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まずは、ゆるーくやってみよう。~地域に飛び出す、公務員っぽくない公務員の挑戦~(全2記事)

「大丈夫。死なない」全国を飛び回る“元ナンパ師”公務員が背中で伝える、若者へのメッセージ

塩尻市の職員でありながら、“公務員っぽくない”活動で注目されている山田崇氏。学生時代には、ナンパに明け暮れていた元ナンパ師という異例の過去も持ちつつ、現在は地域活性化のために日々全国各地を飛び回り、2015年は65回もの講演をこなすようになりました。山田氏が注目されたきっかけは、シャッター街と化した地元商店街の空き店舗を借り、さまざまなイベントを仕掛ける「空き家プロジェクト nanoda」を立ち上げたこと。若者を応援するためには、「まず自分が軽~くやってみる」ことが大事だと話します。2015年6月には「信州移住計画」をスタート。シビックプライドを持ってもらうためにはどうすればいいのか? 地方創生が叫ばれる今、学び多いお話がされています。シブヤ大学と西武渋谷店のコラボレーション講座「Think College」のログです(授業詳細)。

まずはアイスブレイクから

山田崇氏(以下、山田):よろしくお願いします。

(スクリーンを映しながら)好きな映画を最初にいつも出しています。『アデル、ブルーは熱い色』。それだけです。

私、NPO法人G-netの秋元祥治さんが大好きなんです。『デフレの正体』の藻谷浩介さんの講演を聞いた時、「これは秋元からパクってやりました」と言っていた、アイスブレイクを、最初に皆さんでやりましょう。

3、2、1で全員一斉にグー、チョキ、パーをあげましょう。「皆さんの出身地は?」。

行きますよ。いいですか? 3、2、1、どうぞ! 

ぐるっと見渡してください。今日、こんな人たちが来ていますよということが、これでわかります。グーが2人。ありがとうございます。

もう1回行きましょう。「今日の関心」。これ以外の方は無理やり選んでください。

グー、チョキ、パー。チョキとグーが結構いますね。ありがとうございます。パーは(主催の)榎本さんだけですね。いいプロモーションをしていただきました。

これはですね、びっくり、私の年間講演会の回数です。

(会場ざわめく)

山田:いやぁ、すごいですね。

「元ナンパ師」で検索トップ! 山田氏による自己紹介

では、自己紹介をします。皆さん、あとでGoogle検索をしてください。「元ナンパ師」で私がトップです。本当、logmiさんありがとう。3万1000いいね!いただきました。これは昨年の10月ですが、嬉しいですね。ちなみに「ナンパ」で検索したら、Wikiの次でした(笑)。

こんな感じで年間65回講演をしていたら、先日、「山田くん、ちょっとここに来てくれない?」と言われました。入り口に、こんなことが書いてありました。「研修講師塾 秘伝公開コース会場」。

私が大好きな京都造形芸術大学の本間正人先生とご縁があって、この前コーチングを受けてきました。私は受講生で行ったのに、Facebookに書いてありましたが、「街頭コミュニケーション術に関する特別レクチャーを山田さんにしていただきました」。

ま、ナンパですよね。そうしたら、コーチングの権威の本間さんに10分間、コーチングをしていただくことができました。

「山田さんがやっていることは、すぐに本にできる。『仕事で大切なことはすべてナンパから学んだ』。私がオビを書いてあげる。『心をつかむコミュニケーションの極意はここにあった』」。これをすぐに章立てしてくれました。

28万円のプレゼンをします

私の思いつく肩書は、こんな感じでした。空き家を借りたことによって、いろいろなところに呼ばれているのかなと思っています。

これは、いつもプレゼンテーションをすると気持ちがよくなるので、いましめで出しています。

ヤフーの安宅和人さんさんの「プレゼンとは?」。やはり皆さんの大切な時間をいただいているので、なにかしら行動をしていただきたい。

私は、最後に言いたいことを、いつも最初に出しています。準備ができていないとか、仲間がいない、お金がないなどと言っていると、時代はものすごく速くなってきていますので。

これは『スクールオブデザイン』という本に書いてあることで、私は5年前に出会いました。今でも忘れないように、出しています。

私は今日、一人ひとりの1時間半をいただいているので、皆さん全員に届くように、だいたいこのようなかたちで6秒に1枚くらい、スライドが飛んでいきます。

大学の授業が、いま1コマ(1.5時間)だいたい5400円だとすると、今日35人いると、私は28万3500円の話をしなければいけないということです。

地元を元気に! 富士山を望む、自然豊かな塩尻について

私は、いつもこれで呼ばれていると思っています。小さくスタートする、ちょっと始めてみる、ということが私のプレゼンの1番かなと。

それと、市の職員として、地元が元気になるために自分が考えている仮説はこれです。

私自身がとても応援していただいているし、すごいメンターに出会って自分が変わった、挑戦していいんだと思えたので、次は私がその番だと思っています。

だけど何も挑戦したことのない大人に応援されても、若者もピンと来ないと思って、地域に若者が増えるよう、私は3年前に実際にシャッターを開けてみたのです。今日はこんな少し話をして、移住の話にしていきたいと思います。

