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テーマ「キラキラ学部名は就職に不利?」について(全1記事)

キラキラ学部名は就職に不利? 中身が見えない大学と看板しか見ない企業のねじれ問題

近年、大学の学科名や学部名にユニークな名称のものが増えており話題となっています。それらの学科・学部名に新しさを感じる一方で、一見して専門領域がわからない名前が就職活動の際に不利に働くのではないかと不安視する声も上がっています。明治大学大学院教授・野田稔氏は、こうした問題を解決するためのNPO法人DSS(大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会)の取り組みを紹介しました。

キラキラ学部名は就職に不利?

堀潤氏(以下、堀):では、野田さん。テーマの発表をお願いします。

野田稔氏(以下、野田):はい、私は「キラキラ学部名は就職に不利?」という記事を取り上げました。

(テーマ「キラキラ学部名は就職に不利?」について)

脊山麻理子氏(以下、脊山):近年、大学の学科名や学部名にユニークな名称のものが増えており、話題となっています。

:最近はいろいろあるそうですね。

野田:はい。例えば、「未来創造学部」。堀さん、これは何を勉強するところだと思いますか?

:未来創造学部? 何だろう。経営とかですかね。何でしょうか。

野田:これは、北陸大学にあるのですが、学部の中には国際教養学科と国際マネジメント学科というのがありまして、主にコミュニケーションや経営や語学、異文化などを勉強しているらしいんですね。

「グローバルメディアスタディーズ学部」

:ん〜! グローバルメディアスタディーズ。グローバルメディアですか。海外メディアとかの発信ですか。

野田:これは駒澤大学にありまして、これもコミュニケーションなんですね。あと、メディアコンテンツ論を教えていて、卒業生の想定される就職先としては、テレビ、ラジオ、出版、音楽、ゲーム、広告、IT、いろいろありますということです。

最後、「シティライフ学部」。

:これは、老後の楽しみみたいな?(笑)。

野田:違う違う! 宇都宮共和大学にありまして、生活者視点で都市とマーケティングを学びます。卒業すると経済学士が取れるんだそうなんですね。

:あ、そうですかぁ!

野田:というように、見ただけではちょっとわかりにくいところがありまして。

:キラキラ学部ね。

野田:他にもいろいろあります。「危機管理学部」なんかはわかりやすいかもしれませんけども、「地域協働学部」など、地域開発系が多かったりもしますね。

野田:ちょっとこれ(フリップ)、はがしちゃいましょう。いろんなのあるんですけど。

:字が小さい。よってくださいね。

野田:「東京未来大学モチベーション行動科学部」、心理学のモチベーションを学部にしちゃったということなんですけれども。

要するに、言葉というのは、元々概念を共有するための道具じゃないですか。

例えば、先ほどのシティライフだと、シティライフという言葉は共有できるんだけども、それを学部と言った時に、概念を共有できなくなっちゃう。

:確かに。「そんなに難しい言葉つけなくてもいいじゃない?」という話ですかね。

野田:そうなんです。

例えば、「パフォーミング・アーツ学科」という名前も、何かわかるようでわからない。何を勉強してきて、どんな能力が身についてくるのかよくわからないですよね。

結局のところ、何を勉強して、どんな能力がある人なのかがわからないのが就活で不利ということになるのかもしれません。

数字に弱い経済学部、会社法を知らない経営学部

野田:実は、今もっと大きな問題がありまして。例えば経済学部。経済学部を出た人ってどんな能力を持っていると思いますか?

:経済学部のみんなの就職先は、やっぱり商社とか行きますからね。

野田:どんな能力を持っていると思います?

:経済学部のみんな……経営とはちょっと違いますしね。

野田:でも、明らかに経済を勉強しているんだから、数字には強そうですよね。

:えぇ。

野田:そうやって期待すると、この頃は経済学部卒だけど、統計学1回も勉強したことないなんていう人が出てきちゃっているんですよ。

:どうして?

野田:なぜかというと、統計学の単位を取らなくても卒業できちゃうから。

:あ、そう……。

野田:そうすると、経済学部だから数字強いだろうなと思って採用すると、実は数字弱かったりするわけです。

経営学部だ。さすがに会社法くらいは知っているだろうと思ったら、1回も勉強したことありません、とか。

:僕なんか文学部だったので、逆に経済とか経営とか、いわゆる実学の分野の皆さんは、それはいろいろやっているんだろうと思ってましたよ。

野田:それが違っちゃっているわけなんですよ、今ね。

結局のところ、看板で中身を判断することが難しくなってる。でも、私は元々看板で判断するのは止めたほうがいいんじゃないかと思ってるんです。

中身を見せずに、看板だけで判断すると、それこそ、「とんかつ定食」って書いてあるから、とんかつ食べようと頼んだのに、実はそのお店ではとんかつが付いてこないでキャベツだけきたようなことになっちゃうわけだから。ちゃんと中身を見せましょうということで。

:経営者は困っちゃうということですね。

大学教育と就活のねじれを直すNPO

野田:ということで、私はぜんぜん違った就職活動を推奨していまして。

:提案! 何ですか、DSS?

野田:DSSという名前のNPOがあります。

:NPOなんですか。

野田:これも名前キラキラなんだけど(笑)。

大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会で、大学のDと就職活動のSと就業力のSで、DSSなんだけど。

:日本放送協会(NHK)と同じ構図ですね(笑)。

野田:そんな感じですね。

:大学と就職活動と就業力のDSSですね。

野田:履修履歴面接というのを一生懸命進めています。

:何ですか?

野田:何をどう勉強したかというのを、ちゃんと面接の時に言えよと。大学生なんだからさと。今、経団連なんかも推奨してくださってますし、文科省もこれにすごい協力をしてくださっているんですけれども。

:へぇ〜!

野田:今データベースを作っていまして、どこの大学のどの学部学科でどういう勉強をすると、だいたいどんな能力が身についているかということを、一生懸命データ貯めているんです。

:なるほど。

野田:それを企業側がちゃんと使ってほしい。重要なことは企業側なんですよ。企業が学生に面接で聞く時って、「どんなクラブやっていましたか」「どんなバイトやっていましたか」って聞くじゃないですか。

:あと大学名。

野田:あんなこと聞くもんだから、みんな勉強しないわけですよ。どういう勉強したのと企業がちゃんと聞くようになったら、学生はちゃんと勉強するようになりますよね。

今、Twitter出ました。「就職活動のための大学じゃない」、その通り。就職活動のための大学ではないです。でも、就業力を付けるための学びであることは、僕は絶対間違いないと思います。生涯に渡って働き続ける力、基礎をつけるのが大学だと思っています。基礎力の中身をちゃんと見せろというのがDSSの主張です。

:就職力と就業力でちょっと違うということですね。なるほど。ありがとうございました。

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