊山麻理子氏(以下、脊山):文部科学省は25日、学校の組織改革や教員の資質向上に関する2016年度からの5ヵ年計画「次世代の学校・地域創生プラン」を公表しました。

:日本は外国に比べて、教員以外の専門スタッフが少ない。そのため、いじめや貧困などの問題の対応に追われて、本来の授業がおろそかになりがちではないかと。そこで、教員と外部の人材が連携して「チームとしての学校」を作って、様々な問題に対応していこうというプランです。

具体的には、スクールソーシャルワーカーという存在があるんですが、スクールソーシャルワーカーらを2020年度から全国の学校に計画的に配置していく方針だというんです。

確かに、学校の先生の過重な労働環境は問題だと言われていますからね。若新さん。

若新:これはダウンロードできるんですけれども、ちょうど3日前に文科省が大臣決定文というのを出していて。これからちゃんと制度になっていくかどうかということだと思うんですけど。

:どんなことが書いてあるんですか。

若新:簡単に言えば、学校の先生だけでは今の教育には対応できないので、先生が教えるだけではなくて。さっきのソーシャルワーカーもそうですけど、地域のいろいろな人と関わりながら、地域独特の学校を作ろうと。

今後の方針として、「国のすべての公立学校をコミュニティ・スクール化する」と言っているんですよ。その一部分を抜き出してきたんで見てほしいんですけど。

不思議なのは、「すべての公立学校」と言ったら、ほとんどの国民に関わることじゃないですか。これがまだあまりニュースになっていないというのは……関心がないのか、これからなのか。僕は取り上げたいんですけど。

「次世代の学校創生」という部分をそのまま抜き出しました。

「すべての公立学校がコミュニティ・スクールとなることを目指して」「地域と共にある学校」。

地域の人が関わって、その独自の地域ごとの学校的文化を作るというのはいいと思ったんです。僕は、1つ惜しいなと思ったところがあって、もったいないなと思ったのは、赤線引いているところなんです。

地域の人と関わっていくのはいいんですけど、「地域の人々と目標やビジョンを共有し」って書いているんですよ。

目標やビジョンは若者にピンとこない

なにかと言うと、この文章が言いたいのは、従来は学校の先生というのが子供にとっての唯一無二の先導者というか、大人で。その学校の先生が、目標やビジョンを、「みなさん、こっちにいきましょう!」と言っていた。

これを、今度は先生だけじゃなくて「地域の人々と目標やビジョンを……」と書いたんですけど。僕はこの目標やビジョンという言葉は、今の時代にとってすごくインチキな言葉になりつつある。

本当の意味では、目標やビジョンって大事かもしれないですけど。最近これがチープな言葉になりつつあって。目標やビジョンと言われて、子供たちがピンとくるかというと、実は今、若者にとって最もピンとこない言葉だと思うんですよ。

:例えば、「将来◯◯のようになる」とか。

若新:地域社会で一番大事だった目標やビジョンって、貧しかった戦後の時代は「豊かになりたい、ちゃんと食べれる、暮らせる、仕事がある、豊かに生活できる」とか。

:「豊かさ」が1つの最終ゴール。

若新:「家を作って」とか。そういうものがあったので、先生だったり地域の人も、「こっちを目指そう」みたいに。

:一生懸命勉強して、技術を身につけて、社会に送り出す。

若新:ところが、それを地域の人が「俺たちの頃は貧しかったんだ」みたいな。「お前ら、夢を持て」みたいな話をしても、子供たちにはすごくぼんやりとしていて。

僕は、せっかく地域の人と関わるのに、地域の人って子供たちに対して目標やビジョンみたいなことを掲げても、ぼんやりしていて子供たちはついていけないと思うんです。

しかも、こういうものって、目標やビジョンをどう持つかということそのものがテーマになっていて、大人が必ずしも子供に指し示せるかというと、むしろ子供たちと一緒に探すくらいのことをしないといけないと思う。

:大人社会が見失っているところがありますからね。

若新:そうなんです。

こうやって、子供と関わる大人も逆に緊張して、正しそうな方向性を示さないといけないとなってしまうと。

僕はむしろ、地域での議論が硬くなってしまって、大事なことが話し合われない。当然だけれど、学校の先生と地元のおじちゃんと、言っていることが違ってきたときに、子供は戸惑ってくるので。

目標やビジョンと言ったら、結局は当たり障りのない無難な方針にまとまったりして変わらないと思うんですね。学校の手帳に書いてある校則みたいなものを掲げても、意味がないと思うんです。

すべての国民が納得するような「豊かになる」とか、「みんなが充実した社会を築いてご飯を食べられる温かい暮らしを手に入れられる」という時代じゃないじゃないですか。

「鯖江市役所JK課プロジェクト」の成功例

:ということは、若新さん。「地域の人々と目標やビジョンを共有し」じゃなくて、「考え」とか?

若新:そこで僕が思ったのが、なかなか文科省が書いてくれないかもしれないけど、せっかく地域と密着するなら。

今までは学校って、日本全国いろいろな地域があるんですけど、教える内容は統一されていたわけじゃないですか。

地域と関わるということは、そこでバラバラになるということだと思うので、地域ごとのリアルな生活があるわけじゃないですか。僕は、これから地域ごとのリアルな生活から取得されるのは、こっちだと思います。

むしろ、「なんでこうなの?」みたいな、疑問とか違和感みたいなもの。

:これを共有する。

若新:そこから、「なんで社会はこうなっているんだろう?」とか。例えば、「ゴミってどう処理されているの?」とかでもいいと思うし。「あそこの人はなんで仕事をしているの?」というすっきりしない問題。

:ここは、地域の課題や疑問や違和感をみんなで共有して、共に知恵を出し合うような、そういう学び合いの場。

若新:僕が福井県鯖江市でやっていた、「鯖江市役所JK課プロジェクト」というのが、最近総務大臣賞もらったんですけど。

:もらってましたね、おめでとうございます!

若新:自慢しているんですけど(笑)。そこでも同じで。地元の人とか市役所の職員が「こっち向こう!」だなんて言っても若者は響かない。

ところが、彼女らに今までは学校の先生に言えなかったような「そんなこと言ってどうするんだ」と言われたような、ちょっとした疑問とか、愚痴でもいいんですけど、そういうことをどんどん吐き出してもらおう。

例えば、彼女らがコスプレしてゴミ掃除したイベントがあったんです。彼女らはおもしろくて。せっかくコスプレしているのに、市のゴミ袋が「ダサい!」って言うわけですよ。コスプレしている時に市のゴミ袋って決まっているじゃないですか。「こんなゴミ袋、プリントがダサくない?」みたいなことをポロッと言うと。

鯖江市はこれに対して、「JKがゴミ袋ダサいって言っているから、かわいくしてみよう!」みたいな感じで、かわいくした。でも、女子高生の子は「なんか違うんだけど!」みたいな。

これは、よかったかどうかではなくて、今求められているのは、「そもそもそのプリントじゃないきゃいけないのか」とか、「その言葉って何なんだろう?」みたいな。

作られて充実してしまった、整備されてしまったものをもう1回若者たちが問いかけたり、見直したり。そういうところで、疑問を持てる、口にできる社会を作ればおもしろくなるんじゃないかなと思って。

目標やビジョンというインチキな言葉に騙されないようにすべきじゃないかなと。

:おもしろかったです。本日のオピニオンCROSSは以上とさせていただきます。

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