これは、地域です。この話をしないと。今日、私は仕事で来ているのです。

こんなところです。

1800メートルの高原があって、富士山が望めます。「ZEKKEI Japan」という、いまFacebookの「いいね!」が120万あるサイトに掲載させていただいています。

このような場所の商店街の空き家を、3年半前から4軒借りています。4軒の空き家の家賃の合計が2万8000円。なぜそれで借りられるかということが、いつも話をしているところです。

69ある宿場の奈良井宿があり、毎年2月3日にはキャンドル祭があります。このような塩尻市から来ました。

ほとんど人がいない商店街に、活気を呼び起こすべく奮闘

これはnanodaのホームページです。地方に人がいない。確かに、土日でもほとんど人が歩いていません。130ある商店街に、23.1パーセント、県平均の3倍の空き店舗率がありました。

だけど、大丈夫です。やりようによっては人がいます。これを見てください。昨年の10月。すごいですよね。

今日も、商店街の元理事長の方と東京で打ち合わせをさせていただきました。だいたいランチミーティングをやっています。商店街に空き家を借りたことによって、ランチミーティングでどんなひっかかりができるかというところに、参画していただいています。

補助金を出してもらって何をしたかというと、剛力彩芽を呼びました(笑)。この話だけでも超おもしろいので、また話すことができます。

このような企画も高校生向けに今年やりました。ヒザ神、出演した村上健志さんは、今年、下北沢の本屋B&Bでライブラリー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたお店で、単独短歌ライブやってるんですよ。私も行ってきました。

塩尻市は全国短歌フォーラムをNHKと一緒に29回やっています。短歌フォーラムの全国大会がありますと、電話をする機会があって村上さんにお話したら、「僕、絶対行きたい」と言って来てくれました。

こんなことを、市役所の時間外でやっています。

山田氏が関わる、塩尻発の多彩なプロジェクト

ざくっと、私の昼間の仕事を紹介します。40歳、バツイチです。子供はいません。市役所の仕事しかやったことがありません。

これは2枚目の名刺です。ざっと、いろいろなことをやっています。最初にやったのは、高校生と地域をテーマにした「Shiojiring(シオジリング)」というアートのプロジェクトで、いまもその活動は、仲間と続けています。

1番有名なのは「30時間トークマラソン」というのを過去2回やりました。商店街の空き家を借りて、現代美術のアーティストを呼んで30時間ぶっとおしで「塩尻カンバセーション」というトークイベントでした。それがスタートです。

シブヤ大学のトップページに載りました。人に会いにいく旅というのは、榎本さんと3年前にスタートして、今年、国(中小企業庁)の事業になったものです。塩尻で始めたのが全国11カ所にスケールして、今トップページにも出ています。

大小かかわらずいまやっているプロジェクトを榎本さんが書いてくれました。こんなプロジェクトを同時にやっています。何とかなるものですね。

全国で2番目に「地方版総合戦略」を策定した塩尻

実は塩尻市は、全国で2番目に早く地方版総合戦略を今年の3月に策定しているのです。私は企画課で、そういったメンバーと一緒に地方創生の仕事をさせていただいています。私がこうやって外に出ることができるのは、そのようなことがあるからです。

6万6700人の人口。約5500人のセイコーエプソンの従業員を抱えるイノベーションセンターがありますので、わりと若い人たちが多い。896の自治体が消滅してしまうだろう2040年の塩尻市の人口ピラミッドです。

注目すべきは女性、2番目に多いのが90歳以上、1番多いのは65歳から80歳。20歳から39歳の女性が少なくなるということで、消滅してしまうだろうと言われています。こうならないためにどうしていけばいいかということを、だいたい昼間、それと夜、土日でやっています。

空き家から商店街の賑わいを作り出す「nanoda」とは?

nanodaについて簡単にいうと、建物に会議室、レンタルスペース、ミーティングスペースという属性を持たせていません。1つコンセプトがあるとすれば、そこでなにかをしたいという人が、「トークなのだ」「朝食なのだ」「ワインなのだ」と、気軽にスタートできるという場です。これは2012年4月15日からスタートしています。

若者を応援する大人になるために、まず私が軽ーくやってみる。そこに泥水があったら、飛び込んでみて「大丈夫。死なないから君らも来なさい」ということを、私はやっているのではないだろうかと思います。

今年の4月1日現在、1741の地方自治体があります。人口が2008年から日本は減り始めています。塩尻か1人増えたら、どこかが1人減るのです。その奪い合いはあさましいと思います。

東京にいながら塩尻のファンになってくれる人がいてもいいかなと、私は思います。こんな思いがあって、移住計画に私のこの空き家の施策が重なっているということです。

全国紙のソトコトでは4ページ、『TURNS』では表紙に掲載されました。今、『TURNS』で1年間連載を掲載させていただいています。

超ラッキーなことに、「地域を飛び出す公務員アワード2013大賞」も受賞しました。これは、時間外でいろいろな活動をしている大賞なのですが、これをとったらすぐに、市役所の上司から「昼間もっと働け」と言われました(笑)。

昼間やって、夜もやっているのです。「夜やる余力があるなら、昼間もっと力を入れろ」と言われます。ですが、それによって昼間の仕事に対しても自分の幅が広がっていると思います。自分で目の前のハードルを下げない。自分が外に出たことによって昼間もできるのではないかなと思っています。

nanodaのシャッターを開けてみたら、3年間で若者が5人移りました。10か月で126人の若者たちが、お風呂もない2階建ての空き家に短期滞在をしに来ています。ちょうど今、慶応義塾大学大学院の関口君がここで5日間住みつつ、卒業論文の調査をフィールドワークしながらやりたいと言ってやっています。

信州移住計画プロジェクトのきっかけと活動

このようなことが起こっていることを顕在化してみようということで信州移住計画を、京都移住計画に協力いただいて一緒に立ち上げようとしました。

そこで、私たちのnanodaのメンバーは今8人いるのですが、びっくりなのは私以外、全員がIターンだったのです。

要は、地域のもともとのコミュニティと考えられていたものを、若い人たちが求めていたのではなかったのか。小学校の同級生だったり、消防団かもしれませんが、そういう地区コミュニティではないものを考えて、3年半前に始めて、今立っているところをよく見てみたら、移住者のコミュニティだったということを、もっと顕在化してみようということで始めたのが信州移住計画です。

塩尻は、新宿より名古屋のほうが近いのです。お世話になっている京都移住計画の京都は、実は東京とほぼ一緒。このようなことをもっと顕在化していこうとしています。

今、私は信州大学の共同研究の地域連携研究員として大学生と一緒に、政策誘導ではない、進学で来た大学生がどのようにしてその町を好きになって、そこに定住するかという研究を、毎週金曜日に2年間やっています。

また、「塩尻の魅力を見つめる」ということを、信州大学の地域ブランド実践ゼミと一緒にやっています。

それと、「シビックプライド(都市に対する自負や愛着)」。これは、塩尻への愛着をどう持つかということをテーマにしたものです。

これはシブヤ大学からいただいたご縁で、シビックプライド研究会の紫牟田伸子さんとシブヤ大学学長の左京泰明さんに、私たちのこれからのシティプロモーションに一緒に関わっていただいて、ほぼ毎週打ち合わせをしています。

若者のための仕事を創出 木育サミット開催へ

私は今年の3月まで塩尻商工会議所にいて、新規で移住定住の施策を手がけました。若者を応援するための機会を作ろう、単に地域が、人がよかったり空気がきれいだったり景色がいいだけでは、実は若者たちは住めないのです。特に仕事がないと、なかなか踏み切れない。

そこで、シブヤ大学のツーリズム企画をやりました。1泊2日で人に会いに行く旅をする。もっとコミットしたい人には「地域イノベーター留学」に参加する。これは、NPO法人ETIC.の企画ですが、4人1組で東京の社会人がチームを組んで、地域の課題を解決するというプログラムを約4カ月やります。これは今、4年目です。

それと、大学生向けに、6カ月の長期インターンシップと6週間の短期インターンシップをやっています。今年も2月に大学生向けのプログラムを用意していますので、ぜひ、塩尻に行ってみたいなという方に紹介いただければと思います。

これは、嬉しかったですね。全国250のインターンの事例で「地域若者チャレンジ大賞2015」の北信越代表として、私が初めてコーディネートした信州大学の三浦希枝さん、鎌倉出身の方が、全国大会に出場した9人の一人として入賞しました。

国産材の木のおもちゃを全国展開しようというプログラムを、一緒に考えてみました。塩尻には、国産材の木のおもちゃで日本一という企業があるのです。それが酒井産業株式会社です。でも、地元の人たちは知らないのです。リグナビ、マイナビにも出ないから。それが悪いわけではないのですけど。

全国で9割以上の中小企業と学生が、もっと言うと、その社長と学生が繫がることによって、その人のファンになってここで働いてみようという暮らしを見ていただく1つのきっかけとして、こんなことをやり始めました。

「三浦希枝さんと酒井産業株式会社の挑戦」というプロジェクトから、初の地方開催となる「全国木育サミット」が来年の3月に塩尻で開催されることになりました。

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